TORGシナリオ「神の兵隊に銃殺される」


第一話 ラディゲ編「パサージュ」

プロローグ
男は女をガラスケースの中に閉じ込めたがる。彼の愛したままの彼女の姿を。
僕もまたその例に漏れない。
それを女は男の身勝手だというだろう。
でも、女が男を変えようとすることと、一体どれほどの違いがあるというのだろう

君はこう言った。
「わたしに秘密を作っていいのよ」
とても悲しい目をして君は言った。
でも彼女の口癖は、いつも僕に対して優越感を語っているように聞こえた。だから僕はこの言葉を次のように解釈した。
「いくじなしのあなたには私に秘密を作る勇気なんかないのよ。・・・あなたは私の巣にかかった、哀れな蝶なんだから」、と。
でも、君は知らない。君の秘密が公然としたもので、秘密としての価値などないということを。
僕がこうして捕らえられたフリをしていることが、すでに僕の秘密なのだということを。
だから君が「秘密」ということばを口にする度に、僕はすごく白けた気がしてたんだ。・・・本当に。

いつのまにか君との恋愛は絶望との戯れに変わる。
恋人を抱く時に他の女を思い浮かべるように、僕は今の君を前にして、昔の君を思い浮かべていた。

でも今の君の匂いが鼻につきはじめてすぐ、僕は耐え切れずに君をピンで止めておこうと決心した。
だって、僕の眼に君の醜さが映ることほど、君にとって不幸なことはないんだから。そうだろう?
・・・僕にとっての君はガラスケースの中で今も変わらない美しさを放つことになるんだ。

これが不道徳だとみんなは言うかもしれない。
だけどこんな僕の愛を誰が裁くことができる?
殺すことで完成する愛を、時を止めることで完成する愛を・・・誰が!


シナリオ解説:事件の真相だけ記しておきます。カナワはフランスで武器の取引をしていました。その相手はリシャールという神父で、裏ではレジスタンスのメンバーだった男でした。彼はその細胞の武器調達を受け持っていたのですが、その取引がサイバー教会側にばれそうになったので、エージェント青城散人を送り込み、殺害しました。
その時現場に居合わせたのが、レイモン・ラディゲという少年。彼は現場を見て気絶しますが、青城はその彼に催眠術(ナイル仕込)をかけました。殺人をすべて彼がやったというシナリオにです。
しかし、青城の知らぬところで計算外のことが起こりました。放心状態のレイモンが車にはねられたのです。これにより、レイモン本人は死亡、代わりに入り込んだのはオーロシュのメールシュトロームブリッジで死んだストームナイト、ケイス・サードの魂です。(注:本来センドは別のコズムへと飛ばされるものみたいですが、メールシュトロームブリッジという場所のせいで、コアアースへと舞い戻ったことにしてます)
肉体の記憶があるため、初めは事件の記憶が抜け落ちたまま、レイモンとして生活していますが、徐々に事件の記憶とともにケイスとしての記憶も戻ってきます。
 ※ちなみに転生の部分はぷちぷりの個人的お話なので、使用者は転生の部分を放置して構いません。ちなみにこちらもそのつもりで附録をつけずにアップしてます。(本当は少し時間がなかったのです。)

個人的な反省点:第三幕のネタが浮かばず、内容が力技になりました。個人的に気に食わない部分です。あと、レイモンをはねた人物もわからない・・・はず。内容はぷちぷりの才能ともいえる雑さにより、よくわかんなくなってると思います。そこら辺は掲示板で指摘してくださるか、みなさんで解釈してください。あと実際にプレイされて作りこまれたシナリオではないので、多分弱点だらけです。

第一幕 交錯
スタンダード、サイバー教皇領優勢

 ある日のこと、PCはパリの郊外を歩いていると、血まみれの少年、歳のころは16〜18、がふらふらと道路に出てきて、車にはねられます。車はそのまま逃げていき、PCが近づくと少年は重体であることがわかります(3LV負傷)。すぐさま応急処置など、正しい処置をしなければ彼は命を落としてしまうでしょう。PCたちはストームナイトとして、当然適切な処置を取ろうとするでしょうが、その際はそれぞれの処置の難易度を基本ルールで確認、PCにロールをさせてください。少年は奇跡で全回復しようとすまいと気絶したままで、駆けつけた救急車によってパリの病院へと運ばれていきます。PCたちも救急隊員によって同行を求められます。

