放課後レモンシャワー



 六年二組では、社会科の授業で班ごとに分かれて、わが町についてのレポートをまとめることになった。
 小池まどかはウキウキしていた。
 なぜなら同じ班に『憧れの健二くん』がいるから。
 色白で髪の色もちょっと茶色ぽく、目鼻立ちがはっきりしていて、ハーフみたいにノーブルな顔立ちの健二のことを、ひそかにまどかは憧れていた。
 その健二に、明日、クラスの皆の前で発表する予定のレポートの最終チェックをしたいから放課後、残ってくれないかと告げられて、まどかは有頂天になった。
 もちろん誘われたのはまどかだけでなく、班の他のメンバーもだけれども。
 嬉しさのあまり気もそぞろだったまどかは、ホームルームの後、トイレに行くのを忘れてしまった。
 それが悲劇の始まりだった……。



 最初、まどかは健二と少しでも長く一緒にいたい、と願っていた。
 班の他のメンバーは、活発で大柄な智子とガキ大将の高志。
 二人とも、小柄なで内気なまどかの苦手とする人物だった。
 学級委員で成績もよい健二は誰にでも優しかった。高志のようにまどかのふたつ結びにした髪の毛を引っ張ったりしないし、智子のように一緒に遊んでいる時、まどかがトロかったりすると、いかにも呆れたように大仰に溜息をついたりしない。
 基本的に男の子は苦手なまどかも健二となら少しはマトモに話ができるのだ。
(……なんか……オシッコが……したい……)
 打ち合わせが始まってしばらくすると、まどかは尿意を覚えた。
 考えてみれば最後にトイレに行ったのは、四時間目の授業の終わったあと。
 その後、給食で飲んだ牛乳や五時間目の体育の後に喉が渇いたのでついつい大量に飲んでしまった水が、まどかの小さな膀胱に送り込まれてきているのだから当然だった。
 でも、今このタイミングで席をはずしたら、トイレと班のみんなにばれてしまいそうで、まどかはとても言い出せなかった。
 それにじんわりと下腹部に広がっていった尿意は、最初のうちは軽い歯痛のような感じで、時折、膀胱をちくちく内側から刺激したとはいえ、耐えられないというほどではなかった。
「でさ、ここなんだけど、色を変えた方がわかりやすいかなあ」
 健二の提案にまどかはうなずきながらも、心の中では
(そんなの別にどっちだっていいのに。早く終わらないかな……オシッコしたい……)
 なんて思っていた。
 さっきまでは、一分一秒でも長く健二と一緒にいたいと思っていたのに。
 刻一刻ととまどかの膀胱には、摂取した水分がオシッコとなってたまっていっている。
 膀胱がずっしりと存在感を増すにつれ、思いっきりオシッコをしたいという気持ちが、憧れの健二と一緒にいたいという気持ちを上回っていくのは仕方なかった。
 オシッコのことを忘れようと、机の上に広げられている手書きの町内地図に意識を集中しようとしても、オシッコのたまった膀胱の重みがそれを妨げる。
(ああ、早くオシッコしたいよ…………オシッコ……オシッコ…)
 今やまどかは、胸の中で呪文のようにそんなことを唱えていた。
 そんな時、
「ちょっと待っててね。あたしトイレ行ってくるから」
 智子が席を立った。
(あっ、あたしも……)
 そう言って、一緒に席を立とうとした時、悪ガキの高志が言った。
「とかなんとか言って、さぼるつもりじゃねーだろうな、朝倉。ウンコなんかしてないで、さっさと帰って来いよ」
 智子は軽蔑したように高志を睨んだ。
「あんたじゃあるまいし、学校でウンコなんかするわけないじゃない。すぐ帰って来るわよ! バーカ」
「チェッ」
 まどかは二人のやりとりにすっかり萎縮して、席を立つタイミングを逸してしまった。
 ぽんぽん言える智子がうらやましい。
 身長が百六十センチ近くある智子は、胸のふくらみも自分とは比べ物にならない。体育の着替えの時に見かけた智子はレースのついた薄いブルーの高級そうなブラジャーとおそろいのパンティを身につけていて、まるで少女誌のモデルのように均整の取れた体つきをしていた。
