桜内は眼鏡をかけている。細いフレームの伊達眼鏡。




叶はいつもそれを見るたびに考える。何故そんな不必要なものをわざわざ肌身離さず持っているのだろうと。
顔を誤魔化すためにかける人はいるかもしれない。だが、桜内はそんなことをする必要がないくらいに整った顔をしているのに。
彼流のファッションなのかもしれない、そうとも考えたことがある。だけどそれとなく聞いてみた結果、それは違うと知った。
ならばなぜだろう、叶は不思議に思う。












直に見たくないからだ、叶の言葉に桜内は面倒くさそうな声で答えた。
何を?叶は続けて問う。問いながら、それが何だか曖昧に分かる気がしていた。
こんなところ。こんな汚い世界。こんな愚かしいオレを、あんたみたいな綺麗な目が見つめたら。その目は潰れてしまうよ、ドク。そんな馬鹿な言葉を続けようとして、叶は思いとどまった。どうせ怪訝そうな顔をされるのだろう。だけどその言葉は、叶の本心でしかなかった。
そんなのは一つも知らないだろう桜内は叶の問いにちいさく苦笑をして、そして何も答えなかった。その代わりとでも言うように、直に見られたくないというのもあるだろうねと言った。
(あんた、目を見られるのが嫌いなのか)そう言おうとした叶は、その言葉をアルコールの強い酒と一緒に喉の奥へと流し込んだ。その言葉には、どんな声も返ってこないような気がしたからだった。だから別の言葉で笑う。
おれはあんたの目を直に見れたら、死んでも良いがね。
少しだけ驚いた顔をした桜内が、叶の顔をまじまじと見る。そしてくちもとだけで笑った。嘲るような笑みで。
だけどその顔とは別に、お前は馬鹿だなと言った声は存外、柔らかかった。
多分、桜内の瞳は綺麗な色をしているんだろうと叶は想像する。想像しか出来なかったのは、微笑んだ瞳はやっぱり、硝子に阻まれて見えなかったからだった。

叶さんはドクを綺麗だと思ってれば良い。
人を生かす職業をしているから。





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