『この携帯伝ワンは、優れものだぞ!どこかに置き忘れることもなし。水に濡れても故障の心配はしないでいいとくる。しかも!ナビ機能搭載だ。これでお前が迷子になってもちゃんと正しい場所に連れて行ってくれるってわけだ!』


           ■■■■■■■■



 去年、ゾロが三十歳になった祝いにウソップ冒険商人が贈って寄越したのは、どう見ても大型犬だった。だがゾロには、おいそれと受け取れないわけがある。 
一昨年に彼は、子どもをこっそり二人も拾ってきた。連絡もせず持ち帰ったことは、いろんな意味でサンジの怒りに触れたが、とりあえず拾った子どもたちは結果的には保護するしかなかった。
 ただし、『これ以上、イキモノは拾ってくるな』と釘は刺された。出し抜かれたオーナーの機嫌はかなりに悪く、その後しばらく吹き荒れた低気圧は、ゾロにも周りにもかなりキツかった。
 なので、悪いが受け取れない。そう断りを入れたとたん、翌日にはウソップ自らがゾロの元へ現れた。そのときの売り文句が、冒頭だ。もっとも、売り文句の直後には、ずいと鼻を近づけ低い声で命じてきた。
「俺が、なにを言いたいかはわかってるよな?」

 分かってる。と、いうより・・・すっかり空で覚えられる。彼の一言を分解すれば、
 

“お前だ、お前。テメェ以外の誰にこんなモンが要ると思ってるんだ。まいど毎度、なにかってぇと迷子になりやがっちゃぁ俺らが通りかかるのを、いけしゃあしゃあ待ってるんじゃねえぜ?ソムリエに続き、バーテンまでは許してやる。百歩ゆずって醸造所まで作ろうって根性は、さすがとしか言えねぇさ。あのサンジにストーカーしまくったあげく、転がりこむ・・・っちゃあ、並の神経じゃあできねえ偉業だ。馬鹿の鏡だ。けどな、お前がいっくら人離れしていようが、ギネス更新塗り替えまくりのダメダメだろうが、俺らも暇じゃあねえのよ。特に俺の船は忙しい。暇があるなら、働けってのが俺の船のモットーだ。そんなところに転がり込むわ、人通りも気にせず寝倒すする剣豪は、はっきり迷惑極まりない。お分かり?なら、四の五の言わずにありがたく、犬を受け取りやがれ!”


 何年も言われ続けた、ながい長い説教がみっしり詰ってる。ちなみに過去において、何度かこの手の『迷子必須アイテム』をウソップから支給されてきているが、役に立ったことはない。ゾロが操作を覚えないし、道を示しても矢印くらいのポイントじゃ、とても筋金入りの迷子を導いてやることはできないからだ。
 ついには、チョッパーを巻き込んでの生体アイテムを送り込んでくるあたり、ウソップの長い忍耐もキレかけてるんだろう。そうして遠慮もないウソップの口の悪さは、ゾロの痛いところを抉り取る。サンジの垂れ流す台詞より、的確なピンポイント攻撃炸裂だ。
ウソップが、どこを示しているのか。それくらい分からいでか!ってなくらい、ウソップとの付き合いはフルすぎる。なので、ゾロは正しく友人の言葉を解析した。それでも、断る権利はあった。
 そりゃもう、ウソップには世話にはなった覚えはゴマンとある。

 海軍に追われてたときは、冒険商人の営業所に飛び込みかくまってもらった。大怪我をして医者に運び込まれたは良かったが、金がないのでウソップを呼びつけ支払ってもらった。アレは踏み倒したような気がする。
 グランドラインの真ん中で、ダンボールの切れ端を掲げ、踏み潰そうとする彼の船を強制的に止めたのは、先月だったかもしれない。けれども船に乗せてもらってる間はちゃんと用心棒としてボランティアで働いた。あの借りはない。残りの借りにしても、ミホークの剣を格安で譲渡したのでチャラだと・・・・・・・、思う。

