安らぎに寄せて

239氏



 ふと、デュークは女のすすり泣く声に目を覚ました。
枕もとの時計に目をやると、まだ真夜中。窓からは蒼く月の光が差し込んでいる。
 そっとベッドを抜け出して、冷たい空気に身震いしながら隣のベッドの様子を窺う。
「おい、大丈夫か?」
 返事はない。悪い夢でも見ているのだろうか、すっぽりと布団に包まって
嗚咽を漏らしている。ちょっぴり悪い気もしたが、そっと手を掛けて揺り起こす。
「おい、、起きろよ! いったいどうしたってんだい……」
「触らないで……!」
 突然強い口調で反抗され、デュークは思わず飛び退った。頭を掻いて再び彼女の様子を
窺うと、まだ布団に潜っている。どうやらただの寝言だったらしい。
「エレナ……?」
 恐る恐る、もう一度彼女の名を呼んでみる。何故だか、迂闊に近づいてはいけないような、
触ると壊れてしまいそうな、そんな気がしてデュークは口を閉ざした。
 そっと跪いて、彼女の肩に触れた。温かな少女の肌に、デュークの心臓は高鳴った。
そっと布団をめくってみる。頬に痛々しい涙の後を残して、眠り込んでいる。
「エレナ……」
 口の中で呟いて、デュークは身を乗り出した。
 思えば、今日はとんでもない一日だった。公国から逃げ出し、川に流され、エレナを助け、
ボガードに粘着して、そうしてようやっと休もうとしたらそこは吸血鬼の館ときたもんだ。
何度も怪物に襲われて死に掛けたし、今まで生き延びているのが不思議なくらいだ。
「うう、ん……」
 エレナがかすかに眉を顰めて呻き声を上げた。
 そう、俺だけじゃないんだ。デュークは自分に言い聞かせるように呟いた。
エレナだって、仲間を亡くすわ吸血鬼に狙われるわ、散々な目に遭ってきてる。
 こんな小さな身体で――。
「エレナ……」
 デュークは思いつめたようにその名をもう一度呼んで、腕を回してエレナの肩を抱いた。
エレナのほっそりと白いうなじが目に入る。吸い寄せられるようにデュークは首筋に顔を寄せた。
布団にこもった湿っぽい熱気と、女の子の汗と肌の香りが鼻腔の奥をくすぐる。
「あぁ、エレナ、君は……」
 熱に浮かされたように恍惚とした表情を浮かべるデューク。眠っているエレナ。
あまりにも無防備なその姿は、まるでデュークを誘っているかのようだった。(と、彼には思えた)
ふと、彼女を慰めようとした自分が、逆に彼女の温もりを求めていたことに気付いて苦笑する。
 するりと衣摺れの音を立てて身体を起こし、彼女のつややかな唇を求めた。

「……ダメよ!」
「うわわわわわっ!!!」
 急にエレナが顔を背けた。驚いて飛び退ったデュークは、背後のベッドの角でしたたかに
腰を打ちつけて床にへたり込んでしまった。
「まったく、油断も隙もないわ」
「くぅ〜っ、イテテテテ……」
 痛みに腰をさすりながらデュークが起き上がり、自分のベッドの端に腰掛ける。
顔には先ほどの驚きがそのまま張り付いて、なんとも妙な顔のまま黙り込んだ。
 エレナは寝返りを打ってデュークの方を向くと、低い声で彼の名を呼んだ。
「……とんだ女たらしさんに助けられちゃったみたいね、私」
「そっ、そんなわけじゃな――」
「なら、どうして昨日や今日出会ったばかりの女に手を出そうとするのかしら?」
「それは、君が――」
「私がどうかしたの?」
 デュークが何か言い掛けるたびにエレナが先手を打って口を封じてしまう。
言葉に詰まったデュークが俯いてしまうと、エレナはさらに畳み掛ける。
「ごめんなさい、もう用がないなら寝ます。今度は襲わないでくださいね」
「違う、そんなわけじゃ……」
 デュークが抗議の声を上げたが、エレナは背中を向けたまま、何も言わない。
「……ちぇっ」
 こんなつまらないことで誤解されてもな、とデュークは肩を竦めた。
 ふうっと溜息をつく。
「うなされてたから、なんとか落ち着かせてあげようとしたのに……」
 未練を隠し切れずに、ぽつりと呟いた。
「……本当に?」
「本当だよ!」
 自棄になったように思わず語気を荒げてしまい、デュークはまた黙り込んだ。
 正直なところ、すぐにこれだから女の子の相手は苦手なんだよ……。
そう思って、唇を噛んでじっと静寂に耐えた。
「そんな、どうして私なんかに優しくするの?」
 エレナのか細い声に、顔を上げる。相変わらず向こうを向いたまま、細い肩を震わせて
嗚咽を堪えている彼女に、デュークは胸が痛んだ。
「そんなこと言うなよ! だって、仲間じゃ……いや、違うな」
 エレナがひくっと喉を鳴らした。ちゃんと聞いてくれていると確信して、デュークは後を続けた。
「仲間じゃない。俺にとって、エレナは……もっと大切な人だから」
 あぁー! バカバカ、とうとう言っちまった。調子に乗って何を言ってるんだ俺は!
「大切な人……?」
 失敗したかな? 気持ちに嘘偽りはなかったが、軽い男だと思われても困る。
二の句が告げないまま、じっと冷たい床にうずくまってエレナの反応を期待した。