 病院に運ばれると少年は精密検査の後、病院のベッドで寝かされます。少年の家族(母親と姉)がそれから少ししてやってきて、PCたちに礼を言うと合計で5,000フランほど包んでくれます。礼金からも判断されることですが、彼女達の身なりや身のこなしを見ても、少年が裕福な家庭で育ったことがわかるでしょう。

 病院にくると次のことがわかります。少年の名はレイモン・ラディゲ。《知力》難易度12でロールをすると、PCはラディゲという姓の上院議員が一人にいることを知っています。PCが母親にそのことを確認すると、彼女はそのことを認め、仕事で礼を言えない夫に代わって詫びを入れます。


レイモン・ラディゲ
敏捷度:8
筋力:9
耐久力:9
知覚:11
知力:13
魅力:8
精神力:8
〈リアリティ(コアアース)〉9
ポシビリティ:
解説:上院議員ロベール・ラディゲの息子。エリートコースを歩んでおり、将来はエコール・ポリテクニック(グランゼコールの名門校。理工系の学校)から国立行政学院(ENA)へと進むことを目標としています。もちろん政治家志望です。真面目な性格の為、恋人であった娼婦シュザンヌを殺し、自分も死のうと思っていました。ただし彼は今回の事件ではシロ。それはまたシナリオを読み進めていく中でわかってくるでしょう。ちなみにどうでもいいことですが、彼は作家、レイモン・ラディゲと同姓同名です。それにより小さいころからからかわれていたので、文系ではなく理系の道を歩んでいます。

 レイモンは幕ごとに技能が増えていきます。それは彼がケイス・サードの転生した姿であるからです。ケイスは事故で魂の抜けた肉体に乗り移りました。記憶は徐々に戻っていきますが、肉体に残った記憶はレイモンのままなので、当初他人の記憶が混ざっていることに戸惑いを感じます。第三幕でこの戸惑いは解決され、レイモンという一個の少年の人格の完成も描かれる予定です。ただし、それはプレイによっては描かれないかもしれません。ようはマスター次第です。


 さて、そうして会話(レイモンがはねられたときの状況など)を交わしていると、病室にベージュのコートをまとった初老の男が入ってきます。彼はパリ市警の刑事、ジャン・ガスキンで手帳を見せると、家族だけを廊下に呼び出します。PCはこれを《知覚》難易度10で聞き耳を立てることができます。その内容は次の通りです。

ジャン「お子さんがはねられる前に出てきたアパートなんですが・・・。実はそこで殺人事件が起こってるんです」
母親「まさかうちの息子が・・・!」
ジャン「いえいえ、まだそうとは言っておりません・・・。ただ、殺された男の身元がまだわかっておりませんでね。十字架が落ちていたことからサイバー教会の線を洗っておるのですが・・・。まあ、今回はお子さんからは少しお話を聞く程度で・・・」
母親「・・・わかりました。とにかくこれで、どうかマスコミの方には・・・」
ジャン「わかっております。議員のお子さんのことですからこちらも秘密には万全を尽くさせてもらいますよ」

注)ぎりぎりでも「サイバー教会の線」の部分は聞こえるようにしてください。PCが話に関わるための動機がなくなってしまいますので。マスターに他にアイデアがあればそれを使っても構いません。


 刑事と外で立ち話している時、レイモンが目を覚まします。少し気だるそうな目で首だけめぐらすと、知らない顔(→PCたち)を見て驚きます。レイモン「ここはどこ!?」。PCが状況を説明すると、レイモンは少し落ち着きを取り戻しますが、当の事件については覚えていないと言います。それは決して隠しているわけではなく、彼は事故のショックで前後のことを覚えていないのです。

 母親は帰ってくると、レイモンが無事目を覚ましたことを喜びます。安心した彼女はPCたちに宿を手配すると、今晩はここに泊まってくれるよう頼みます。

 「サイバー教会との関係」、これがわからなくても刑事が来たことで、PCは事件に対する興味を覚えるでしょう。事件の真相を知るためにPCがとる行動は次の通りです。
@ジャン・ガスキンに事件のことを尋ねようとする。
ジャン・ガスキンは警察署に行けば会うことができます。パリは現在のような状況で人手が足りていません。今回の捜査もそれほど重要性があるとも思えず、(また上院議員の息子がらみであることから)捜査には消極的です。しかし珍しく正義感のある刑事ジャンはPCの申し出に快く情報を回してくれます。ただし事件を解決し、真相を回してくれるという条件でです。得られる情報は次の通り。

