膨らみすぎた想い 

人間というのはあまりに近くにありすぎるから気がつかないというものがある。
それ気がついた時、人は少しだけだが成長することができる。

俺の名前は、高杉 正也(たかすぎ まさや)
今、俺は夕焼けに染まる道を一人の女の子と共にゆっくりと歩いている。
「ねぇ正也、今日正也の家に寄っていってもいい?」
「ん?どうしたんだ急に?まぁ…いいけど」
女の子の名は水瀬 沙紗(みなせ さしゃ) 親同士が学生時代の親友ということもあり、
いつもいっしょにいる幼馴染。
「特に用事はないよ、なんか正也の部屋を久々に見てみたいだけよ。」
俺はそう言う沙紗を不思議に思いながら、彼女を連れて
ゆっくりと夕焼けに染まる道を歩いていった。

…10分後
部屋についた僕はなれた手つきで部屋の鍵を開けて
彼女を部屋へと招き入れる。
「今、飲み物もってくるから、どこか適当に座っておいて」
俺はそう言い残すと飲み物を取りにキッチンへと向かった。
飲み物を持って部屋へ入り、それを飲みながらしばらく
世間話などをしていたが、しばらくすると話の種もつき
沈黙がながれた…。なんか気まずい雰囲気だ…。
そんな風に思っていると、沙紗が真剣な顔つきで
俺に話しかけてきた。

「ねぇ…正也、私のことどう思ってるの…」
「えっ…。」
「私は正也にとってのなに?…単なるお友達?」
「な、なんだよ突然…」
ねぇ、答えて、正也にとってなんなのよ!?
 小学校、中学校ずっと一緒にいた、ただの腐れ縁とでも思ってるの?」

彼女は力強い口調で俺に言葉を投げかけてきた。俺はその質問に
答えることができなかった。

「……。」
私はさ、正也に気がある仕草いっぱいしたわ。
 それでも…それでも、正也は気がついてくれない!!」
 いつも…いつも一緒にいたのに…。正也は私の想いに気ついてくれなかった!

「……。」

俺はただ、黙っているしかなかった。今、俺が彼女になにを言ってやっても
それはきっと、言い訳にしか聞こえないと思ったから…ただ黙って彼女の
言葉を聞くことしかできない…

もしかしてさ…正也は、私のことなんてどうでもいいって思ってる。
 ただの友達の一人としか思ってくれてないんだって…そう思うと怖くなった。
 好きだって感情を正也に伝えることができなかった…もしそれを伝えたとして
 正也に嫌われてしまうのが怖かった!!


彼女は、俺の服を力一杯握って。俺の胸に顔を埋めていた。
彼女の目からは涙が流れ、俺の服を濡らしていく…。
俺は彼女を見てやれず、外へと目をそらしてしまった。
外は雨がふっていた。いつから振っていたのだろう。
その雨はまるで、今の彼女の心境をそのまま映し出したようだった。

私は、正也に気にいってもらおうと必死だった。正也の好きな女の子になれるなら
 どんな事だってしてきたわ!!!それなのに…どれだけがんばってもどれだけがんばっても
 正也は気づいてくれない…。もう何度も諦めようとしたわ。でも無理なのよ!!
 いつも一緒にいるから…どんどん、どんどん好きになってちゃうのよ!!


「沙紗…」

なんで…私たち、幼馴染なんだろうね。そうじゃなかったら
 きっとこんな想いもしなくて済んだのにね…。


…ずっと前にさ、正也は覚えてないと思うけど。
 私に大きくなったら結婚しようねって言ってくれたよね。
 とても嬉しかった…その言葉がどんな時も心の支えになった…。


おぼえている、俺達が5歳のころ。俺は沙紗に大きくなったら結婚しよう
そう言った…でも知らなかった、小さいころのそんな些細な言葉が沙紗に大きな影響を
与えていたなんて…。

も、大きくなるにつれて、そんな約束。意味がないって思えてきた。
 それでも私はその約束にすがるしかなかった、その約束がなかったら
 私は正也にとってただの友達になってしまうから…
 その約束だけが、私が正也にとって特別な存在だってそう思える
 唯一の希望だったんだから!!!


