カーテンの隙間から、いつも眼を刺激される朝の光。
だけど、今日は何だか、いつもより眩しい。
どうやらカーテンが全開みたいだ。
すごく眩しい。
眼をギューッと瞑って、毛布で顔を隠した。
日の光から身を護るように、くるまって。

だが、それは呆気なくガバッと剥がされた。
俺の全身が光を浴びる。

まだ夢の中に居たい。
そんな想いで俺はまだ眼を開けずにいた。
その声を聴くまでは。

「おはよ、清麿」

「…………ッ!!」

完全に眼が覚めた、その日の朝。






















Good Morning、Lover.






















「…シェリー…!?」

朝日よりも眩しい突然の金髪青眼に、俺は起き上がった。
シェリーは立って俺を見下ろしている。

「驚いた?」
「な、何でココに…」

まだ夢の中に居るんじゃないかと思った。
シェリーがオレの部屋に来るのは珍しくないけど、
こんな朝に、しかも学校に行く前に入れた事などないから。

「昨晩ね、ガッシュから電話があったの。
今日の朝から家を出るから、清麿を頼む…って」

…あー。
そういえば前に、おふくろが親戚の家に泊まりに行くって
言ってたっけ。
ガッシュとウマゴン付きで。オレは留守番で。
…今日だったのか。

(つーか、ガッシュ、余計な事を…)

オレは心の中で悪態を吐いた。
顔はきっと赤いから、迫力などないけど。

「…で、今さっき、ガッシュ達と擦れ違いで部屋に入ったの。
私が来なかったら、きっと清麿遅刻してたわよ」

シェリーは可笑しそうに笑う。
だけどオレは苦笑い。
恋人に起こされるなんてのは、『新婚みたいで幸せ』以上に、恥ずかしい。

「じゃ、着替えたら下りて来て。朝ゴハンあるから」

シェリーはそう言い残すと、部屋を出て行った。
階段を下りる音がする。

オレもダラダラと立ち上がった。
パジャマを脱いで、制服に着替えた。
その間に鏡を見てみると…そこには寝癖だらけのオレの顔。
こんな姿をシェリーに見られたなんて、羞恥心が湧き上がった。
しかも部屋は、本が散らばっていて、お世辞でも片付いてるとは言えない。

(…くっ… ガッシュ、憶えてろよ…)

シェリーが来ると判っていたら、今よかマシにしてたのに…。
シェリーの中のオレのレベル、きっと下がったろうな…。
そう思いながら歯を磨くオレ。
さっきから脳裏に横切るのは、ニヤけた顔の憎らしいガッシュばかり。





「待たせて悪い」
「いえいえ」

用意を全て終え、オレはリビングに入った。
そこには、朝メシを前に座るシェリーが待っていた。
意外にも、メシは和食。

「…これ、シェリーが作ったのか?」
「ううん。清麿のお母様が作っていったの」

和食とシェリーの合わせが不釣合いで、オレは小さく笑った。
そして、シェリーの前に座る。

(もしも…)

マジでオレ達が新婚なら。
きっと食べるのは少し豪華な洋食なんだろうなぁ、って、思った。
シェリーの、手作りの。
料理が上手いかは、判らないけれど。

「…清麿、なんか顔がほころんでない?」
「…えっ」
「もしかして、新婚さん気分になってる?」

シェリーはフフ、と、頬が緩んだ顔で問い詰めてくる。
オレの考えは、いつだってお見通しなのだ。
否定の言葉など思い浮かばない位に。

「な… なってねえよ!」
「はいはい」

図星を突付かれると、説得力のない言葉と表情をぶつけるオレ。
そこもシェリーは、当然のようにお見通し。
『はいはい』=『嘘ばっかり』、ってヤツだ。
彼女の、オレよりも一枚上手なトコ。
いつも悔しい、って思う。
だけど…、同時に心地良いって思う、彼女に弱いのがオレだったりする。





「じゃあ行って来る」

数十分後──。
早く起きたワケでもないので、登校時間はすぐにやって来た。
オレは座って靴を履く。
シェリーは後ろで立っていた。

「………」

『行ってらっしゃい』の言葉を期待して言ったのに。
シェリーからは何の声も返って来ない。

「…シェリー?」

靴を履き終わり、立ち上がって、振り向いた。
そうしたら、名残惜しそうな顔をしてこちらを見る
シェリーと眼が合った。

…オレはこの眼に弱いんだよなあ。
行こうと思えば、行ける筈なんだ。
だけど、オレの足は停止したまま、扉の向こうに進まない。
…すると、

「…!」

シェリーは突然オレに抱き付いてきた。
オレの背中は、シェリーの両手でやわやわ撫でられる。
胸元に、シェリーの吐息が掛かった。
瞬間、

「清麿… 『行かないで』って言ったら、どうする?」

艶っぽい声で、そう囁かれた。

「……な、」

朝早くから。しかも学校に行く前から。
惑わされてるだろうオレは、硬直した。

「…もしも、本当に私達が新婚なら。
私は… 清麿に毎日、『行ってらっしゃい』って
素直に言えないかもしれないわね」

静かなその声は、微かに玄関に響いた。
『行って欲しくない』と言っている、その言葉。

「シェリー…」

オレは『行ってくる』と言えた。
でもそんなのは、偽りの台詞でしかない。
『行きたくない』が…正真正銘の、本音だから。

「………、」

抱き締め返そうとした。
『じゃあ行かない』という返事代わりに。
…だけど、

「…行って… らっしゃい…」

その呟きと共に、オレの胸にシェリー両手が置かれた。
オレとシェリーの距離が、段々と離れていく。

「…シェ」
「夜は。 私の手作りの夕食よ」

言い掛けの言葉が遮られた。
まだ名残惜しいと思っている事はバレバレだ。
だが、シェリーは微笑んでそう言った。

「気をつけて学校に行ってね、清麿」

隅に置かれていた鞄を手渡された。

「…ああ」

オレは鞄を受け取り、シェリーと共に微笑んだ。
笑って見送り、見送られるのが、これもまた“新婚”なのだと感じて。

「なあ、シェリー」
「…ん?」
「今夜… 流れ星が、オレの部屋から見れるんだ」
「…え、」
「だから… 一緒に、見よう」

オレはドアノブに手を掛け、ドアを半開きにして、
振り返ってそう言った。

「うん…っ すごい楽しみよ!」

今日初めてのシェリーの笑顔を見た。
オレはドアを全開に開け、外へ出た。
日の光を一気に浴びる。

「…オレも、楽しみだよ」

オレは家を後にした。
ガッシュに感謝しなければ… と、オレはその時になって思えた。

学校まで駆けて行った、その日の幸せな朝に。
         

































裏に続きます。
いつかホントにホントの新婚清シェを書きたい・・・

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