これも愛でしょう





 タララァ〜ラララララァ〜ラララランラララン♪

 ご機嫌で鼻歌を歌いながら、サンジはバスルームに篭っている。
 空っぽのバスタブの中で愛用の剃刀を片手にして、口にはタバコを銜えて。
 口火が落ちたら、間違いなく剥き出しの胸の上だが、そんなオロカなことはしない。
 いや、火傷ができても心配無用。
 そんなモン舐めりゃあ一晩で治る。もちろん、自分の胸元までべろが伸びるはずがない。伸びたらそれはそれで愉しいだろうが。人として、なおかつビジュアル的に不気味だ。
 そうなったら当然のごとく、ゾロの出番となる。

 料理に従事しているサンジは、存外に同船している連中に比べて傷が多い。一流のコックだから、指を切らないとか火傷をしないなんてことはない。
 食べさせる口は少ないが、吸い込まれる分量は地獄に通じる穴の如しだ。
 膨大な食事を三度三度ひとりで作っていたら、いやでも怪我くらいする。
 手を軽く切って出血させたり。
 ジュッと焼いてしまったりなんて日常茶飯事、珍しいことじゃない。
 すると、呼ばれもしないのに、魔獣ロロノアが何処からともなく現れて、サンジの怪我した部位に唇を寄せて、ケダモノが傷を治癒するみたいにベロベロベロベロ舐めてくださるのだ。
 さすがゾロの唾液だけあって、傷の治りはチョッパーが調合する薬よりも効き目が早い。
 しかも、直後にはおしゃぶりに興奮した二匹の野獣は組んず解れつ。まったく解れないでそのままケツ合までするコースがついている。エロホモコックと野獣ホモ剣士が、こんな美味しい展開を逃すはずがない。だから、小さな傷をこしらえるのは、全然問題ナッシング。充分、変態だ。


 ゾリゾリゾリゾリゾロゾリゾリゾロ・・・
 サンジは剃刀を長い脚の上に滑らせて行く。
「ラララララタララ〜、タンタタタララ〜」
 楽しい回想に浸りながら、股間を半ば危うくしながら。セックスシーンをまんま歌った曲をぐるぐるバスルームに回している。

 
 体毛なんてほとんどないに等しいサンジだが、男性として一応は腕にも脇にも毛は生えている。もっとも、女性には受けが悪いので無駄毛の処理に気をつけている。
 裏事情ではちょろっとしか生えてない毛がみっともないから、いっそのこと剃って分からなくしてしまえ!なる画策が含まれているとはゾロしか知らない。
 しかし男性ホルモンの影響で、脛にはそれでも長い脛毛が生えていた。
 他のむさ苦しい男達とは違って、やわらかくて細いそれは、可愛い手触りの毛だが立派に脛毛だ。毛足だってきちんとある。ゾロの濃い緑の脛毛とサンジの金色の薄い脛毛を丸めあって、緑と金色の蟻んこを作ったりして暇つぶしに遊んだこともある。
 ちゃんとメインコースつきであったのは当然だ。
 だから、サンジは全然、自慢の脚に毛があっても引け目なんて感じなかった。むしろ、ゾロと脚を絡ませあったら、じょりじょり擦れる感触が気持ちイイ。
 
 しかし。先日のセックスでサンジはちょっとばかり思ってしまったのだ。
 その日は倉庫の箱の出っ張りで脚を派手に引っ掛けた。こけることはなかったが、どの程度の傷かを見たいのは人情だろう。ホモでエロで阿呆なサンジだが、その辺は一般人と同じ反応をした。つまり、ズボンの裾を捲り上げて傷の確認をしてみたのだ。
 青あざくらいだと思っていたそこは、木屑こそついていなかったが青タンつきで擦り剥けて血が滲んでいた。少々、肉を抉ってしまった箇所もあって。時間差で細胞がじわじわ上げてきた血が集まり始めるのを他人事みたいな興味で眺めていた。
 そこへ、ゾロが当然としてやってきた。うずくまるサンジを見やった剣士は、
「お前、またやったのか」
 開口一番、ため息つきで言った。
「るせぇ!てめぇは、腹を空かせたどーぶつじゃねえかよ!」
 口も態度も可愛げがない。
 たかがかすり傷で、どうしよう?
 と涙をいっぱいに溜めた目で上目遣いされるより、すっきりする。
 強がりでも、恥ずかしがっているでもなく。
 サンジは憎たらしいのが地だ。

