そして明日の世界より―― プレイ記
(C)etude
リハビリの一環として、近所のゲーム屋のエロゲーコーナーを物色してきました。
ずらりと並んだ中古ゲーム。どれもこれもあまり面白くはなさそうです。
「そろそろかなー」
帰りかけたその時、隅っこで面陳になっていたゲームの少女と目が合いました。
その瞬間、少女は囁きました。
――帰らないで、お兄ちゃん――
どこか寂しげな少女。私は箱を手に取り、ゲーム概要を読むことにしました。
なになに……
『この小惑星は秒速32キロメートルで大気圏に接触、
僅かに大気表面を滑って軌道がズレた後に……地表に激突します』
この感覚……多分“当たり”だ。
私のアンテナが狂っていなけいれば、これは9割方良作のはず。
と言うことで、去年のゲームですが、プレイ記を付けようと思います。
これはリハビリのためのものなので、5周年記念企画ではありません。
また、発売されてから日が経っているようなので、速報性はないものと判断し、仕事の合間にゆっくりと遊びながら付けていこうと思います。
よって頻繁には更新しませんが、よろしければお付き合い下さい。
第一回
必要空き容量は2GB以上となっていますが、実際には3GB以上食います。DVD1枚。
ディスクレス可
。
初回限定版特典としてサウンドトラックが付いてきます。
タイトル画面が少し凝っていて、ページ上の画像を参照してもらうと分かりやすいと思いますが、雲が左右に開いていって真ん中の風景が見えるようになる開放的で明るい印象を与えるものになっています。
それと。タイトル画面を見ただけですが、
良作の予感は多分的中です。
タイトル画面、凄く音楽が良い。先に進めず、ずっと聴いています。
音楽担当は誰かと思ったらI'veでした。今までI'veの音楽に強烈に惹かれたことはなかったんですが、今回は大当たり。
自分で言うのはどうかと思いますが、私も伊達にギャルゲーを100本も200本もやってきたわけじゃありません。
もう、大体音楽を聴けばそのゲームが良作かどうか分かるんです。そして、これは
良作の音楽
です。
タイトルでこれだけ震えたのはひょっとすると初めてかも。始めるのが楽しみです。
第二回
OPムービーは、3時間程プレイしてますが今のところなし。
ファイルの中にはそれらしきものが見えるのでもうしばらくしたら始まるのでしょう。
だとすればかなり長いプロローグですな。プロローグというより、君望の第一章と考えるべきでしょうか。
まだ地球滅亡みたいな話はないので、おそらくそれが出てからムービーが始まるんでしょうね。
とりあえずヒロインファーストインプレッション!(<ジャキーン!)
◆日向夕陽
……主人公大好きの隣に住む幼なじみ
生まれた時から幼なじみで主人公が大好き。しかも隣の家に住んでいてベランダから遊びに来るという、超★お約束ヒロイン。
それ自体は凄く良いんですけど、毎晩主人公の部屋にやって来て風呂上りの頭を拭いてと頼んでくるのは同い年としてどうかと。
四六時中べったりというのも、妹ならセーフですが、幼なじみとしては、やや行き過ぎの感がありますね。
だがそれがいい!
良いんです。幼なじみならある程度の無理は通るんです。好きなようにやって下さい。
それに、命日の話で何となくそんな現状もアリかなと思ってしまいましたし。
表紙にもなっているヒロインですから、攻略は最後にとっておきます。
◆日向朝陽
……幼なじみの先生
夕陽の姉でやはり幼なじみの学校の先生。
しかし惜しいなあ。ありますでしょ? 世の中に、後ひとつ条件が揃えば良かったというのが。
例えば部屋を探していて、間取りも日当たりも良いんだけれど、駅まで遠いとか。
服でも構いません。着心地もデザインも好きだけど、どうしてもボタンの色が気に食わないとか。
そうだよ、メガネだよ。
性格も良くて料理もできておまけに幼なじみ……条件は揃ってるのに!
