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貴方を独占したいと思っている我侭な私。 清麿、どうか。 そんな私でも好きでいて下さい─── My best of… 逢いたいと云う強い一心だけで、気が付けばこんな処へ。 公立の、中学校。 空港から真っ直ぐ此処に来た私は今、校門前で立ち尽くし、 清麿をひたすら待っている。 下校時間のチャイムは既に鳴った── もうすぐ清麿が出て来る── 学校にまで迎えに来るのは初めてで。 しかも一ヶ月位は逢っていなかったから。 私は胸を躍らせて、その恋人を探した。 そして暫くすると、清麿が下駄箱から姿を現した。 「清麿…!」 玩具を与えられた子供の様に、私の眼がパッと見開く。 もう清麿以外、何も見えない位の集中力で。 清麿が校門に向かい、段々と近づいて来た。 人前だけれど、私はその胸に飛び込もうとした。 …だが、 「高嶺!!」 「高嶺くーーん!!」 清麿の背後から清麿の名を呼び、駆け寄って来たのは、 清麿のクラスメイトらしき人達。 男の子が三人に、女の子が一人。 女の子の姿が眼に入った途端、私は情けなくもムッとしてしまった。 「なあ、これから野球かサッカーしねーか?」 「私、審判やるから!」 清麿を遊びに催促してるらしい。 でも私は、清麿が何て答えるかなど感知している。 「いや悪い、今日は約束があるから……」 判ってはいたものの、私は清麿の言葉に嬉しさを感じた。 だがそこに、清麿の友達は突っ込んできた。 「何だ〜?デートかよ、高嶺!」 ふざけて言ったのだろうけど。 清麿も私も、その発言に肩を弾ませた。 ギクリという効果音が鳴った。 「な、違えよ!!」 「なら、何赤くなってんだよ…? でもさァ、高嶺なら彼女はいるだろ!?」 「ば…っ! いねえって!!」 「───!」 もちろん判っている。 真面目で正直な清麿でも、嘘は付く。 私と清麿の交際を知ってる者など、ガッシュとブラゴぐらいで。 歳が離れている事もあるし、 二人の関係など、他の者にはなかなか言えない事で。 清麿が嘘を付くのは、判る。 けれど… キッパリとした“いない”の発言に。 私の胸は締め付けられるように、傷んだ。 「じゃあオレ、帰るから!!」 「あ、おい高嶺!」 「えー、高嶺くん!…そんなあ〜〜!」 清麿は友達に手を振って、再びこちらへ走ってきた。 私は何故か身体が重く感じた。 だが、校門から出て来た清麿の瞳に、私は自身の姿を映す。 「清麿…」 「! シェリー…!?」 名を呼ぶと清麿は勢いよく振り返った。 その驚きの表情は、すぐに喜びへと変貌していった。 「迎えに来てくれたのか?」 「あ… うん…」 「そうか、ありがとな、シェリー」 清麿は嬉しそうにお礼を言って微笑むと、私の手を優しく引いた。 私達は清麿の家へと歩いて行く。 私は…家に着くまでずっと、上手く笑えないでいた。 「シェリー、何か飲むか?」 「あ、ううん、構わないわ」 「そうか?」 窓の外を眺めていた私に清麿はそう言うと、ベッドに腰掛けた。 そして機嫌良さそうに口を開く。 「シェリーが学校にまで来てくれて、オレ嬉しかった」 少し頬を染めて清麿は続けた。 「実は今日、帰りに友達に誘われたんだが… ちゃんと断った。断って良かった。 シェリーとこんな風に過ごすなんて久し振りだもんな」 何とも嬉しい事を言ってくれる清麿の顔は、私の大好きな顔。 とても綺麗な顔。 とても綺麗な言葉。 だけど私の心は… 「ねぇ清麿… 何で… “彼女はいない”って言ったの…?」 汚かった。 「え…?」 私は何を言ってるんだろう。 友達の誘いよりも私を選んでくれた清麿に、何かを責める理由などない筈。 恋人関係という事実など、二人と数人の心の中だけに閉まっておけばいい筈。 充分ではないか。 なのに何で醜い気持ちだけが体中の血管を流れるの? 何で我侭な言葉ばかり口からどんどん出てくるの? 「清麿の彼女は私なのに………」 欲望が、堪らずに込み上がってきた。 「……シェ…ッ!?」 ベッドに座ったままの清麿の前で正座をする。 私は眼の前の制服のズボンに顔を近づけ、 ジッパーを下ろし、清麿自身を取り出した。 「な、何… …ぁ…ッ!!」 私はそれを口内に含んだ。 歯を立て、十本の指で擦り、吸い付いたりを繰り返した。 清麿は両手で私の頭を掴み、ぎこちない声で拒んだけれど。 