・殺されたのは娼婦と客の男性。娼婦の名前はシュザンヌ。
・現場はシュザンヌの自室。レイモンがはねられた場所はそのアパートの前。
・凶器は刃物。現場に残されていた。指紋はレイモンのものと一致。
・死亡時刻PM15:30前後。レイモンが事故に遭ったのとほぼ同じ。
・一枚の手紙が残されており、次のようなことが書かれている。「僕の愛に名をつけてくれ、さもなくばそれは罪になってしまうだろう・・・」筆跡はレイモンのもの。

ジャンからアパートの鍵を渡されます。Aのシーンに移ってください。

A現場に戻って情報を集めようとする。
「部屋」
低所得者の住む安いアパートです。鍵が締まっているので、〈錠前破り〉難易度10でロールする必要があります。中には証拠らしい証拠は残っていません。死体の型どおりにはられた白線はベッドの上で彼らが殺されたことを示しています。〈発見〉難易度13でベッドの下に封筒が落ちていることに気付きます。この封筒の中身は五桁から六桁でなる数字を羅列したメモしかありません。《知覚》か暗号関係の技能、難易度13で判定させてください。すると、カナワと何者かの間で交わされた武器取引の納品証だとわかります。とりあえず、ここでは日本が関係していることを匂わせるだけにとどめておいて、暗号解読はよっぽど気付いたPCにのみロールをさせてください。

枕の中にシュザンヌの日記があります。その中にはシュザンヌの悩み(附録1:パッサージュNPC紹介、シュザンヌの項参照*アップしてません)が書かれています。

「聞き込み」

近所の住民に聞くと、シュザンヌの商売上様々な男性が入り込んでいますが、その日に限って普段見かけることのないアジア人がおり、それが事件の時間と一致することがわかります。

対して住民はレイモンについてはちょくちょく見かけています。まだ16歳の少年で彼女の部屋に頻繁に通っていたことがその理由です。

 住民との関係は反感から始まります。この地域の住民はこうした事件に係わり合いを持ちたがらないからです。エディーノス、あからさまなナイルヒーローなどを見ると、それは胡散臭さとともに敵対にまで跳ね上がります。(!)少し握らせれば反感であれ、敵対であれ好感度が中立にまで引きあがるでしょう。

ここまで情報を手に入れ、ホテルに戻ると電話が鳴ります。レイモンからです。彼は今から病院に来て欲しいといいます。
病院は指定された時間、病棟は消灯時間です。PCは何とかレイモンのところまで行かねばなりません。
看護婦などに気付かれると厄介なので〈隠れ身〉を使いながら入っていきます。難易度は8です。病室に近づくと、《知覚》9でレイモンの病室(個室です)の前で嫌な予感がします。中をあけると、男がレイモンを殺そうと彼の口をふさいでいます。暗くてよく見えませんが、黒いフードを着た数人の男です。PCが入り込むと男達が襲い掛かってきます。

黒フードの忍者(三人)
敏捷度:13
〈回避〉14
〈格闘〉14
〈軽業〉14
〈銃器戦闘〉14
〈武道(忍術)〉15
〈白兵戦〉15
〈間合い〉15
筋力:10
耐久力:10
知覚:11
〈トリック〉
知力:8
〈威圧〉9
魅力:7
精神力:7
〈リアリティ〉8
装備:小刀(+5/15)
リストガン(18)3-10/30/50
解説:彼らは日本大使館から送られた忍者で、どれもカナワの息がかかっています。尋問しようとすれば、奥歯に仕込んだ毒薬で自殺を図ります。一応サイバー教会らしさを見せる為に黒フードとリストガンをつけていますが、忍者らしい動きは隠せません。戦闘後でもいいので、《知覚》判定させてください。リストガンを使う際は、命中判定に−3してください。

忍者は自分達が不利になった時、またPCが負けた場合も逃げようとします。忍者であることを知られることだけは避けたいと考えているのです。
 レイモンは救ってもらったPCたちに次のように言います。
レイモン「ありがとう。スリンカーが窓際にうろついていて、嫌な予感がしていたんだ・・・。でも間に合ってくれてよかった」
注)スリンカー:サイバー教皇領ソースブックP103参照。カナワ用に改造されている。
《知覚》技能難易度9で、PCは何故この少年がスリンカーを知っているのか不思議に思います。レイモンに尋ねても「何故かそう思った」という答えしか返ってこないでしょう。

