暗黒のトンネル、真紅の古書、純白のマリア

























囚われの親友を取り戻し、魔物と本の匂いを漂わせる人間を一掃する為に、一人の女と一匹の魔物は、ある小さな島国へと渡ってきた。
東洋人の住処、日本。






王の座。そのたった一つの名誉を掴む為のこの戦いに参加してるには、あまりにも弱過ぎる一匹の魔物の気配を感じ取った相方と共に、シェリーはごく平凡な町───モチノキ町へと足を運ばせたのであった。



「弱いとあなたが言うのなら、かなり余裕でしょうね。日本では初めての収穫になるわね」

「ああ。だが、ソイツを見つけるには、少し時間をロスする」

「なんでよ」

「真実を言えば、オレの言う魔物はまだこの町にいない。此処に来たのは、此処に来るんじゃないかという、オレのただの推測でしかない」

「推測って…ブラゴ、日本だって市も町も沢山あるのよ。この町に来るなんてのは、本当に小さな確率でしかないわ。それなのに、何を根拠にモチノキ町だと…」

「根拠は無い。近づいて来てるから先回りして、ただ適当にこの町を選んだだけだ。もしかしたら、もうすぐ下りて来るのではないか、ってな。それに、ヤツにはまだパートナーがいない。人口の多いこの町へと探しに来るかもしれないだろう」

「…それが、エリートの考えなの。イイトコを突いているとは言えないわね。本の持ち主の在住地なんて、田舎や都会、様々なのに」

「推測だと言ったろう。納得いかないなら、お前は隣町にでも行け」

「…いいわよ。此処にいるわ。それより、本当に今何も無いなら少し休ませてくれる?最近移動ばかりで疲れたわ」

「勝手にしろ」

「ちょっと散歩してからホテルに行くわ。何かあったら、連絡を入れて」



日本札・硬貨を入れた桃色の財布をポケットに入れて、シェリーはブラゴとの距離を離した。ブラゴの小さな舌打ちが肩越しから聞こえた。






ブーツを鳴らしながら狭い道を歩く。並以上の家の大きさと構造を、物心ついた頃から見てきたシェリーにとっては、モチノチ町の町並みは小さくて、正直ちょっと汚い。初めて来た異国なのに、好奇心などは少しも湧き上がってはこなかった。


しかしこのままホテルに帰るというのも、何だかやるせなく、シェリーは何度か足を止めては辺りを見回した。 そして遂に、ある一つの場所に目を止め、此処で時間を潰そうかという、なんとも半端な気持ちでその中へと足を運ばせたのである。


その場所の名はモチノキ町立植物園。
植物好きなシェリーがただ一つ、小さな興味を示し出した場所だった。









「…へえ」


予想以上に、草木達に丹念な手入れが施されているのが判った。シェリーはほう、と息を吐く。日本に訪れて、初めて出した安堵の息である。
花が少なめで、緑ばかりの草木の園も良いかもしれない、と目を細める。観客も、平日なだけにガランとしている。

