東洞院右近 ◆.UPqm0er1Y氏
「すっげえ、ピカピカだー」
「悪趣味だけど……少し、持って帰りたいわね」
そんな突き刺さるような光に目を瞠るポポイと、眉を顰めながら目を細めるプリム。――そして、あんぐりと口を開けて絶句するランディ。
《ゴールド・シティ》――領主マンモンによって治められている、金色(こんじき)に覆われた街。
北に聳え立つ光の神殿は、光の精霊、ウィル・オ・ウィスプの守護を受けていると伝えられている。
「……とりあえず、どうしようか」
うっすらと渋い表情で、ランディがおずおずと口を開いた。
その瞳はまだ、うっすらとした狼狽が浮かんでいて、何やら心の中で自問自答してるようでもある。
しかし。
「オイラ、疲れたー」
むう、と両のほっぺを膨らませながら、ポポイが即答した。――さっきとは打って変わって、辺りに広がる黄金を、道端の石ころと同じような眼差しで眺めている。時折、
つま先でその欠片をちょんちょん、とつついてみても、すぐにつまらなそうな顔をして、遠くへ蹴っ飛ばしてしまった。
呆れ混じりの苦笑いを浮かべて、ランディはもう片方の仲間に問いかけた。
「プリムは?」
「あたしは……少し、この街を調べてみる。だって、絶対に変よ、この街」
少しだけ声を低めて、プリムは穏やかならない様子で呟いた。――その瞳は鋭く、険しい。
言外の意味を察したのか、ランディも剣呑な表情で頷いた。
「じゃあ、僕はポポイを宿に連れてくよ。少し休んで、買い物も済ませておくから」
「解ったわ。――それと、しばらく聖剣を貸して」
「……何に使うの?」
「大雑把に云えば、当面の資金稼ぎってトコね」
きらりと目を光らせて、プリムはうふふと笑った。――それを見たポポイが、ちょっぴりだけ怯んだ。
「ね、ねぇ、早く宿に行こーよ、あんちゃん」
「――それじゃ、はいこれ」
使い込まれた聖剣を、プリムは神妙な手つきで受け取った。
「夕方ぐらいには、宿屋に戻るから」
そう云い残して、プリムは立ち並ぶ建物の間に消えていった。――その足取りは、気のせいか、妙に弾んでいたような気がした。
「あんちゃん、早く行こーよ」
「……うん、お風呂にでも入ろうか」
袖を引っ張るポポイに応えると、ランディは二人一緒に宿へ向かって歩き出した。
「あんちゃーん、早く来いよー!」
浴室の中から、ポポイの声が聞こえる。今行くから、と応えながら、ランディは身につけていたものを脱いでいるところだった。
宿屋にある客室の一つ――やっぱり、所々に金の装飾が目立っていた。少しだけ成金趣味のような気がして、利用するのにも気が引ける。
ズボンを下ろして、準備完了。
戸を開けて中に入ると、視界が暖かな湯気で霞んだ。手近にあった桶で身体にお湯を浴びせて、ランディは湯船の中にゆっくりと身体を沈めた。
独りでに出てくる、ため息。
「気持ちいいだろ?」
「うん、ぽかぽかするね」
じんわりと身体を包む、優しくて温かな感触。――ふと横に目をやると、ポポイも肩までお湯に浸かりながら、あどけない表情を緩めていた。
「ういー、気持ちいー」
にへら、と相好が崩れている。無防備すぎて、見ていると心配になるような……それくらい、邪気のない表情。
ざぶざぶと辺りを泳ぐと、大きく息を吸って、突然湯の中に潜る。――と思うと、ランディの目と鼻の先に顔を出して、無邪気な笑い声を上げる。それにつられて、ランディも笑みを零した。
ほんわかと流れていく、緩やかな時間。陽光が差し込む窓もなくて、時間の感覚も、何だか頼りない。