困った時は?
PCが与えた動機に気付かなかった。:廊下での立ち話を聞かなかったなど、そんな時はジャンから依頼をさせてください。ジャンは正義感(とはいえ現実的な)のある刑事ですが、このような事件に警察が消極的であることもまた知っています。そこで、この事件をたまたまレイモンを助けたPCに任せてみようと思うことにすれば、すんなりPCは物語に関わっていくことができると思います。

フラッグ
ロマンスカードが出た場合、レイモンの姉、ジャンの部下などと結ばせておくと今後の展開でサイドストーリーを作りやすいでしょう。



第二幕 捜査
スタンダード、コアアース・サイバー教皇領混合

 駆けつけた病院職員が、レイモンの病室に現れ、PCたちは結局ホテルへと戻っていきます。そしてそのまま朝を迎えます。
 次の日、テレビで次のような放送がされます。サイバー教会が流しているもので、ラディゲ上院議員の息子が娼婦を殺したというニュースです。これはカナワが匿名で教会側にリークしたものです。教会はカナワの思惑通り引っかかり、フランス政府側のスキャンダルとして大きく取り上げてくれました。
 これによって、腰をあげざるを得なくなったパリ市警はレイモンを留置所へと送還します。するとレイモンが面会にきて欲しいと伝えられます。これが第二幕のPCの動機となる部分です。
 面会に行くと、レイモンは待っていて(注:フランス警察のこと、面会の規則など知らないので、当日からいきなり面会させています。何なら、親の力で面会を可能にしたでも構いません)、PCに次のようなことを言います。
 レイモン「今回の事件、父さんがもみ消して、きっと捜査は流れると思う・・・。でも、でも僕、事件の真相が知りたいんだ。お願い、明日にはここを出られると思う。だからそのときには僕を連れて行って。」

 PCはレイモンに何故狙われるのかを知りたい為に、事件について尋ねるかもしれません。レイモンは事件のことを思い出せませんが、自分がシュザンヌと恋人同士であったことは語ります。
 〈説得〉を続ければ、シュザンヌの部屋にあった日本料亭のマッチ箱があったことを思い出します。(レイモンはその店の名が「リョウテイアラシヤマ」だと覚えている)

第一幕でメッセージカードを見ていたら、それを彼に尋ねる。
 彼はそれについては口をつぐみます。彼の恋心の核心をつく、一番触れられたくないところです。今回の事件を追っていくことで、彼は自分を見極めようと思っていますが、そんな決意をしたものの、まだ揺らぎがあります。PCにはそんな弱さを度々見せることで、何か力づけるような言葉を吐かせてください。
 数日後、レイモンは釈放され(保護観察もつかなかった)、姉にだけPCに同行することを伝えます。姉は心配そうな目で見つめますが、了解します。
 それからの行動は事件の捜索です。

@料亭「アラシヤマ」をあたる
 この日本料亭は休業しています。《知覚》難易度10で「日本大使館が近くにあること」に気付きます。成功度まあよい以上で、「多分、ここの大使館員がたまに食べに来ていたんだろう」と、ふと思います。

A日本大使館
 日本大使館はカナワの息がかかった職員によって構成されており、カナワの武器を輸入することで陰ながらパリコミューンやレジスタンスを援助しています。しかしそれは教会側に知られないよう慎重に進められています。レジスタンス程度なら、ばれそうになった際、すぐに切り捨てるでしょう。リシャールもそんな被害者の一人です。
 そのため、レジスタンスと取引する際には細胞のメンバーのうち一人とだけコンタクトを取り、調達手段は秘密にするよう釘をさします。多少手間はかかりますが、サイバー教会が欧州から東洋人を排除しようとしている(サイバー教皇領P22参照)以上、仕方ないと考えています。
 大使館側は取り合ってくれないでしょうが、日本人がいれば、中に入り込むことも可能かもしれません。ただしカナワの防犯システムと報復を考えると、あまりいい手段とは思えません。ここで張っていれば、黒コートのアジア人(青城散人)が中に入っていくのを見かけることができます。その男の風貌はシュザンヌのアパートで得た情報と同じです。
 万が一、中へ入ることができたなら、次のような会話を盛り込んでください。