年上なのはまだ許せるとしても、メガネだけは何だかなあであります。
大体にして、何故ヒロインが4人しかいないのにメガネっ子を混ぜるかね。
そんなに世の中にはメガネっ子属性のプレイヤーが多いんでしょうか。
こればかりは生理的な問題ですから討議しても意味のないことでしょうが……。
兎にも角にも、本当に惜しいヒロインであります。
◆樹 青葉
……熱血・根性・努力のクラスメイト
舞台が島のためか付き合いが長いヒロインが多いですな。青葉もそのひとり。
熱血・根性・努力とか言うと何か暑苦しい感じがしますが、仲の良い遊び友達程度に考えてもらえればと。
スポーツ系と見せかけて実は運動が得意というわけではなく、とりあえず皆と一緒だから運動しているだけ。
そのおかげか、何故かスポーツ少女が得意ではない私でも可愛いと感じられます。
それに、どんな遊びでも夢中になって勝負事も大好きという性格は、個人的には大好きなタイプですし。
言葉遣いも悪いわけではなく程よく女性らしさもあり、結構良質なヒロインかも。
母親が苦手らしいので、シナリオ的にはトラウマ系で分かりやすそうであります。
◆水守御波
……病弱お嬢様
サブキャラかと思うほどに影の薄いヒロインですな。
他のヒロインとポジション争いに加われそうにないんですよね。
野球選手ばかりの中、ひとり
テコンドーの選手
が混じっている感じ。
話に絡んでこないわけじゃなさそうなんだけど扱いにくいな〜。
どうやって攻略へのモチベーションを高めたら良いのやら。
最初は暗いなーと思ったら、徐々に明るくなっていってるのは悪くないと思いますが。
どうでも良いですが、髪の毛長すぎないかしら。長くても構いませんがもう少しまとめても良かった気が。
一周目は、青葉を攻略予定。
第三回
隕石落下話が出る直前でムービー開始。
どこにでもあるようなイベントCGをポロポロ流すものです。
しかし、音楽に合わせてコロコロカットを挿入するもんだから非常に小気味良い。
内容が無く、ほとんど無意味なムービーなんですが、編集と効果が良いものだから見るに堪えられるものにはなっています。
神月氏にムービー作らせると大抵こうなるんですが、氏はゲーム内容とかまったく見ないでムービー作るんですかねえ?
それはともかくOPに流れている曲が付いた歌。これがまた素晴らしい……これだけで買った価値はあった!
さて、ようやく本編開始ですが。
俺、どっか田舎に引っ越そうかなあ。
と思わせるくらい、このゲームの舞台が良い場所なんだ!
別に環境に惹かれたわけじゃないんです。人なんです人。
登場人物が
性善説を体現しているような人
ばかりなんですよ。
家族も友人も隣人も名前すら出ないモブのような人も、島民全員が良い人。
さらには主人公までが、これなら皆が惚れるのが分かるってくらいに好感の持てる良い奴なんですよ。
要するにここは、
悪意が欠片も感じられない世界
なんです。
こういう舞台設定に弱いんだよなあ〜。癒されるというか……。
守りたい、失くしたくないものってこの島のようなものを指すんでしょうね〜。
だからこそ、失くしたくないものが必ず消えてしまうというあまりにも残酷な運命が映えるわけで……。
この作者、失うものが好きなものほどダメージが大きいということを良く理解してます。
嫌な奴ばかりの世界でヒロインを守る……というヒロインにスポットを当てた世界を描く選択肢もあったはずなんですよ。
そこを敢えて、世界全てを愛しい存在にしたことで、地球クラスの危機を実感させることに成功したわけです。
問題となるのは全員を良い人にしてしまったことでヒロインの存在感が薄くなってしまうことですが、どう解決してくれるかが楽しみですね。
さて青葉ですが。
主人公LOVEなヒロイン群の中で、唯一嫉妬心を垣間見せるせいか、ちょっと嫌な娘に感じてしまいます。
主人公に好かれようと甲斐甲斐しく動く様が見ていて少し悲しいです。
努力が完全に裏目に出て姿が見ていて痛々しいというか、
病んでます
。
好かれようと努力すればするほど嫌われるという悪循環。こんな悲しいことはない。
果たしてどういう形で主人公が青葉を好きになれるのか、かなり疑問でありますが……。
次回に期待。
第四回
良かったね、良かったね……の図。この手の幸せ一杯な絵が好きです。
青葉編クリアー。
続きを書こうと思っていたんですが、あっさりと終わってしまったのでその暇もなく。
前回、青葉が嫉妬に狂った言葉様状態になりそうなこと書いたんですが、周りの人があまりにも良い人過ぎて、そんな隙はありませんでした。