湯気でぼやけた柔らかな光が、浴室を温かく照らしていた。
「あんちゃん、きもちいいよー」
縦横無尽に浴槽を泳ぎ回るポポイに向かって、ランディはちょっぴり心配するように云った。
「ポポイ、のぼせちゃうよ」
「えー、まだ大丈夫だって。オイラ、元気いっぱいだもーん」
「そう云って、いっつも危ない目に遭ってるじゃないか」
ランディが軽く力を込めた口調で嗜めると、ポポイは口を尖がらせて、観念したようにため息をついた。
「わかったよー……そんじゃ、身体でも洗うかな」
ポポイはぶくぶくと潜水して、浴槽の端にひょっこりと頭を出した。水音と一緒に上がって、洗い場の椅子にちょこんと腰を降ろす。
それを確認すると、ランディは目を閉じて、深く息を吐き出した。
――それにしても……贅沢だなー。
いつまでも温かいお湯、広い浴室、それに、石鹸まであるとは。旅をしている間に、こんな贅沢をさせてもらえるなんて、思ってもみなかった。
瞼を上げてポポイの方を眺めると、タオルでごしごしと、身体を擦っている最中だった。
「あんちゃん、いい匂いがするよ」
「うん、石鹸に何か入ってるのかな」
白い肌に無数の泡をつけながら、ポポイは全身を丁寧に擦っている。――手、足、頭……そして、きちんと大事な場所も。
別に、男同士だから見られても構わないだろう。そう思って視線をやると……。
「あれ?」
「ん? どうかした?」
小さな呟き声を耳ざとく聞きつけて、ポポイが小首を傾げる。何でもないよ、と誤魔化しながら、ランディは違和感の正体を考え始めた。
案外、すぐにそれは見つかった。
「ポポイ」
「なーに、あんちゃん?」
「ポポイの……その、あそこ、何か足りないような気が……するん、だけど」
「えー、そう?」
ポポイは眉を顰めると、ランディに向かって股を開いた。――その瞬間、思わずランディは目を丸くした。
まだ小さくて、皮に覆われたおちんちん。そして、その根元には――睾丸ではなく、一本の筋が走っているだけだった。
「ポポイ……女の子なの、男の子なの……!?」
「うるさいなー」
思ったより大きな大きな反響に顔を顰め、ポポイはむすっと頬を膨らませた。
「オイラたち、みんなこうだったから、男とか女とかなかったよ?」
小難しそうな顔をしながら、ポポイは自分の大事な場所をしげしげと見つめる。
ランディは、思わず、ごくりと喉を鳴らした。
「あ、そう云えばさ」
何かを思い出したように、ポポイは唐突に云った。――そして、椅子から立ち上がって、スリットをランディの目の前に晒した。
にゅるり、とポポイの白い指が、スリットの奥に沈んだ。中性的な微笑を浮かべながら、小さな声で囁いた。
「ここ、指とか入るんだ。――もしかして……おちんちんも、入るのかな……?」
急に、二人の顔がほんのりと赤く染まった。――ランディの腰の辺りに、何かむずむずした感触が集まって、身体が急に熱を帯び始めた。
ポポイの小さなそれが、むくりと大きくなっていく。先端を覆っていた包皮が剥けると、ピンク色に色づいた亀頭が姿を現した。
「あんちゃん、やってみる?」
誘うような、ポポイの微笑みに――ランディはもじもじしながら、こくんと頷いた。
ざぶ、と水音を立てて、ランディは浴槽から上がった。――しなやかで引き締まった体躯と、股間で立ち上がったモノが、水の中から顕になった。
「……どうすれば、いいの?」
「そこに、寝っ転がって。後は、オイラに任せろ」