「教皇のおかげでラディゲのガキがやったことにできたが、そのうちあのガキの記憶が戻るやもしれん。早く始末しなければ」

Bレイモンの自宅に行く。
 取材陣が張っており、中には入れそうにありません。レイモン自身も言ってもしょうがないと忠告するでしょう。

Cシュザンヌのアパート再び
 ここで捜索を行うのなら、第一幕で漏らした情報を得ることができます。(追加情報はなし)
 また、レイモンはこの部屋に入ると、机の上にあるシュザンヌの写真たてを持って、泣き始めます。そして彼女に対する複雑な思いを語ります。
 レイモン「彼女は娼婦で、いつも自分がとった客の話をしていた。僕は嫉妬して空想の中で彼女を何度も殺してたんだ・・・」

ここまで独自の調査を行うと、殺された男の身元が判明します。男の名はリシャール、殺人現場から五キロほど離れたところにある、カトリック教会の神父です。

 教会に行く
 ジャンに頼めば中に入る為に手配をしてくれます。リシャールの部屋は様々な宗教書が置かれており、整頓された部屋です。PCに図:リシャールの部屋を渡してください。一つだけメモが残っています。〈発見〉難易度12で額の中を調べさせてください。額の中にリシャールが属していた細胞のカードと会議通知がはさみこんでおり、これからレジスタンスの隠れ家の場所がわかります。

マスターサイド:カナワとの取引の証拠はすでに持ちさられています。プレイヤーにわかるのはレジスタンスとの関係だけです。

マスターサイド:ここまで来て、PCに事件について得た情報をレポート用紙か何かにまとめさせてください。

 第二幕で得ておかねばならない情報は、「リシャールとレジスタンスの関係」「日本大使館の存在」です。この二つの情報を得ることになったPCには報酬のポシビリティを1増やしてください。「黒コートのアジア人」については第三幕でまた知る機会があると思うので、その時に。

 PCは大使館では調査がしづらく、大半がレジスタンスの隠れ家を探し出そうとするでしょう。それが第三幕へとつながっていきます。


レイモンの扱い方
 捜査の中でレイモンも少しづつ記憶を取り戻していきます。ここぞという時に表に出して演出してください。プレイヤーズコールが起こったら仕方ないけど・・・。

困った時は?
PCが日本大使館に張り続けて動かない!:黒コートのアジア人を見つけたPCはその男を追跡しようと大使館の前で待ち伏せするかもしれません。しかし、この大使館こそが彼の隠れ家であり、彼は次の日まで出てきません。もしなかなかその場から移動しないようでしたら、大使館の警備員でも出してください。大使館の周りをうろついているような人間は怪しまれて当然。警備員が現れるのも道理です。また、裏でパリコミューンとのつながりがあることも今一度確認させておきましょう。
 また、黒コートのアジア人にいきなり切りかかるのも賢明ではありません。大使館の関係者に手を出すことがどれほど危険かは賢明なストームナイトであれば理解できるはずです。

フラッグ
 人物誤認カードがあれば、PCは武器取引をしているレジスタンスと勘違いされるかもしれません。そこで、カナワとレジスタンスにつながりがあることを知ることができます。



第三幕
ドラマチック、サイバー教皇領優勢

 PCたちは一度家に戻るというレイモンを待っています。すぐに連絡をいれると言っていたのですが、一向にレイモンからの連絡はありません。するとPM11時ごろ、レイモンがいないという連絡をアニェスから受けます。いなくなったのは二時間前、その時間ならもうPCたちと合流していてもいいはずです。
 PCはレイモンを捜索することになりますが、すぐにレイモンが傷だらけでPCたちのもとに走ってきます。話を聞くと振り切って逃げてきたと言うのです。
 すると忍者が三人、レイモンを追ってきます。(この時は忍び装束です)

 追手の忍者
(能力は第一幕、黒フードの忍者と同じ。)
ポシビリティ:5
装備:質のいい忍び刀(+6/16)
熱源追尾手裏剣(+3/13)
13mm春陽海(ダメージ基本値18)
解説:忍術の奥義は目録まで使用可能。

 第一幕と同様に彼らを尋問することはほぼ不可能ですが、ここでレイモンの記憶が戻ります。彼が言うには、リシュールを殺した犯人はやはり黒コートのアジア人です。レイモンは今夜リシュールがいたレジスタンスを始末しにカナワが動くと言います。

 レジスタンスのアジトへ移動している時でいいので、次の台詞を呟いてください。
 レイモン「・・・でも・・・彼らが殺さなくても、きっと僕が殺してたんだろうと思う・・・」
 解説:レイモンは自分があの日、シュザンヌを殺しに出向いたことを思い出したのです。

