コロナ口辱
676氏
「なぁ、コロナ。ここんところの夜さ。なんか変な音、しないか?」
のんびりと紅茶を飲んでいた"師匠"の言葉に、台所でクジラトマトを刻んでいたコロナの背中がびくっと震えた。
顔が青ざめ、大きな耳がひくひく動いて、心臓がドキドキと高鳴る…イヤな感じに。
手元が狂い、クジラトマトの目玉の部分にざくっと包丁が突き刺さる。
着ていた割烹着に赤い汁が飛び散る。
「さっ、さああ?わわわたしは知りませんけどどど?」
がくがく震える声で返事を返す。無意識のうちに自分のポニーテールを結びなおして、呼吸を整える。
「ふぅん、そうか。ならいいや。バドは?」
「ううん、俺も全然」
"師匠"はすぐに興味を失ったようで、それ以上こちらに何かを聞いては来なかった。
どうやら、彼女の日課がばれてしまったわけではないらしい。
コロナはほっと一息つくと、沢山の料理が山盛りになった皿に手を伸ばした。
コロナは、小さな体と比べて大きすぎるほどの皿を一生懸命抱えて台所を出た。
苦労してテーブルにそれを置いて、ありがとうな、と"師匠"にお礼を言われる。
それに笑顔で答えてから、早々に食事に手を伸ばすバドを注意しようとした、その時。
ば た ん ッ !
騒々しい音とともに、玄関のドアが突然開いた。
全員がびっくりして、玄関の方に向き直る。
「あぁ♪ここが君の家だね。いきなり押し掛けてごめんよ〜♪」
台詞に妙な節をつけながら、ドアを開けた男が家に上がり込んできた。ずかずかと。
「実は〜♪君に相談したい事があってね〜♪」
その男は、緑色のとんがり帽子を被り、緑色の服を着て、手にはなにやらウクレレのような楽器が握られている。
顔は整っていて、世間一般的には美形で通るような顔だ。
しかし、下半身が馬だ。
馬、ホース、サラブレット、馬。そう馬。その男は半人半馬のケンタウロスだったのだ。
「ぎ、ギルバード…」
額に一筋汗を浮かべながら、"師匠"がうめく。
ギルバードと呼ばれた男はにっこり笑って、家の中を見回してそして…。
部屋の隅の方で縮こまっているコロナと目があった。
時が止まる。
コロナがひぃっ、と小さく悲鳴を上げて後ずさり、笑顔の消えたギルバードは合わせた目をそらさない。
そのまましばらく硬直が続き…ギルバードによってソレが破られた。
「おぉっ♪そこの割烹着の似合うマイスイートプリティーベイベーェ♪
どうだい?僕のためにおいしいおみおつけを作ってくれないかい?」
進路上のテーブルやら椅子やら"師匠"やらをなぎ倒して、ギルバードがコロナに駆け寄る。
彼女の前に跪き、そしてギルバードはうっとりと彼女を見つめた。
「一目見た時、僕の恋の花は咲いた…ああっ!君もきっとそうだろう!愛は偉大だ!愛は」
" 天 襲 連 撃 !! "
そこで、ギルバードの台詞が断ち切られた。
"師匠"の絶叫。燃え上がる小宇宙。銀河的な背景を背負った"師匠"の拳で、ギルバードの体が冗談みたいに宙を舞う。
ここは本当に室内なのかと問いつめたくなるほどの長い時間、ギルバードは空中遊泳を体験し、そして。
ドグシャアッ!
という明らかな致命的な音とともに床に沈んだ。
「いきなりひとん家の平和かき乱しといてなにやってんだお前はっ!」
前々から思ってたが本物の変態かいいかげんにしとけッ!」
コロナを抱き上げながら"師匠"がギルバードを怒鳴りつける。
師匠にしっかりだき抱えられて、コロナは目を白黒させた。
直後にははっと正気に戻り、落ちないように"師匠"の首に手を回す。
「し、師匠…これ、知り合いですか?」
「誠に遺憾だが、そうだ。いつか話しただろ?ロアの変人詩人ギルバード」
バドの問いに、"師匠"が答える。
直後、ギルバードはすっくと起きあがり、歌うようにしゃべり出す。
「変人なんてひどいよ〜♪僕はいつだって愛の旅人さ〜♪」
「その愛の変人がなんの用だよ…?」
"師匠"は痛む頭を押さえ、ギルバードに聞いた。
彼は胸を張り、師匠に抱き上げられたコロナをうっとり見つめながら答える。
「そんな事はもう忘れたさ〜♪今の僕はこの少女の愛の奴隷なのさ〜♪
さあ、マイスイートハニ」
" ナ ッ ク ル ダ ッ シ ャ ー ! "
ふざけた事を口走るギルバードの顔面を師匠の拳がえぐり取る。
ドラゴンすら粉砕する一撃をまともに食らって、ギルバードは地平線の彼方へと吹っ飛んでいく。
その後には、呆然とする二人の森人と一人の人間。そして荒れ果てた一軒の家だけが残った。
それから数日、ギルバードは執拗にコロナにちょっかいを出してきていた。
ドミナの町に買い物に行けば、必ず先回りしてすり寄ってくるし。
家にいればいたで勝手に上がり込んでセクハラまがいの歌を高らかに歌うのだ。
そのたびに"師匠"の拳が唸る…のだが、例えどんな攻撃を喰らっても数分後にはもう復活してきているのだ。ある意味、尊敬にすら値する生命力だ。
そんなストーカー被害に、きょうもコロナは頭を悩ませていた。
「ふぅ…」
疲れ切ったため息が、屋根裏に響く。
パジャマ姿のコロナが、布団の上で暗い顔をして座り込んでいた。
