少女を見下ろしていた。
 その姿は部屋全体を照らす昼白色の蛍光灯によって、余すことなく彼の瞳に映る。着用していた袖の短いシャツに膝丈のハーフパンツという夏仕様の軽装は、すでに少女の手の届かない場所に放られていた。
 遊び盛りの年齢にしては日焼けのない白い肌を晒しながら、少女は胸をゆるく上下させるのみで、静かに瞳を閉じている。青年は、その薄く浮いた左右の腰骨を両手で下になぞり、残っていた布に指を掛けると足の曲線に沿って引き抜いた。
 一糸まとわぬ肢体は、第二次性徴期が暫く先とひと目で分かる、子どもの姿そのものであった。小柄な体つきに華奢な手足。胸には膨らみなどなく、寸胴と表現するに相応しいなだらかなラインを腰まで描く。その下には控え目な尻肉が敷かれ、無毛の恥部がそっと佇んでいた。

 充分に眺め終えた青年は、横たわる少女に覆い被さった。それでも目を覚まさない。彼の重さを受けても決して軋む音などしない、上質なベッドで眠っていた。
 数時間前の別れ際、彼がこの部屋の前で与えた飴玉。そこに仕込んだ薬が効いている頃だった。
 飴も薬も、目の前の少女より幾つか年上の女子たちが作ったものと伝え聞いていた。……幼少期から才能が突出する子どもは、少女に限らず稀に存在するものだ。
 神の祝福を受けた少女たちに間接的な縁を作った青年は、自嘲気味に口の端を歪めた。引き合わせた方法は、限りなく悪用に近かった。


 この部屋に送り届ける前に青年が自室に寄っても、連れ出した詫びにと飴を口に放り込んでも、裏に忍ばせた悪意を少女は感じ取れなかった。
 彼女は料理に関わるもの以外に気を向けられないのだ。“厨房までの道を聞いた相手”“晩餐会の主役たる子息”“料理を気に入った人”――どれもが彼であったのに、反応の違いが如実に物語っていた。
 幼くして発現した才能がそうさせたのか。料理に対してあまりにも一途なさまに、青年はある種の聖域すら感じたのだった。

 ――だから、崩したくなった。
 料理しか見ていない彼女の世界に、自分をねじ込みたくなった。
 それで今に至っているのだ、と自らの影を落とした少女の肌を眺めて思う。数時間を過ぎても、発現した意思は変わらなかった。
 だが彼の望むようには、心を侵せない。感知する機能が発達していない彼女では、心の視界に入らない。
 ならば身体を、と思い至るのは実に短絡的であった。しかしそれでも……むしろ物理的に彼女の領域を侵す好機は、今以外にありえなかった。


 結局、理性より劣情が勝ったのだ。
 才能に恵まれ注目を集める者に手を出すより、凡庸な者を手篭めにするほうがリスクが低かろうと。万が一、これが揉み消せないような事態になったとしても。欲するのがこの少女である以上、代わりなどいない。
 ……おあつらえ向きに、ここへ来たのが悪いのだ。飛んで火に入る夏の少女。
 少女にとっては短期の寄宿先でも、青年からすれば自宅の一部だ。
 少女にとって青年は、ようやく顔を覚えた程度の客、あるいは“師匠”と馴染みの客の縁者に過ぎないだろう。しかし彼からすれば、彼女は今や特別な存在だった。

 間もなく日付が変わる。青年の誕生日が終わる。
 青年の名は塔和灰慈。超一流企業・塔和グループの次期会長と目される跡取り息子。
 少女の名は灯滝実ノ梨。およそ10年後に、“超高校級”集う希望ヶ峰学園の78期生となる料理人。
 真夏の深い夜に灰慈が作った秘密は、誰にも知られることはなかった。
 相手となった実ノ梨ですら、真実に気付くことはなかった。





 灰慈が上からすっぽりと実ノ梨を覆い抱きしめても、彼女からは寝息しか返ってこなかった。
 着衣を脱がすだけでなく、自分の重さにも圧迫感にも動じない。子どもでも服用できる眠剤、とやらの威力を思い知る。不眠に悩む子どもを救うはずの薬がこんな形で使われているなど、作り手は想像もしていないだろう。
 ともあれ、上々の効果に安心感が増す。顔を上げ、灰慈はあらためて実ノ梨の顔を間近に見つめた。
 彼女の髪は細くもしなやかで、手で梳くと指の間をさらさらと滑る。
 頬から顎にかけて撫でると、皮膚は柔らかくもしっかりと反発し、手が歓んだ。