夕陽との三角関係を描くことになれば、それはそれで安易過ぎる展開なので、今回のようなパターンもありかな、と。
男らしい青葉にも幾分か女の子らしさを残して、完全な男女にしなかったところが上手かったと思います。
青葉に極端な変化をさせても、クッションが話の合間合間に入っているので何とか納得できました。
初めに会った女の子らしい青葉のことをどこかで描いてくれればもっと自然だったと思うのですが。
いずれにせよ、青葉を嫌いになることなく終われて良かったと思います。
特に、運動会の
“一番大切なもの”
には思わず胸打たれるものがありました。
ただね……綺麗なことは綺麗なんですが、あの打ち切りっぽい終わり方は微妙。
妙な予感はしていたんですよ。隕石落下まで3ヶ月あるのに、何故物語は2週間なのかと。それでは2ヶ月以上空白があるじゃないですか。
実際、青葉編では2ヶ月以上残して終わってしまったわけです。どうかと思いますねえ。
星が降らずとも、ちょっとした変化で世界は終わる……というような一節がありましたが、それでも
星は降らせるべき
です。
これは私がパニック物が好きなせいかもしれませんが、最後の極限状態で2人がどうなるのか見たいじゃないですか。
結果が分かっているものを最後まで追っても面白くないかもしれないのですが、本作に関しては最期の瞬間こそ大事な気がするのですよ。
そう考えると、星が降るまで3ヶ月というのは猶予があり過ぎます。
それならばリミットを1ヶ月に設定して、最期までストーリーを続行すべきだったと思うのです。
え、そんな残酷な話は見たくないって? アレ?(汗)
さて、次回は朝陽攻略予定……だったのですが、御波が予想以上に可愛いので御波かも。
第五回
迷った末、結局朝陽姉ちゃんを攻略することに決定。
穏やかで落ち着いた性格で、理想の年上ヒロイン形態のひとつではあるんですが、如何せん味付けが。
と言うことで今ひとつモチベーションが上がらなかったんですが、実はこの眼鏡は伊達らしいです。
じゃあ眼鏡なんてかけるなよ!と思ったら、この眼鏡、
母親の形見
だったらしく……
何と私は醜い生物だったのか……
このゲーム、アイテムの使い方が上手いなあ。美しい。
……と思って進めていたら、この眼鏡、照れ隠しの意味もあったらしいですな。
条件付きとは言えすんなり外してくれるため、途端に俗っぽさが増して美しさが半減してしまいました。
もう少し一貫性を持たせても良いと思うのですが、外してくれるならそれもあり?
ただ、ここまで眼鏡そのものに意味を持たせているゲームに出会ったのが久々なのは事実。
単なる記号としての眼鏡なら承服できかねますが、ある程度かけている理由があるなら納得できます。
その意味では、私にとっては眼鏡そのものがシナリオでなければ駄目なわけです。
さて、そろそろシェルター話なので分岐点ですな。
第六回
朝陽編クリアー。
家族って良いものだなあ……
と。
このシナリオは人間の暗部も見せるのですが、朝陽と夕陽はそれを超えたところにありますな。
朝陽編で良かったと思えたところは、朝陽に見せる夕陽の嫉妬心が明らかになった点。
青葉編では夕陽がやっかまなかっただけに何故だろうと思っていたら、きっちり理由がありました。
こういう理由は重要なんですが、割と言葉にせずに誤魔化すパターンが多いんですよね。
そこを誤魔化さず焦点を当てて明確にしている点は、非常に評価できるところです。
やはり、プレイヤーが疑問に思うようなところは解決しなければいけませんよね〜。
そんなわけで、青葉や御波相手なら許せるのに朝陽では許せない理由については、本編をプレイして確認してもらうことにしましょう(笑)
そんなんで良いの?というエンディングも、この世界ならOKと言うことで。
ところで、サブキャラの使い方が上手いゲームは良作が多いのですが、本作に関しては微妙です。
確かにサブキャラは物凄く良い性格なのですが、果たして上手く使いこなせているかというと微妙なのです。
要所要所で良い味を出しているにも関わらず、決定的な場面には一切絡んでこない。
だからこそ「サブ」で収まっているのかもしれませんが、もう一歩ほしいですなあ。
日向親子と葦野親子なんてそれだけでゲームが作れそうな雰囲気を匂わせているだけに。
うーん、サブキャラについてもっと知りたい……と思わせるだけ、私はこの世界にはまってしまったのでしょうか。
次回、非常に気になる御波を攻略予定。
第七回
御波……
御波……!