清麿自身は私の口内でどんどん膨張していった。 「んん…ッ! ……ッぷは、はぁっ!」 射精前に口を離すと、私は衣類を床に全部脱ぎ捨てた。 そうしたら立ち上がり、酔いしれ気味の清麿をベッドに押し倒した。 私はその身体に跨り、両手を清麿の胸元に置き、 自分の秘部に清麿自身を押し付けた。 「ん、ぁ…ッ」 「…っ! シェ…」 清麿は私の腰を持ち、挿入に苦しむ私を退かそうとした。 だけど、濡れきった秘部に自身を入れるのは、案外容易く…。 退かすよりも早く、清麿自身は私の中に全て収まってしまった。 そして私は清麿に掴まれたまま、その腰を厭らしく揺らし始める。 「ん、ん、あ…っ 清麿…ッ!」 清麿のYシャツをギュウッて握り、私は動きを加速する。 この半端な体勢が、二人の快楽を更に湧き出して… 清麿も堪らなくなったのか、やがて一緒に腰を振ってきた。 「ぅ…あッ シェリー…!」 「…ぁ! 清麿…っ もうだめ…ッ!!」 早くも、射精感がすぐそこまで来ていた。 清麿も、「オレも」って言って、限界そうな顔をしてる。 「───…ああッ!!」 「…っく…!」 私達の握力が最高まで強まった、瞬間─── 私達二人は同時に達した。 私は達する前に秘部から自身を抜いたから、 清麿の胸には私の、私のお腹には清麿の精液が飛び散った。 「きよ……」 そしてその卑猥な光景を眼にした私は、何だか眩暈を覚え、 たった一度なのに気を失ってしまった。 「ん………?」 「気が付いたか?」 うすく眼を開く。 私服に着替えている清麿が、私を見下ろしていた。 「…あ…ッ!」 私は起き上がった。 私は裸体のまま清麿の布団で寝ていたらしい。 「き、清麿… あの、私…」 清麿との、ああいった行為は初めてではなかった。 けれど自分から清麿を攻め込んだ事に、今更ながらに恥を知った。 …というよりも、自分に絶望したと言えよう。 勝手な事を言って、清麿と無理矢理性行為をして… これで清麿に嫌われも… おかしくはないのだから。 「…ごめんなさい」 眼を閉じて、俯いて、謝罪をした。 だが、私の頭に降ってきたのは。 清麿の… 優しくて温かい、大好きな手だった。 「オレも… 悪かった」 発せられた台詞は、清麿には無関係な事だった。 「な… 何で清麿が謝るの?」 そうだ。 私が悪いのだ。 清麿が謝る理由など、ある筈ないのに。 なのに清麿は微笑んだまま… 「だって… 彼女が“いない”って言っちまって… それでシェリーは悲しんだんだろ? …ごめん」 清麿は申し訳なさそうな表情で、私の髪を撫でる。 「だけどあいつらに少しでも喋ったら、とことん追求されそうで… そう思ったら恥ずかしくて、否定したんだ… …本当に、悪かった」 必死に想いを告白する清麿。 私は、今度はそんな清麿が愛し過ぎて胸が締め付けられた。 「清麿…」 清麿を誰よりも信じている自分。 だけど心の何処かで疑い、下らない嫉妬をしていた自分が、 私は本当に醜い人間だと感じた。 汚いと感じた。 清麿に好かれる権利など無いんじゃないか、って思う程。 「シェリーはオレの恋人だ… 好きだ、シェリー」 でも、それでも。 こんな私でも、清麿は好きと言ってくれる。 私は清麿に軽く口付け、首元に抱き付いた。 「ごめんなさい… 私も好きよ、清麿の事が…」 好きです、清麿が、大好き。 だから、清麿も。 こんな私でも、ずっとずっと好きでいて。 「うん…」 清麿も私を抱き締め返してくれた。 私は清麿の服を涙で濡らした。 そうして私達はまた一度、身体を重ね合ったのだ。 「行って来る… また放課後な」 次の日。 私は清麿を見送る為、またも中学校の校門前に来た。 「行ってらっしゃい」 笑って手を振ると、清麿は下駄箱に向かい駆けて行った。 「高嶺ーー!!」 するとそこへ、昨日と同じ子達が、横から清麿の元へ走って来た。 その声は私の耳にまで届いた。 「おい、高嶺!あの女の人は誰なんだよ!?」 「高嶺君の知り合い!?」 「綺麗な人だねー」 清麿を囲んで質問を並べる、清麿の友達。 私はそれを不安げに見ていると、 清麿はこちらを振り返り、微笑みながら口を開いた。 「オレの… 一番大切な人だよ……」 そう言って友達に背を向け歩いて行く清麿の耳は赤かった。 私は… 幸せを噛み締めて、『愛してる』と小さく呟いた。 清麿、私もね、貴方が一番大切よ。 私の一番はいつだって、清麿だけなの。 |