「手を…」
ジャンヌは立ち上がると、七実の右手をそっと握った。
「触れて」
「エッ!!」
そして自分の大きく開いたドレスの胸元に七実の手を導いた。
透き通るような白さの肌に七実の手が直に触れる。
ジャンヌは、その手を握り直すと、さらに強く胸に押し付けた。
柔らかく吸付くような感触に七実が陶然とした時、驚くべき事が起こった。
「あッ!!!!!!」
七実の手が、柔らかな胸の表面を突き抜けてしまったのだ。
ジャンヌは穏やかな笑顔のままだ。
悲鳴を上げようとした七実を、その笑顔が辛うじて繋ぎ止めた。
痺れたように動けない。
最初の衝撃を無理に飲み込まされてしまった。
すると後は、あり得ないこの出来事を、当たり前のように受け入れさせられてしまう。
それどころか、別な事に驚く七実だった。
…熱いッ!…
人の体内に手を入れた事などないし、想像した事もなかった。体温がこれほど熱く感じるモノだなんて。
「こんなこと…」
「恐れないで、もっと奥へ」
「ギャッ」
それに触れたとき、七実は今度こそ悲鳴を上げた。
…冷たいッ!…
熱い血潮の海の中に、凍てつくような鉄隗がある。人体の中に金属の棒が埋め込まれているのだ。
「握って…」
恐る恐る七実はその金属の棒に指をまわしていく。
「もっと強く」
「わたしが認証しているから、エンゲージなしても出来るはず…」
「『薔薇の花嫁』がデュエリストにどんな力を授ける事が出来るか、判るから」
「…抜いてごらん」
七実は、息を大きく吸い込み、力を込めてそれを引き抜いた。
自分ではまるで意識していないのに、七実は叫んでいた。
「『世界を革命する力を』」
あたりは目映い光で覆われ、控え室の全員が、何も見えなくなった。




東の控え絵室では、月子とウテナが睨み合っていた。
「ウテナさん、この戦いはわたしたちお庭番に任せてください」
「ミツルはボクの妹だよ」
「あなたは剣家のお嬢様です」
「月子さんだって女の子じゃないか!同じだね」
「どうしてそう聞き分けがないんですか?」
「どうしてそんなに意固地なの?」
「性分です」
「ならボクも同じ」
ム〜〜〜〜〜ッと口をへの字にして月子は黙った。言い合いで人に勝った事がない。
「まあまあ、ふたりとも、その辺にしておけば」
陽子が、ゆったりと、遅すぎる仲裁に乗り出した。
「あんたからも何とか言ってよ、陽子」
「陽子さんは、融通の利く人ですよねええええ」
陽子はカリカリしているふたりの言葉には乗らない。
もっと大事な事を気にしていたのだ。
「ところで、水晶はどこに行ったのかしら?」
月子はあまり広くない控え室を見渡した。
「あれ?いままでそこにいたじゃない?」
「本当だ」
水晶が消えた。
「あの娘なに考えてるのッ?ミツルとウテナさんがいなくなった時も、緊急召集に遅れて来たし…」
控え室にはいつの間にか、月子と陽子とウテナ、そして暁生(あきら)しかいなかった。
暁生は、複雑な顔をした。
面白がって良いものがどうか思案しているような顔だ。
「いま、こちらの勝ち目が九割から、六割くらいまで下がった。気を引き締めた方が良いぞ」
その35 その37
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