御波が可愛すぎるっ!!
幼なじみだらけというパラダイスに現れた見知らぬ病弱少女、それが水守御波です。
初めはどことなく暗い感じで取っ付き難いヒロインだと思っていたんですが、意外や意外。
ゲームを進めるごとにガードが小気味良く外れていって、今ではむしろ大本命の位置に伸し上がってきております。
生粋の幼なじみ属性である私が言うのも変な話ですが、
一番可愛いのですが!
おかしい。これだけ理想的な幼なじみが溢れているこの世界で、何故御波がこれほどにも輝いて見えるのかしら。
幼なじみ大好き人間の私からすれば、マグロの皿が大量に並んでいるところに、一枚だけ納豆巻きの皿があるようなものなんですよ。
それなのに今、納豆巻きがマグロより美味しそうに見えてしまう……。これが閉鎖空間のマジックなのでしょうか。
この島ではマグロは知り尽くされた食材です。しかし、納豆なる食べ物は誰も食べたことがありません。
どこか近寄りにくいオーラを放つ納豆。しかし、その中身を何としても知りたい私はついに納豆を口に運んでしまいました。
果たして、納豆は意外と美味かったわけで。さらに、知への飽くなき探究心が一時的に味覚を狂わせました。
「あれ? 納豆ってマグロより美味いんじゃないか?」
と思ってしまったのです。
まるで意味不明な文を書いていて自分でも狂っていると思いますが、
つまり、そういうことなんです
。
そう、今の私は錯乱状態なので御波が幼なじみを超えた存在だと認識していても仕方がないのです。
要するに、いつも幼なじみ幼なじみ言ってる自分に対して言い訳をしてみただけで、ここまでの文に意味はありません(ぉ
第八回
御波編クリアー。
「大切な事は全て私達の想いの中にある。
私達を立ち上がらせるものはそこからやってくるのであって
満たすすべのない場所や時によってあるものではない。
故に想う事を忘れずに。
そこにこそ、あるべきすがたがある」
有名な『パンセ』の一節を本作のライターが訳した文なんですが、このゲームで一番表したいことなのかもしれませんね。
色々と解釈は出来ますが、諦めたらそこで終わりだというわけです。八島のじっちゃんもそう言ってました(ぉ
他にも聖書の一節が登場したりと名言を駆使してましたが、綺麗にまとめることが出来て良かったのではないでしょうか。
名言を引用してグダグダに終わったら目も当てられませんが、とりあえず及第点ということで。
御波編では、朝陽編以上に人間の醜さを見せられることになりました。
何だか攻略する度に世界が汚くなっていきますねえ。流石に聖人君子ばかりではないと。
そんな中で、気がかりだった八島のじっちゃんの主人公への感情が判明しました。
実は悪人が多かった島民の中で、じっちゃんは良い奴のままでホッとしました。
ただ、他の島民も良い人のままならば本当に島が美しいままだったのですが。
違和感はありますが、これだけサブキャラが良い人ばかりなのだから、全員良い人にしても良かったかもしれません。
それとその後の両親の動向が気になるなあ。特に海。エンディング後どうなったんでしょう。
エンディングがエンディングだけに「その後」が気になるゲームですな。
次回、夕陽編。
第九回
脆い……脆すぎる……
夕陽がこんなに脆い子だったなんて、驚きを隠せません。
これがこの状況下での自然な様子とは言え、他ルートでの元気な姿を見てきた限りでは想像も付かない状態です。
朝陽ルートで夕陽が「私のことを見ていない」と言って怖がる姿を見ているので納得は出来るのですが。
もう一つ分かったこと。
ここまで夕陽を妹か下手をすれば娘としか感じてきませんでしたが。
蓋を開けてみれば、立派な正ヒロインでした。
時折見せる真面目で切なげなセリフに、完璧にやられてしまいましたよ。
特にこのシーン。
「もしも、最後まで彼女ができなかったら、
貰ってくれないかな……?」