            *    *    *

 冗談じゃない。仲間ですらないってどういうことかしら? でもまあ、男なんてこんなものかしら。
……そう思っていたのに。
「私にそんなことを言った人は、あなたが初めてです……」
 胸がドキドキしている。
 そんな動揺を隠し切れぬまま、ようやくエレナは彼のほうを振り向いた。ぼんやり視線を宙に
泳がせていたデュークと目が合ってしまった。そうしてお互いに一言も口を利けぬまま、
相手の心のうちを見透かそうとするかのように見つめあう。長い長い時間が流れた、ような気がした。

 どこかで、鋭い鳥の啼き声がした。
ハッと我に返り、照れくさくなってお互いに目を逸らした。
デュークときたら、月明かりでもはっきりと分かるほどに頬を染めて俯いてしまった。
「そうは言っても、好きな女の子を敵にさらわれるなんて、油断しすぎじゃないかしら?」
 一瞬呆気に取られて、それからデュークは慌てて謝りだした。
「女の子が……あの、その、男として、ええと……
 エレナは驚いたが、再びデュークに視線を戻して静かに微笑んだ。
「いいえ、でも、ちゃんと助けに来てくれたから許してあげるわ。
 狭い棺桶の中、足音が近づいてきて、いよいよもう駄目だと思った。
 でも、そこにあったのは……ポカーンとしたあなたの顔だったから」
 エレナはそのときの様子を思い出したのか、さも可笑しそうに笑い出した。
「王子様が助けに来てくれたから、嬉しかった……。あの吸血鬼の言ってたように、処女の生き血
 なんてことにならなくて本当に良かっ――」
 ふと恥じらって、エレナは両手で口を押さえる。そんなエレナがたまらなく可愛いと思った。
ニヤニヤしかけて、デュークはふと真顔に戻る。
「あれ、処女だっけ?」
 その途端、エレナの顔がくしゃくしゃに歪んだ。ピーンと緊張の糸が張りつめる。開け放した窓
からの夜風すら暖かく感じるほど、二人の周りの空気が凍りついた。

