ランディ×ポポイ

468氏



ぼくらは今森の中にいたトナカイにたのまれてどこかへいなくなってしまったというサンタクロースさんを探している。
「…なんだかチビちゃんたら女の子みたいで、カワイイ」
「っなっなにいってんだよネエちゃん!あーもうこんなマフラーいやだよもも色でこんなじゃまっくさいボンボンなんかいらないよ」
「しょうがないだろそれしかなかったんだから…ってマフラーにやつあたりするなよ…」
ポポイはとりあえず歯でボンボンだけでも噛みちぎろうとしているみたいだ。乱暴なやつだなぁ…

「とにかく今は雪だってつもってるんだしそのマフラー女の子がつけるのみたいだけど、がまんしてるしか…って…ぶひゃっ!」
「うるせーッ!こんど女だなんていったらウンコぶっつけるぜ!」
…と、昔何かのマンガで読んだようなセリフを吐きながらポポイは雪をまるめたやつを人の顔にぶつけてきた。 なにも女だとはひとこともいってないじゃないか…ひどいや…そうやってプリムがポポイをおちょくるといつもぼくに怒りの矛先がむいてくるんだ…

「…あれ?おいポポイ、マフラーはどうしたんだよ」
「なくした」 「……」
「せっかくトドさんがご好意でくださったのに、どっかに捨ててきちゃうなんてダメじゃないの。拾ってきなさい!」
「あーなくしたったらなくしたんだ!いまさらさがしたってみつかんないよ!」
「…風邪ひくぞ」
「へん!妖精族の強いオトコってのはこれっきしの寒さなんか平気のヘイザってやつさ!」
「ついでにあんなチャラチャラしたマフラーなんかもつけないモンなのサ。硬派なオトコは」
よくわからない理論だなあ…てぶくろも耳あても、外とうまで脱いじゃって、ブルブル震えてるじゃないか…なにをそんなにムキになってるんだよ…

それにしても雪の上ってきしきしして歩くのが大変だなあ…あれ…?ポポイがいないぞ?ふりむくとずっと後ろのほうでなんかモジモジしてる。
「チビちゃん?どうしたの」
「オ…………オ、オシッコ」
「もう、無理してそんなカッコしてるからだよ…」
「もう少しで南国村ってトコにつくらしいから、そこまでガマンできそうかしら?」
「バッカいうなコドモじゃないんだぞそんくらいガマンできらい!」
とはいいつつもポポイはいつまでたっても同じとこでモジモジしてる。

「もう…しょうがない、ランディ、あんたおぶってやって」
「えっ…ぼくが…」
「なによ、もしかしてあんたか弱い乙女におぶさせておいて自分はなんもしないでゆうゆうと歩いてるつもり?」
「そんなこといってないじゃないか…もう‥ほらポポイ、ぼくの背中に乗って。ほらあばれないで!」
むりやりポポイを背中に乗せるとぼくはプリムといっしょにまた歩きだそうと……あ…
「…こ‥こいつ、やったな‥」

背中がじんわりして生あったかくて気持ち悪いよ…思わず身震いしてしまう。
「……っへ、へん!あんまりオイラをコドモ扱いするからこらしめてやったのさ…」
「けけけ、どうだいアンちゃん体がポカポカあったまったかい?」
「もうイヤ!なんで私がこんな下品なヤツらといっしょにいなきゃなんないのよ!それもこれもみんなパパのせいだわ!」
一番嫌なのはぼくだよ…ああ…あのとき聖剣なんか抜かなきゃよかった…

南国村は名前のとおりあさぎ色をした草や真っ赤な花が揺れている、本当に南の国みたいな村だった。村のまん中にダルマストーブなんかおいて、外は紫色の空と白い雪だけの世界なのに…うゎあぁぁぁぁ…よけい背中がムレて気持ち悪い…
「あたたかーい…なんだかここだけ春みたいね」
「うーん冬がきびしければきびしいほど、そのあとの春の喜びも、でっかいというワケですなぁ」
「てゆーかあんたらふたり臭いわよ!せっかくの私の気分を台無しにして!早くそれなんとかしてきて!」
最悪だ…

ぼくとポポイは近くのおうちで流し場をかしてもらって汚れてしまった服をきれいにすることにした。
「よかったぁ…ぬれたのは外とうだけだ…」「オイラはパンツだけだぜ。日ごろの行いがいいからな」
「…なっ…おまえだれのせいでこんなことになったと…!」
そういってぼくがポポイのほうをふりむくとポポイは…いやポポイのは…!

「うわぁぁぁッッ‥ポポイ、な、なにそれ?!!!」
「なにってなにがだよ」
「な、ないじゃん!なにもないじゃん!それに、なんか……こう、まんなかがすうって、割れてるよ?!」
「ポポイって…ひょっとして‥女の子…だったの…?!」
「ば…ばっか男にきまってんだろ!妖精のオトコはみぃんなこうなってるんだよ!!だいたいアンちゃんは女の見たことあんのかよ?!」
「そ…そりゃあないけど……」

「だったらエラそうなコトいうなよ!それにチンチンだってちゃ〜んとはえてるぞ。すごく奥のほうで…‥すごく…ちっちゃいけど…」
「みみみ見せなくていいって!!!わかったよ!わかったからはやく替えのパンツはいてよ!」