健気だ……健気過ぎる……。
こういうセリフを聞くと必ず思い出すのが、天音が悠のために身を引くシーンですね〜懐かしい。
普段べったりなクセに、本当に好きでいないというなら身を引くというある種の潔さ。
嫌味の欠片も感じさせない良い娘であります(都合が良いとも言えますが)。
とにかく、心底愛されていることが良く伝わります。
こういうことを言われると、もう夕陽以外選びようがありません。
いやー、夕陽ルートに入ってからで良かった。
第十回
せつなさ〜!?
炸裂ーっ!
……はい、懐かしい言い回しですね。え、知らない?(汗)
要するに、夕陽を見ていると胸が締め付けられる思いということです。
健気な夕陽に冷たくあたる主人公。もう夕陽が可哀想で可哀想で。
この主人公、実は夕陽のこと嫌いなんでしょうか?
夕陽編だけやけに決断が早い。ほとんど迷うことなく「お前と一緒にいられない」ですから。
その上、抱くだけ抱いて「明日からお前との関係は終わり」だなんて!
とてもこれまで何年にも亘って見守ってきた家族同然の幼なじみにかける言葉とは思えません。
これはもうね、
単なる悪
ですよ
悪
。
一体どうしちまったんだ、がんちゃん……。これまでの格好良い姿を取り戻してくれることを願ってやみません。
第十一回
いやはや、幼なじみならではのこういうヤキモキする展開、やはりたまりませんなあ!
この立ち上がっては椅子で殴られ、再び立ち上がっては椅子で殴られる感覚、
最高です
。
それにしても夕陽にここまで言わせるとは、本当にこのルートの主人公は情けないったらありゃしない。
「右手に盾を左手に剣を」とかいうカードがありましたが、突如攻守が逆転すると誰しも驚きを隠せないわけではありますが。
しかし、そろそろ気付いても良い頃であります。夕陽が好きなことに。
まあ、こうした気付けなかったところに気付くというところが幼なじみシナリオの勘所ですから、もう少しこの展開を楽しむことにしますか。
ヒロインが涙する姿は美しいですしね……って何か変質的だなあ。
第十二回
夕陽編クリアー。
幼なじみって本当にいいものですね☆
<水野晴郎風に
ずっと一緒にいたからこそ分かることがある。幼なじみの鉄則ですが、その意味では夕陽は最強クラスのヒロインでした。
幼なじみは姉妹に近い存在ではありますが、夕陽ほど一緒にいる時間が長いヒロインも珍しい。
他方、
シナリオ自体は使い古されたもの
でしたよ。何度も何度も見てきた幼なじみシナリオの典型です。
しかしこのゲームの場合、味付けが違うためかまるでヒロインに対する思い入れが他のゲームとは変わってきます。
夕陽を攻略し終えたとき、私は幸せと同時に強烈な喪失感と寂謬感に教われました。
何故なら
もうすぐこの世界は滅んでしまう
からです。
この設定が付いただけで、在り来たりだったはずのシナリオの密度が増すのです。
この後、登場人物は間違いなく全滅します。だからこそ、出会う人をしっかりと瞼に焼き付けておきたい……
そんな気持ちが、本作の密度とヒロインに対する感慨を異様に濃く深くしていくのです。
そして、どうしようもなく優しい気持ちにさせられるのです。
これから死に逝く人を椅子で打ん殴る人はいないでしょう。ましてや、それが最期まで精一杯生きようという人なら尚更のこと。
温かく見守ってやろうと思うはずなんです。そこに同情も多分に含まれるのでしょうけれど。
しかし、それもまた一つのこのゲームの楽しみ方なのではないでしょうか。
死に逝く人々の最期の輝きをこの目に焼き付けるわけです。
要するに主人公に扮さず第三者的視点で切ない気持ちを堪能するのです。
そんなのもアリだと私は思うのです。
また、このシナリオに両親に決断を伝えるシーンがありましたので、ほぼ見たいシーンは見ることが出来ました。
これで心置きなく……
ってCGが全然埋まってないぞ!?