「……馬鹿」
 笑い飛ばしてくれれば、せめて殴ってくれればどんなにか楽だったろう、とデュークは思う。
「もううんざりよ……」
 穴があったら入れた――いやいや、入りたい。デュークは心の奥底で自分を罵った。
「だから……あなたにあげようと思ったのに」
「……へ? な、なにを?」
 間抜けな声でデュークが訊き返した。
「……もう一度言わなきゃいけないかしら……デュークの馬鹿……」
 鳩が豆鉄砲を食ったような顔のデュークに、エレナが諦めたかのようにほうっと溜息をついた。
とうとう言っちゃった――と思うより先に、デュークの不甲斐なさにガッカリしてしまった。
せっかく勇気を出して言ったのに! どうしてそんなことを訊き返すのよ!
「おやすみなさい」
「……え……あ、いや」
 デュークは、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせた。エレナの言葉はしっかり聞こえていたんだ。
だからこそ、戸惑っている。落ち着け、落ち着け。窓の外に視線を移し、ぎゅっと拳を握り締める
デューク。ここで失敗したら、俺は永遠に変態スケベ野郎になってしまう。
「あの、さ。うんざりとかそういうことじゃなくて……」
 覚悟を決めて、一気に畳み掛ける。
「俺はエレナが好きだからこそ、そんなふうに自分を粗末にして欲しくない」
「……えっ?」
「クサいこと言ってるかもしれないけど、もうわけわかんないけど、ともかく、十分過ぎるほど
 可愛いんだし、その、なんだ――処女だのなんだの言われて、俺なんかで焦って捨てるな!」
 つい興奮して声が高くなり、デュークは慌てて口を押さえた。またエレナがこちらに向き直り、
真っ直ぐにデュークの目を見つめた。心中の虚勢を見透かされたかと、デュークは慌てた、が。
「もう、他の部屋まで聞こえちゃうじゃない!」
 そんな彼を見つめて、エレナはそっと微笑んだ。
「恥ずかしい……」
 ベッドから乗り出して、デュークの肩に手を掛けた。
「冷たい……風邪を引くわよ?」
 静かに目を閉じ、デュークに口づける。
 最初のうちこそデュークは驚きと戸惑いに目を白黒させていたが、すぐにエレナを受け容れた。
「ううんっ……ちゅっ……」
 なんだか苦しくなって、デュークはがそっと顔を離す。そっと眼を見開いてお互いを見つめ合った。
「エレナ……好き、だよ」
 デュークは、そっと耳元で囁いた。こんなこっぱずかしいセリフがよくも自分の口から出てきた
ものだとも思ったが、それが今の素直な気持ちだった。
「……ありがとう。信じて、いいのね?」
「ああ、もちろん。俺でよければ、ずっとお供させてもらうよ」
 デュークの言葉に、エレナは照れたように微笑んだ。そして、訪れる沈黙。
 それに耐え切れないかのように、もう一度唇を重ねた。
「んっ……」
 そっと背中に手を回してエレナを支え、まだ温もりの残るベッドに押し倒した。
すでにデュークは理性が吹っ飛びかけていたが、それでも彼女を乱暴に扱う気にはなれなかった。
 口付けたまま、そっとエレナの服を脱がせに掛かる。デュークが脇腹に手を触れた瞬間、エレナの
身体が強張り、反射的に身をよじった。それでもデュークはお構いなく、ワンピースの布地を胸元まで
たくし上げてしまった。
 そっと身体を離すと、エレナの胸元へと顔を下ろし、柔らかな膨らみの頂点についばむように
キスの雨を降らせた。チュッ、チュッという音と共に軽い雷にも似たショックが走り、鼻腔から
かすかな吐息が漏れた。
「エレナ……綺麗だよ」
 デュークが放心したように呟いた。でも、身体がすっかり反応して先端が堅く尖り始めている
ことが恥ずかしくて、言葉を返すことができなかった。まるで赤ん坊のように、デュークはひたすら
先端の突起を口に含み、舌でくすぐるように舐り上げる。甘い痺れに声が漏れそうになった。

 少し余裕が出てきたのか、デュークの両手が身体のあちこちを這い回り始めた。胸の膨らみを
やわやわと揉みしだいたかと思うと、脇腹をくすぐり、下腹部を撫で、太股をさすった。
「ふっ……くっ、ううんっ……」
 なんとか歯を食いしばって耐えようとするが、次第に身体が火照り、切なげな吐息が漏れてしまう。
デュークの指が触れるたび、燃えるような快感が身体を突き上げる。
「エレナ、我慢しなくていいよ」
 ば、ばれちゃった!?
デュークの言葉にドキッとして、カーッと頭に血が上ってしまった。
「大丈夫、可愛い声だよ……もっと聞きたいな。それとも、俺ってヘタかな?」
 そんなことない。そう言いたいけれど言葉が出てこなくて、ふるふると首を横に振った。
顔を上げたデュークが、ニヤっと笑った。そうして、下腹部に這わせた手を下ろして……。
「――んんっ!?」
 薄い茂みを掻き分けるくすぐったい感触。それに続いて秘唇を撫でるデュークの指の感触に、
身を震わせた。その途端に、不安で不安で居ても立ってもいられなくなってしまう。
「ちょ、ちょっと、デューク!?」

