「あ、エア兄いた」
「何だ、あの子
屋上で作業中の俺に声をかけたのは、あの子だった。
「えっとね、渡したいものがあって…」
手には可愛らしく包装された小さなパッケージ。それを、俺にくれるのだという。
「今日はバレンタインデーだから、兄さんにも!いつもありがとうね」
バレンタインデーという言葉に思い当たるものがなく、疑問を呈した俺にあの子は丁寧に説明してくれた。ニホンに倣ったプレゼント方法で、俺に“義理チョコ”を渡してくれたのだ。

「俺に気を回さずとも構わないというのに」
そう言いながらふと視線を変えたとき、俺は見つけてしまった。あの子の持つ手提げに、俺に渡されたものよりも大きく…より可愛らしい包みがあったのだ。
何という事だ……。

――彼女にはいるのか、俺以上の存在が…。

「でも、義理チョコっていうのも大切だと思うよ」
やっぱり気持ちってカタチにしないとわかりづらいもんね、とあの子は続けた。
「…そうかもしれんな」
俺はそれが出来ぬままであるから、こうなっているのだろう。
「じゃあわたし、ひとを探しているから、またね!」
その“ひと”…すなわち“本命”であるのは、間違いないといえる。
「待て、あの子ッ」
止める間もなく、あの子は身をひるがえして屋内へ消えた。
彼女はこれから…自ら進んで毒牙に掛かりにゆくのだ。手土産まで持って…。

「ならない。それは、ならない…」
そんなあの子を他者の手から守るためには、俺が彼女の最上位にいなければならないと…そういうことだ。
俺が囲わなければあの子は守れず――しかしそれは彼女の自由を奪うことと同義ではなかろうか。では…優先すべきはどちらだ?
「俺は……」
ああ。また一つ、俺に枷が増える。心が軋む思いだった。

←BACK | return to "Special" menu

もたもたしてると遅れちゃうんだよ、兄さん。可愛い彼女は待ってくれないよ。
目の前にあるのに届かないなんてエアーマンの名がすたるでしょ!


◆全読破の方が居られましたら――すごく…長い後書き。超注意。
バレンタイン企画反省会会場はこちら。(ブログ)

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル