そっとしておいて貰えませんか。
(私を。)
暁!氷結クリフト
第19弾 「寝る前にすること」
「クリフト、本読んで」
アリーナ姫は小さい頃、母后に寝る前に御本を読んでもらっていたので、今でも眠れない時は本を読むことにしています。
お気に入りの本を片手にクリフトの部屋を尋ねたアリーナ姫は、そこで本を両手に掲げながらベッド上で鎮座する神官を見ました。
「あれ、クリフト」
「姫様。今日は私と一緒にこの絵本を読みましょう」
待っておりましたとばかりに彼女を迎えたクリフトは、両の鼻腔より激しく血潮を噴き出して言いました。
「絵本?」
子供向けの本なんか読まないわ。
やや怪訝な顔をするアリーナ姫の意図を察してか、クリフトは畳み掛けて返します。
「いえ、こちらの絵本は 『 オ ト ナ の エ ホ ン 』 と申しまして、
「姫様にも 十 分 お愉しみ頂けるものとなっております」
あの。
それ、えほん、っていうかそれ、 え ろ ほ ん ですよね。
「私だけで見ても良いのですが、ここは姫様も一緒に!」
クリフトは激しく興奮しながら、タイトルの下に書いてある「特集! 究極☆体位大全」という文字を指で追って説明しました。
「私といたしましては、こちらの本で学んだ後は、
「復習を兼ねて す ぐ に で も 実践に入りたく……!」(ハァハァ)
「ドエロ神官がほざきよりおって!!!」
「寝言は寝てから言え! というか二度と起きるなァ!!」
そう吐き捨てるように言った氷の魔法使いが、颯爽とマントを翻して自室に戻った時には、アリーナ姫の前に目を覆わんばかりの鋭い氷柱が出来上がっていたのでした。
パーティーに持ち物検査が導入されたのは、この事件があってからです。
哀れ、氷結クリフト。
……神官だよね?
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