求める先に 〜世界の中心で叫んだら怒られた〜

何処かのフリーター ◆D5K0PnGiio氏



 獣人達が住まうという月夜の森。
 クラスチェンジを行い新たな力を手にしたデュラン一行だったが、それでも
獣人は手強く、月のマナストーンの元へと辿り着くのは容易ではなかった。
「きゃぁッ!」
「アンジェラさん!」
 戦いの中、接近を許したウェアウルフの一撃で吹き飛ばされたアンジェラに
慌ててリースがフォローに回る。
「くっ…!」
「いたた…何やってんのよデュラン! 前衛が可憐な美少女魔術師を守れないで
 何がナイトよ!」
「こっちはこっちで手一杯だ!」
重い一撃を槍の柄で受け止めるも、如何せん力比べでは獣人に敵うはずもなく、
リースが押し込められていく。その間、妙に突っ込み所の多い悪態に答えながら
ブラックファング2体を同時に相手取り、互角に剣と楯を振るうのはデュラン。
実の所ほぼ防戦一方だが、相手を倒す事は出来なくとも、致命傷を負わずに
二体の敵を引き付けておけるだけでも、賞賛に値する剣技であろう。とは言え、
このままではジリ貧である。
「これでも…喰らいなさい!」
アンジェラのホーリーボールが炸裂し、獣人達に出来た隙をデュランは見逃さず
1体のブラックファングを屠る。残った方が不利と見て逃げを打ったのを確認
してから、ウェアウルフを挟撃するためにリースの方へと走る。
「おおりゃぁッ!」
先程の間隙に放たれたリースの突きに、肩口を貫かれたままのウェアウルフを
走り込みながら胴斬りの一閃で仕留めると、リースに深い傷がないのを見てから
上半身だけを起こしたアンジェラの元へと歩み寄る。浅くはないが致命傷でも
ない傷の具合を見て、漸く一閃を放った時から止めていた息を吐いた。もっとも
あれだけ悪態がつけた時点で、それほど心配はしていなかったが。
「ッ! デュラン!」
突然、悪態よりも悲痛に叫んだアンジェラの瞳には、瀕死のブラックファングが
夥しい血を流しながら立ち上がるのが映っていた。気付いた時には最後の力を
振り絞っての真空水月斬が放たれている。
「リース、危ない!!」
デュランが直撃コースにいたリースを突き飛ばした。とっさに動いた身体は、
迫る脅威を楯を使って防ぐ事を自然に選択している。衝撃を幾分か逸らして楯は
弾かれ、残った威力がデュランの身体を鎧の上から抉り、床へと叩き付ける。
「このぉッ!」
再び放たれたホーリーボールが今度こそブラックファングを仕留め、戦いに
ひとまずのピリオドが打たれた。

月夜の森にそびえる月読みの塔最上階にあるというマナストーンを求めての
挑戦は、既に三度に至っていた。
「…これで俺の回復は品切れだな。」
どうにか持ち直し、自らをヒールライトで治癒したデュランがひとりごちる。
「ふう、回復アイテムも余裕がないし…今日も退くしかないわね。」
傷を癒しながら小休止の雰囲気は重い。いまだにこの月読みの塔を攻略できずに
いるのは、最初の挑戦での失敗に端を発する。こう何度も襲撃を受ければ、知性
よりも力を重んじる獣人達も流石に馬鹿ではない。数を集めて防衛体制を強化
してしまっていた。人間に恨みを抱く獣人とは最初から交渉不可能であり、
それもあってこうして何度も斬り込んでいる訳だが、そもそもの失敗の原因は
「す、すみません。私が至らないばかりに…。」
今も本当に申し訳なさそうに縮こまっているリースの不調にあった。
「あー、そんなに気にすんな。俺も斬り合いながらじゃうまくいかないし。」
「…に甘いんだから。」
「え? 何か言ったか?」
「何でもないわよっ。」
「本当にごめんなさい。もう少し上手に魔法が使えたら…。」
今までは槍一本と、幼少の頃から叩き込まれたアマゾネスとしての戦い方で
道を切り開いてきた。それが全てではないが、仲間と共に戦う中で自分の役割を
きっちり果たせれば、何者も恐れる事はないのだと漠然と思っていた。しかし、
獣人というクラスチェンジで得られる能力をフルに活かさねば渡り合えない敵が