戸惑うランディに、ポポイは迷うことなく即答した。――ポポイの云うとおりに、ランディは洗い場の床の上で仰向けになった。
背中から、ひんやりした感触が伝わってくる。天井を向いたそれが、ひくりとしゃくり上げた。
「へへっ、あんちゃんの、こんなに硬くなってる」
「だ、だって……」
ポポイにしげしげと自分のそれを見つめられて、ランディは口の中でもごもごと呟いた。――恥ずかしさのあまり、ろくにポポイの顔を直視できない。
白磁のようにすべすべの肌と、あどけない顔立ち。男の子のようにも、女の子のようにも見えて、不思議な気持ちを覚えてしまう。
「じゃあ……オイラのここ、舐めてみる?」
そう云って、ポポイはランディの顔面――その上に、大事な部分をさらけ出した。いつの間にか、そこからは透明な液体が滲んでいた。
少しだけ、甘い匂いがした。
「な、舐めるの?」
「だって、柔らかくしとかないと、あんちゃんのが入んないよ」
当たり前のように断言するポポイに、ランディはごくりと喉を鳴らした。微かな後ろめたさが、更に胸をどきどきさせているようだ。
「じゃ、じゃあ、舐めるよ」
一言だけ呟いて、ランディは柔らかなスリットに、恐る恐る舌を這わせた。
「あ、あんちゃん……」
滑らかなその場所に触れた瞬間、ポポイが熱いため息を洩らした。
ねっとりした液体と唾液が混ざり合うのを感じながら、ランディはポポイの粘膜をくちゅくちゅとこすり上げた。ぬるぬると潤ったスリットの中は、ポポイが喘ぐたびにひくひくと脈打つ。
「ふ、んん……あ……はう……」
敏感なその場所をくすぐられて、ポポイが思わずランディの頭をそこに押しつける。――スリットを割り開いて中の蜜を掬い取ると、上ずった悲鳴が耳に届く。
「んっ! それ、気持ちいいよう……ふあ、はん……あんちゃん、オイラの、おいしい……?」
応える代わりに小さな突起を舌でつつくと、ポポイの小さな身体がびくんと震えた。
初めての感覚に、頭がとろけそうで――ランディは舌を這わせながら、ポポイの小さな秘芯を夢中で味わっていた。
しかし。
「あんちゃ、んん、もう、いいよ……」
ポポイがため息混じりに呟いて、腰を後ろに引いた。――ランディの舌が離れる瞬間、透明な蜜が糸を引いて、すぐに切れた。
「どうかしたの?」
「何だか、ちんちんがむずむずしてきたから……そんじゃ、あんちゃんの、入れるよ」
そう云って、ポポイはランディのモノの先端に、熱く潤ったスリットを触れさせた。――亀頭を包む粘膜の感触に、ランディの腰が跳ね上がりそうになる。
「ポポイ、ちょっと――」
「そんじゃ、行くよ……んっ、はあ……」
ゆっくりと――ポポイが腰を降ろしていく。ぬるり、とランディのモノが、小さな割れ目を割り開いて中に沈んでいく。
「ん、あっ……はうっ!」
肉茎を熱い粘膜でこすられて、ランディは思わず悲鳴を上げた。脳裏で明るい火花が散って、腰が独りでに跳ねてしまいそうな感覚。
「あんちゃんの……熱くて……硬い、よおっ」
時折、声を弾ませながら、ポポイがうっとりと呟く。熱い吐息が、風呂場の湯気に溶けた。
そして。
つん、と先端がポポイの一番奥に当たった。――二人は身体をぶるりと震わせて、荒くなった呼吸を整えた。
「本当に……は、入っちゃった……」
焦点の合わない瞳で、ランディがうわ言のように声を洩らすと、くすくすと軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「あんちゃん、ぼうっとしてる」
