「あ、あのう……」
 野菜を炒める音に混じって、小さな、まるで怯えているかのような声が聞こえた。タルタロスの中では聞きなれた、だが直接向かい合ってはほとんど聞いたことのない声。
「……あ?」
 荒垣は振り向きざまにそう返して、しまった、と少し後悔した。声の主、風花が、まるでしかられたかのようにびくりと身体を強張らせたのを見たからだ。
「あー……何だ?」
 慌てて、なだめるような声を出す。そんな荒垣を風花はちら、と上目遣いに見て、意を決した、とでもいうように息を吸い込んだ。
「あ、あの、荒垣先輩。教えて欲しいんですけど……」
「何をだ?」
 荒垣はそう答えながら、フライパンの下で赤々と燃えている炎を消し、出来上がった野菜炒めを用意してあった皿に移す。その手際のいい行動をじぃと見つめる風花は、思いつめたような顔をしていた。
「どうしたら、おいしそうな料理が出来ますか?」
「……は?」
「いえ、技術の問題だとは分かっているんですけど……。ですけど、それ以外にも私には足りない物があるんじゃないかな、って……」
 真剣な顔で首を傾げる風花は、そういえば最近料理に凝っているのだったか、と荒垣は思い出した。風変わりなタルタロス捜索隊のリーダーが、コロマルの餌を作っていた荒垣に言ったのだ。そういえば山岸さん、最近料理に凝っているらしいんですよ、と、笑顔で。
 そう、リーダーが。
「……」
 荒垣は深い溜息を吐きたい衝動にかられつつ、風花へと視線をやった。
「……どうして、作りたいんだ」
「…………え?」
「食べさせてやりたい奴がいるからだろう。……そいつを思い浮かべて作ってみな、多少は違うんじゃないか?」
 円くした瞳をぱちぱちと瞬かせた風花は、一瞬の後にわずかに赤面して、両手を頬に当てた。
「え、えっと、それはいわゆる……料理の隠し味は愛情、っていう……?」
「……そういえばあのリーダーは、人が料理してるのを見て楽しむなんて奴じゃないよな」
 荒垣はそう呟いて、苦虫を噛み潰したような顔をした。こうして風花が荒垣に何がしかのアドバイスを求めてくると予測して、彼はあんなことを言ったのだろう、と想像が付いたからだ。
(青春、ってやつか……?)
 未だに顔を赤くして何事かを呟いている風花を見て、荒垣は溜息を吐いた。


こんな会話してくれないかなって思ってたけど
料理には食べてくれる人を思い浮かべるのが〜って風花自身がゲーム内で言ってたのに今更気付い た

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