生い茂る葉の匂いを、静かに吸い込んだ。最後に植物を感じたのはいつだったかと、ふとシェリーは思ってみた。





確か、自分の家の庭だった。
白薔薇が辺り一面に咲いた頃。
笑った親友がいた。自分のすぐ隣に。
笑って、咲きかけの一本の薔薇にキスしてた。





「あの」


シェリーの目尻が熱くなってきたと同時に、後ろから声が聞こえた。


「イギリス…、いや、フランスの方かな?」

「え?」


振り返ると、おさげ髪と薄色のそばかすが印象的な、おそらく年上であろう日本人女性がいた。 話しかけられたのは、やはりシェリーだった。


「わっ、綺麗な人!…あっ、すいません、突然。私は此処の管理人をやってる者でして…海外の方の入園は初めてだったもので、つい声を。あっと、その前に日本語…」

「あ…話せます。大丈夫ですよ。初めまして」

「あ、そうですかっ。良かったぁ。すいません、本当、突然声を掛けてしまって。その、意味も無しに」

「いえ、そんな事ないですよ」


管理人と名乗る女は茶色い瞳をパッと開かせ、有り難う御座います、とシェリーに微笑んだ。

素朴な格好と、髪型と、陰りのない明るい笑顔。シェリーは眼の前の女性に、今は傍に居ぬ親友の面影を見た。

女は続けて問う。


「観光…では無いですよね?この町、何も無いし」

「あ、はい、ちょっと探しモノを求めに来ただけで…。此処へは、寄り道のつもりで入りまして。えと、とても気持ち良いですね、此処」

「わわ、こんな美人さんに言われちゃうと、感動だわー…。すごく嬉しい。あ、もし良ければ私、案内とかしますよ」

「有り難う御座います。でも、時間があれなので…申し訳ないのですが」

「あ、“探しモノ”?」



本当はホテルに帰って、温かいベッドへとダイブしたいというのが今の時点での理由である。だが、それを断りの台詞には出来ず、シェリーは苦笑いだけを浮かべ、ええ、と頷いた。
けれども、フランス女性の整った上品な顔立ちを、生まれて初めて真ん前で見れている女の興奮と好奇心は、湧き上がるばかりで止む事を知ろうとしない。質問はまだ続いた。



「“探しモノ”って、人ですか?それとも場所とか」

「…人、です。仰るとおり、フランスから来ました」

「へー、人探しに、わざわざフランスから。よほど大事な人なんでしょうね」

「いえ、日本へはその、別用で人探しに来てるんです。大事な人に関しては…もっと他の、別の国々までも探ってて」



他人に意味もなく話すつもりの無い事を、つい無意識に言葉にしてしまっているシェリーである。女はもちろん、それを聞き逃さない。


「え!それって色々な国を回ってる、って事ですよね。そんな大変な旅路の最中なんですか」

「え、あ…はい」

「恋人とか?」

「いえ、親友です」



遂に此処までも口走った。

いつの間にか、自分は自分の嫌な部分を曝け出していた。弱い処を誰にも見られたくないと常に願ってるシェリーにとっては、女の質問は居心地悪いものに違いない。しかし今自分は、自分の経緯をごく普通に喋ってる。シェリーは自身が判らなくなった。



もしかして自分は今、誰のでもいいから、同情を欲しているのだろうか。
知らないうちに、自分は慰めを求めていた?
…そんな事今まで無かったのに。



でも、一度口走ったら何だかどうでも良くなってきていた。

…たまにはいいか。誰かに、この話を吐いてしまっても。
相手はきっと最初で最後に会う他人だ。



「親友…そうですか。うん、恋人や家族もだけど、親友って、かけがえのないものですもんね。今の生活を捨ててでも、捜し求めたいですよね」




シェリーは心外のように眼を瞠った。
奪われた親友を追って旅をしてる───そんなの、赤の他人が聞いたら、誰でも最初はベタベタな話だと疑うのが普通である。 この温和な感じの女性でも同じだと思っていた。信じてくれないか、下手な慰めをされるのかと思っていた。 だが女の顔は、同情なんてそんな生暖かいもので無く、本当に哀れんでいるものであった。 真剣に訴える、その温かい言葉は心地よくて、シェリーは久し振りに笑えた。



「…そうですね。本当に」



“生活を捨ててでも、捜し求めたい”


そう、捜し求めたい。絶対無くしたくない。ココは本当に大切な人。
もう一度あの優しい笑顔と声を貰えるのなら、百人でも千人でも自分は敵にできる。
彼女の全てに惹かれてた。憧れだった。親友でありながら、ココは自分の聖母マリアだった。
家族のように、全身全霊で彼女を愛している。それは、永遠に変わることなどない確かな想いだ。


だからこそ、奪った奴は何があっても裁く。最悪の場合、魔女となる覚悟だってある。

彼女を取り戻す。そうしたら、この腕で思いきり抱き締めたい。



その為に…自分は今、この旅路を歩んでいるのだ。




「親友を求めて、こんな町にまで…ね。良いですね。こんな事言うのなんですが、憧れます。美しいです、うん。
…ほんと、アイツにもそういう感情…っていうか経験、いっそさせてみたいって思うわ」