現れた今、リースは戦いの選択肢に『魔法』を加える事を余儀なくされていた。
今まで自分が使う事を想定もしていなかった魔法という概念に戸惑いを隠せず、
それが一瞬の判断が命取りになる戦場で大きくマイナスに働いた。槍を振るうか
魔法を唱えるか。相手の力を弱める魔法を唱えなければ互角以上に戦えず、
唱えようと思えば敵は一気に前衛の自分の元へと間合いを詰めて来て、魔法への
集中を欠く。いっその事魔法自体を切り捨てて戦ってもみたが、それでは体力の
消耗が激しすぎて効率的ではない。戦うために魔法はどうしても必要であり、
思い切りの良さと勢いを失って、次第にリースはスランプに陥ってしまった。
結果、チームの連携は乱れ、塔の攻略も困難なものとなって現在に至る。
「とりあえず、今日は一度街まで戻ろう。」
自分でも自分の不甲斐無さがが分かっているだけに、仲間の優しさは必要以上に
身に沁みる。デュランの言葉に頷き来た道を戻るリースの顔色は、ミントスの
宿屋に戻っても晴れる事はなかった。

「どうしたら魔法をうまく使えるか? んー、そうね…。」
 よく言われるのは集中力ね、と続けるのは魔法暦がリースとさして違いない
アンジェラ。魔法王国アルテナの王女でありながら最近まで魔法を使えなかった
彼女は、そのコンプレックスから藁にも縋る思いで魔法に関する知識を貪欲に
収集していた時期がある。結局それは彼女に魔法を習得させるには至らず、
これもその頃に得た知識だった。
「それも前衛が魔法使いを守ってくれてるから―――ってその前衛だっけ。」
宿屋の三人部屋のベッドに腰掛けながら頭を掻く。共用ではあったが、安宿に
しては珍しい風呂から上がったばかりで湿った髪がなびいた。
「…ゴメンね。闇側にクラスチェンジ勧めたりして。」
「い、いえ、アンジェラさんは別に…決めたのは私ですから。」
クラスチェンジの際、リースは光側にするか闇側にするかで迷ったていた事が
あった。フェアリーや精霊達からチェンジ後の特性を聞いて参考にしつつ、
デュランは回復役もこなせる光側のナイトに、アンジェラは先を見越して後に
強力な魔法を行使できる闇側のデルヴァーを選択した。リースはどちらにしても
能力関係の魔法を使える対象が味方か敵かの違いだけだったので、アンジェラの
勧めもあって結局は闇側のルーンメイデンとなった。「休み時間に連れ立って
花摘みに行くようなものね。」とは、フェアリーの女神の知識的談である。
もし光側を選択していたならば、味方の能力を高める魔法を予めかけておいて
戦闘に臨めば問題なかっただろう。アンジェラが親身に相談に乗るのも、軽い
気持ちで闇側に誘ったのを気に病んだためでもある。
「悩んでるようねー。」
どこか気まずい雰囲気を不意に破ったのはフェアリーだった。
「デュランは?」
「まだお風呂よ。意外と長風呂なのよねー。」
几帳面に身体洗うし、そう続けられた言葉から思わず場面を想像して密かに赤面
していたリースにフェアリーが唐突に訊ねた。
「ところでリース、あなた処女なの?」
「………へ? え、えええええッ!?」
「…とつっ、突然何を聞くのよ何をッ!」
質問の意味を理解できずに間抜けな返答をしてしまった頃、アンジェラは脱力
しつつベッドからずり落ちていたが、リースの叫びに復活して問いただす。
「まぁまぁ、ちゃんと理由があるんだから落ち着いてよ。アンジェラ、女性が
 月に一度の周期で魔法を使えなくなるのは何故だか知ってるわよね?」
「それは勿論生理が…ああ、そういう事?」
「ええと、なんなんですか?」
知識だけはやたらと集めていたアンジェラには思い当たる節があったが、
その手の事にはさっぱりのリースに解説が始まる。健康な妙齢の女性に月一度
訪れる生理はその期間中、その女性から一切の魔力を失わせてしまうのだ。
生理周期と魔術には密接な関係があり、処女の子宮に至っては女性が自分の
肉体の中で唯一魔力を通す事の出来ない場所でもある。そういった意味で、
処女はいまだに魔法使いとして不完全な存在であるのだ。
「だから昔の魔女は召喚した悪魔に処女捧げついでに使い魔にしたりねー。」