 それでも四の五の抜かすなら、いざとなったら殴りこみすりゃいい。ウソップに関してはこんな具合に、まあどうにかなる。

 問題はただひとつ。
 品種改良した大型犬を作ったのがチョッパーってことだ。これにはさすがに断るにも勇気がいる。
 なにせヤツは電波な恩師が二人もいた。強烈な二人の影響を受けているトナカイ面した医師は、脳内にマッドサイエンティストを住まわせている。同じ船に乗っていたときから、人体実験のチャンスを狙っていたヤツだ。仲間にすらその扱い。敵とみなした相手には、どんな災いを振り掛けるやら分かったもんじゃない。事実、海軍上層部の七部会ですら、狂気を浮かべたチョッパーには近寄ろうとしない。純粋に怖いと感じることが少ないゾロでも、にたり笑うチョッパーは恐ろしい。

 そんなチョッパーが作った犬。
 伝ダイアルにイヌイヌの実を喰わせて生まれたいわく付き。その名もダイレクトな『携帯伝ワン』なるアホ丸出しのネーミング・アイテムは、子牛ほどデカくて真っ黒だ。 
 どうすりゃいいんだ。
 困って見下ろすと、同情した目つきで犬に見つめ返された。
 その構図に馬鹿みたいな反応をしたのが、海賊島の首領兼ゾロの雇い主で愛人で・・・。いまや二千人からなる海賊コックを率いるサンジだ。
「こりゃ傑作だゾロ!お前らナイスだ!黒と緑で、スイカみてぇだぞ!」
「どんなんだ、そりゃ!」
「んじゃあ、よもぎダンゴにしとくか?テメェの緑頭そっくりの餅に粒餡かけりゃいい」
「食い物から離れろ」
「岩のり兄弟ってのはどうだ。採取前と後ってことで、チープが匂う売れない芸人コンビを組んで巡業の旅に出ろ。温泉旅館の寂れたステージ。まさにテメェにぴったりだ!」

 ゾロ反発するほど、サンジの脳内劇場は暴走していく。手を叩いて大笑いするウソップと二人して、悪さに満ち満ちた顔になっているのが憎たらしいが・・・・

「・・・・・・・そりゃ、アレか?コイツを飼ってもいいってことか?」
「あ?なんか言ったか?」

 スカして言われたが、どうやら遠まわしに許可は下りていたらしい。サンジのことだから、面白かったから快諾したんだと思う。
なんせ例えがスイカだ。それでも食べ物を出してきたところサンジ的にOKなんだろう。若かった時には気付きもしなかったサインだ。むしろ気付かなかったほうが幸せだったかもしれない。
 思いながら、馬鹿笑いを続ける海賊オーナーと海賊大商人に迷うことなく大技を放つ大剣豪の三人は、まったくもって大人気ない連中だった。

 そんなワケで、ゾロは携帯伝ワンと共に海へ出るようになった。名前をつけてやったほうがいいかと思ったが、拾ったガキの片方が『いぬ』とストレートに呼びまくり、覚えこませてしまったので、まんま犬にした。
 当初は視界の端に犬がいるのに慣れなかった。動物は好きでも、自分で飼った経験もない。しかし、慣れてみればどうってことなかった。  なにせ出生が空島の貝殻だ。食い物は空気があれば、それでよし。
 チョッパーがいじくりまわした遺伝子で、頭脳レベルは人間クラス。体力にいたっては、生物の範疇を越えている。世話をされているのはゾロのほうだ。
 腹が減ったと言えば、食糧を調達してくる。怪我をすれば、手当てはできないものの、どこぞから医薬品をパチってくる。戦闘になれば、自分に掛かる火の粉は自分で払い仲間を助ける余裕まである。そして、当然ながらゾロの迷走に黙って付き合い、そろそろ頃合と判断し正しい方角へ導いてくれる気遣いまで搭載していた。
 これには、ゾロも猛烈に感動した。三十年生きていて、迷子になったと怒鳴られ・叱られ・呆れられした経験はあっても、付き合ってくれるヤツはいなかった。いちいち通話のたびに受話器を持たないでもいいのも、便利だ。
 元々が誰かに頼ることに躊躇がないゾロだ。たちまち犬はゾロの必須アイテムになった。
 なにしろゾロは忙しい。サンジの根城に転がり込み、ソムリエとして再就職を果たしてからも、日々の精進を忘れない。本店ではソムリエとして働きながら、海賊家業にも精を出し、大剣豪として挑戦者と戦わないといけない。それだけでは飽き足らず、バーテンの資格も取得したのは数年前だったが、今は更なる酒のプロとして新たな道を開拓中だ。