            *    *    *

「大丈夫……壊れ物のお姫様だから、優しくするよ」
 そう言ったものの、自分の言葉に自信がなかった。でも、エレナを不安にさせるわけにはいかない。
男として、それくらいのことはしてあげたかった。
「うん……」
 おもむろにエレナの下着を引き下ろし、茂みに3本の指を這わせてゆっくりと撫でさすった。
じっとりと指の腹に吸い付くように、かすかにそこが湿っているのが分かった。
「少し……濡れてる?」
「そっ、そんなこと言わないでよ……もう、デュークの馬鹿……」
 少し怒ったように、エレナは眉を吊り上げた。
でも、そのおかげでエレナの緊張が解けて、不安げな表情も消えたから、まあ良しとしよう。
「エレナ……可愛いとは思ってたけど、やっぱり可愛いな」
「馬鹿にしないでよね……」
 口ではそういったものの、エレナの顔は笑っていた。
 不意に、指先にぬるっとした感触があった。ハッとしてエレナと顔を合わせると、
彼女は頬を真っ赤に染めてそっぽを向いてしまう。
 (エレナが、気持ちよくなってくれてる……)
そう思うだけで、なんだか温かな気持ちで胸がいっぱいになった。
 そのままゆっくりと頭を下ろし、ほんのりと温かく潤んだ茂みに顔を近づけた。
「ここも、綺麗だよ……」
「えっ!?」
 本能的に、そのままそこに口付けてしまう。ビクッとエレナが身体を震わせ、両足を突っ張った。
「いやっ、そんなところ、汚い……」
 羞恥心に耐えかねたのか、両手で顔を覆うエレナ。そんな彼女の仕草があまり可笑しかったので、
さらに調子に乗ってからかってみる。
「いや、綺麗だよ。新品未開封品っていう感じだね。でも、感じるかな?」
 ぺろっと割れ目に沿って舐め上げた。
これまでにない強烈な刺激がエレナを襲い、エレナは耐えかねて背中を反らした。
「くふうっ! そ、そんなこと、言って……経験豊富なあなたには……」
「まさか!」
 経験豊富なんかじゃない、俺は。そう。
「俺にだって……エレナが、俺の初めての女性だから」v  内心ではガクガクブルブルしているのだ。ただ、エレナの前ではそんな不安を見せたくないだけ。
なんだか、急に自分が惨めに思えて、泣きたいような怒りたいような、よくわからない気分になった。
 しかし。
「……ありがとう」
 確かに、エレナはそう呟いた。

 おもむろに唇で秘裂を割り、舌を差し入れた。
むせ返るような、女の子の甘酸っぱい香りが鼻を突いたが、それすら心地良く感じられた。
「きゃっ……ぐ、デューク!?」
 反射的にエレナが両手を伸ばし、がっしりと頭を押さえられてしまった。
(そりゃあ、恥ずかしいだろうな。でも、俺も恥ずかしいんだから!)
そんなわけの分からない理屈で自分を納得させると、デュークは無言で舌を使った。
温かな粘膜を舐め上げるたび、とめどなく溢れてくる蜜が舌に絡みつく。
「いっ……やぁ、そんな、あはっ……」
 こんこんと湧き出す泉の水をすくい切れず、じゅるっと音を立てて啜った。
味はしないような気がしたが、かすかにデュークの脳にも甘い痺れが走る。
 さらに調子に乗って、つんつんと上のほうの突起を舌先で突付いてみる。
「ああんっ!! なっ、なにしてん……んっ、くふぅ……」
 エレナが背中を逸らし、ビクビクと身体を震わせた。そして、デュークの髪を掻くエレナの手から
すっと力が抜けた。
「ああ……はぁ、なんだか、もう、壊れちゃいそう……」
 すでにエレナの愛液はねっとりとデュークの頬まで濡らし、シーツに大きな染みを作っていた。
 デュークのほうも、下半身の充血が限界に来ていた。このままでは、貧血で倒れてしまいそうな、
そんな気すらした。