一石二鳥って感じね、そんなお得意の女神の知識だった。
「要はさっさと処女捨てて肉体の方を完全に整えれば魔法が巧く使えるように
 なるかも知れないって事でしょ? 無茶言わないでよ。」
「それは自分が処女じゃなかったにも関らず魔法が使えなかった体験談?」
「なんで知ってるのよッ!?」
「ア、アンジェラさん…?」
純粋にその取り乱しようを心配して投げ掛けられたリースの視線を、何故だか
思わず疑いの眼差しと思い込んだアンジェラが勝手に弁明を始めだした。
「えーといやその、違うのよ。処女じゃなかったのは確かだけど別に男性経験が
 あったって訳じゃなくて。」
アルテナの王族の娘には、生まれた時にとある儀式を施すしきたりがある。
それが魔法使いとしての肉体を完成させるための破瓜と、魔法によって擬似的に
妊娠させ世継ぎを作る時などを除き、その生理を止めるためのものであった。
「ま、別に膜に拘りがある訳じゃないし、王族として背負うべき責務ってのも
 理解してるつもりだけどね。」
本来は成人の折に知らされるべき事であったが、幸か不幸か彼女の集めた知識の
中にはこの事もあった。
「とりあえずそういう方法もあるって事を言いたかったのよー。」
「相手はどうすんのよ相手は。まさか手近なところで済ませろとか言うんじゃ
 ないでしょうね。」
「手近って…。」
ふとリースの頭をよぎるのは共に旅をする剣士の姿。その連想から何事かを
思ったのか、リースがやや俯いている間にも一人と一匹(?)の口論は続き、
本人だけが蚊帳の外という具合なまで加熱していた。
「大体あんなのが相手じゃロクな事にならないわよ?」
「あの…あんなのってのはあんまりじゃ…。」
「えー、じゃあ自分でって方法も一応あるけどー。」
「却下よ却下。乙女の純潔を何だと思ってんのよこの人外は。」
「ジュンケツがどうしたって?」
「「――――――!!」」

しばらくお待ちください。

「…なんでダイヤミサイルを叩き込まれきゃならないんだ。」
「おっ、乙女の部屋に断りもなく入るのが悪いのよ!」
三人部屋のはずなんだが、という言葉は喉元で止められた。それは今しがた頭に
出来たばかりの瘤を増やされるのも嫌だという消極的な理由による物だったが。
「で、混血だか純血だかがどうしたんだ?」
「あー、いや分かってないならいいわ…私、もう寝るから。」
流石にああいった話は異性の前ではしにくいらしい。デュランはいそいそと
寝支度を整えてベッドに潜り込んでしまったアンジェラを訝しく思いながらも
追求はせず、隣のベッドに腰掛けて考え事をしているようなリースに向き直る。
「寝ないのか?」
「…え?」
「明日も獣人達とやり合わなきゃならない。早く休んだ方が良い。」
「そう、ですね。」
こちらを一度だけ見て、顔を伏せてしまったリースを今度は不思議に思いつつも
ベッドに潜り込む。横になってからもう一度リースの方に目をやると、妖精と
小声で何か話しているのが見えた。自分から離れてそれなりに経つ妖精が少し
気になったが、寝てる間にでも戻るだろうと決め付けて眼を閉じる。暫くして
目蓋の向こうで部屋の明かりが消えたのが分かり、意識は眠りに落ちていった。

眠りに落ちてから如何ばかりの時が過ぎただろうか。
寝ていたベッドに自分以外の何者かが不意に体重を掛けたのを感じ、デュランは
眼を覚ました。頭は覚醒しきらず、肉体の反射だけでベッド脇に立て掛けていた
剣に手を伸ばす。が、頭が半分目覚めた時点で手は止まった。ここまでの接近を
許したのは、その何者かの持つ気配が殺気を伴った類のものではなく、また、
よく知ったものであったからか。そしてベッドに手をついてこちらを覗き込んで
いたよく知っているはずの瞳を、綺麗だと思ったからだろうか。
「リー、ス?」
何時の間にか窓から差し込んでいた月明かりが彼女の姿を青白く映していた。
デュランの耳に入るのは自身の息吹とほんの僅かな布同士の擦れる音のみの、
それだけの静かで深い夜。寝間着姿――と言っても鎧の下の肌着を代えただけの