「アイツ?」


シェリーは女の円らな瞳を横から見つめ、意味深な言葉の意味を問う。


「ええ、よく此処に、中学生の男が来るんですよ。不登校の。どうやら、イジメにあってるらしくって、ね」

「イジメ」

「そう。それでもう、人と向き合おうとしないヤツっていうか…。誰にも心を開こうとしなくって。友達も、一人もいないみたいだし」

「…いるんですね。本当にそういう子供が。何だか信じられないわ…」


シェリーは今、テレビや人権関連の雑誌によく話題になる内容を、媒介無しで生で見てるのだと、複雑な気持ちになった。孤立の少年──話がリアルで、胸元が気持ち悪くなる。


「私も前までは、そう思ってた。イジメとか不登校とか、自分とはずっと無縁のものと思ってた。でも今では、何だか他人事とは思えなくなっててね。最近ソイツとは結構話すんで。…でも、やっぱ私じゃ何も出来なくってね…。黙って此処に入れさせてやってる。それだけしか、救う術が見つからなくて」


女は俯く。姉が弟を想っているような表情である。


「…あの、」

「うん?」

女は小さく笑って、応答した。
シェリーも、同じく小さく、微笑んでこう言った。



「私、その男の子に逢ってみたいわ。…ダメかしら?」





今日の私には理性のカケラも備わってないらしい。気がつけば、自分らしくない言葉ばかりを口走ってる。
親友を失う前の自分ならまだしも、親友を追って、一秒の時間でさえ無駄にしたくないと思ってる、今の私がだ。
一体、他人相手に何をお喋りになって、何を干渉してるのだと…。



でも、「学校に行かない男の子」に逢いたいという言葉に嘘は無い。時間を少しロスするなどとは思っていない。
本気で逢ってみたいという自分の意思が、今確かに此処にあるのだ。


その男の子と話をしてみたい。
学校に行かない理由、経緯。そんなの自分は知らないし、問うて追い詰めるつもりも無い。
ただ少しだけ会話をしてみたいと思った。


…物語を、聴かせてあげたかった。自分が親友に命を救われた、あの日の物語を。
暗くて長いトンネルに存在する、輝かしい光の出口の存在を。


不登校の原因は聞かずに、彼にほんの少しでも勇気になるものを与える。
昔の自分のように思えてならない、まだ見ぬ迷いの少年に。


自分が、たとえどんな形でも、希望に繋がる架け橋になれたらいい。
…そうシェリーは静かに願ったのだ。





女は「有り難う」と言って、シェリーを導き出した。
樹木の下にいるという、少年の、現在の唯一の居場所へと。















しかし、彼がいつも時間を費やすという場所に、彼はいなかった。



「入ってきたの、さっき見たのに…。もう帰っちゃったわけ?」



着いた木陰で、女は辺りを見渡しながら愚痴る。是非「男の子」にシェリーを逢わせたかった。という思いが伝わりそうな、せわしない口調、皺の寄ったヘの字の眉。 眉の形はシェリーも同じだった。



