異国カラ示サレシ者ヨ




は?異国……?




我ヲ………




何だよ、言いたいことがあるならはっきり言え!






我ヲ助ケヨ













呼び起こす声












「―――――――」


まだ完全に目が覚めていない頭で俺はさっきの夢のことを思い出した。
最近同じ夢ばっかリフレインで見ている気がする。

“夢だ”と言ってしまえばそれまでだがこれはそんな軽いモンじゃない気がする。


「……………ふっ……」


真面目ぶるのは智哉に似合わない。

周りからよく言われる言葉だが今真面目ぶってみて俺は自分でもそう思った。


「さてと……」


今何時だ?っと近くにあった目覚ましを手に取れば時刻は『8:15』を指していた。

学校が始まるのは『8:30』。俺の家から学校までどう考えても20分は絶対かかる。
その上今から支度して飯食って………


「うおおおお!!!やべえええ!!」


三上智哉(出席番号13)遅刻決定。











 * * *









「ねえ、何か今聞こえた?」


近くにいる“トモダチ”に問いかければ彼は首を横に振るだけだった。
ふわふわの毛を撫でて上げると彼は気持ち良さそうにゆっくりと瞼を閉じた。


「(気のせい……?)」


今いる森には人の気配は一つも感じられない。

だけどあたしには何かの声が聞こえた気がする。
何かの叫び声……また都市のほうで何かあったのかもしれない。
あの都市は平和そうにみえて結構治安の悪い場所だし、そう考えるのが一番納得できる。


でもあたしの頭の中には最近よく見る夢の言葉が妙に引っかかっていた。




故郷ヲ亡クシ彷徨ウ者ヨ





我ヲ助ケヨ





ただの夢じゃない気がした。
その証拠はどこにも無いけど夢なのにその言葉はいつまでたっても頭の中から離れない。


「もう何だっていうのよーーー!!」


分からないことが多すぎる。









 * * *







「おーじいちゃーん」


扉を開けば近所のおじいちゃんがにこにこと笑ってくれる。
少し痩せてて、緑の帽子を被っているおじいちゃん。このおじいちゃんは昔からの私の知り合いだ。

奥からは同じようににこにこと笑っているおばあちゃんもでてきた。


「クリルちゃんじゃないか」


“今日も元気そうだねえ”と言うおばあちゃんもいつも通り。


「でも最近ずっと変な夢みるんです……」



何かが私に助けを求める夢。



夢、と一言で終わらすにはすごく印象が深くて、何かを訴えているような気がする。



「ほぉ…クリルちゃんのことだから……」


“自分の食べ物が人に食べられたって夢かい?”

シリアスに少し頭の中で考えたとき、おじいちゃんのマヌケなその言葉に思わず吹きだしてしまった。
後ろではおばあちゃんも笑いを堪えている。


「おじいちゃーん!私そんな意地汚い夢見ないもん……!」
「ごめんごめん」


あははは、と笑い声が響くこの家はほんと幸せに見えた。


「じゃあ、私帰りますね〜」


思わず長居してしまったが(居心地いいとついつい長居しちゃう)そろそろ帰らないと怒られてしまう。

チリンッと鈴がついているドアを開けて二人に手をふって外へ出ると風がふわりと通り過ぎた。
でも………


「何か変な風です〜……」


何かが起こりそうな、そんな予感がした。








 * * *








「ちくしょー!!これもあの夢のせいだーー!!」


俺がいいてえよ!!


“我ヲ助ケヨ”ってな!




「明日も同じ夢見るのかしら」


あたし一生あの夢見るの……?それはごめんだわ……


“我ヲ助ケヨ”ねえ……




「何を訴えたいんでしょうか……」


私に何を命じているのでしょうか、あの夢は……。


“我ヲ助ケヨ”………。






役者は揃った。





我ヲ……



我ヲ助ケヨ










 * * *





「もう考えるのはやめましょう。さあ、また練習の続きするわよ」


女は隣にいる獣に呼びかけて呪文を唱えた。






“遠い異界のものよ。アレクがその鎖を解き放つ。呼びかけに応じよ!!”






「何だこの声…?」


遠い異国の少年の目の前は突然光に包まれ、彼の意識はそこで途絶えた。



そして……






長い長い物語は今始まる―――――………。

















<戻>










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