……妖精って、ああなってたのか…でもたしかに、割れていたり、なかに小さなのがあったりするんだから、きっと男なんだろう…女の子がどうなってるか、よく知らないけど、おちんちんがないっていうんだから、本当になにもないんだろう…
でもポポイはいろいろあったもんな…だから男の子だよね…

…それにしても、妖精ってああなってたのか……

えぇーでもああなってるかなあ?…いや本人がいっているんだからそうなんだろう………
変わっているよなぁ…うーんでももういちどよーく見ればひょっとしたらふつうなのかもしれない…って何かんがえてるんだぼく?!…あ、でもポポイは男の子なんだからべつにいいんだよね…………っってうわぁっっ!!!
「あんたなにひとりで木にぶつかってんのよ…」
「アンちゃんさっきからなんかヘンだぞ」
「じゃまな木なんざいくらでも燃やしてやるぜぃファイヤァァァ!!」
「あ!コラ!やめなさいって!」
プリムがあばれるサラマンダーをはがいじめにしている…ああそっか、南国村でストーブに押しこめられてた火の精霊をたすけてあげたんだっけ…
うーんそれにしても妖精のがああなっていたとはなあ…

でもああなっているなんて本当に意外だなあ…
「…あの青いおやしきにかくまってもらうしかないわね」
「…へ?プリム、何をいきなり」
「だぁから!さっきからこんなにふぶいてんじゃない!この吹雪のなかどこにいるかもわからないサンタクロースが見つかるまで歩くってわけ?!」
「アンちゃん目んたま凍っちまったか?視野がせまいと発想も小さくなっちゃうぞ」
いつのまにふぶいていたんだろう…そんなに寒く感じなかったのに…ああ、たしかにすきとおるくらいに真っ青なおやしきだ…まるで水晶のお宮みたいだ…
それにしてもポポイのがああなっているとは…

おやしきの中はいくら呼んでもだれもいなくて、どうしようもなくなったぼくらはしかたなく勝手にあがらせてもらうことにした。サラマンダーを囲んで暖をとりながら、みんななんとなく無口になりながら吹雪のやむのを待った。
部屋の中は真っ青なのに、サラマンダーの燃えるひかりは真っ赤だなあ……
「さっきからなにチロチロ見てんだよ。モンクあっか」
「えぇっ?!いまぼく見てたっけ?……ごめんポポイ…何でもないよ」
今日はすごくつかれたなあ…いろいろと刺激的な一日だったもんなあ…吹雪になったり、本当に南国みたいな村があったり、それに‥ポポイ…
?! いつのまにか寝ちゃってみたいだ…?プリムもうたた寝している…サラマンダーもだ…ポポイは‥
ぼくのおなかの上に乗ってるぞ?!

「ぽっ‥ポポイ?なにふざけてるんだよ…重いからおりろよ‥」
「やだ」
そう言うとポポイはいつも着ているお気に入りのわかば色のだぼだぼを下からまくし上げて脱いだ。
「わぁっ!ちょ…ポポイ、何を…」
「だってからだが熱いんだもん…」
からだと言われてはじめてポポイの体をまじまじと見てしまった。白くて小さな体はまるではちみつを溶かした甘いミルクでできているみたいに暖かくてすべすべしていてその白い胸にはやわらかいさくらの花のつぼみみたいなかわいいちくびがちょこんとくっついている。
そうしてそのずっと下の例の割れたなんだか温かいところをぼくのおちんちんにくちゅくちゅこすりつけてきた。
「わっっ…だめだって!そんなことしちゃ‥」
「…きもちよくないの‥?」
「そ、そういう問題じゃなッ……うぅッッ!!」
汗びっしょりになって飛び起きるとまわりの空気はなんだかひんやりしていて部屋の中はしんとしていた。横を見るとポポイがぎりぎりはぎしりをたてながら寝ている。
「なんだ…夢かぁ‥」
そう思ってほっとすると汗で体じゅうが本当にびっしょり濡れていることに気がついた。
「ひゃあ…ズボンのほうまでびしょびしょだぁ…パンツまで‥」
えっパンツ…?……あ…

どうやらサンタさんは体のぐあいがよくなかったらしい。あとなぜかなくなっていたマナの種子が見つかったらしい。さっきからプリムがひどく激昂しながら10回くらいぼくに同じ説明をしてくれてるけど、ぼくにはそのふたつの因果関係がさっぱりわからないや…
それよりもポポイが昨日のトナカイとかけっこをして遊んでいる…さくらんぼみたいなくちびるからわたがしみたいに白くて甘い息を吐きながら無邪気に雪の上を跳ね回ってる…あのわたがし本当に甘くておいしいだろうか…
「ご主人さま〜ぁこの野犬のような童子をなんとかしてくださぁ〜い」
「るせぇ!サンタクロースが子どもに助けてもらったうえにプレゼントがないとはどうゆう了見だ!せめてシカ鍋食わせろ!」
「おおやめるんじゃ…やめろこのクソガキ!ヤシの実でドタマかちわったるぞ!」
「だからそれはヤシの実でもないって!サンタさん種子返してよ!チビ助!あんた早くあやまんなさい!」
「トナカイ!もうよいわこの狂犬を蹴り跳ばすんじゃ!」
すっかり晴れた朝の桃色の陽射しの中でマシマロみたいに転がるポポイを見ていると、ぼくの頭のなかまでぜんぶ桃色になっていくみたいだ…

―fin―



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