疲れる。常に神経をとがらせていないと、いつどこからあの馬男が現れるか分からない。
…そのたび"師匠"が助けに来てくれるのが、じつはちょっと嬉しかったりもするのだがそこはおいといて。
疲れ切って、なんだか何もやる気が起こらない。いつもなら"師匠"の部屋に行って"日課"を行うはずなのだが。
何もやる気が起こらないが、日課を行えないせいで眠くもならない。
(お散歩でも、しよっかな…)
コロナはもぞもぞといつもの服に着替えると、ゆっくり階下へ降りていった。
「師匠さん、これからどうしましょうか…」
月明かりの冷たい空気の中を歩きながら、コロナは虚空に問いかけた。
困った時、迷った時、"師匠"に意見を聞くのがコロナの癖だ。
そばにいる時も、そばにいない時も。
問いかけは虚空に消え、結局答えは返ってこない。
どうしようもなく、やる事もないから寝床にもどろうと、コロナはのんびりと家の方に歩き出す。
刹那、重い何かに突き飛ばされてコロナは家の壁に倒れ込んだ。
「っえっ?!」
背中に鈍い痛みを覚える。
何が起こったのかを確かめようと、彼女は賢明に後方に向き直った。
髪が壁に擦れ、ポニーテールがほどけてしまう。
彼女の目の前には、馬の下半身を持った男が立っていた
「ひっ、ひえええぇぇっ?!」
「おぉ、マイスイートコロナ!僕に会うためにわざわざ来てくれたんだね!」
コロナは違う!全然違う!と叫ぼうとしたが、驚きのあまり喉が詰まって声が出ない。
馬男ギルバードは前足を高く突き上げると、コロナが背を預けている壁にどすんと乗せる。
ギルバードの下半身が、座り込んだコロナに覆い被さるような形になった。
「コロナ。君の事を考えていると、僕のここはこんな風になってしまうのさぁ〜♪」
コロナの目の前に、ギルバードの怒張した男根が現れる。
大きい。とにかく大きい。
師匠さんとどっちが大きいんだろうと一瞬考えて、そんな事を考える自分が恥ずかしくなる。
「さあ!僕と一つになろうよ♪めくるめく愛のベーゼさぁ♪」
そのギルバードの台詞に、コロナは今度こそ悲鳴を上げた。
このままでは不味い。犯される。やだ。そんなの。師匠さん以外の人になんて…!
「助けて!師匠さん!助け…!」
コロナが叫ぶ。大きく口を開けて、力一杯。
ギルバードはソレを待っていたかのように、自らの腰を思いっきり前に突き出した。
コロナの薄い唇の内側に、ギルバードの男根が思いっきりつき込まれる。
「んぶっ?!んっ、んあっ?あっ?!」
ソレはあごが外れるほど大きく、苦く、そして苦しい。
思わず歯をたてるが、ギルバードはまるで意に返さない。
「ああ、君の口は最高だよ、コロナ…♪」
うっとりとしたギルバードの声。ソレと同時に彼の腰が前後に動き出す。
ぐちょっ、ねちょっ、くちゅっ、ぱちゃんっ…。
「ふぅん…うあ…ふぐうううう、ししょぉさあ…うぶ…ッ」
コロナの口の中を肉棒がかき回し、喉の奥までつっこまれる。
雄の匂いと息苦しさに、コロナは思わず吐きそうになった。
大きな両の瞳から、ぽろぽろ涙があふれ出す。
「んぐ…ふぁ…」
「ああ、そろそろ出るよコロナぁ♪僕の愛の結晶を受け取ってっ♪」
恍惚としたギルバードの顔。腰の動きが早くなる。
乱暴に突き込まれて、頭ががくがく揺れた。
「もが…あぶぁ…ん、んあ゛あ゛あ゛あ゛っ?!」
「っあ!出るッ!」
どぷんっ!
コロナの口内で白濁液がはじけた。
異様な熱を帯びた液体が喉の奥に流し込まれる。とても、不味い。
すぐに肉棒は口から引き抜かれコロナの幼い顔に粘つく液体がぶちまけられる。
「ふぁっ!やっ、やだぁっ、やだあぁぁっ…!」
べとべとになった顔面を軽く撫で、そしてコロナは泣き出した。
体を小さく丸めて、しくしくと、何度も嗚咽を漏らしながら。
ギルバードはすっきりとした顔をしていたが、ソレを見て困った顔をする。さて、これからどうしよう?
そう思いながら頭をかいているギルバードの真後ろに、空から何かが降ってきた。
どしんっ!と豪快に着地する人型の何か。コロナはそれに気づき、それが誰であるか理解して、
そして、歓声を上げた。
「師匠さん!」
「うえっ?!」
ギルバードが驚きながらも振り向く。彼の背後に、夜叉のような顔をした"師匠"が立っていた。
「ごそごそ音がすると思ったら…てめぇ…」
"師匠"が右手を振り上げる。凶悪な形のナックルが、月光を受けて煌めいた。
「あっ、その、これは…」
「マンドラゴラのような悲鳴を上げろ。てか、死なない程度に死ね」
そして、凄惨な戦闘…というか一方的な私刑が始まった。
「大丈夫か?コロナ」
元ギルバードだった物体を適当な方向に投げ捨ててから、"師匠"はコロナを抱き上げた。
汚れた顔をハンカチでふいてから、優しく頭を撫でてやる。
「怖かっただろ。もう大丈夫だから…」
と、言いかけて、やめる。
コロナの口からすうすうというかわいい寝息が漏れている。
無邪気な寝顔。
"師匠"はやれやれと肩をすくめ、家に入っていった。
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