「いない…ですね」



自分はもしかして擦れ違いばかりしてるのではないかと、シェリーは何だか苦笑してしまった。

逢いたいと思う人に逢えない…。孤独感に似たものが、心の中で朧かに疼いた。




「ん?」

「?」




シェリーが何かに気がついた。女は振り返る。シェリーの手の中には、日焼けのある古びた赤い本があった。



「あ…それ…アイツの」



古びてなかったら、きっともっと綺麗だったであろう、真紅の古書。 女には何度か見ている本らしい。少年の本だと断定した。





一人きりの少年を、今はこれが、わずかでも癒してくれているのだろうか。

シェリーは無意識に古書を開いていた。





「─────」





付箋のあるページをシェリーは捲った。きっと彼が毎日見ているのであろうページを。

シェリーの睫毛が揺れた。

シェリーの視界を支配する、その見開きにあったものとは。





「…聖母マリア」



シェリーの前に女が呟いた。




「アイツってば、毎日これ見てたのかあ。ケッコー可愛いじゃな〜い。聖母だなんて…やっぱ子供ねー」



今度からかったろ、と女は意地悪く笑う。



「にしても、綺麗だわあ。あ、フランスだと、マリア像っていくつか見れるんですか?私、宗教のこと、何も知らないんだけど」

「あ…はい、私も、以前は毎週見てましたね」

「教会で聖母マリア…いいですね〜。そういう習慣に、ちょっとなってみたいかも」



シェリーは笑って、再び視線をマリアに戻す。

暫く眺めて、やがてゆっくりと、古書を閉じた。



古書を女に手渡す。


「私…そろそろ帰ります」

「? え?」

「男の子に…逢えなくて残念だったけれど。でも、私は、その子ならきっと大丈夫だと思いますよ」


だからもう行きます、シェリーはそう付け加えた。


女が身を乗り出す。


「だ、大丈夫…って?」


古書を見つめながら、シェリーは語った。



「聖母マリアに惹かれている…。それだけで、その男の子は優しい子供なんだって、なんとなく判るんです。 少し時間はかかろうとも…。その子ならきっと、いつかいろんな人に、心を開けるんじゃないかって、思うんです。温かい日常に、もう一度帰れると」


シェリーは心底から語った。嘘など、おだてなど無い。
自分もそうだったからだ。すぐ隣に、ココの優しさが、笑顔があったから、苦しい事もいつしか幸せに変えられた。



「男の子に…伝えておいて下さい。マリアも偉大だけれど。自分の傍には、マリア以上の大きな存在が沢山あるのだと。血の通わない、石像の聖母からじゃ得られないモノを、その人達からはいくらでも得られるのだと」



更に言葉を繋げる。



「そしていつか…、マリア以上に綺麗だと思える人に、恋できるのだと…」



樹木の下で過ごす日もあっていい。聖母マリアに祈る時間もあっていい。
でもそれ以上に、気付いて欲しい。もっと明るい外へ出て欲しい。自分の傍には、自分を必要としてくれる存在が、必ずある。

