東洞院右近 ◆.UPqm0er1Y氏
空色の透明な瞳をくるりと動かすと、シャルロットは小さなため息をついた。
聖剣を求める六人の勇者たちは今、世界でも有数の商業都市へと足を運んでいた。
バイゼル。
多くの国々から人と物が集まる、活気に溢れた街である。武器や防具は勿論、怪しげなものの取引が開かれる闇市場も数多い。
通りで客を引く露天。
石畳の上を行き交う人々。
勇者達は、装備を整えるための買い物に出ていたのだが――しばらくもしないうちに、そこからはぐれた者が約一名。
云わずもがな、シャルロットである。
「もー、せっかく新しいローブをケヴィンしゃんに自慢しようと思ったのにー」
若草色の裾をつまみながら、シャルロットは子分一号――もとい、ケヴィンの不在を嘆いた。
はぐれた時に見つけた防具屋で見つけたローブ――《ポポイのおさがり》と云う名前だったか――は、古びてはいるものの、そのきれいな若草色の色合いが素敵だった。それに、ゆったりとしていて着やすい。
誰かに自慢するには、もってこいなのに。
ただ――誰かのおさがりと云う点が、少しだけ気になった。
「それにしても……《ポポイ》って、誰でちかねー」
シャルロット自身、《ポポイ》と云う名前に心当たりはなかった。それどころか、店の人も知らなかった。何でも、色々な人の手を渡ってきたらしい。
シャルロットはしばらく小首を傾げながら考えていた。しかし、すぐに飽きたのか、てくてくと石畳の上を歩き始めた。
角に突き当たるたびに考え込み、そして右へ左へと曲がってゆく。必ずしも正しい道順ではなかったのか、同じところをぐるぐると回ったり、元の場所に戻ってきたりしていた。
時々、しゃがんで頭を抱えながらうめく。
そうして、バイゼル一周ツアーを体験した後。
いつの間にかにセピア色になってしまった街並みで、シャルロットはまたもや角に突き当たった。
「うーんと……あ、こっちでち!」
今度は正しかったらしい。
ようやく宿屋にたどり着くと、その食堂では、シャルロットを除く全員が料理に舌鼓を打っていた。
「よう、遅かったな!」
「シャルロット、どこに行ってたの?」
ホークアイは洒脱な笑いと共に声を掛け、アンジェラは少し憤慨したように云った。――もっとも、アンジェラの言葉が優しさの裏返しだと云うことを、シャルロットはよく知っている。
シャルロットはみんなの姿を見つめると、ため息をつきながらぐったりと肩を落とした。
「……ちょっと、お店を見てまわってたんでち。疲れたから、先に寝るでち」
「そう、部屋は階段を上がって二番目だから」
「あーい」
ゆっくりと階段を上り、シャルロットは部屋のベッドに倒れこんだ。――あまり柔らかくもないのに、妙に気持ちいい。
――ローブを自慢するのは、後にするでち。
シャルロットはもぞもぞと毛布の中に入り込むと、すぐに小さな寝息を立て始めた。
重い。布団が、重い。
「うーん……」
シャルロットは低い声でうめくと、もぞもぞと布団の中で身体を動かした。しかし、身体を押さえつける重さは、まったく消えない。
これは悪夢だろうか。
眠気の霧がかかったような頭で考えてみる。しかし、すぐに面倒くさくなってやめた。
「重い……でち……」
寝苦しくて、しかたがない。
シャルロットは顔をしかめて耐えていたが、だんだんとイライラが溜まってくる。
「……うー」
シャルロットは諦めたように、うっすらと目を開いた。
「よう、おはよー!」
真っ先に目に飛び込んできたのは、いたずらっぽい笑顔。それと、黒い瞳と背丈くらいも伸びた茶色い髪の毛。
「……はい?」
「いや、おはよー」
「お、おはよーでち」
眠い目をこすると、ようやく頭の中が晴れてきた。――なるほど、重いと思ったら、この子供が自分の上に乗っかっていたのである。
重いはずだ。
「……って、誰なんでちか――ひゃう!」
ゆっくりと起き上がった瞬間、シャルロットの顔が真っ赤に染まった。
「な、何でハダカなんでちか!?」
「へ? そんなこと、気にしない気にしない」
気さくに笑うその子は、何も来ていなかった。つまり、素っ裸。当然、シャルロットの視線は知らず知らずのうちに、少年のそれに向いてしまう。
「は、早く服を着るでち!」
「だって、オイラの服、姉ちゃんが着てるじゃん」
「シャルロットの……? じゃあ、もしかして、ポポイ、しゃんでちか?」
ゆっくりと訊ねると、少年――ポポイは、にっこりと笑って頷いた。
シャルロットは困ったような顔をして、ポポイに訊いた。
「……恥ずかしくないでちか?」
「姉ちゃん、もしかして《これ》見るの初めて?」
股間のそれに視線をやりながら、ポポイはあっけらかんと云った。
