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ポッフィーさん作、主ゼシ・ベルガラック編での出来事を前提として作りました。 (そちらを閲覧されていない方でも読める内容にはなっています。) ポッフィーさんに捧げる、 全体的にギャグで、ちょっぴりエッチで、 サザエさんのようなお話し。 「 皆で旅を続けよう 」 その日、ククールは悩ましげに眉間に皺を寄せていた。 エイトに無理を言ってベルガラックに立ち寄ってもらい、ヤンガスと共にカジノで夜な夜な遊び呆けた後の旅の途中、いつもと「何か」が違っている様子にククールはイライラしながら歩いていた。 (何なんだ、何かが違う・・・) そう思いながらパーティを眺めてみるものの、リーダーのエイトは相変わらず心の中が読めない表情で地図を片手にもくもくと歩いているし、ヤンガスは鼻をほじりながらエイトの後を追っているし、ゼシカは豊満な胸をこれでもかと突き出しながら馬姫さまとトロデに気遣いながら歩いている・・・・・はずだった。 (ちょっと待て。) ククールはゼシカから呪文が放たれない程度に、横目で彼女の全身をくまなく凝視した。 いつもは屈託のない笑顔で馬姫さまに話しかけたり、勝気な表情で周囲を見渡しているゼシカの瞳の水分量が2割増しくらいになっている。 (おいおい、魔物をやっつけに行くってときに恋する乙女の表情はないだろう・・・) とからかい半分に思ったとき、ククールはハッとしてゼシカをもう一度凝視した。 華のある顔立ちとグラマラスな体を持っているゼシカではあったが、『サーベルト兄さんの仇』を取ることを信念に仲間に加わっている彼女は、一種男を寄せ付けないオーラを放っており、正直男心をそそる要素に欠けるところがあった。それがどうだ、今のゼシカは瞳だけでなく、その豊満な体全体に水の衣をまとっているかのようだ。肌に触れられたら男にしっとりと馴染んでしまいそうな色香が、肌のキメから立ちのぼっている。 ククールの額に汗が滲む。 (これって・・・・・恋というより、男を知ったカラダ・・・) そんなことが頭をよぎり、パーティののんびりさとは裏腹に、ククールの鼓動は猛烈に激しくなった。そして、一旦そういう思いに囚われると、もうそうだとしか思えない。 (一体いつの間に?!相手は誰なんだよおいっ?!) 一人興奮ごちていたとき、背の低いヤンガスをスルーして、赤いバンダナが目に入った。 (ま・・・まさか・・・・・) ククールはマイペース極まりない勇者の後姿を穴が開くほど見つめた。まさかエイト、お前なのか?!・・・そうなのか!? ククールは、今まで女を感じていなかったゼシカから女を感じ、今まで男を感じていなかったエイトから男を感じ、とまどいと衝撃を隠せずに激しく動揺した。 そう言えば・・・戦いの最中、エイトを見つめるゼシカの熱い瞳にぶつかることが何度かあった。命令を真剣に待つ顔だと思っていたが、あれは愛する者を見つめる表情だったのか? 「ククール、顔色が悪いでガス。ベルガラックで遊びすぎたのが良くなかったでゲスかね?」 ヤンガスの声を聞き、エイトが振り返りククールを見つめた。ククールは口から心臓が飛び出るほどに緊張した。 「あれ、本当だ・・・ククール顔が赤いよ、熱があるのかもしれない。少し休もう。俺、冷たい水を探してくるよ」 ゼシカから離れた場所に腰を下ろしたククールは、カジノですっかり心の距離が近づいたヤンガスに声をかけた。 「おい、姫様が18歳の誕生日を迎えたってことは、エイトもそのくらいの年齢ってことだよな」 「きっとそうでがしょうね」 「子供みたいな顔しやがって、立派な男なんだよな」 「兄貴はそりゃー立派な男でガス!