「おお、阿呆のくせによく分かったな。腹、減ってんだ」
 対するゾロも俺様だった。
 世界は自分を中心に回っている。道に迷うのは自分じゃなく、道のほうが好き勝手に曲がって目的地に着かないようにできていると信じている男だ。
 ミスター俺様と倣岸王子様は、お似合いのカプだ。
 ズボンを捲り上げているサンジの前に、粗野な動作でどかっとゾロは腰を落ち着けた。無骨な手がにょきっと伸びて、サンジの足首をむんずと掴む。所作の全部が乱暴に見えて、実際、乱雑だ。
「いてぇじゃねえかっ!!ホンットにデリカシーのないやつだな!」
「・・・・・・・マゾ」
「んだとっ、このクソヤロッ!!」
 言い合いになれば、断然サンジの方が語彙は多いが、ゾロは一発必中の単語で攻撃する。
 青筋を額にめきめき立てて、それでもサンジはゾロに取られた脚を引き抜こうとはしない。ゾロも捕らえた獲物を易々とは手放さない。野獣のコミュニケーションは実に野蛮だ。
 喚くコックの声を右から左に流して、ゾロはべろりんっと色気なく傷を舐めた。痛みなのか、違う感覚によるものか判別が難しいサンジの押し殺した声が立つ。濡れた音を高く上げて、ゾロは一日中働いた料理人の脚をかまわず嘗め回した。
 掃除はしていても限界がある甲板に存在する埃やら、常に晒されている海風やら。
 サンジの汗とか肌の臭いとかが、血の味に混じって味覚に雪崩れ込んできたが、野獣だから少しも気にしない。
 僅かに瞼を伏せて一心不乱に傷を舐めるゾロは、本当に腹をすかせていた野獣みたいだ。
 舌で散々に舐めてしまうと、唇を直かに傷口に押し当ててくる。開いた歯が肌に食い込み、新たな痛みの隙間から、ゾロの舌がまた傷を抉り出していた。
「・・・っく・・・・・・ぁ・・」
 見た目には小さい割に、深かった傷から溢れていた血の味がかなり薄くなるころには、サンジの上半身はすっかり腑抜けになっていた。いい具合に骨抜きをされたコックは、床にだらしなく寝そべって、調理される期待に体を熱くさせている。
 舌を傷とは関係ない場所に滑らせては、最初のスタート地点まで戻るのを繰り返し、ゾロはサンジで遊んでいた。横目で確認したコックは、ベルトを外すのももどかしかったのか、ファスナーを引き下ろして、完全に勃起した自分のペニスを気持ちよさそうに摩っている。
 卑猥な手の動きを目で追いながら、ゆっくり足首から捲り上げた裾の中まで。
 届く限りまでゾロの舌が潜り込んで来る。
 膝下ぎりぎりのところまで入ってくる肉塊は、ヌルついた生き物みたいだった。膝の内側を舌先が掠め通り、内腿を駆け上がってくる電流が、ペニスの先まで到達した。
「ゾ・・・・・・・・・・・ロッ・・・な、しよー・・・・ぜ・・・・・」
 脚ばかりに執着しているゾロに、ついにサンジは音を上げた。

 ズボンの中から引っ張り出したモンは、どーにかなるとしても。
 ナカ擦られないとイッた気がしない。ゾロの舐める動きに合わせてスルのは、とんでもなく気持ちイイんだけどね。やっぱ、ここは挿れられて、抜き差しされるに限るっしょー。