もう既に俺の胸は沙紗の涙で雨にうたれたかのように濡れていた。

嫌いなら嫌いって、言ってよ!!
 今、ここで、私のことどう思ってるか答えてよ……。
 答えてくれないとさ…私これから先ずっとずっと…正也のことを好きでいてしまう。
 もう…苦しいんだよ…想い続けるのは…


沙紗の嗚咽まじりの叫びが俺自身に大きな音を立ててのしかかる。
だけど…俺は答えを出してはいけないだ…そんな資格はこの俺には
ないのだから、今まで沙紗の思いにも気がつかず、暮らしてきた俺に、
沙紗に『好き』って言ってあげる資格なんて…俺にはないのだから…。。。

「すまん…一人になりたい…帰ってくれないか…。。。」
「……」

俺がそう言うと沙紗は静かに涙を溢して、部屋を出て行った。
これで…これでよかったのかもしれない…。これで沙紗は苦しい思いを
せずに済むのだ…。そうこれでよかったんだ…。俺は自分自身にそう言い聞かせた。
俺には…沙紗を愛してやる資格なんてないのだから…。。

…次の日
いつも俺の隣にいる沙紗は、俺の隣いない…。
いつも俺に笑顔をくれる沙紗は、もう俺の隣にはいない…。
沙紗は学校を休んだ、担任は風邪だといっていたのだが
そんなはずはない…昨日のことできっと休んでいるのだ、俺にはすぐわかった。
授業を聞いていても、沙紗のことばかりをかんがえてしまう。。
休み時間も…飯を食っていても、沙紗のことばかりをかんがえてしまう…。
そう、それほどまでに彼女は俺にとって大きな存在だったのだ…
いつも一緒にいたから、当たり前だと思っていたから…。
気づかなかった、大きな存在…。俺はどうしようもなく沙紗に会いたくなった。
気づいたんだ、愛するという気持ちに資格なんていらないことを…。
俺は沙紗が好きだ…沙紗がいないと何もできない弱い人間なんだ…。

−キーンコーンカーンコーン−
一日の授業の終了を知らせるチャイムが鳴ると同時に教室を飛び出し
全速力で沙紗の家へと向かった、一分一秒でも早く会いたかった。
そうしないと俺が…俺自身が壊れてしまいそうだから。
沙紗の家についた俺は彼女の家のインターホンを鳴らした。

−ピーンポーン−
「はい?どちら様でしょうか?」
「はぁはぁ…和也です…。」
「あ、和ちゃん?沙紗のお見舞いにきてくれたんでしょ?
 あの子、調子が悪いとかいって朝から部屋の外にでないのよ。
 和ちゃんなら大丈夫だと思うから、あがってちょうだい。」
「はい…失礼します。」

俺は彼女の家にあがり、彼女の部屋の前へ立った。
自分の思いをちゃんと伝えないと…好きだって。沙紗のこと…好きだって。
決意を固め、ドアノブを回したが鍵がかかっていた。

「沙紗…?いるんだろ?開けてくれないか?」
「和也?なにしに来たの…?」

部屋の中から沈んだ声が聞こえてきた

「お前に話がある、聞いてくれなくてもいい。俺が勝手にしゃべってるから。
 俺さ、今日一日、沙紗のいない時間を過ごしてわかったんだ…。
 沙紗が俺にとってどれだけ大きい存在かっていうのが…。
 俺は…沙紗がいないと何もできない…弱い人間なんだよ。
 沙紗がいないと…俺は生きていけないんだよ。。。
 好きだ…俺は沙紗が大好きだ…。


「バカ…待ってたんだから…ずっとずっと…苦しかったんだからね…」
そう言いながら彼女は部屋から出てきた。顔からは小さな涙がこぼれていた。
「すまない…。」
「私も好きだよ…正也、大好き…ずっと一緒にいようね。」
「あぁ…約束だ…。」

沙紗は俺に笑顔を向けてくれた…。俺はこの笑顔がないと…生きていけない
俺は力一杯抱きしめた。愛しい人…水瀬 沙紗を

「正也、く、苦しいよぉ」
「もう離さないから…。」

沙紗はその言葉を聞いて目を閉じた。
俺と沙紗は唇を重ねた…。
沙紗の唇は少し、涙の味がした…。

もう離さない…ずっと一緒だ…。

End

〜あとがき〜
近くにありすぎるから気がつかないってありますよね。
僕にはそんな経験はないですからわからないですけどね^^;
B A C K ?

C o p y r i g h t (C) 2 0 0 3 P u r e A l l R i g h t s R e s e r v e d .

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