突然、呆然と宙を見つめるランディの視界に、ポポイの顔が現れた。どうやら、ポポイが倒れこんできて、二人の身体が密着しているらしい。触れ合っている胸からは、ポポイの鼓動と、温かさが流れ込んでくる。
いつまでもこうしていたい――でも、何だか心と身体がむずむずする――ぼんやりと霞む頭の中に、取り留めのない言葉が浮かんで、すぐに消える。
「ポポイ……何だか、ふわふわしてるよ」
「じゃあ、もっともっと、気持ちよくさせてやるよ」
触れるように軽く唇を重ね、ポポイがうっすらと目を細めた。瞳を白黒させているランディを尻目に、ゆっくりと上体を起こす。
「何するの?」
「ん? こーする……の!」
不安げに尋ねるランディに応えながら、ポポイはぐいっと腰を押しつけた。
「ん、うあっ!」
「ふあ……くうっ」
予想もしていなかった感覚に、二人は高い悲鳴を上げた。
「何、気持ち……変になっちゃ、あ、あううっ! むずむず、して……いい、よおっ!」
「んくうっ、あんちゃんの……熱くて、硬い、ん、んあうっ!」
腰を動かすたびに、熱い電流が身を焦がす。予想もしていなかった感覚に、冷めた理性がどろどろと煮立っていく。
ポポイの中からランディのモノが現れると、その弾みで中から粘液があふれ出す。ぬるりと湿った中をこするたびに、二人の声が高く跳ねる。
二人の間にある境目が、熱い思いで蕩けて混じりあう。
「ポポイ、何か、どきどきするよおっ!」
涙が出そうなくらいの強烈な感覚に翻弄されて、感情が溢れ出る。頭で言葉を考えても、途切れ途切れの想いが素直に形になるだけで。
切ない。そして、怖いくらいに――気持ちいい。全くの未知の感覚が、下半身から這い上がってきて、頭の芯がじんわりと痺れる。
しかし。
「あ、あんちゃん、ちょっと、待って……」
突然――ポポイが、動きを止めた。苦しげに眉を撓めて、身体を震わせている。
ランディは荒い呼吸の合間に、熱を帯びた口調で不平を洩らした。
「ポポイ……もっと、動いてよ」
「だって、何か、ちんちんから漏れちゃいそうなんだよう」
ポポイの小さなおちんちんが、ぴくん、と脈打った。ランディが柔らかく握ると、ポポイが涙をこらえるような声を零した。
「あうっ、だ、だめぇ……」
ランディはいたずらっぽい笑顔を浮かべると、上体を起こしてポポイの耳元で囁いた。
「大丈夫だから……我慢したら、もっと気持ちいいからね……」
湿った感触を感じながら、ランディは熱くなったポポイのモノをこすり続ける。手の中でぴくぴくとしゃくりあげるそれは、まだちょっぴり、柔らかい。
さっきからやられっ放しだったから、今度は僕の番だ。
先端から滲み出る粘液を、亀頭の上に満遍なく塗り広げる。にゅるにゅると敏感な場所をこすられて、ポポイが段々と息を荒くしていく。
「んくっ、も、もう、出ちゃう、お漏らし、しちゃうよおっ!」
やり場のなくなった手で頭を抱えたまま、ポポイはふるふると身体を震わせる。その動きに合わせて、湯気を帯びた栗色の髪が、さらさらと揺れた。
「ああっ、だ、だめえっっっ!!!」
びくん、とポポイの身体が一際大きく震えた――その瞬間。
びゅくっ、びゅうううっ、びゅくびゅくっ
ランディの手の中で、ポポイのそれが弾けた。透明な粘液が飛び出して、ランディの下腹に降り注ぐ。
――その熱い感触に、ランディはもっともっと手を動かして、ポポイのそれをこする。
「んっ、ああっ、ふあんっ!」
ポポイの声に合わせて、小さなおちんちんも一緒にしゃくり上げる。ぴゅくぴゅくっ、と小刻みに跳ねながら、幼くて透き徹った精を吐き出し続ける。