「その他」項目ではあるけれど、これだけ空ってことはバッドエンド……若しくはトゥルーエンドがあるのかしら。
早速探してきます。おそらく次回最終回。
最終回
かつて賛美歌で幕を閉じたエロゲーがあっただろうか?
長いことギャルゲーをやってますが、こんなエンディングは見たことがありません。
スタッフは、この作品を扱うフィールドを間違えましたよ。
だってね、
エロゲーにしては綺麗過ぎる
んだもの。
こう言っちゃなんですが、たかがエロゲーに賛美歌まで持ち込みますか?
あるいは、エロゲーはそこまで文化として確立してしまったんでしょうか。
私はそうは思いませんが……ともあれエロゲーにしては勿体無いぐらい綺麗に終了しました。
別に私はクリスチャンでも何でもありませんが、あれは反則級の美しさです。
以上が率直なトゥルーエンドの感想。これにて本作は完結です。
説明しておくと、前回までで埋まらなかったCGは他に用意されていたノーマルエンドで残り一つまで回収できました。
ノーマルエンド……CG回収程度しか考えていなかったのですが、これもまた侮れない話でした。
あれほど
選ばなかったことへの罪悪感
を感じさせられた記憶はちょっとありません。
ヒロインの「現状ではもう耐えられない」というシグナルに気付けなかった、敢えて気付かないふりをしたその罪。
あそこまで夕陽にはっきり言われるときついなあ。痛いところを突くのがこのゲームの良いところですが。
他のゲームでは何事もなくスルーしてしまう、ノーマル(若しくはバッド)エンドの裏側を見せられた気分でした。
そして一枚残った埋まらないCG。
まったく予期していなかったのですが、このゲームにもアフターが存在していました。
内容については伏せておきますが、とにかく美しいと。そういうことです。
◆総評
終わりのない終わりの物語。
一言で「そして明日の世界より――」を表すならこの言葉を使うでしょう。
私はこのゲームに「終わり」の物語を期待していました。
星が堕ちる世界で渦巻くどうしようもない混乱、絶望、そして恐怖。
パニック物が好きな私は、そんなものが見たかったのです。え、ちょっと暗すぎますか?(汗)
本作はそんな私の期待を、比較的良い形で裏切ってくれました。
そこにあったのは、私の求めた物とはまったく逆の綺麗過ぎるほどの世界。
ところが私は落胆するどころか、当初求めた物を見たくないとまでに感じた所を見ると、見事にこの世界にはまったのかもしれません。
しかし、手放しに褒められるかと言えば、そんなことはありません。
最大の問題はストーリーのほとんどにおいて
星が堕ちない
ことです。
最終的には堕ちるのでしょうけれど、堕ちるシーンが見れないのです。これは大減点。
テーマを伝え終わったからと言って、作り上げた世界を丸投げするのは感心できません。
伝えるべきことをしっかり言葉にしてプレイヤーに伝えたことは評価できます。
ですが、このゲームの肝は世界観なのです。だからこそ、その世界の一区切りまでは見せるべきでした。
その減点項目を除けば、大変良い出来だったと思います。特に音楽は全曲必聴。
万人受けはしないゲームですが、喪失と希望が同居するストーリーが、荒んだ心に幾許かの癒しを与えることは間違いないでしょう。
日頃何かとお疲れの方。それほど長くありませんし、挑戦してみては如何でしょうか。
※試験的に背景色を変更可能に。
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