 ■■■■■



 三十一回目の誕生日も近いその頃、ゾロは日本酒の蔵人を目指していた。
 正確には、強制的に本船からおっぽり出された。

 半年前、サンジは『遭難して飢えるなんざ、俺が許さん!』という、自らのポリシーに従って、ガキどもを拾った海域へ念願の出店をするために海へ出た。
 ちなみにこの男、これまでもポリシーを貫き通しまくってかなりの海域へ店を出している。
 だがしかし、ガキをテイクアウトした場所は、開店するには劣悪最悪なとんでもない環境だった。海域一帯は、海王類の巣窟で迷い込んだらまず生きては戻れない、近隣の島々では知らぬものがない悪魔の棲む海だ。
「ってことは・・・・だ」どこどこまでも前向き・物事を都合よく湾曲させる上、よじれまくった根性したサンジはオーナーの目をきらんっと、嫌な感じに光らせ胸を張った。
「ここにゃぁ、海軍も近寄らない。ゆったり店を構えつつ、海賊稼業に疲れたときの休憩場所にも使えそうなリゾートアイランド諸島がごろごろあるってことだ。そういうわけだな?」
「はぁ?てめぇ、なに言ってんだ」
「理想的な立地条件じゃねえか!犬かせ!!」

 止める暇もなく、あっという間にゾロの傍らにいる犬の首をがっつりロックし、片耳持ち上げウソップに連絡だ。

『この海域は誰か所有者がいんのか?いねぇ?よっしゃ、テメェんとこの弁護士どもに権利書を作らせろ!ココは俺がもらう。手間賃だ?全店の一年間の売り上げ、2%だ。・・・・・このッ・・・・!悪徳商人っ、てめぇ20%だと?ふざけろっ!・・・・・・あ?なんだと?安いだぁ?てめぇ、鼻の中にあるの、脳みそだろ。・・・・・・俺の眉はどうでもいいっ!んじゃあ、2.5でどうだ?』
 
 せこさに涙も出てくる値切り押しだった。ムギワラ海賊でしていた食糧調達の量は、渡された金をしのぐレベルだったのを思い出す。当時の値切りのテクニックを垣間見る思いだ。
 ゾロは甲板に座り、耳の中に顔をつっこみそうなサンジと、じっと目を閉じて耐える犬の修行僧のような姿に情けなさと誇りの両方を味わった。
 そこから暫く、延々と商談は長引いた。ようやく12%で話しがついた頃には、問題の海域に突入する寸前だ。
 そうして、サンジは怪我をした。
 思いのほかに梃子摺ったウソップ商人との話し合いで体力が削られたのか、手元に引き取った子どもらが、船にいる焦りでもあったのか。この男にしては珍しい負傷のしかただった。
 甲板にまで躍り上がってきたやつは、全身が口だけみたいなデカクチだった。そんじょそこいらの海王類よりでかく作ったフリゲートを、一口で半分は持っていける。数十メートルの口した出目金とうつぼを足して二で割ったような、不細工ツラした海王類が、構えたサンジにがっぷり噛み付いた。
 もっとも、黙って喰われるオーナーじゃない。味見程度に肉を持っていかれながら、マストのように長い歯を数十本蹴り折り、『ゲテモノってのは美味ぇって知ってるか、ガマグチ魚!ぜってえ喰う、喰ってやる!』と。
どこぞの船長のようなことを言い、海へ追いかけようとまでするいざこざがあった。
 わき腹と肩からダラダラ血を流しても、血気盛んなコックは元気だった。『オーナーっ、いまアイツを捌くまな板ありませんから!!』と・・・・。必死でコックどもが取り押さえ、それでも暴れるサンジの頭をゾロが思いっきり殴りつけ気絶までさせなければ、本気で海へダイブしていた。
 ようやく船縁から引き剥がし、オーナールームへ戻したもののサンジの怒りは収まらない。床を血で汚し、ぐるぐる唸る姿は野獣そっくりだった。
 当然のごとくゾロは心配しまくった。周りの連中が止めようとも、コックにベタぼれの男は部屋に押し込みサンジに傷を見せろと言い放つ。怪我人のサンジは八つ当たりが近くにいるのを幸いと、これまた暴れまくろうとする。ゴングが二人の頭の中で鳴り響き、久々の喧嘩が開始する。