 第二幕で手に入れたレジスタンスの情報を元に、アジトを探しだします。アジトはブーローニュの森から西に10キロ走ったところにあります。部屋は廃ビルの地下駐車場内で、奥の方に入り口があります。(図:レジスタンスのアジト、レジスタンスの構成員参照)ノックしても反応が返ってきません。しかし、ドアに備え付けられたスロットにカードを流し込むと反応があります。

 鍵を開ける音とともに扉が開くと、銃を突きつけられます。テレビで事件を見ていた彼らは、レイモンの顔を知っていたのです。ここで誤解を解くために説得する必要があります。門番の《知力》は8です。PCへの感情は反感から始まるので、成功するには15以上の達成値が必要になります。危険が迫っているなどと伝えれば、少しは中に入りやすくなるとは思いますが。

 中に入ると、レイモンが今回の事件の真相を話し始めます。殺人はカナワのエージェントが行ったこと、カナワは武器取引の口止めにリシャールを殺したこと、自分はその濡れ衣を着せられたことです。

 そしてリシャールを消した今、取引を知っているかもしれない細胞のメンバーも、サイバー教会の仕業にして消そうとしていることを伝えます。しかし、レイモンの言葉だけではレジスタンスのメンバーを信用させることはできません。みんな半信半疑な顔をしているので、PCも一つ説得する必要があります。この説得はPCが手に入れた、取引の証明書他、数々の証拠を並べることによって難易度が減っていきます。設定は先ほどの門番の数値を使うといいでしょう。

 信用させられれば計画を考えなければならず、失敗すれば彼らだけでレジスタンスを守らなければなりません。

 レジスタンス(11名で組織)、平均年齢31,5歳。

 信じてくれたら:逃げるか戦うかになるでしょう。逃げる場合は必要な書類だけをまとめ、トラックに積んで逃げなければなりません。この場合も結局現れたカナワと戦わなければなりません。
 戦う場合は、レジスタンスが武器を貸してくれます。カナワとの取引で手に入れた武器があるので、それで迎え撃つことになります。(マスターは大体どのような武器があるのか、決定してください)
 ここで迎え撃ったとしても、ここまであからさまに戦闘が行われた以上、この場所を捨てなくてはなりません。

 さて、カナワの部隊は次のように現れます。二台のトラックに乗った兵が合計15人。荷台の中から出てきます。まず、二人の兵が扉にプラスチック爆弾をセット。扉を爆破します。8人程が中に入り、四人ずつに別れて各部屋のレジスタンスを射殺していきます。残りのメンバーは外で待機。逃げ出してきたメンバーを攻撃します。(図:カナワの襲撃参照)
 なお、レジスタンスを味方につけていれば、PCが戦う数は半分に減ります。

 トラックの装甲は防弾用のコーティングがなされており、そこで隠蔽しながら戦うこともできます。なお、車内には黒コートのアジア人(青城)と指揮をとっている部隊長がおり、彼らは前線で戦いません。

 信じてくれなかったら:カナワの襲撃を止めるか、逃げるかです。しかし後者の行動はストームナイトとしてあってはならない選択です。PCのほとんどが戦いを選ぶでしょう。

 PCは自分達の持っている装備で戦わなければなりません。特に15人を相手にすること考えれば、重装備でなければ圧倒的に不利です。しかし、5ラウンドたえることができれば、ようやく信用したレジスタンスが応援にきます。ここで運のいい数人のPCはレジスタンスから武器を手に入れることができるでしょう。
6ラウンド目からPCの戦う数は半分になります。

