つい数日前の話。
電車で、スポーツ新聞を持ったおじさんが私の左隣に座ってきました。記事が偶々目に入ってきたのですが、それがNHKの森本アナウンサーが電車で女性の胸を10分以上もんで逮捕されたというものでした。私としては何の興味もない記事でしたし、そもそも人の読んでいる新聞を盗み見るのも気が引けるので、中吊り広告へと目を移したのですが、すると私の右隣にずっと前から無言で座っていたおばあさんが突如叫び始めたのです。
おばあさん「これ、絶対おかしいわよね!」
私はおばあさんが誰か知り合いにでも話してかけているのかと思ったのですが、どうやら違うようです。
おばあさん「大体、10分もおっぱい揉まれて声を出さないなんておかしいじゃない!? これ、絶対仕掛け人よ! ねえ? そんなにおっぱい揉みたいって思う!?」
どうやら、おばあさんは隣の隣のおじさんの新聞を見て私に話しかけてきているようなのです。おばあさんと私はもちろん面識はありません。というかそんなに電車内でおっぱいおっぱい連呼しないでいただきたい!
大声で話しかけられて完全無視するわけにもいかず、とりあえず薄笑いを浮かべながら曖昧な相槌を打つ私。おばあさんは、散々この痴漢問題について喚き散らした後、次の駅で「どうも失礼いたしました」と言って上品な感じで去っていきました。辺りに漂うあまりにも居た堪れない空気に耐え切れず、私とスポーツ新聞を持ったおじさんはその次の駅で別のドアからそれぞれ降り、次の電車を待って再び乗ったのでした。
都会って怖いわ……。