きゅっきゅっ、とポポイの粘膜が締めつけてきて、ランディはこみ上げてくる何かを懸命にこらえようと、奥歯を噛み締めた。
やがて――。
ポポイのモノが律動を止めた。手を濡らしている精を舐めると、少しだけほろ苦い味が口に広がった。
「オイラ、どうしちゃったんだろ……」
少しだけ焦点のずれた眼差しのまま、ポポイが茫然と呟いた。その表情を目を細めて見つめながら、ランディは小さな身体を抱きしめた。
「気持ちよくなると、男の人は、白いおしっこが出るんだよ」
「でも……オイラの、白くないよ……」
ため息と一緒に吐き出された言葉に、ランディはゆっくりとした口調で応える。
「ポポイは、まだちっちゃいからね」
「じゃあ、あんちゃんのは、白いの?」
「……前に出たときは、白かった、けど」
ほんのりと赤く頬を染めて、ランディは低い声で呟いた。――それにつられたのか、ポポイもランディから視線を外して俯いた。
「じゃあ……あんちゃんが、白いのびゅくびゅくって出すの……見せて、くれよ」
ためらいがちにそう呟くと、ランディの状態を押し倒して、ころりと身体を反転させた。ちょうど、ランディがポポイを押し倒したような姿勢だ。
「あんちゃん、もう一回、いいでしょ?」
「……」
応える代わりに――ランディはポポイの奥を目がけて腰を突き出した。刹那、さっきとは全く違う感覚が、二人の身体を貫いた。
「ん、んくうっ……さっきと、何か、ふあ……違うよ、んっ!」
「あんちゃんのおちんちん、硬くって、ひゃんっ! 中が、こすれて……る、のおっ!」
ぐいぐいと中を抉るたびに、甘酸っぱい感覚が身体を駆け巡って、頭の中がとろとろに蕩けてしまいそうになる。快感の波が押し寄せるたびに、ランディの腰が勝手にポポイを貫いてしまう。
加減しようと思っても、理性の箍はもう外れていた。
「い、いいよっ、おちんちんで……中、いっぱい、だよっ……」
「はっ、ちんちんが、溶けちゃ、うあっ……だめぇっ……!」
むせ返るような熱気の中で、二人の身体は更に熱く火照っていた。視界は涙で潤んで、熱い吐息の混じった湯気で霞んでいく。
身体中の皮膚が、ぞくぞくと粟立つ。――止まらない。
「ポポイ、いい、あっ……にゅるにゅるして、変な、うあっ、い、いいよう……!」
「ああっ、や、そんなに……そんなにしたら、はっ、おかしくな、なっちゃう、んああっ!!」
ランディがスリットの奥に腰を打ちつけるたびに、小さなおちんちんが下腹に当たって、ポポイが悲鳴のような声を洩らす。二人から溢れ出た粘液が混じりあって、溶け合って……ただ、一つになって、どこまでも高く昇りつめていく。
「ポポイ……気持ちよすぎて、もう、出ちゃう、よおっ!」
「いい、いいよお、ひうっ、んっ……あんちゃんの、全部、全部、欲しいのおっ! ふあぁんっ!」
徐々に、上り詰めていく感覚。堪えきれない何かが背筋を伝って、胸が締めつけられるような感覚がちりちりと全身を焦がす。
本能の赴くままに、身体を絡ませる二人。――言葉なんて、もう、必要ない。
「あっ、はうっ、もう……だめぇっ……!」
「出して……オイラに、あんちゃんのがびゅくびゅくってなるところ、みせ、てぇっ!」
上ずって、か細い声で叫びながら――二人は、ついに限界に達した。
「ん、んああっっ!!!!」
びくびくと律動するそれを勢いよく引き抜いて、ランディは勢いよく白い激情を迸らせた。
びゅく、びゅううぅぅううぅっ! びゅびゅっ、びゅうっ、びゅくびゅくっっっ!!!