 治療もなにもできたもんじゃない。ゾロが居たんじゃよけいに騒ぎがひどくなる。
 これだけ元気なら、とりあえず命に別状はない。
 判断してくれたチョッパーの部下は、体中に蹴りアザをくっきり付けたゾロに、『修行に行け』と切り出した。『アナタがいると、暴れ方が酷いみたいですから』とも言われた。
「暴れてるんじゃねぇ、甘えてるんだ」
「ああそうですか。どっちにしても、刺激するに変わりないですから、傷がよくなるまでどっか行っててくれませんか」
 チョッパーの部下は、動じないヤツだった。ゾロがどこにも行く気はないと凄んでも、ドコ吹く風と流される。挙句、酒を扱う資格を取るのが趣味みたいだからと、自分が知ってる酒蔵にゾロを紹介し、屋台で送る手はずまで整えてくれた。
 誰が船長か分かったもんじゃなかったが、あのチョッパーの右腕とも言われる人物に逆らう度胸は、さすがに荒くれたコックたちになかった。片手にメスを束で握り締め、注射針までひゅんひゅん飛ばしてくるような医者に、ゾロも逆らうことはできなかった。
 そんな経緯を経てイーストブルーの島までゾロを強制送還した屋台船は、ただいま代理のバーテンを入れて近海で営業中の筈だ。後からの連絡で、サンジの傷は迅速に回復したからもう少しそこに居ろとまで言われた。
 もっともあれしきでサンジが死ぬとは思ってなかったので、無事ならいいかと片付けた。幸いにして、屋台は近くにいるはずだが・・・・正確な位置はすでに犬まかせなので、場所を聞かれてもとんと分からない。何かあったら即座に駆けつける勢いだけは腹にくくりつけ、修行にとりあえず精を出した。
 出してみたら、これまたドツボに嵌った。
 米をこねて麹をふりまきするのは、初めての経験でやりがいがあった。発酵して温かい床をかき回すのは、ひどく繊細で集中力が要る。ともすると剣を振るうよりも油断がならない。
 あまりに真剣になりすぎて、ついうっかり剣士としての本業を忘れそうになりそうだが、どこから探し出してくるのか、イーストブルーの小島にまで剣士やら格闘家たちは挑戦しに来てくれた。
 毎週の挑戦者を薙ぎ倒しつつ、樽をかき回しするのは楽しい。自分の親以上に年が離れた親方やら蔵人連中にも、筋がいいと褒められた。この前はついにゾロが思う酒を試作までしてもらえたのは、本当に嬉しかった。