 先走りで濡れた手をゾロへと伸ばし、鍛錬された腕を探り当てる。筋肉に包まれたガチガチの腕は、興奮で熱病患者みたいな体温になっている。
 いやらしい液まみれの掌を擦り付けてやった。嬲る口元から、ゾロの荒い息が肌に当たる。
 こうなったら、まずは出すこところだけ出して、取り合えずデカイ四本目の刀を鞘に収めてやるしかない。埋め込んでしまってから、上半身を脱がしあうのが得策だ。でなけりゃ、余裕が無くなった獣たちは、邪魔な衣服をバリバリ引き裂いてしまう。
 最近、GM 号はウェスが切れたことがない。
 リサイクルするにしても、裸のままにさせておくと本能の塊の二人なので、ところかまわずケツ合してしまいかねない。服が破れるたびに新しい服を買っているナミから、シャツと一緒に怒りも買ってしまう。
 とっととゾロの破れズボンを脱がしてしまおうと身を起こしかけたサンジに、ゾロは顔を上げてにやりとした。卑猥で獰猛で。やる気満々のゾロに、簡単にサンジは落ちる。唾液で濡れた男らしいゾロの唇にむしゃぶりつきたくて堪らない。
 勢いをつけて起き上がったサンジが、ゾロの分厚い両肩に手を置いた。
 当然、濃厚なべろちゅーをかましながら、ズボンを脱がしあうためだ。
 サンジが顔を近づけようとしたそのとき、ゾロが横を向いて唇からべろを出して、引っ付いていたものを取り払うしぐさをした。
 ん?なんだ?
 直後にすっぽんみたいに吸い付いてきたゾロと脱がせ合いっこをしながら、サンジはやっと合点がいった。
 脛毛だ。ゾロが食らいついていた脚にあった毛が、口に入っていたのだ。
 口の中に毛が入る感触の気持ち悪さはサンジも知っている。無意識に動物は口から毛を出そうとする。それは人間だろうが同じだ。口の中に入った毛は、微妙に喉の奥を刺激したりして、不愉快な吐き気まで覚えさえるときがある。ゾロがいくら無頓着な男でも、やはりそれは気持ち悪いだろう。そんなもんがあったら、セックスの最中も気になってしまう。
 我慢ならないゾロが早速にサンジのアナルを掻き分けて、極悪なブツをぶち込んできたところで、サンジは即座にそっちに神経から意識の全部を持っていかれた。服を脱がしあうのを忘れて、あんあん啼いた。ゾロのジジシャツに力いっぱいしがみ付いたから、ぼろい布はすぐにもっと襤褸になった。サンジのシャツも、ゾロが強引に背中から引き裂いたから、やっぱり襤褸になった。
 体のあちこちに引き裂かれた布をぶら下げて、余裕なんてひとつもないセックスに溺れながら。
 
 ううん、さっすが剣豪ッ・・・・・・・・・・ソコ・・・・あっ・・・すっげ・・・イイじゃねえかっ・・・・・・・・・・・やっぱ・・・・毛は無いほうが・・・・うわっ・・・そんな強くするな・・・・・・・・・・うんっ・・・・・・・・・剃っとくか・・・・・その方が・・・・すぐキスできるもんな・・・・あああっ・・・イキそっ・・・!