そんなことはないでち、とシャルロットは小さな声で応える。しかし、その顔はまだ真っ赤なままだった。
見たことがあると云うのは、本当だった。ただ、ついついその先も思い浮かべてしまう。
シャルロットの秘密の場所が、じんわりと熱を帯びる。中から、ねっとりとした体液が滲んでくる。
やがて、ポポイもほんのり赤くなりながら、黙って俯いた。その視線の先で、小さなモノが少しずつ天を向いてゆく。
「や、やだな……そんなに見ないでくれよ」
「べ、別に、見てないでちよ」
そう云いながらも、シャルロットの中からは次々と蜜が溢れてくる。
ほんのりと顔を赤く染めながら、シャルロットは小さな声で云った。
「ポポイしゃん」
「なに?」
「シャルロット、ポポイしゃんのせいで身体が熱くなってきちゃったでち。だから、シャルロットのを――」
そこまで云ったところで、シャルロットは毛布と、更にローブの裾をめくり上げた。
その幼い体つきと同じように、シャルロットの秘所には薄い茂みも見られなかった。ほんのりと赤くなったスリットの奥からは、とろとろと透明な液体が滲み出ている。
ポポイに視線で訊ねられると、シャルロットは恥ずかしそうに微笑んだ。
ポポイはゆっくりとそこに顔を寄せた。
そして――
「きゃう!」
溢れた蜜を舐め取るように、ポポイは幼いそこに舌を這わせた。思わず、シャルロットは高い声を洩らす。
「き、気持ちいいの?」
「あう、いいでち……もっと、中も……ひゃあん!」
とろりとこぼれた蜜を舐め取られ、シャルロットは一層高い声で喘ぐ。
くちゅくちゅと湿った音が、シャルロットの心を火照らせる。
ポポイはぷくりと膨らんだ小さなおちんちんを舐めながら、人差し指でシャルロットの中をゆっくりとかき混ぜた。
「んあ、そ、そこは……お、おかしくなっちゃう……!」
頭の中がぼうっとして、何が何だかわからなくなる。
ポポイの指を、きゅうっとシャルロットのそこが締め付けた。――すると、突然ポポイがにゅるんと指を抜いた。
「ね、姉ちゃん……オイラも……」
「いいでちよ……シャルロットの中に――」
もじもじと赤くなるポポイ。シャルロットは優しく微笑むと、ポポイのそれを、自分のスリットに当てた。
先端が、ぬるりとした感触に包まれる。
ポポイはぴくぴくとしゃくりあげるそれを、ゆっくりとシャルロットの中に沈めていった。
にゅる、にゅむむむむ……
「う、うあ……」
泣きそうな顔で、ポポイは少しずつ柔らかな感触を押し分けてゆく。蜜でしっとりと湿ったそこは、熱くぬかるんでいた。
「あう……も、もういっぱいでち」
「姉ちゃんの中、温かい……!」
先端が奥に当たり、二人はふるふると身体を震わせた。ポポイのそれを根元までくわえたシャルロットの分け目から、つうっと雫がこぼれ落ちた。
「じゃあ……動くよ……」
ゆっくりと――ポポイは腰を動かし始めた。
「んああぁ〜ッ!!」
途端に、シャルロットは悲鳴のような声を上げた。その声を聞いて、ポポイのそれが一層かたくなってゆく。
「き、気持ちいいよお! はぁ、すぐに出ちゃうう……!」
「ポポイしゃんのが……! 中をこすってるでちぃ!」
シャルロットの瞳から、ぽろぽろと涙が落ちる。
荒い息。高鳴る胸。
「姉ちゃあん、姉ちゃんの、すっごく気持ちいい……!」
「ポポイしゃんのも、かたくって……ひゃう、あつくって、とっても……あう、気持ちいいでち!」
「おちんちん、ってぇ、云ってよぉ……!」
「ポポイしゃんのおちんぽ、ふうん、すっごく気持ちいいでちよぉ!」
ポポイのそれが奥に当たるたびに、シャルロットの声と身体が跳ねる。二人のぐちゅぐちゅと云う水音が、どこまでも心を高めてゆく。
ポポイはシャルロットの身体に重なるようにしてしがみついた。
二人はぴったりと、小さな唇を重ねた。その間も、ポポイのそれはシャルロットの中を動き続ける。
「ふぅ……ふぅううん」
シャルロットの荒い息が、ポポイの顔に掛かる。
「ぷはっ……」
ポポイはやっと唇を離すと、眉をきゅうんとたわめて叫んだ。
「あぁ、姉ちゃん! オイラ、も、もう……!」
「あっ、出る、ふうん、出るでちか?」
「姉ちゃんの中に、出ちゃう! 出ちゃうよぉ!」
「いいでち! シャルロットの中に……いっぱい……!」
「あっあっ……うあぁっ!」
ぐいっと、ポポイはシャルロットの奥にそれをこすりつけた。
きゅうっと締め付けられて、ポポイは悲鳴と一緒に熱い液体を何度も吐き出した。
びゅく、びゅびゅびゅうっ
熱い迸りを受け止めたシャルロットの身体が、云うことを聞かなくなる。
「ひゃあああぁぁああぁああんっ!!!!」