男の中の男でガスよ!!」 「男の中の男・・・」 「なんでゲスか、そのあやしい含みは・・・」 「なあ、エイトだって兵舎で暮らしていたんだから、あんな顔してても、女のこと、多少は知らないわけじゃないよな」 「・・・そっちの話しでげしたか・・・」 男二人が肩を寄せ合いひそひそ話しをする姿は、抜けるような青空の下では一種異様であった。しかし、冷たい水を調達して戻ってきたエイトには、仲良くやっている二人が嬉しく、ベルガラックでの散財も無駄ではなかったな、と思うのだった。 その晩、宿屋はツインのベッドルームが2つしか空いていなかった。 ゼシカに一部屋あてることを考えると、男どもがゆっくり休める環境ではなかった。そのためエイトは「自分が王と姫に付き添って野宿する」だの、「ククールとヤンガスがベッドで寝て、自分は床で十分だ」などと説得したのだが、ククールとヤンガスが、 「リーダーにそんなことをさせるわけにはいかない!」 と断固として譲らず、また、ヤンガスはいびきがうるさい、ククールはゼシカに何をしでかすか分からない、という彼らの言い分により、半ば強引にエイトとゼシカが相部屋になることになった。 「これで良かったんでがしょうか・・・」 部屋割りを決めたときのエイトの困惑した顔を思い出したヤンガスが思わずつぶやいた。 「いいんだよ!仲間のことを知らずにもやもやしてるのも嫌だろ。それに、もしあの二人が出来ていたら、馬姫さまに対して俺らでフォローできるかも知んねえだろ」 「それもそうでガスね・・・」 ククールはもはや隣の部屋の様子が気になって仕方がない。先程までシャワーを浴びる音が聞こえていた。そろそろだ、そろそろ何かが・・・。 (・・・イト・・・) ヤンガスとククールはすぐさま壁に近づいた。ゼシカの声の後に、衣擦れの音が微かに聞こえた。漂う緊迫感まで感じられる。 (・・・・・) (エイト、そっちに行ってもいい・・・?) 仲間への隠し事や、主君や姫への躊躇があるエイトは今だ戸惑いがあるのだろう。彼の声はなかなか聞こえてこない。 ぎっ。ベットのスプリングの軋む音が聞こえた。 壁を挟んだ二つの部屋で、張り詰めた空気が同時に震える。 (・・・シカ、俺・・・) 「兄貴っ落ち着くでガスっ、冷静になるでゲス!」 ゼシカに大事な兄貴が襲われるとでも思ったのか、取り乱したヤンガスの口をククールが慌てて押さえた。 (エイト、キスして。・・・はやく私に触れて。私を愛して。) ゼシカの熱っぽい大きな瞳が目に浮かぶようだ。静寂の中、エイトが動く気配がした。 ぎっ。またベッドのスプリングが音を鳴らす。 (・・・ゼシカ・・・知らないよ、どうなっても・・・俺は・・・) 今まで聞いたことがないようなエイトのくぐもった声が聞こえたかと思うと、突然、空気は熱を上げた。 「・・・・・」 ククールは想像もしなかったエイトの男ぶりに言葉を失った。アイツ、なかなかやりやがる・・・!! 濃厚さを増していく空気の中で、ゼシカの甘く擦れた声が切れ切れに流れてくる。その切なすぎる吐息の中で、エイトがいかに彼女を大切に扱っているかがよく分かる。 ゼシカはエイトに体中を愛され、震える声で彼の名前を呼んでいた。きっと愛する人に触れられ、満たされる喜びで、その瞳には涙が浮かんでいるに違いない。 その時、ふと音が沈んだ。 緊張が表面張力のように膨れ上がる------ 「・・・兄貴!」 「うっわ」 きっと愛しい女性の中に、これから自らを侵入させるのであろう。ククールとヤンガスは壁から一気に離れた。 