掴み取るのは自分自身。自分が動かなければ、いつまでも今のままだ。植物と石の女だけに囲まれたままの己。

まずは一歩だけでも踏み出して。
それがシェリーの、言葉の中に含まれた、見知らぬ男の子への精一杯の願いだった。



あなたなら出来るわ。
私に逢わずとも。
顔も知らない男の子…

私は、信じている。




「私は今、暗いトンネルの中にいるわ。でも親友を取り戻したら、すぐに戻る…出口へ。男の子も早く抜け出せるよう…私は、祈っています」





金色の髪を樹木の葉とともになびかせて、シェリーは立ち去った。 女は暗黙の了解を得、微笑みながらシェリーの後姿を見送る。



そして、シェリーの姿が見えなくなって数秒後、女の背後から声がした。



「あ…?つくし…?何だよ、オレの本を持って」

「えっ、あ、清麿っ!?」



『清麿』と呼ばれる少年は、振り返った『つくし』と呼ぶ女性から本を奪い取った。真紅の古書。



「え、あんた…どこにいたのよっ?帰ったんじゃなかったの?」

「トイレにいたんだよ。盗まれると嫌だから、鞄を一緒に持ってさ」

「まっ、失礼ね!私の私有地で盗難なんか起きるわけないでしょ」

「わかんねーだろ、そんなの。それより、此処で何してんだよ」

「ああ、今ね〜、美人の子と喋ってたのよっ」

「美人?」



清麿の瞳孔がやや開く。やはり美人に興味あるお年頃らしい。



「そっ。ま、その話は、あっちのラウンジでゆっくりしましょ。それよりさ、清麿…」



つくしは真紅の古書の表紙を人差し指でつつく。



「あんた可愛いトコあんじゃない。聖母マリア!も〜このマザコンボーイっ。家でもママに甘えてんの?」



ボウッと清麿の顔が紅潮する。本を両腕で抱いてがなる。



「…なっ…、おまっ、中身見たのかよ!?」

「ピンクの付箋までしちゃって〜っ。そんっなにマリア様、お美しい?」

「バ、バカ言ってんじゃねえっ」



真紅の顔でせがまれても迫力を感じないつくしだった。



「あっ、それとも…マリア様みたいに、年上で優しいカンジの女の人がタイプ?ふーん、良いんじゃなーい?」

「…っ、勝手にベラベラと…!もういいっ!好きに言ってろっ」

「あははっ、図星?図星っ?……でもまあ、アンタはいつか、マリア様の存在忘れちゃうくらいの女の人、見つけるんだろーけどねー…」

「…は?何言ってんだよ」



つくしは抱えていた腹を放し、口端を吊り上げて、清麿の肩を抱いた。



「清麿っ、さっきも言ったけど、ラウンジで話をしましょうよ。今の言葉の意味も含め、素敵な話を聞かせてやるわ。あんたの此処に華を咲かせてあげる」


清麿の胸元を、先程の本の時と同じ様に、一本の指で突く。清麿は混乱する。



「話って…お前と?な、何だよ」

「美女と、あんたと、マリア様の話。それと…」



天上の光をつくしは見上げた。


「暗いトンネルと…明るい出口の物語よ」









はあ?と自分らしくない声をあげる清麿。何が何だか判らないと感じるのは、久し振りだろうか。




つくしは笑みを浮かべたまま促す。




「行きましょ」




毎日此処に来る必要が無くなるくらい、心を込めて、語ってあげる。マリアのような、あの子の代わりに。


そう胸の内で呟いて、つくしは清麿を陽射しのかかるラウンジへと導いていった。





























「ただいま。ブラゴ」



一方、モチノキ町の外れにある、超高級ホテルの最上階の一室。


「…ああ」


窓から町を見下ろす魔物に近寄りつつ、シェリーは優しげに話しかける。


「散歩してきたわ。モチノキ町。結構イイ場所だったわよ」

「フン。オレには、どこもかしこも小汚らしい」

「それは、あの町をちゃんと見てないから言えるのよ。ホントにイイ場所よ。…魔物とそのパートナーが存在するとは、考えたくないくらい」

「………」



シェリーはテーブルの上に置いてある黒い魔本を撫でる。


「もしかしたら……イイ人達かもしれないわよね…。魔物と…パートナー…」


ブラゴは振り返り、ギロリとシェリーを睨んだ。


「此処を…何もせずに過ぎ去るつもりか…?」


魔本を見つめたまま、シェリーは苦笑する。口を開いた。決意を込めてる言葉だった。


「いいえ…。イイ人達でも一緒よ。本は、燃やすわ」


悪どい者たちなら、許すまい。
優しい者たちなら、巻き込みたくない。

それぞれの意味を持ちながら…私は、本と魔物を排除してゆく。





シェリーはあの場所の植物の匂いを思い出しながら、日本の町を直視する。




待っていて、ココ。冷たい石のような今のあなたを、必ず解放してみせる。




また優しい笑顔を見せて。マリアのように。私のために。



















その三日後だった。




清麿は、古書と同じ真紅の本を持つ、金色の小さな魔物の少年に出逢った。
清麿の人生が百八十度変わった日である。


シェリーは同じ日に、清麿とガッシュの情報と居場所を掴んだ。









清麿とシェリー。

この二人が出逢うのは、その数日後となる。




もしかしたら、樹木の下で普通の男の女として出逢っていたかもしれない二人の。
いつか必ず、一つのモノのために争う敵同士の二人の…。




ゾフィスとココとの距離が近づくにつれ、シェリーの“孤独の少年”の記憶は、段々と薄れていった。 一方清麿も、次々と自分らを倒しに現れてくる敵の多さに、ガッシュと出会う前の記憶…つくしから聞いた“金髪の美女”の事に思いふける余裕など、無くなっていった。




しかし二人は、そんな記憶やあの時確かに抱いた想いを忘れても、必然のように、段々と惹かれ合ってゆくのである。




もしも、あの日の記憶を思い出す日が来るとしたら…


それはきっと、暗黒のトンネルから抜け出した時だ。

辿り付けた時こそ、その記憶は甦るかもしれない。









明るい。眩しい。それでいて、優しい光の出口。

















あの真紅の本の中で輝いていた、純白の聖母、マリアの微笑みのように。





































宗教やマリアのことをロクに知らない人間が書きました。
もういろいろ…無知な娘が書きました…

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