 ウエストなんか大人の女の人のようにくびれていて、色っぽかった。
 まどかは自分の子供っぽい、めりはりのない体型やブラスリップやキャラクターの絵のついた下着が急に恥ずかしくなったものだ。
 来年は中学生になるのに、まどかは今でも小学校三、四年生くらいに間違われることもしょっちゅうなのだ。
 それにしてもオシッコをしたいという生理的な欲求は高まるばかり。
 まどかはこっそりジャンパースカートの上から、手で下腹部を撫ででみた。
 膀胱のあるあたりは固くパンパンに張り詰めている。
 徐々に手をずらして、オシッコの出口に触れると、いつもより敏感になっているようで、ズキンと小さな稲妻が走り抜けた。
「あ…っ……ふ……」
 小さな息が洩れてしまい、まどかはハッとして口を閉じた。
 幸い、男子二人には気づかれなかったようだった。
 本当は股の間に手をはさみこんで、手のひら全体でぎゅうっとオシッコの出口を押さえつけたかった。けれども、さすがに男子がいる前でそんなことはできない。
 さりげなくジャンパースカートとキャラクターのついたパンツ越しに指先で撫でて我慢する。
 ぎゅっと押さえるのと違い、もわもわとした妙な気分になるが仕方ない。
 オシッコが外へ出ようとする勢いに対抗するにはこれしかない。
 そうやって、幾度か波をやり過ごしているうちに、全身が震えてしまうほどの大きな尿意の波が襲って来た。
(ああんっ)
 出口に熱いオシッコが集まってくる気配に、まどかは股間を押さえる指先に力をこめた。
 柔らかく未熟なそこに、指が布越しにめり込む。
 指先にビクビクビクッ〜〜とオシッコの出口の痙攣が伝わってくる。
 じわっと熱い液体が下着に広がり、まどかは焦った。
 健二の前で、お漏らしなんか絶対できない!
 まどかはお漏らしやおねしょの経験は幼稚園の頃に一、二回あっただけで、小学校に入ってからは経験がない。
 だから、そんな自分がいくら切羽詰ってもお漏らしなんかするわけがないと、どこかでたかをくくっていた。
 歯を食い縛り、アソコの筋肉に全神経を集中させる。
(ダメ、出ちゃダメぇ〜!)
 間一髪のところで、オシッコは決壊を免れたようだ。
 下着に濡れた感触がそれ以上、広がることはなかった。まどかはほっと溜息をついた。
 だがまだ予断は許されない状況だ。
 少しでも集中力が途切れたら、オシッコは勢いよく飛び出して来るだろう。
「お待たせ!」
 トイレから智子が帰って来た。
 まどかはあわてて居住まいをただした。
 智子はすっきりした顔をしている。
 うらやましい……。
 自分がこんなに辛い思いをしてオシッコを我慢している間に、智子はトイレでオシッコを心ゆくまでしていたのだ。
 自分もトイレに行って、白い便器に向かい、パンティを下ろし、スカートをまくって、思いっきりアソコから奔流を解放したら、どんなに気持ちいいだろう……とついまどかは考えてしまった。
 便器に飛び散る黄色いオシッコの飛沫までありありと目に浮かんでくる。
 ぶるっと体が震え、あわててまどかは腿をぎゅうっと締めた。
(ああ……もう早く……オシッコしたい……オシッコさせてえ……オシッコしたいよう〜)
 まどかの頭の中はもはやオシッコでいっぱいだった。
 身体の中もおしっこでいっぱいになってしまっているような感覚。
 オシッコでパンパンの膀胱が胸のすぐ下までふくらんでいるみたいだ。心臓が圧迫されてドキドキしている。
 まどかは意を決したように、立ち上がった。
 だが教室の出口に向かうことはせず、机にもたれかかる。
 限界スレスレのまどかは、机の角にアソコ全体を押し付けて、オシッコの欲求を抑え込もうとしたのだ。
 机の上に広げられた教科書や地図を覗き込むふりをして、体重をかける。
 グリッと固い机の角が、まどかの柔らかいまだ無毛のアソコにめりこんだ。
(ああっ……ん!)