 そんな充実しまくったある日。
 犬がのっそり休憩中のゾロの元へ現れた。いつもダラリ垂れてる右耳が、ぴんと持ち上がっている。サンジからの連絡だ。他からの場合は、左耳が持ち上がる。
 連絡が来るのは半年振りだ。傷の具合も完治した頃だろう。のんびり思い、声をかけた。
「おぉ・・・、どうした?久し振りだな。元気か」
「まったく久し振りだ。そろそろ転職でもしたくなったんじゃねえか?」
 軽く嫌味を言われた。元気そうなので、嫌味は当然無視する。
「なんか用か?」
 あしらわれ、サンジが怒りの息を吐き出す音がした。それともタバコを吸っている最中か?目の前でないだけに、相手の動きが分からないのが少し焦れる。久し振りに声を聞いて、とたん会いたくなる。しっくり馴染む温度と肌が、まざまざ思い出された。
 どこにいるのか尋ねようとするより早く、サンジに先を制された。
「お前、いまどこよ?」
 惚れた男の柔らかい声を損うことなく、犬はサンジの声を再生する。視線をずらしていれば、すぐそこに立っているような気までする。
声だけは、こんなに明瞭なのに実態がないのがもどかしかった。恋しさが募り、少し笑ってゾロは応えた。
「どこかくらい知ってんだろ。イーストブルーにいるぜ?お前は?」
「やっぱり、まだそこか。俺らもイーストに入ったとこだ。これからナミさんの船までガキどもを迎えに行く。どうする、来るか?」
「イーストだ?」
 ガキを拾ったあの場所だ。イーストに近かった。
 怪我をしたサンジの姿が咄嗟に脳裏に浮かび上がる。
「てめぇ・・・・俺を抜かして争奪戦してきてたのか」
 とんでもない医者にメスでスッパリ切られた頬の傷は、跡になって残ってる。譲ってやったのに、サンジがコッチに向かってきてる知らせはひとつもなしだ。今度会ったら斬る。根暗にゾロは決意した。対してサンジは知ったことじゃない。
「はぁ?別にお前いなくて問題なしだ」
 ぶちッと血管が切れかける。
「・・・・ってぇのは、ウソだ。あのデカイ”船喰い“を斬れるアホウは、そうそういねぇし。ナミさんとこへ行く前に、ヤツの巣を潰す予定だ。仕入れの仕事だ新米。戻ってこい」
 切れかけた血管が繋がった。言葉の全体的に『馬鹿にしてますよ』の汁気はたっぷりあるが、サンジらしくて口許が緩んできそうだ。頼られている感じもするのが、ますますいい。
 被っていた帽子を脱いで、立ち上がる。
「すぐ行く」
 修行は今回はここまでだ。ゾロが仕込んだ酒の出来具合を確かめておきたかったが、そんな悠長なこともしてられない。酒蔵の親父に言えば、酒は送ってやるから行ってこいと背を叩かれ、ゾロは歩き出す犬について合流地点を目指した。
 


 すぐ行くと言ったものの・・・。
 合流場所はとんでもなく遠かった。屋台船があると思っていたのに、自分のブリティガン船は影も形もない。海沿いの道をゾロは犬に連れられるまま、小島から小島に渡されるいくつもの橋を、かなり渡り歩いていった。
 あるきに歩きやっと本店が見えたのは、実に『すぐ行く』発言から三週間ぶりのことだ。

 渡す大橋の真下。停留するフリゲート船の舳先にサンジの金髪が光っている。
「てめぇっ、俺の船はどこやった!」
 欄干に駆け寄り、船に向かってがなった。すると身体を前に傾し、片耳に手をあて『はぁ?』とジェスチャーする。
「俺の船だ!屋台、ねえじゃねえか!」
 だんっ!欄干に片足を乗せ真上の位置から凄んでみれば、オーナーの罵声が轟いた。
「バーテンがいねえ屋台でなにしろってんだ!」
「だからっ、代理がいたろう!」
「この新米が!代理はウソップんところの組合員なんだぞ!レンタル料、どんだけボラれたと思ってやがる!」
「んなこと、知るかぁああっ!」
「開き直るな、ボケ。とっとと降りて来い」
 べらり紙切れを片手にし、オーナーはご立腹だ。びしっと甲板を指差してから、おっとこりゃヤバイと船外に移動する。・・・・・・・・・・意地でも、甲板に穴あけてやる。
 とぉっ!
 掛け声と同時に犬と一緒に、甲板目掛けて飛び降りた。しかし・・・
「犬!穴あけたら犬鍋だ!」
「おわっ?!」
 権力者が誰かを知る犬は、ゾロの片腕を落下途上でくわえてぶん回し。ミゴト相方を海面に叩き落すに成功した。
「がっ・・・てぇめっ・・ら・・・・!」
「俺に逆らおうってのが間違ってる。いい加減、覚えろ新米」
 聳え立つフリゲートの横っ腹から見上げた先に、逆光になったサンジがいた。犬はどうやらゾロを振り回した反動を上手に使ったらしく、サンジの足元から下を覗き込んでいる。
 落ちた弾みに海水を大量に吸い込んで、眉間の奥までじんじん痛いし涙は出るし。喉まで苦塩っ辛い。ゲヘゲヘむせ返り立ち泳ぎしながらしみじみと、げらげら笑うデカイ声に浸った。『ああ、サンジだ』と思った。




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