もの――でリースが何をしに来たか、察するほどの甲斐性がデュランにないのは
果たして幸か不幸か。少し身体を起こすと、自然と声を潜め尋ねてしまう。
「どうし…ッ!」
それを途中で遮ったのはリースの唇。自分よりも低い体温を持つ柔らかい感触を
認識して、デュランの眼は完全に冴えた。頭の方は覚めるより混乱していたが。
そのまま頭を枕に押し付けられるように再び身体をベッドに横たえさせられる。
強く押し付けられるだけのそれは接吻というよりは、自分という存在を懸命に
相手に伝えるためにしているような。誰かが見ればそんな風に見えただろうか。
やがて不器用な触れ合いが途切れる。
「―――抱いてくれませんか。」
離れていった唇がまず紡いだ言葉がそれだった。一瞬、その言葉に何も言わずに
従ってしまおうかとも思ったが、とりあえず理由を問いただすと先ほどの会話の
顛末が語られる。
「…協力なら、できない。」
溜息をひとつついてからリースを真正面に見据え、デュランから放たれた言葉は
否定だった。さらに続ける。
「仮にもローラントのお姫様が平民の俺相手に、抱くの抱かれるの問題じゃあ
 ないだろ? 第一、相手を想ってもないのにそれじゃあ…」
哀しいじゃないか、そう結んでからどうともつかない微笑を浮かべた。
「身分はもう関係ありません。今は祖国を失った身ですから。それに…」
「それに?」
「いつも助けてくれたりしたのは、仲間だからってだけの事なんですか?」
「それは…」
「私が、どうとも想ってない人なんかに抱かれようとすると思うんですか?」
「へ?」
再び顔と顔の距離を狭めリースが迫る。いまだその言葉の意味を理解できないで
いる様なデュランに対し、強硬手段としてもう一度唇を押し付けた。慌てて
引き剥がそうとして、デュランは毛布越しに自分に覆い被さるリースの身体が
震えているのに気付く。そして、こちらを見つめる瞳が潤んでいる意味にも
気付いたのは、彼女が離れて自らの偽らざる想いを吐露したから。
「…好きになってくれなくてもいいです。でも、デュランさんが私の事をほんの
 少しでも想ってくれてるなら…抱いては、くれませんか?」
毛布が強く握られ、瞬いた瞳から雫がひとつ零れる。
「お願い…。」
震えは告白を拒絶されたくないと思うからこそで、そこまで言われてやっと目の
前の少女が自分を深く想ってくれている事を理解したデュランはやはり朴念仁と
呼べる存在であろうか。不意に眼を閉じて数瞬、何かを想う。そうしてから、
いじましくも自分を想ってくれた少女を抱きしめる。震えが止まるようにと。
「そこまで言わせちまったりして、すまない。」
「あ…。」
今度はデュランの方から唇を重ねる。リースは静かに触れられた場所から、
暖かい――体温とは違う――何かが伝わってくるような気がした。
「…デュランさん。」
「俺が言えた義理じゃないが…できれば呼び捨てにしてくれないか?
 今みたいな時は、特に。」
「! はい……デュラン。」
もう一度、今度はどちらからともなく唇が重なった。

「隠さないで、見せてくれるか?」
 問われて僅かに頷いたリースが、今まで身体の一部を隠していた手をどける。
思ったよりも華奢な印象をデュランは受けた。既に寝間着は床に脱ぎ捨てて、
身体を隠すものは何もなく床に裸足で立っている。月明かりに照らされたその
肌はまるで人形の物かと見紛うほどに滑らかで、それでいて腕や足、肩や脇腹
などに残る生傷が、彼女が生きている人間である事を如実に示している。
それらと相俟って、年相応に膨らんだふたつの丸みの中心で色付く蕾、生まれの
貴さ故かそこまでも上品に見える腹部の窪み、髪と同じ色で秘所を飾る産毛
程度に生え揃っただけの繁み―――全てが美しく、デュランの官能を刺激する。
「綺麗だ…。」
素直な感想を漏らしたデュランに対し、身近でない異性に初めて肌を晒す羞恥が
リースの顔を背けさせる。それでも手を戻さずにそのままでいるのが、何かと
生真面目な彼女らしいと言えば彼女らしい。一方のデュランもリースと同様に