 その部分に、何ともいえない感覚が走る。
 それは重苦しいオシッコ我慢の辛さとは明らかに違う甘美な感覚だった。
 オシッコを思いっきりしている時の感覚にちょっとだけ似ていて、とても気持ちがいい。
 甘ったるくそこが痺れて、尿意が多少遠のいた。
(は……んっ……ふぅっ……)
 まどかは顔を真っ赤にして、股間を机の角にリズミカルに押し付けて、迫り来る尿意に耐えた。
 汗がこめかみに滲み、おくれ毛がはりつく。
「小池さん。気分でも悪いの?」
 まどかの異変に気づいた健二が、心配そうに尋ねてきた。
 智子も不審そうな顔でまどかを見ている。
「え? なんでもないよ。大丈夫」
 ハッとしてまどかは首を振った。
「そう……ならいいけど」
 しまった、とまどかは思った。気分の悪いフリをして、今席を立てばよかった。
 今さら遅い。体の中だけじゃなく、頭の中までオシッコが詰まっているみたいだ。判断力が失われている。
「後はこれだけだから」
 腹が減ったと文句を言う高志を健二がなだめている。
 もうすぐ、あとほんの少しだけ我慢すれば、皆と別れた後に、トイレに飛び込んで、心ゆくまでオシッコができる……。
 安堵の思いが強い尿意を呼び、無慈悲にも出てこようとするオシッコ。
 ジュワッ……と再び下着にぬくもりが広がった。
 まどかはあわてて机の端を両手でガシッと握り、前傾姿勢になって全体重をかけ、股間を机の角に押し付けた。
 上履きをはいた小さな足の先が浮き上がる。
 小さなまどかの体にふさわしい小さな出口は、これまで多量の水分が解放を求める負荷を、机の角という無機物の硬質な力を借りることによって何とか抑え込めた。
 だが、今回のそれはあまりにも強い刺激だった。
 まどかの爪先から頭のてっぺんを、今まで感じていたのとは桁違いの鋭い感覚が走り抜けていく。
 アソコがそれ自体独立した生物のようにビクビクと震え、甘美な快感に溶け崩れてゆく。
 それとともに、オシッコを抑え込んでいた意志の力と筋肉はすべてほどけていった。
「あああんっ……んはあっ……!!」
 思わず吐息混じりの声を上げながら、まどかは枷を失った股間から勢いよく尿を迸らせていた。
 ショワワワーーーー!
「キャッ」
「うわあっ」
 智子たちは突然の決壊にあわてて飛びのいた。
 ジョーーーーーーーッ!!
 激しい水音とともに、まどかの机に押し付けられたままの股間から迸り続けるオシッコは、机の上に黄色い水たまりを作っていった。
 皆で描いた地図やノートにもまどかのオシッコの飛沫が飛んでいる。
 あわてて健二がそれを取りあげた。
 足下にもポタポタと黄色い水は垂れ落ち、スカートもぐっしょりと濡れてしまう。
 あたりには出たばかりのオシッコ特有の、甘ったるいような刺激臭が漂った。
「はああっ……んっ!!」
 なのに、まどかは股間をグリグリと机の角に押し付け、この世のものとは思えない快感を貪っている。
(気持ち……いいィ……オシッコ……いっぱい出てる……アソコがすごく気持ちイイ……ああん、腰が止まらないよう……)
 ためにためたオシッコを思いっきり漏らす快感、そしてアソコに感じる甘美感が、まどかから理性を奪っていた。
「お前、何やってんだよ!!」
 高志がまどかの細い肩を掴んで揺さぶった。
 まどかは焦点の定まっていない虚ろな目で高志を見た。口からはよだれを垂らしている。
 ショ〜〜〜〜……。
 まどかの股間から迸るオシッコは、徐々に勢いを失っていった。
 そしてポタポタと零れ落ちる段階になって、やっと正気を取り戻したまどかは、その場にへたへたとしゃがみこんでしまった。
「う……っ……うううっ……うわ〜〜〜ん!!」
 自らの作ったオシッコの泉の中に身を投げ出すようにして、まどかはまるで幼児のような大声を上げて泣くしかなかった。



 FIN



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