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不幸
 
 結婚式が終わって、その後の披露宴も終わると、トロデ王が「では改めて」と客をもてなす夜の宴が始まった。夜は長い。
 ヤンガスがエイトに近寄り、久しぶりに旅の仲間で飲みあかしたいと誘ったが、トロデ王が彼をひっつまんで去らせた。訳が分からずふくれたヤンガスに、トロデ王がウインクする。
「エイトもミーティアも疲れたじゃろう。今日はもう休みなさい」
 気付いたククールもエイトを押し込むように城へ戻す。キョトンとしているエイトに、ククールはその肩をポンポンと叩いて、色っぽい目で言った。
「頑張れよ」
「うん」
 エイトは確りとした口調でそう言うと、ニッコリと笑って城へ入っていった。
「・・・・・え?」
 やる気まんまんですか。
 ククールは呆気に取られて彼の背中を見送ることにした。
「頑張れよー」
 
 
 
 エイトはミーティアの部屋へ入った。ほのかなランプに照らされた薄闇を抜けると、薄いドレスに身を包んだミーティアが彼を待っていた。
「エイト」
 今日から二人は、ミーティアの部屋に共に暮らすことになる。ミーティアの部屋は、衣装棚、化粧台、本棚といった家具の他に、奥に一回り大きくなったベッドがあった。エイトは、薄暗い部屋の奥にあるそれをポカンと眺めていた。
「あの、エイト」
「なに?」
 結婚式が終わって、初めて二人で過ごす夜。何が始まるかは、ミーティアだって知っている。しかし、なかなか言い出せない。
 外ではまだ宴会が続いている。何かを叫んでいるヤンガスの声が、聞こえた気がした。エイトは、ククールを思い出す。
 
“頑張れよ”
 
 エイトは心の中で頷くと、ミーティアの方を向いて言った。
「これから頑張ろうね」
「え! えぇ・・・・・」
(ど、どうしましょう。エイトったらやる気まんまんだわ・・・・・)
 ミーティアが顔を真っ赤に染める。
「あ、あの…あんまり最初から頑張るのって・・・その・・・」
(何を言っているのかしら!ミーティア!)
 ミーティアが身をくねらせた。
「じゃ、おやすみ」
「えぇ。・・・・・って、えぇ!?」
 振り返ればエイトはベッドへ入り、既に眠りに入っていた。
「・・・エイト・・・?」
 
 
 
†2日目
 
「おやすみー」
「お、おやすみなさい・・・・・」
 
 
 
†3日目
 
「おやすみー」
「・・・・・おやすみなさい・・・・・」
 
 
 
†4日目
 
「おやすみー」
「え、えぇ・・・・・」
「? 寝ないの?」
「い、いえ。寝ます」
 
 
 
†5日目
 
 エイト、夜勤。
 
 
 
†6日目
 
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・もう寝てますわね」
 
 
 
†一週間後。
 
「・・・お父様・・・」
 ゲッソリしたミーティア姫が玉座に現れて、トロデ王は驚いた。
「ど、どどどうしたのじゃ・・・ミーティアよ・・・」
「エイトが・・・触れてくれないのです・・・」
 ミーティア姫が泣きそうになって言うと、トロデ王は慌てて彼女を励ました。
「きっと、今までの主従の関係に囚われて、自分では言い出せないのかもしれん!今宵、ミーティアから言ってみると良い」
「・・・ミーティアからですか?」
「が、頑張るのじゃ」
 
 
 
†その夜。
 
「おやすみ」
 またしても己の隣でスヤスヤと眠ろうとするエイトに、ミーティアは思い切って言ってみた。
「エイト」
「なに?」
「こ、子どもが欲しいと思いませんか・・・?」
 エイトはにっこりと笑った。
「そうだね。欲しいね」
「そ、そうですよね」
 じゃあ・・・とミーティアが待っていると、エイトはベッドを抜け出して、暖炉の前にある十字架の前で祈りはじめた。
「子どもができますように」
「・・・・・え」
 固まった表情でミーティアはエイトを見る。
「・・・エ、エイト?何をしているのかしら?」
「え?コウノトリさんが僕たちに子供を授けてくださるようにお祈りしてるんだよ」
「そうなんですか。・・・・・って、えぇ!?」
 
 
 
†翌日。
 
「・・・お父様・・・」
 ゲッソリしたミーティア姫が再び玉座に現れて、トロデ王は驚いた。
「ど、どどどうしたのじゃ・・・ミーティアよ・・・」
「エイト・・・知らないみたいなんです・・・」
 ミーティア姫が泣きそうになって言うと、トロデ王は頭を抱えた。
「昨日はコウノトリの話をして、そのまま眠りました」
「・・・・・・・」
「ぐっすりと」
「・・・天然記念物じゃ」
 
 
 
†翌日。
 
「どうやって自分が生まれたのか、どうやったら人が生まれるのか、おぬしは知る必要がある」
「? はい」
 エイトは自分の出自を知るために、トロデ王の命令でなぞの石碑へと向かわされた。
「が、頑張ろうな」
「うん」
 旅の仲間も、彼の為に再び集まった。
「分かるといいわね!エイト」
「・・・あ、兄貴、アッシも頑張るでガスよ」
「ありがとう、皆」
 固い笑みをした3人がエイトを見ている。
「よく勉強して来るんじゃぞ」
 念を押して、トロデ王とミーティア姫は彼の帰りを石碑の前で待つのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【あとがき】
管理人作品の「主従の関係を越える」のパロディですね☆
「エイトって、知らなさそうじゃないですか」
めしつぶさんとMailでやりとりしていたくっだらない会話を、
まさか文章にしてくださるとは!ありがとうございます!!!
 
 
 
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