劇場版CLANNADの失敗

劇場版CLANNAD公式

※CLANNADのネタバレあり。原作を未プレイの方は注意。

 10月24日、池袋シネマサンシャインにて劇場版AIRを鑑賞して参りました。今回の劇場は初めて入ったのですが、東京のシネコンってどこもあんなに狭いんでしょうか。前列と後列の座席に段差を設けてもっと見やすくする基本的な工夫が欲しいですね。平日だったからまだ良かったものの、満員になったら後列の人は見難そうです。まあ、それはさておき、観客は年配の方が多かったです。20代と50〜60代が半々といったところでしょうか。子どもや女性客はゼロ。開始前にプリキュアの映画予告が流れたんですが、一瞬場内の空気が凍りついたのが印象的でした。そして、上映直前に、渚が上映中の諸注意をアナウンスするんですよ。これが可愛らしくて最後に「ちゃんと言えました」と流れたときには思わず心の中でニヤついてしまいました。……思えばこれが劇場版CLANNADのハイライトでした。ちなみに私が心の中でニヤついているとき、他のお客さんたちはドン引きしていたのもまた印象的でした。世の中間違ってる! 

 まずは演出や構成についての感想。今回も出崎監督お得意の入射光、3回パン、ハーモニー、画面分割といった演出は健在でした。私は出崎監督の演出は好きなのですが、今回は少々多用しすぎな気がしました。入射光、画面分割は良いですけど、止め絵はやはりギャルゲーには合いませんよ。それと面白かったのはストーリー構成で、ほとんどが回想でつくられていることです。最初は何のことか分からないシーンが幾つかあって、途中から今まで見てきたものが回想だと分かるんですよね。これは上手いなと思いました。絵はAIRのときと同様にもう少し髪の毛を丁寧に描いてほしかったことを除けば概ね良かったと思います。アニメ版と比較するとどうしてもオリジナリティーが強いように感じますが、そもそもいたる氏の個性の強すぎる絵では一般受けするとは思えないので正解でしょう。音楽に至ってはほとんど原作の形を成していませんでしたが、気にならない程度のアレンジでした。ただ、やはり原作の音楽を使ってほしいという思いは変わりません。また、エンディングは歌を分割して流さずに一曲でビシッと決めてほしかったところ。

 次にテーマについての感想。アドベンチャーゲームを映像作品化するとき、どこまで原作を残すかが問題となってきます。時間内にまとめなければならないわけですから、削らなければいけない部分がかなり出てくるのは仕方がないことですし、オリジナル設定を加えなければ成り立たない部分も出てきます。ですから、ゲームの映画作品はあくまで「アナザー」であり原作とは異なるんだということを理解しなくてはなりません。ただし、原作を完全に破壊する意図や続編物でないならば、原作のテーマにあたる根幹の部分は変えてはいけないと思います。そうでなければまったくの別物となり、原作の名を使う意味がなくなるからです。
 では、劇場版CLANNADは原作のテーマを表せていたのか? 結論から言えば、劇場版CLANNADは一応CLANNADしていました。風子も椋もゆきねぇも出てきませんし、幻想世界の解釈もまったく異なっていましたが、CLANNADの根幹部分のひとつ――人と人と繋がり――は描かれていました。惜しむらくは、「町」がおざなりにされたことでしょうか。前述したように、原作と映画版のストーリーが違ってしまうのは仕方がないことです。しかし、原作のテーマを表現するために原作よりチープな手段をとってしまったとしたらこれほど勿体ないことはありません。本作はこれにあたるんですよね。CLANNADにおいて、朋也と渚の家族生活を用いて人の繋がりを表現したのは事実です。しかし、それだけではありません。原作ではさらに大きい……すなわち町に住むすべての人を巻き込んで「繋がり」が表現されていたのです。町に住む人々全員の絆があって初めて幸せな家族が生まれるのです。そこにある幸せは、映画版のような「死を乗り越えた先にある幸せ」ではなかったはずです。確かにCLANNADでは人が死にますが、それはあくまでゲームとして用意されたシナリオのひとつに過ぎません。謂わばプレイヤーへのサービスです。本筋では「死」を表したかったわけではないのです。つまり、繰り返しになりますが、汐ルートは真エンディングへの過程に過ぎず、AFTER最終ルートでの町に住む人々全体の繋がりこそがCLANNADが表現したかったことなのです。ここまで書けばお分かりになるかもしれません。劇場版CLANNADは汐ルートで足踏みしています。もう一歩踏み出してほしかった。確かに「死」から「生」の大切さを学ぶことは可能です。ただ、それをCLANNADでやるのは勿体無いと思います。脚本さん、もう一度原作のパッケージ裏を見て下さい。そこにはこう書かれているはずです。

 春。
 ありふれた学園生活から始まる、人と町の物語。

と。人と「人」の物語で終わってしまった点が本当に惜しい作品でした。

 余談になりますが、劇場版サントラにアレンジバージョンのメグメルがフルで入っていたのが嬉しかったです。このアレンジ好きなんですよね〜。

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