「ん、んああ、んん!!」
ひときわ高い声で、二人は身体を駆け巡る感覚に悲鳴を上げた。
一番奥を何回も勢いよくたたかれ、シャルロットははしびれるような感覚に身体をびくびくと震わせた。
「ひゃう、ん、あ……あうぅ……」
「あう、うぅ……んあ……」
ぴくん、ぴくん、と身体を震わせるシャルロットの身体の上に、くたっと力の抜けたポポイの身体が倒れこんだ。はあはあと息を弾ませながら、二人はお互いの胸の音を感じていた。
やがて、身体の火照りも冷めた頃。
「ねぇ、ポポイしゃん」
シャルロットは、不意に口を開いた。視線で返事を返してくるポポイに向かって、途切れ途切れに云う。
「なんで……シャルロットの夢の中に、ポポイしゃんが出てきたでちか? シャルロットはポポイしゃんのことを知らないのに……なんで、ポポイしゃんのことがなつかしく思うんでちか?」
「……」
ポポイは少しの間だけ黙り込むと、ぽつりぽつりと話し始めた。
「昔さ、オイラ、聖剣の勇者と一緒に旅に出たんだ」
それは、遠い古の物語。
「つらかったけど、とても楽しかった。でも……一番最後に神獣を倒したときに、オイラ、消えちゃったんだ。オイラは妖精だから、マナがなくなっちゃうと世界から消えちゃうんだって」
「妖精……?」
シャルロットの胸に身体を預けながら、ポポイは遠くを眺めるような眼差しで、呟くように云う。
「仕方がないってことはわかるよ。けど、誰かにオイラのことを憶えておいて欲しいんだ。オイラ、この世界に忘れられたくないんだよ。みんなに忘れられて消えちゃうのが、怖いんだよ……」
ぽろぽろと涙の雫をこぼしながら、ポポイは悲痛な声で呟いた。
「だから、そのローブを見たら、オイラのこと、思い出して欲しいんだ」
「ポポイしゃん……」
シャルロットは、ポポイの頬を伝う雫をそっと舐め取った。そして、優しく云う。
「シャルロットは、ポポイしゃんのことを、絶対に忘れないでち。だから……シャルロットに、ポポイしゃんのことをもっと感じさせてほしいでち」
シャルロットは、自分の唇をポポイのそれに、ゆっくりと重ねた。舌を絡ませあいながら、ポポイの胸の鼓動に耳を澄ませた。
どくん
まだポポイと繋がっている部分が、再び熱を帯びてきた。ポポイのそれが、少しずつ硬さを増してゆく。
シャルロットはポポイのモノを引き抜かないように、ゆっくりと体位を入れ替える。今度は、シャルロットがポポイの上にまたがった。
まとわりつくような《ポポイのおさがり》を脱ぎ捨て、シャルロットはその身体を。そっとあらわにした。
今年で十六を数えるシャルロットだったが、その身体はまだ少女そのもので、凹凸のないなだらかな曲線を描いていた。純真で、無垢な幼い身体。
ポポイはシャルロットの温もりを感じるように、そのすべすべした肌を撫でた。
「まだ、オイラたち、つながってる」
「あ、あんまり見ないでほしいでち」
二人が繋がっている場所からは、白く濁った体液がとろとろとあふれ出てきていた。それを一滴すくい取って舐めると、シャルロットはゆっくりと身体を動かし始めた。――全身で、ポポイの身体を感じ取るように。
「うあ……奥の奥まで当たるでち……」
円を描くように動きながら、シャルロットはポポイのそれを優しく締め付けた。ポポイの身体が、ぴくっと震える。
「ポポイしゃん、シャルロットのこと……ひゃう、感じてるでちか?」
「ん、姉ちゃん、気持ちいいよ……」
中からポポイのモノを、二人の粘液がとろりと伝う。くちゅくちゅと、お互いが交じり合って、快感と動きが一つになってゆく。
気持ちいいからもっと動く。動くからもっと気持ちいい。
シャルロットは身体を震わせながら、少しずつ腰の動きを速めてゆく。湿った水音が、どんどん大きくなる。
「姉ちゃん、すぐに、うっ、出ちゃうよぉ!」
「もうちょっと……ふうん、ま、待つでち……!」
ポポイに中をえぐられるたびに、シャルロットの声が高く跳ねる。
ポポイの胸に手をついて、シャルロットは小刻みに身体を揺らす。何度も何度も、ポポイのそれを感じて高い声を上げる。
溢れた体液が、ポポイの会陰を伝ってシーツをぬらす。
「あっあっ、姉ちゃん、また、オイラっ……!」
涙をこぼしながらポポイが悲鳴を上げる。シャルロットはスリットを指で触りながら、自分をどこまでも高めてゆく。
二人の鼓動が重なって一つになる。
「も、もうダメだよう! で、出るうぅぅうぅっ!!」
「シャルロットの中に、ひあう、全部、全部出していいでち!」
シャルロットのそこにぎゅううっと締め付けられ、ポポイはたまらずにたまったモノを残らず吐き出した。
びゅくっ! びくびく、びゅるうっ!