 実ノ梨の小さな唇に、唇を押し付けた。
 まず間違いなく、彼女のファーストキスだろう。自覚がなければ数に入らないかもしれないが、知らぬうちに初めてを奪っていると思うと、心が薄黒い色に満たされる。密やかに終えると、自然と口の端が上がった。
 灰慈の唇が、実ノ梨の唇から下っていく。首筋から胸元へ。どこまでもきめの細かい肌だった。
 胸の頂となる場所はまだ、ほんの小さな突起でしかない。未発達の周りを指でくるくると弄って、中心に口付けた。

 少女の身体は全体的に肉付きが薄いために骨が近く、細いが、腹部だけは少しばかり丸っこく感じる。実ノ梨は、小さな体内に必要な内臓を詰め込めばこうなるという、この年齢のお手本のような体型をしていた。
 脇腹も臍の周りも触れればそれぞれに心地よく、灰慈は静かに興奮を高めた。そして唇を落としながら、さらに下へ向かう。
 どこに鼻先を埋めても彼女から化粧や香水の匂いは一切しない。少女は添加された女の香りなどしない。ほのかにボディソープと風呂上がりの汗の匂いが混ざる実ノ梨のそれは、官能とはおよそ対極にあった。
 ――灰慈はそんな少女を、これから穢すのだ。


 足の付け根まで辿り着くと、灰慈は秘部に鼻をつけたまま、深く空気を吸い込んだ。
 内からも女の匂いはしなかった。石けんの香りに混じって少し小便くさいのが、この状況をいっそう生々しく感じさせた。
 顔を離し、手を遣る。すべすべの恥部は茂みを掻き分ける手間もなく、指ですじをなぞることができた。年齢に違わず陰核も膣口も小さく、触れても濡れた気配はない。まさしく未通女という穴だった。
 しかしわずかな発汗による湿りだけでは、奥を触るには差し支える。

 そこでようやく灰慈は服を脱ぎ捨てた。実ノ梨の着衣だったものと似たような軽装が抜け殻となってくたりと床に落ちるが、気も留めず、ポケットに忍ばせてきた小瓶を開けて彼女の身体に粘性の液体を垂らした。
 潤滑液を薄い胸からぽってりとした腹、そして幼い秘部から華奢な太ももにかけて、丹念に伸ばしていく。滑りの良くなった肌の感触を掌に受けて、いっそう昂ぶる。逸物はとうに勃ち上がっていた。
 欲情に対象の年齢は関係ないのかもしれない。あるいはそういう性癖なのかもしれない。ちらりと考えたが、じきに霧散した。……実ノ梨を感じるのが先だった。


 再び灰慈は彼女の上唇を、下唇を、順番に食む。舌先で唇をなぞっても、一向に反応しない。しかし喚かれるよりも断然良かった。
 潤滑液でいっそう心地よくなった実ノ梨の肌に片手を這わせながら、灰慈は少々強引に唇を舌でこじ開けた。歯磨きの薄荷の名残を感じる口内。歯列をなぞると下のほうが凸凹としていた。……生え替わりの時期かと、自身の薄っすらとした記憶から察した。
 乳歯に触れた後、解き放たれた舌で舌を嬲れども、彼女はされるがままだった。

「んぅ……はっ……」
 突如声が上がって、灰慈はビクリと身を起こした。眉をしかめて息を上げる様子からして、充分な呼吸ができずにいたらしい。それほどに夢中だったのだ。
 幼い呻きは、そそる声色だった。深い口付けと相まって、彼の逸物をいっそう熱く硬くさせた。
 堪らず、灰慈は実ノ梨の身体に擦り付けた。唇を触れ合わせる位置に灰慈の身体を置くと、肉棒は彼女の膝近くを掠めていた。
 潤滑液に塗れた手で何度か扱いてから、再び実ノ梨の脚に持っていった。彼女の太ももからもぬめりを膝まで持ち出して、幼稚な自慰のように男性器を押し付けては緩く腰を動かす。決定的なものがない鈍い快感だが、先に唇を堪能するには丁度いいアクセントだった。

 時折、ん、ん、と鼻から苦しげな声が抜けていく。構わず舌ごと甘い唾液を啜り、自分のそれと混ぜて彼女に押し込む。少女は意識もなく灰慈の唾液を嚥下した。
 言葉も交わさず、未だ肉体は交わらず、しかし混ざるはずのないものが混ざり、すでに彼女の中に入り込んでいる。しゃぶり尽くす品のない音も、漏れ出る声も、灰慈の独占だった。実ノ梨の小さな口など容易く蹂躙してしまう。
 存分に舐って唇を離すと、実ノ梨はしばらく呼吸を荒げていた。その口からこぼれた唾液が明かりに晒されて光る。眠って垂らしたものには見えず、空腹で待ちわびる犬の口元のようだと思った。
 ……待てないのは、飢えているのはこちらだというのに。
 一息つくと、灰慈は口付けの名残を舐め上げた。




※続かない※


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