「もう、いいかな?」
 そう訊いたものの、デュークは答えを待たずに寝巻きを脱ぎ捨てた。
エレナのほうはワンピースを胸元までたくし上げただけだったが、まあいいかと思った。
「いいって何を……きゃあぁ!?」
 ああ、今晩はいい月夜だ。
 白い光に、痛いほど屹立したデュークの逸物が浮かび上が……。
「うわぁぁ! 恥ずかしい、見るなっ!」
 慌てて両手で股間を隠したが、もうじっくりと見られてしまったに違いない。悲鳴を上げたものの、
エレナは視線を逸らそうとはしなかったから。
「なによ、私のは散々見たくせに」
 確かにそうだが。でも、男のこんなのなんて気持ち悪いだけじゃないか?
「ええと、あの……それ、入るの?」
「……たぶん」
「処女はあげるけど、生き血はあげないわよ?」
「要るかそんなもの!」
 なんつう会話だ。
 まあ、仕方ない。
「ええと、痛いだろうけど、力を抜いて……でないと、余計に痛いだろうから」
「うん……デュークなら、いいわよ……」
 そっと目を閉じて、エレナはぐったりと全身の力を抜いた。つやつやすべすべほっそりした、
エレナの太股の感触に酔いしれつつ彼女の両足を割り、自分の身体を差し入れた。
 収まるべきところに見当をつけると、デュークは手を添えて逸物をエレナにあてがった。
 ゆっくりと、腰を突き出す。エレナが眉間にしわを寄せ、イヤイヤをするように首を振った。
エレナの身体が緊張して、それ以上先に進めなくなってしまう。
「ごめん……」
「くううぅっ、なんで謝るのよ……デュークだって辛いんでしょ……」
 それはそうだけど。必死で痛みを堪える彼女の顔を見るのが辛くて辛くてたまらない。
いつまでも、彼女にこんな苦しみを味わわせたくはない。
「じゃあ、3つ数えたら入れるから。いいね」
 ぎゅっと眼を瞑ったまま、エレナはかすかに頷いた。
 大好きな女の子が、自分のためにここまでしてくれてる。デュークの胸はきりきりと痛んだが、
その反面、エレナの気持ちが嬉しくもあった。
「よし……1!」
 3つ、数えなかった。引き締まったエレナのお尻を鷲掴みにして、ぐっと腰を突き出した。
何かを引き裂き、突き破るような感触。自らの逸物の先端が締め付けられ、悲鳴を上げそうになった。
「――!!!!!!!!」
 エレナが、涙目で見上げていた。太股を温かい粘液が伝う感触に手をやると、赤黒い液体が
べっとりと付いていた。
 紛れもない、エレナの乙女の……いや、乙女だった証。
「ううっ……嘘吐き!」
「ごめん。でも、こうでもしないと、エレナが余計に苦しむと思ったから……」
「……ううん、いいの。謝るのは私だわ。ごめんなさい、こんなに不器用で」
 そんなことない。そう言おうとしたが、喉がかすれて声が出なかった。
 代わりに、エレナの背に腕を回してぎゅっと抱きしめた。かすかに肩を震わせる彼女を、
ほんの少しでも安心させてあげたかった。そうして、お互いの気持ちを確かめたかった。
 エレナも、そっとデュークの背中に手を回した。細い腕、ぷにぷにした胸と、硬く尖ったその突起。
そして、彼女の熱く締め付ける秘処と、重ね合わせた唇と。全身で、エレナを感じていた。
胸が温かい気持ちでいっぱいになって、ゾクゾクとする電撃が全身を突き抜ける。
 一生彼女を大切に見守ろう。そう、誓った。
 エレナに包まれて、いっそう自分の熱く滾るのを感じた。熱い吐息も喘ぎ声も、この温もりも
すべて自分だけのものに。そうして、いつまでもこうしていたいと思う。
 しかし、絶頂は近かった。男として不安な気持ちになったデュークは、躊躇いがちに切り出した。
「……ねえ、動いて、いいかな?」