「ふあああああああぁぁぁあぁあんんっ!!!」
ポポイの熱い体液がシャルロットの身体を迸った。ポポイが小刻みに身体を震わせるたびに、シャルロットの頭の中で火花が散る。
しびれるような感覚が全身を駆け巡ってがくがくと身体を震わせる。
「ふうん、ふあう、うああうっ!」
ポポイのそれが何度も何度もしゃくりあげ、シャルロットの中に勢いよく流れ込む。どろどろと熱いそれは、シャルロットの中をいっぱいに満たしてゆく。
シャルロットの身体が弓なりにそって、しびれるような感覚が頭を真っ白に染める。
そして――最後に訪れた、ふわりとする浮遊感。
シャルロットは、ポポイの身体の上にくったりと崩れ落ちた。
ポポイの小さくなったモノが、シャルロットからつるりと抜けた。その中から、とろとろと白い液体が流れ出てくる。
二人は荒く呼吸しながら、もう一度、軽く触れるように唇を重ねた。
ポポイはその黒い瞳で、シャルロットの顔を見つめながら云った。
「オイラのこと……忘れないで……」
「絶対……絶対に、忘れないでち……」
身体が、鉛のように重たい。まぶたが、ゆっくりと降りてくる。もっと一緒にいたいのに、自分の身体が云うことを聞かない。
「ポポイしゃん……また……どこかで……」
遠のいていく意識の中、消え入るような声で云った。
そうして――シャルロットの意識は、昏い闇の中に堕ちた。
「……ロット、シャルロット」
頭の奥に、誰かの声が響いてくる。知っている人の声みたいだ。
身体を揺り動かされて、シャルロットは重いまぶたをゆっくりと開いた。
「シャルロット、おはよう。遅いから、起こしに来た」
抑揚のない、訥々とした話し方。それでいて、どこか優しさを含んだその声音。
「ケヴィンしゃん……おはよーでち」
半分寝惚けたまま上半身を起こすと、シャルロットはぴょこんと頭を下げた。帽子のぽんぽんが、だらんと揺れる。
「朝ごはん、おいしいぞ。早く、食べに行こう」
「うー、分かりまちた……」
その言葉を聞くと、ケヴィンは満足そうににっこりと笑った。その笑顔を見ると、ふと夢の中の言葉が思い浮かんできた。
「ねぇ、ケヴィンしゃん」
「ん、なんだ?」
きょとんとするケヴィンに、シャルロットは静かな声で、ゆっくりと云った。
「ケヴィンしゃんは……もし、この旅が終わっても……シャルロットのこと、覚えていてくれるでちか?」
ケヴィンは少し考えた後、真剣な顔をして答えた。
「当たり前は、聞かなくていい。大好きなシャルロットのことを、忘れたりなんかしない」
「ほんとうでちか?」
「ほんとう」
「ずっと、覚えていてくれるでちか」
「ずっと、ずっと……オイラが死ぬまで」
「……そうでちか。シャルロットも、ケヴィンしゃんのこと、絶対に忘れないでち」
「なんか、照れる」
ほんのりと顔を綻ばせて、シャルロットはベッドから降りた。恥ずかしそうに頭を掻くケヴィンに、元気いっぱいの声で叫んだ。
「それじゃ、朝ごはんを食べに行くでちよー! 昨日の夜から何にも食べてないから、おなかペコペコでち!」
「おう、オイラも、腹ペコ!」
シャルロットとケヴィンは、どたばたとあわただしく部屋から出た。そして、転がるように階段を降りてゆく。
若草色のローブの裾がゆれて、可愛らしい笑い声と一緒に、遠ざかって行った。
<了>