「・・・兄貴〜っ・・・」 「何、お前、泣いてんの?!」 「兄貴の男ぶりに感動してるのと、兄貴を取られるような気持ちとで、アッシは複雑でガスよ〜!」 何訳の分かんねえこと言ってんだよ、と吐き出しつつ、カリスマの自負が崩れ落ちるような、やはりエイトがどこかに行ってしまう寂しさのような、そんな複雑な思いををククールも抱えつつ、夜は更けていった。 次の日は猛烈に暑い日になった。 ゼシカは昨夜の愛の余韻か、憎らしいほどに涼しげに歩いている。そして、エイトはいつも通り。 「参ったな・・・」 「そうだね、こうも暑いとしんどいね」 参ったのはオマエにだったんだけど、とは言えずにククールはエイトを見た。 「昨夜はヤンガスのいびきでよく寝れなかったんだろ?ひどい顔してるよククール・・・ってヤンガスも!」 いつにないヤンガスのしょんぼりぶりにエイトは驚いた。 「気分転換に近くの湖で水浴びでもしようか?姫様たちが気になるけど・・・」 ヤンガスは顔を上げて、威勢よく言った。 「それはゼシカのねーちゃんに任せておけばいいでガス!男だけで水浴びするでガス!!」 男だけ、の部分が妙に強調され、ゼシカはぴくりと眉を上げたが、ヤンガスがいつにない駄々をこねるので、エイトはそれに従った。 海水パンツがないから袋にあり余っているステテコパンツで、というエイトの提案で、各々が服を脱ぎ始めた。 「何でオレまでステテコパンツ!」 と言おうとしたククールに、楽しそうにぎゃーぎゃー言い合っているエイトとヤンガスの姿が目に入った。 いつもは細いと思っていたエイトの体。だがよく見てみると、無駄がなく、嫌味のない筋肉がつき、なかなか色っぽい。 細めの腕に似つかわしくない、包み込むような大きな掌。案外厚い胸板。バンダナを取った下には黒に近い栗色の髪。 それはエイト自身のように素直にまっすぐで、さらさらとうなじや顔にかかっている。エイトの笑顔とはアンバランスに、それらは男を感じさせるには十分だった。 「ふうーん・・・」 すでに湖に勢いよく入っていった二人を見つめながら、ククールは思った。 ・・・いろんな男の色気ってあるんだな。 でも、当の本人はそのことに少しも気づいていない。 エイト、お前って凄いよ。 そして、ゲルダとかいう女盗賊の心を今も掴んでいる(が本人は気づいていない)ヤンガスの方もちらりと見た。 (ヤンガス、お前もなっ・・・) ククールはエイトとヤンガスに近づき、いつもの気取りを少しだけ捨てて、戯れ始めた。 そんな男3人衆を遠目に見守るゼシカと馬姫。そして、それを見つめるトロデ。 「不思議なこともあるもんじゃわい」 違う強烈な個性がエイトを中心に輪になっている。トロデは、みんな可愛らしい我が子のように思えてきた。 (これはひょっとすると、コイツら本当に暗黒神をやっつけてしまうかもしれんな) そして、皆から愛されている自慢の家臣エイトを見ながら、ふと、女の魅力に華が咲いたようなゼシカと、今は呪いで馬の姿をしているミーティア姫を見つめた。 (ミーティアはいずれサザンビークの王族に嫁ぐ身。なんとかなるじゃろう・・・) 愛情にはいろんな形がある。 けれど、相手を気遣う気持ちはきっと絆を深くする。 そして、旅は続く。 2005.12.16 |
【感謝】 いただいちゃいました☆ わっほーいっ☆ とってもとってもありがとうございますっ! 最高に嬉しいです☆ 登場人物が皆かわいくて、ちょっとエッチで、あったかい。 彼らはもう家族みたいに一つになって、辛いことも楽しく変えちゃうというか、 本当の意味で「最強」になっていく、そんな感じがします。 |