衣服は既に一枚も身に着けておらず、彼女の恥じらう様子をベッドに腰掛けて
眺めていた。時たま彼女が視線のみをこちらに投げかけてくるのが分かる。主に
腰の辺りだ。今から、誰も触れた事のないこの美しい少女を抱くのだと思えば、
否が応にも昂ぶらざるを得ない。どんな聖人君子とて、男ならそうなるのでは
なかろうかとさえ思える。既にデュランの雄はその存在をこれ以上ないぐらいに
主張し、リースも初めて見るその器官――今から自分を貫くであろうそれ――に
興味と不安を隠せずにいた。
「リース。」
立ち上がって肩を抱き、名前を囁いた。彼女がこちらへ顔を向け、頷いたのを
確認してから抱きしめて腕の中に収める。二人を隔てるものが何もない今は、
触れ合った身体から互いの鼓動が伝わり合う。下腹部に直にデュランの雄の
象徴が触れたからか、強張りを残したままの身体と早鐘のように響く鼓動に、
彼女の緊張が表れていた。それを感じ取ったデュランがまずは軽く触れるだけの
キスを額に。それから徐々に下っていって目蓋、頬、口元へと跡も残らない
キスを次々に降らせる。肝心の柔らかい唇に対しては舌で軽く舐めてから
「口、開けてくれるか?」
そう聞いて、リースが唇を少し開いた所に自らの舌を少し侵入させる。
「んッ…。」
微かに呻いただけで彼女に特に拒絶の意思も見られないので、まずそのまま
上顎の歯茎を舌先でなぞっていく。一度離れてから嫌ではないか尋ねてみるが、
拒否はされなかった。
「深くするから。」
そう断りを入れて、再度舌が彼女の口内へと侵入を果たす。するりと歯の間から
リースの舌先を捉えると、反射的に引っ込んだ舌先を追ってさらに踏み込む。
最初は逃げ回っていた舌先も、何度か絡め合わされる内に慣れてきたのか、
徐々に自分から侵入者と触れ合うようになっていく。舌同士が互いの唾液に塗れ
その感触を心地良く思う頃になると、デュランが舌を休めていてもリースから
貪るように舌を絡めるようにまでなっていた。身体の強張りもほどよく解けた
頃を見計らい、そこで不意に舌を引っ込める。
「ッあぁ…。」
「意外と情熱的なんだな。」
「え、あ…いえ、その…ごめんなさい。」
急な別れを惜しむにはあまりにも寂しそうな声を漏らすものだから、ついつい
意地悪をしてしまった。リースもその一言で夢中だった自分が何をしていたかを
思い出し赤面する。必要もないのに謝るリースを微笑ましく思いながら、その
膝裏にデュランの手が回された。
「きゃッ?」
「やっぱりお姫様はこう抱き上げないとマズいだろ?」
膝裏と背中、回された二本の腕で少女を一気に抱え上げる。思ったより軽い。
この身体のどこに槍を振り回すだけの力があるのか、女性の不思議に触れながら
童話で白馬の王子がそうするように、リースを抱え上げたままデュランが反転し
抱き上げた時とは逆に、今度はゆっくりとリースの身体をベッドに横たえた。
自分はその太腿辺りに跨るように、体重は掛けないように膝を立てて、そこから
リースの脇に手をついて覆い被さるような姿勢になる。
「怖いか?」
リースは軽く頭を振って答え、デュランが唇を寄せていく――その首筋に。
「んッ! …ふ…。」
首筋を攻められるのは想定していなかったのだろう。吸い付かれた瞬間、甲高く
呻くとリースは自分の両手で口を塞いでしまった。艶のある声を聞きたいとも
思ったが、同じ部屋にアンジェラが寝ているのを考えればそのままにしておき、
デュランの唇と舌は続いて鎖骨をやんわりと捕らえ、撫ぜていく。
「ん、んふ…ん。」
微かに漏れる声を聞きながら、甘噛みしつつ舌先でこそげるようにしながら
自分のそれと比べて若干柔らかいような気がする骨の感触を十分に堪能すると、
二の腕や脇の下、上半身の様々な場所を唇で、舌で、指先で愛撫していく。
胸元に紅く痕が残るように強く吸い付いた後、シルクのような滑りの肌に唇を
這わせたまま胸の中心へと進む。まずは鼓動に震える中心に軽く接吻してから、
余りにも柔らかな膨らみを登り始める。
「はッ、ぁッんん、んッ。」