            *    *    *


 デュークを信じた自分の目に誤りはなかった。エレナは、そう確信した。
「いいわ……そのうちに、慣れると思うから……」
 これまで、男に対してこれほどの信頼を寄せたことはなかった。だが、デュークにはその資格が。
ううん、なにかの運命にも似たものを感じ取っていた。そんな簡単な言葉で片付けるのも、
なんだか安易な気がしたけれど、確かにデュークとの出会いは偶然ではなかったのだと思う。
 ゆっくりと、デュークが身体を引き抜いた。身体が裏返るような、苦痛とも快感ともわからない
感触に、ぶるぶると身体を震わせた。
「あっ……んんっ、あふっ……」
 完全に引き抜かれて、空虚感にも似た異物感が残った。すぐに、閉じようとする秘処を目掛けて
デュークが割り込んでくる。脳髄に、痺れるような甘い刺激が走った。
「ああんっ、なんだか、変になりそう……!」
 またぎゅっと奥まで突き入れたかと思うと、デュークは胸にキスをするなんて悪戯をしたりする。
「エレナ……なんだか温かくって、凄くいい気持ち……」
 まだ痛い。それなのに身体の芯が疼いて、また蜜が溢れ出してくるのが分かった。
苦痛よりも、デュークと一つになれたこと、そうして彼の温もりを感じていることが嬉しかった。
「あはっ、はぁ……もう、大丈夫だから、いいよ……っ」
 ぎこちなかったデュークの腰の動きが、しだいにスムーズに、そして早くなってくる。
ちゅっ、くちゅっと、卑猥な水音が部屋中に響いて、恥ずかしくてたまらない。必死で我慢しても
声が漏れてしまうのも恥ずかしい……思わず顔を背け、シーツをぎゅっと噛んでしまう。
「くうんっ、デューク……デュークっ!!」
 思わず彼の名を叫んだ途端、ぷちゅっと盛大に音が漏れて、反射的に下腹部に力を込めた。
「エッ、エレナっ! そんなに締めちゃ駄目っ!」
「だって、そんな、恥ずかしい――」
「ゴメン、もう俺ッ!!」
 急にデュークが押し殺した声を漏らしたかと思うと、身体を強張らせた。
 デュークが慌てて秘処から抜き出した瞬間、エレナ目掛けて劣情の白濁液が飛び散った。
(なななななななんなのこれ!?)
 エレナはなにがなんだか分からず、ただ押し寄せてくる熱情に身体を任せたまま、
苦しそうに精液を吐き出すデュークの逸物を見つめていた。
「すごい……ビクビクして、こんなに……」
 熱い液体は、下腹部ばかりでなく、胸や顔にまで飛び散っていた。おそるおそる指先で
すくってみると、なんだかドロッとしていやらしい感じがした。
「ふうぅ、はぁはぁ……ありがとう、エレナ。あいし――」
 まだ興奮冷めやらず、ぼうっとしたままのエレナにデュークがキスしようとして顔を寄せ……
エレナの顔に自分の精液が付いていることに気付いて、大急ぎでタオルを持ってきて拭う。
「ごめん……」
「ううん、いいの。だって、デュークのだったら、私――」
 そう言い掛けてふと口籠もり、思い直したようにデュークを求めた。
「ね、ギュってして……」
 さらさらの黄金色の髪が月明かりに白く輝いて、妖精かなにかのように見えた。
「ああ……」
 ふと、エレナがこのまま消えてしまうんじゃないかという気がして、彼女を抱く腕に力が入った。
「ねえ、痛いよ……」
「エレナ……」
「なに?」
 デュークの思いつめたような表情に、エレナは怪訝そうに眉を寄せた。
「ずっと、俺と一緒にいてくれないか?」
 途端にエレナの顔がほころんだ。もしかして、コトが済んだらデュークが急に冷たくなるんじゃ
ないかと心配だったから。デュークを、手放したくなかったから……。
「私も……デュークと、ずっと一緒にいたい」
「そうだな。ありがとう」
 そんな心配要らないのに、ちょっとガッカリした。でも、これで相思相愛なら何にも怖くない。
エレナとデュークはずっと一緒。まだ出会ったばかりなのにこんなに深く相手のことを想うなんて、
これもきっと、このマナのペンダントの、マナの木のお導きなのかしら?
「デューク、好きよ……」
「俺も――んっ!?」
 エレナから、そっと唇を重ねる。火照った身体に、デュークの体温が温かく広がった。
そんな可愛らしいエレナが愛しくて、デュークは月光に輝くエレナの金色の髪を弄んだ。
「じゃあ、おやすみなさい♪」
 チュッと軽い音を立てて、またデュークの唇を奪った。
 エレナの頭を撫でながらくしゃくしゃに蹴飛ばされた布団を直し、デュークも目を閉じた。
「うん、おやすみ……」
 ふたりの間に、月光が差し込んでいる。その光を受けて、エレナの胸からこぼれたペンダントが
人知れず冷たく輝いていた。



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