なお、レイモンが旋空投でエージェントを投げ飛ばすのを誰かに目撃させておいてください。ケイスが転生したことを示す伏線です。

青城散人(エージェント)
敏捷度:9
〈回避〉13
〈格闘〉13
〈隠れ身〉14
〈武道(古柔術)〉15
〈白兵戦〉14
〈銃器戦闘〉13
〈間合い〉12
〈錠前破り〉11
筋力:12
〈重量挙げ〉13
耐久力:10
知覚:9
〈変装〉11
〈手掛かり分析〉11
〈トリック〉12
知力:9
〈瞑想〉10
〈威圧〉13
魅力:9
〈説得〉11
〈魅了〉11
精神力:10
〈リアリティ(ニッポンテック)〉11
〈信教(神道)〉12
ポシビリティ:18
装備:質のいい刀(+8/22)
13mm春陽海(ダメージ基本値18)
インパラ・チェインガン(ダメージ基本値23)
手榴弾×2、煙幕×1
解説:青城は状況が不利と見ると、退却を試みます。彼と数名は逃がしてやってください。そこでPCが追ってくるならシメたもの、この話のクライマックスとして、PCと対決させてください。
カナワの部隊 (10人)
敏捷度:9
〈回避〉9
〈格闘〉10
〈隠れ身〉10
〈銃器戦闘〉10
〈白兵戦〉11
〈間合い〉11
筋力:9
耐久力:8/15
知覚:9
〈トリック〉10
知力:8
〈威圧〉9
〈爆発物〉11
魅力:8
〈説得〉9
〈魅了〉9
精神力:8
〈威嚇〉11
装備:京都警察RKD(アーマー基本値+7)
ヌンチャク(ダメージ基本値+5)
インパラ・チェインガン(ダメージ基本値23)
解説:部隊長は《筋力》と《耐久力》が10であること以外は隊員と変わらない。


 以上、戦闘が終わると、レジスタンスは無事危機を逃れることができます。レイモンの罪も晴れて、調査結果をジャンに持っていけばいくらか報酬がもらえるでしょう。しかしこの捜査は結局表立って扱われることはありません。何故ならカナワと武器取引をしている政府はこの事件を押さえ込みたがるからです。結局カナワの勝ちに終わるような気がします。
今回の事件でPCはこのレジスタンスとのコネができます。その話については第二話で書いていきます。

エピローグ
 俺はシュザンヌの墓の前に立っていた。濡れ衣が晴れた今、市民の好感を取り戻そうと考えたラディゲの父によって建てられたものだ。その経緯に不満がないわけではなかったが、こうして花束を手向ける機会ができたことは彼の心の慰めになった。
 「レイモンは君を心から愛していた・・・。それがエゴイスティックで、君を理解していなかったとしてもね。今ごろ彼の魂は君の魂を探してさまよっていると思う。もし再び出会ったなら、彼を受け入れてやってくれ。こうして肉体を失った以上、君はもう他の男に身を委ねる必要はないんだから・・・。安らかに・・・シュザンヌ・・・」
 冬の木枯らしが吹き抜ける中、悲哀が全身を駆け巡った。自分のことではないはずなのに、何故か頬を伝うものがある。世界がすれ違った時の孤独感をこの心臓は覚えている。そしてその苦しみはケイスとしての俺の魂も知っている。
 ・・・荒っぽく涙を拭った。
 「レイモン!」
 もう一人の自分を呼ぶ声に振り返った。
****
 「レイモン!」
 君達は少年の名を叫んだ。シュザンヌの墓に背を向け、レイモンはいつも通りの素振りで走ってくる。しかし、潤んだ瞳が彼の笑顔を裏切っていた。
 君達は何か一言でも励ましの言葉を語ってやろうと思う。すると、レイモンはそれを察してこう言う。
 「大丈夫。・・・きっとあの世で幸せにやってるさ」
 「・・・?」
 
2月16日
 彼は愛を自分の中に閉じ込めようとしていたのだ。硝子の壁は音を立てて崩れ去った。そしてその欠片は彼の身体にたくさんの痛みを残していった。「ヴィトレアムール」・・・私はこの愛に名を与えた。
 でも、それは罪に変わりない。指で記憶をなぞると今でも傷跡をはっきり残している。でも、私はその罰を眺めていこう。
 いつまでも。そう、・・・いつまでも。
―――レイモン・ラディゲ


困った時は?
 カナワのエージェント相手にPCだけでは荷が重すぎる!
 レジスタンスが話を信じてくれなかった場合ですが、かなり辛いと思います。(私がPCいじめが好きなので)そんな時は、二台トラックがあるので、一台(A)がPCと戦っている間にもう一台(B)をアジトに突入させてやってください。少しは戦いやすくなると思います。その時は青城をBの車にのせておくと、クライマックスの対決が演出しやすいです。

フラッグ
 知人カードがあれば、レジスタンスメンバーの一人と昔組んだことがあるとすれば、レジスタンスとの交渉がやりやすくなります。人物誤認なら、レジスタンスと反目している組織の人間と間違えられ、縄で縛られる。その時にカナワ突入といった感じ。

報酬:報酬のポシビリティ、基準は9です。



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