細かく接吻しながら膨らみを登る最中、もうひとつの膨らみに手が重ねられる。
初めは掌全体で撫でるように。指で静かに形を変えて刺激する頃、唇の方が
頂へと辿り着いた。それを口に含まれた刹那、リースは自分の身体に精霊の
ジンか何かが弱々しい雷を落としたのかとさえ思った。舌同士を絡めるのも、
首筋や鎖骨を舌で舐られるのも、今までの行為はどちらかと言えば心地良い
それだった。続いて指でもうひとつの頂をつままれて弄られると、今までには
感じた事のなかった雷が走るような、痺れにも似た感覚が身体を駆けていく。
しばらく前に、城仕えのメイドや年上のアマゾネスを交えての世間話の場で
男性経験の話になった時に聞いただけの知識、今のこれがその『気持ちいい』
事なのだと認識する。そうすると自分の何かが変わってしまいそうな漠然とした
怖れも、少しだけ続けて欲しいように思え、デュランの愛撫に身を任せていた。
何より、半ば自分から求めた『気持ちいい』事を拒む理由もない。
「んッ、ぅんッ。んんー…ッ!」
硬くなった蕾を指でコリコリと弄ばれる度に、舌と唇で甘噛みされ蹂躙される
度に、跳ねそうになる身体を抑え切れない。同時に攻められた時などは、思わず
身体を仰け反らせてしまうほどだった。頃合を見てデュランが身体をリースの
隣へと移す。脇腹の傷近くに浮かんでいた汗に唇を寄せつつ、同じように汗で
じっとりと濡れつつある下腹に手を置いた。
「触るぞ?」
甘い痺れの残りを感じながら、自分の最も秘めたる部分を自分でない誰かへと
初めて委ねる緊張からか、慌てる必要もないのに何故か急ぎ気味に二回頷いて
しまった。下腹を撫でていた指が柔らかい繁みを掻き分けその場所へ―――。
「んぅッ!」
開きかけていた襞の内側は既に濡れていて、触れられて微かな水音が鳴った。
くすぐるように優しく、人差し指と中指で水音が徐々に大きく奏でられていく。
少しだけ粘り気のある液体に二本の指がすっかり塗れた頃、リースの膝を掴んで
いるのは何時の間にか足元の方にいるデュラン。ここまでくればデュランは
改めて問う事はせず、リースもただ頷く。力のこもる事のない膝が開かれて、
蜜を湛えた華が月明かりに煌いて咲いていた。口を塞ぐはずのリースの両手は、
何時の間にかその顔を隠すものに変わっている。美しさと卑猥さを併せ持つ華に
吸い寄せられるのは男という名の虫だろうか。襞の奥から湧き出す蜜に誘われ
デュランがそっと口付ける。
「………ッ!」
好意を持つ男性に自分の秘所を見られ舌で愛撫されるのはどこか嬉しくもあり
気持ち良くもあったが、初めてそうされる羞恥はその比ではなく、リースは
声すら出せないでいる。湧き出た蜜を啜られ、秘所の上部にある敏感な突起を
皮ごと優しく啄まれ、襞を舌で丁寧になぞられるのを繰り返される内、リースは
自身の身体のどこにも力が入らないほどに快感に浸かっていた。舐め切れずに
溢れた蜜がデュランの顎を伝い喉を濡らす。前戯は十分と見て、デュランが
自身の張り詰めた肉塊を華にあてがう。
「こっちも濡らしておかないとな。」
「ふぁ、あつッ…んッ!」
デュランの剣は貫くでもなく、それ自体で蜜の溢れる秘所を擦り上げる。一方の
リースは剣の持つ熱さを、それを納めるべき自身の鞘で直に感じていた。やがて
剣は潤い、全ての準備が整った。
「…ゆっくりするから。」
再び覆い被さるようにしながら、その場所を合わせてデュランが問う。不意に
その背中に手が回された。
「来てください…。」
瞳から涙を溢れさせたリースが逞しい身体を抱き寄せようとする。デュランは
様子を見つつ、痛みが少なく済むよう静かに、少しづつ腰を進めていった。
「んッ…くぅッ…!」
リースの息が詰まる度、背に回された手が爪を立てる度に一旦動きを止め、
落ち着くのを待ってからまた慎重に身体ごと腰を進める。時間を掛けじっくり、
誰も触れた事のない場所が征服されていく。
「ん…大丈夫、か?」
今まで閉じられていた狭い膣内を進むのとは異質な抵抗―――リースの処女の
