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貴方がその瞳(め)を隠すなら
私は見ない。覗かない。
でも理解ってて。
私は貴方が仮面の下で泣いてること、知ってるってこと。
「ククール。入ってもいい?」
小さくドアをノックして、暫くしてから部屋主の低い声が聞こえる。
そっとドアを開けて覗き込むと、彼は長い四肢を乱暴に放り出してベッドに横になっていた。
「…………」
流し目に一瞥した後の苦笑。
それがどういう意味かは理解ってるの。
「どうしたの?」
ベッドの端に腰掛けて彼の様子を窺えば、うつ伏せの身を捻らせて端整な顔を向けてくる。
こうやって誰かに構って貰える事が嬉しい気持ちと、でも相手に心の内を明かせない葛藤に自分自身が困惑しているみたい。
「……何が」
ほら、またそうやってトボける。
私の心は何でも把握しておきたい貴方が自分の事は一切晒さないなんて、狡猾いと思わないのかしら。
「元気ないじゃない」
「そうか?」
「…………」
貴方の口から聞かなくたって、何に悩んでいるのかは判る。
今日、聖地ゴルドでお兄さんと対峙して戦って、手を差し伸べた貴方が何も感じない筈ないじゃない。
「ハニーの顔を見てたら疲れも吹っ飛ぶぜ」
「またそうやって、」
はぐらかさないで。
貴方の心に空いた穴に気付かない振りをしていたけれど、敢えて触らないようにしていたけれど、こんな日は私だって気が気じゃない。
貴方の心に触れて、震えて叫んでる感情を抱き締めてあげたいの。
「ククール、」
だから今日くらいは言わせて。
「私の兄さんは杖の魔力に死んだけど、貴方のお兄さんは杖に生かされた」
聞いて貴方は私の言葉を制するように微笑した。
「君の兄さんと比べるなよ」
端整な微笑を湛えて私の髪に触れてくる。上手にかわすのね。
こういう時の彼の微笑みは優しさの中にも何処かしら乾いたものがあって、いつもはそれで哀しくなって黙ってしまうけど、今日の私は違った。
「兄さんを想う私達の気持ちは変わらないわ」
「…………」
だって、そうでしょう?
貴方も私も自分の兄さんを尊敬してる。惹かれて、精一杯に愛を求めている。
私の髪を撫でる長い指が止まったから、私はそれに返すように彼の美しい銀糸の髪に触れた。
本当、貴方って綺麗だわ。妬けるくらい。
「貴方のお兄さんは、杖によって改められた。貴方のお陰で」
「…………」
覚えている筈よ。
絶望の底で全てを失った後にも、救いの手に引き上げられて変わった彼の瞳。貴方に指輪を託して去った彼は、傷付きながらも死の影を失くしていた。脚を引き摺りながらも彷徨うことなく歩いていった孤高の騎士。
あの後姿はきっと忘れられない。
「あの人はこれから償いの命に生きるんだわ」
彼は死なない。貴方の思う所とは別に、きっと何処かで生きる筈。
「…………」
ベッドに無造作に広がった彼の髪を梳いていると、不意にその手が掴まれた。大きな掌に包まれた私の手はそのまま枕に埋もれた顔に寄せられる。枕の弾力に少しだけ覗いた彼の頬に当てられると、くぐもった声がそこから聞こえてきた。
「ゼシカ」
もう少し、このままで。
甘い囁きで人を翻弄することはあっても、決して自身は他人に縋らない彼が、初めて甘えていた。私の手をギュッと握って顔を伏せる貴方は、枕に涙を隠しているのかしら。それとも今の心の重みを正直にぶつけているのかしら。
「……ククール」
貴方って自分に関してはとても不器用ね。
私はそう思いながら、繋がれた手をずっと、ずっと眺めていた。
貴方が言わないなら、言えないなら。
私は聞かない。尋ねない。
でもこれだけは知っておいて。
貴方の苦しみを理解っていることと、それも含めて貴方を愛していることを。
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【あとがき】 |
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初! 初ですよ! ククゼシ!
てか短! うわぁんもうゴメンナサイ!!!
オトナなイメージのある二人。
ククは器用に見えて実はそうじゃない感じで。
ゼシカ優位であって欲しいです。
Clutchさん、リクエストありがとうございましたっ♪♪♪
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