 喘ぐ思考の隙間で、忙しく考える。
 健気な末期ホモだった。



「おお〜vvきれーなねえちゃんみてーだ!」
 そして、サンジは風呂場でせっせと無駄毛を処理していた。
 銜えタバコでいたが、長年の連れなので根性焼きを入れることはなかった。
 浴室のうすらぼんやりした明かりの下で、サンジは満足して片脚をバスタブから真っ直ぐ上に突き出した。男とは思えぬほど体が柔軟なサンジは、女でもそこまで上がらない高さに、らくらくと足が上がる。自分の目前に現れたつるつるの生足に、いたく満足な様子である。
 髭剃り用の剃刀だったので、広い範囲に使うにはやはり適していなかったようだ。数箇所ほど肌に刀が引っ掛かってできた傷がある。しかし、そんなモン、戦闘中のど派手な傷に比べたら、無傷と変わらない。
 それに、ゾロがいる。エロエロ大王が来るまで、今は作品のできばえチェックだ。
 もとから綺麗なラインを描く脚だったが、無駄毛もなくなり陶器のような白い自分の肌に、我ながら魅入った。豆腐みたいに生ッ白い脚をマジマジと眺めてしまう。他人のモンみたいだ。
 そりゃあ色素が薄い自覚はあったが、まさかここまでとは。思いもよらなかった。
 めっさツルツルできれーな脚だ。ただし、ホモの脚だが。
「完璧だぜ、さすが俺さま」
 自画自賛のナルちゃんぶりも、ここまでくると天晴れだ。
 うっとりして生脚を見つめていたサンジは、乱暴に開かれたバスルームのドアに脚を抱えた姿勢のまま振り向いた。そこには、男部屋で眠っていたはずのゾロが股間をぱんぱんに膨らませ、ヤル気オーラを放ち全裸で仁王立ちしていた。
 眠っていてもサンジの血の臭いには鋭敏に反応する。
 これも愛だ。ただしホモでギンギンだが。
 ヘタすれば殺気にしか思えないほど物騒な空気を背負っている。眼光の鋭い精悍な顔はサ
ンジが腰砕けになるセックスモードの男っぽい顔だった。バスタブを木っ端微塵にしそうな視線が、片脚を真っ直ぐに上げた大胆な格好の一点を透視している。普段がストイックに見える面立ちには、男の色気が溢れている。
 物騒そのもののゾロに、サンジは呑気に、『よぉ』と片手を上げた。
 それに応えず、ゾロはずんずんとバスタブに近づき、上がったままの足首をいつぞやの夜みたいに力任せに捕まえた。
「おわっ!!!!」
 サンジの脚にゾロが顔を近づけ、反動でずりっとバスタブの底で背中が滑った。
 慌てて両手で縁を掴む。
「クソエロ大魔王!!なにしやがる!!!」
 わんわんと声が反響した。片方の足が軽く持ち上げられているので、身体が半分以上バスタブで寝そべっている。狭い場所に窮屈に押し込まれ、股間のブツもケツの穴も丸見えだ。それが分かっていてもサンジは残っている脚を閉じようともしない。もちろん、手で隠したりもしない。
 ホモ剣士の暴力息子は萎えるどころか、血気盛んに育っている。
 腹を叩くほどそそり立つペニスはちょうどサンジが目線を上げた位置にあった。赤黒く怒張した陽根を目の当たりにするサンジの息子も嬉しそうに立ち上がる。
「白いな」
 低く押し殺した声が頭上から降った。逆らい難い魅力を放つ一物から無理に目をそらせて、サンジは大魔王を見上げた。
 こっちの顔もずっと見ていたい。
 せっかく目玉が二つあるってのに。両方いっぺんに見れないってのは不便だよなあ。
 本気で残念に思いながら、ゾロに頭が悪い子供みたいに笑って見せた。すでに頭は緩い。
「たまにはイイだろ。女みたいで」
「俺は前のほうが好きだ。お前は男だろ。なんで剃ったりする必要があるんだ」
 また傷をこさえやがってよ。
 いささか不機嫌にしながらゾロは傷を舐める。じん・・・と熱い波動が脚の内側を走ってくる。尻がきゅっと窄まった。今日は最初から裸のまんまで、脱がせる楽しみはない。だが全身で相手の熱がダイレクトに最初から感じられるし、じんわりペニスの先から液が滲み出してくるのまで見せ合える。そんなあからさまなセックスも楽しい。


「今度、剃るときには俺にさせろ」
 つるつる滑る脚を気まぐれにゾロの舌が踊る。口ではなんだかんだと言いながらも、気には入ったらしい。対象物がサンジだと、ゾロに規制なんてまったく無いからあまり関係ないのだが。
「い、いぜ・・・・させて・・・・や、る・・・」
 膝頭まで落ちてきたゾロの肩に腕を強引に回して、鼻先に鼻を擦りつけた。触られていない股間がずきずき、うずうず、わくわくしてる。後ろの穴から腸壁までが、びくんびくんと動いている。
 もう最初からカモンなサンジと。
「おう、パイパンにしてやらぁ」
 突入準備は男部屋から万全のゾロだった。
 
 ゾロの膝の上に抱き上げられ、真下から激しく突き上げられる。女だったら、いや男でもゾロの勢いには、サンジ以外ついていけない。
「アアアアッ!!!ゾロッ・・・ゾロ!!!」
 盛んに腰を振る貪欲なサンジを満足させられるのもゾロしかいない。
 さすが化け物ホモコンビ。常識なんてあるわけない。
 この船には、もはや彼らを止めようとか。逆に喘ぎ声に目を輝かせたりする連中もいない。
 化け物は化け物の巣窟に集まってくるものだ。
 ゾロがサンジの陰毛を剃り落とすプレイを想像して、今夜の二人は燃えに燃えた。
 船中に響く嬌声と腰を打ち付ける音を子守唄に、GM号は一部を除いて、今夜も安らかに漂っている。

 ホモカプとそれを鷹揚に受け止めた仲間たちは、今夜も明日も明後日も、ずーっと元気だ。
 アレもソレも、どこもかしこも。
 そしてたぶん、これも愛でなんでしょう。






 

END






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