証であろうそれ―――を突き破った直後にされた問いに、リースは自分を貫く
青年に抱きついて肩口に顔を埋めたまま頷くしかなかった。痛みを堪えていた
訳ではない。デュランの気遣いで痛みはそれほどのものではなかったが、自分を
貫く熱さと圧迫感、何より想い人に初めてを捧げられる事に感極まっていた。
そして破瓜の道行きに終わりが訪れる。
「これで一応、その、確かに処女は貰ったけど…どうする? 続けるか?」
「…大丈夫です。そんなに辛くありませんから最後まで…お願いします。」
リースを貫く剣の先端が膣奥の柔らかい子宮口まで辿り着いた。リースの身体を
気遣っての提案は無用の物で、むしろリースの方がここまでしたのだからと、
半ば開き直ったように続きを催促する。勿論、デュランのそういった気遣いも
嬉しいものではあったのだが。一方のデュランは自分を受け入れながら柔らかい
微笑みを向けてくれるリースを愛しく思いつつ、艶やかな髪を指で梳いた。
「辛かったら言ってくれよ。」
「デュラン…。」
尚も気遣ってくれる優しさに思わずリースからのキス。しかもデュランの口内へ
自分から舌を絡ませようとする大胆振りだった。技巧は拙いものではあったが、
少しでも触れ合う部分を増やそうとするかのように舌を絡めようとしてくる。
口の方は彼女の初々しい動きに任せ、自分も浅くゆっくりとしたストロークで
破瓜したばかりの胎内を穿ちだす。
「んぅ…ふ、んッあぁッ! なに、か変ッに…くぅぅッ!」
「う…ッ!」
できるだけ痛みを与えない事に集中していたため、リースの中に入った感触は
処女特有の不慣れさから来るキツさが主だった。しかし一段落してからは膣奥を
突く毎にぬかるんでいき、急速にデュランを受け入れる事に順応していく。
液体を伴って粘膜が絡みついてくるような感覚。うっかりしていると吸い込まれ
溶けてしまいそうな錯覚が、デュランの背筋を走って脳髄に突き刺さる。
「は…ッ、おくッ奥がッ、おかしッ…奥ぅッ、ぅんッ!」
「この…辺か?」
「やッん、ダメッ…んッ、そこッ! はぁんッ!!」
旅に出てからロクに抜いていなかった事もあって、気を抜くとたちまち放出して
しまいそうになる。余裕がないのを自覚しつつ、リースが感じ始めた膣奥へと
ポイントを絞って集中的に小突いてみた。抱きついてくる腕に力が籠もり、鍛え
抜かれた身体が生み出す締まりとぬかるみ具合がデュランを追い詰めていく。
「くあ、スマン…もう持たないかも。とりあえず離れ…っておいッ?」
暴発するよりはと水入りなり膣外での射精を考えていたデュランに対し、脚まで
絡めて全身で抱きついてくるのはリース。純粋な力比べではデュランが勝るが、
こうも密着してしがみつかれては離しようがない。
「子供が出来ちまうかも知れないぜ?」
「大丈夫です…それに、最後までデュランに私を感じていて欲しいんです。」
「だけど「私も…私も最後までデュランを感じたいから…お願い。」
リースに離れるつもりはないようで、いっそう強く抱きついてくる。迫る瞬間を
堪えるのに精一杯で、デュランはその誘惑に抗えず。離れるのが無理ならば、
いっその事最後の瞬間までリースを感じていようと集中し、かなりスムーズに
動けるようになった膣内を気持ち早めに往復しだす。すぐに終わりが来た。
「ぐ…ッ! もう限か、いッ…。」
「んッあッんッ…んんんッ!」
もう一度膣奥を突いて、それで臨界点を超えた。
「うぅ………ッッ!!」
「熱ッ、の…がッ、ふぅぅッ!!!」
爆発したかのような勢いで、精液が膣奥の子宮口を塞いだままの肉塊から何度も
迸り、リースに浸透していく。精液を搾り取るように時折キュッと締まる膣内の
感触と、少女の胎内を初めて穢す倒錯した悦びを伴い、デュランは止め処なく
白濁を注ぎ込む快楽に酔いしれた。やがて欲望の奔流が収まり、子宮に注がれた
あまりの熱さに震えながらもリースは離れようとしない。
「嬉しいんです。しばらく、このままで…。」
そう言われて無碍にもできず、気だるい余韻を味わっていたデュランだったが、