数瞬だけ遅れて、ポポイの小さなおちんちんからも、透明な精液が吹き上がって、白い下腹を汚した。熱い熱い二つの思いは混じりあい、震える身体に降りかかり続ける。
「あ、熱い、熱いよっ、あんちゃんの、びゅくびゅくって、熱いのおっ!!!!!」
身体を弓なりにそらして、ポポイは噴きあがる思いを連ねる。切なげに眉を撓めて、双眸を閉じるたびに、雫が滴々と眦(まなじり)を伝って零れた。
身を焦がす快感の波におぼれながら、ランディは身体をがくがくと震わせながら、ポポイに向かって熱くたぎった精を吐き出し続ける。
「んっ、んううっ、は、ああっ……」
最後の一滴を搾り出すように吐き出すと――ランディは、糸が切れたようにポポイの横へ倒れこんだ。
辺りを包む、束の間の沈黙。二人が忙しく呼吸をする音だけが、僅かに反響している。
快楽の余韻が気だるさに姿を変えて、身体全体にべったりと纏わりついている。そのせいか、酷く身体が重い。
ぼんやりと揺蕩う(たゆとう)時間に身を預けて、二人はしばらくの間、虚空を見つめながら息を弾ませていた。
やがて――。
「……ポポイ」
「なーに?」
少しだけ甘さを含んだ声に、ポポイはランディの方を向いて言葉を返した。――その視線の先では、ランディがまだ熱が冷めていない眼差しで微笑んでいる。
ランディは、独り言のように呟いた。
「疲れちゃった……ね」
「うん」
ほろ苦さを含んだその声音に、ポポイは小さな声で応えたが……でも、と先を継いで言葉を続けた。
「楽しかったよ――とっても、とっても」
「……よかった」
ランディは、ほっと安堵のため息をついた。しかし、それを見つめるポポイの瞳が、きらりと黒く瞬いた。
「そう云えば――」
ランディの耳元に顔を寄せて、吐息混じりの声音で囁く。
「あんちゃんの……オイラの中で、出したら……もっともっと、気持ちいいと思うんだけど……」
鈴の転がるような声に耳をくすぐられて、ランディの心臓が再び、どきどきと高鳴り始める。声に源に顔を向けると、妖しげな微笑を浮かべるポポイの黒瞳と視線が合った。
「ねぇ、やってみようよ……」
腰の辺りに、再び甘酸っぱい感覚が集まるのを覚えながら――ランディは気だるさを振り払って、身体を起こした。
「――で、コレは一体どう云うワケ?」
棘を剥き出しにした視線の先では――タオル一枚の格好で茹で上がったランディとポポイが、ベッドの上で伸びていた。
「ちょっと……のぼせちゃって……」
「見りゃ解るわよ! ――まったく、買い物も行ってないみたいだし、どう云うことよ!」
プリムは不機嫌そうに片眉を上げて、じろりと二人を睨みつけた――しかし、そんな力の籠もった視線を受けても、二人の反応は弱々しい。
「うあ、あたまガンガンするー」
「……あれ、どうして霧が出てるんだろー」
怒りを通り越して、逆に哀しくなってくるような光景だった。
はあ。
プリムは苛立ちと一緒に、小さなため息を吐き出した。
「一体、風呂場で何をしてたんだか」
その言葉を聞いた瞬間。
突然、二人の顔が更に赤みを増した。――目を白黒させると、明らかに不審な挙動を繰り返し始める。
「何よ、どうかしたの?」
「いや、そ、その別に、えっと」
「ななな、なんにも、普通だったよ」
湯気でも噴出しかねない勢いに、プリムは眉間にシワを寄せて首を傾げた。――しかし、すぐに気を取り直したようにため息を吐く。
「まあ、いいけど。――それにしても、二人共、顔真っ赤よ? 水をもらって来るわ」
よっぽど長く風呂場にいたのね、とつけ加えながら、プリムは部屋を出て行く。――が、ひょっこりと戸口から顔を出した。
「それと、そこにある袋――絶対に、触らないでね」
部屋の片隅に置かれている袋――何やら、凸凹している――を指差して、プリムは軽くウィンクした。そして、てくてくと階下に降りて行った。
扉が閉まった瞬間に、二人は安堵のため息を洩らす。
「バレるかと思ったー」
「うん、冷や冷やしたよ」
身体がひんやりと冷めていくのを感じながら、二人はくすくすと笑った。
「また……してくれないかな」
「あんちゃんがそう云うなら、大歓迎だぜ」
まだほんのりと赤い顔を冷ましながら、二人はプリムが帰ってくるのを待っていた。――窓から流れ込む、涼やかな風に身を委ねながら。
ちなみに。
プリムが持ち帰った袋の中から、大量の黄金の欠片が見つかることになるのだが、それはまた別のお話。
<了>