鈴凛「ねぇ、アニキ……」

兄「なんだい? 鈴凛」

鈴凛「アニキ、プロ野球選手になるのが夢だったわよね。昔150km投げたいって言ってたし」

兄「ハハハ、よく覚えてるな。」

鈴凛「もちろんよ。それでね、アニキ……私、いっつもお世話になってるアニキに恩返しをしたいの」

兄「どうしたんだい? 突然。それに僕は兄として当然のことをしているだけさ」

鈴凛「もお、アニキったらー。でもそんなところがアニキらしいのよね〜」

兄「おっと鈴凛、もう家だよ」

鈴凛「ちょっとでいいからあがって行ってよ。アニキにあげたいものがあるの」

兄「うーん、じゃあちょっとお邪魔していこうかな」

鈴凛「やった〜! アニキ大好き!」



…………………………



数日後……



療養所にて



鞠絵「兄上様がわざわざ来て下さるなんて……。わたくしとっても嬉しいです!」

兄「ハハハ……実はね、鞠絵さえ良ければ今日は療養所に泊まっていこうと思ってるんだ」

鞠絵「えっ? それは本当ですか!?」

兄「うん、ちゃんとお医者さんから宿泊許可もとってあるしね。それに鞠絵と少しでも長くいたいからね」

鞠絵「……兄上様。わたくし兄上様のこと、世界で一番大好きです!」

兄「ハハハ……大げさだなあ、鞠絵は」



夜……



鞠絵「兄上様、一つわたくしのお願いをきいていただけないでしょうか?」

兄「ボクに出来ることなら」

鞠絵「実は……こんなこと兄上様には迷惑でしょうけど……私が眠るまで手を繋いでいてくれませんか?」

兄「なんだ、そんなことか。おやすいご用さ」

ぐぐぐぐぐ……

鞠絵「兄上様? 手を……繋いでくれないのですか?」

兄「いや! そんなことはない」

ぐぐぐぐぐぐ……

兄「うっ…手が鞠絵に届かない……」

鞠絵「……兄上様……わたくし、無理を言ってすみませんでした……」

兄「鞠絵!?」

鞠絵「本当は兄上様、迷惑だったんですね……。だけど兄上様は優しいから手を繋いでくれるって。でも兄上様の手は正直です……」

ぐぐぐぐぐぐぐ……

兄「ち、違うんだ鞠絵! これには訳が!」

グニャッ

兄「ぎゃあああああ!! 腕が間接と逆の方向にー!!!

鞠絵「大変! 兄上様の、兄上様の腕が!!」



ピーポーピーポー



…………………………



兄「……鈴凛、僕、プロ野球選手の夢はあきらめるよ……」

鈴凛「えー!? どうしてー!?」

兄「ボクに大リーグ養成ギブスを使いこなすのは無理みたいだ……」(泣)

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