若さと自身を包む膣の脈動にさしたる時を置かず、萎え掛けていた肉塊が先ほど
までの硬度を取り戻した。
「…また大きくなってますね。」
「悪い…。」
リースが少しだけ悪戯を思いついたかのように笑うと
「また、シてもいいですよ。私も最後は、ちょっと…気持ち良かったし。」
そう可愛らしく囁いてくるものだから、デュランに抗う術などなかった。むしろ
欲望のままに再び腰を動かし始めなかっただけ、レジストした方だと言えよう。
「じゃあ今度は…よっ、と。」
「あっ? んンッ!」
その代わりか、身を起こしながら繋がったまま離れないようにリースを抱え、
ベッドの上で胡坐を掻いた。重力に引かれてより深く繋がった衝撃に仰け反った
リースの白い喉が、まるで艶かしく誘っているような気がして思わず舌を這わせ
軽く吸い付いてしまう。汗の味を不快だとは思わない。そのままリースの身体を
揺さぶるようにして、自分の体液が混じった膣奥を突き上げる。
「んぁッ! 深いぃ…んんッあッ!」
「リース。」
「名前…もっと、んぅッ! 名前呼んでぇ…ッ。」
「リース…。」
縋りつくようなおねだりが余りにも可愛らしく思えて、頬に口付け耳を撫でては
何度も名前を囁く。デュランがぐちゃぐちゃの自分の奥に馴染んでいくにつれて
何処かに高く放り出されるような、大砲で打ち上げられる直前にも似た感覚を
リースは覚え始めていた。その爆発は火薬でなく快楽によるもので。
「あぁ…デュラン好き、好きです…んッ、好きぃッ!」
自分でもよく分からない打ち上げの瞬間が近づくのはちょっとした恐怖だったの
だろう。せり上がってくる経験のない何かで自分が失われそうに感じられて、
故にリースは自分の中にある確かな何かを離さないようにして、自分を保とうと
した。確かな、デュランへの純粋な『想い』が、口を衝いて溢れ出していた。
「好きッ、好きぃ……。」
「リースッ!」
素直な気持ちに応えるように、デュランはスパートを掛けて突き上げる。既に
こちらも二度目の限界が近い。次に達する時は出来ればリースも一緒に、半ば
願いにも似た思いから、彼女の最も感じるであろう場所のみをピンポイントに
攻める。ここに来ての乱れ具合を見る限り、それは正解のようであった。最早
リースは『好き』を喘ぐ合間に唱えるでしかない。
「リース…ッ!!」
「す、んむぅ…ッ。」
『好き』はデュランの唇で塞がれる。抱き締め合って、舌同士が絡み合って、
ひとつになって、快感を貪り合う。互いの頭の中がそれ以外の何もなくなり、
膣奥を突かれた衝撃で先にリースが高みに放り出された。
「――――ッッッ!!!!」
「……ッ!!」
膣奥で味わう初めての深い絶頂に全身が痙攣する。絶頂から生み出された今迄で
最大の凄まじい締め付けに、デュランも耐え切れずに果てた。子宮口に先端を
押し付けたまま、大量の精液がびゅくり、びゅくりと幾度も流れ込んでいく。
前のと併せての量に、溢れた精液が繋がった場所から漏れ出しているのが分かる
ほどだった。リースはリースで自分の内側で断続的に起こる爆発を、嬉しくも
愛しく感じながら全て受け止めていた。ずっとこうしていられたらと、益体も
ない事を考えながら頬を自然と雫が伝っていった。
やがて本来は命を紡ぐためにある脈動も終わり、二人は腕の中にいる相手への
愛しさを噛み締めるように深い口付けを交わしていた。今だけは全ての事が、
お互いにとっては些事に過ぎなかった。二人が心地良い脱力感を味わいながら、
連れ立ってベッドに倒れ込むのは、もう少し経ってからの事である。

しっちゃかめっちゃかになったベッドの後始末やらで慌てた翌日、結論から
言えば、リースは多少魔法を扱えるようにはなっていた。コツを掴んだようだが
それがデュランとの一件で得られたかは定かではない。
そしてこの日、寝不足の『三人』はロクに力を発揮できず、月読の塔に於ける
四回目の挑戦も失敗に終わった事をここに記しておく。

終わる?



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