運命のヒト 〜 one’s fiance 〜(後編)


 運命のヒト 〜 one’s fiance 〜(後編)


重なった唇は、中々離れなかった。

緊張で固まっている私の唇を、窘めるようにゆっくり解してゆく。
目を閉じて、肩の力を抜く。
全てをせんせいに預けると、胸の奥がじわりと温かくなる感じがした。

―何が必要か、アナタ自身もうわかってるんじゃないかしら?

唇を一旦離すと、私を抱きとめる腕の持ち主の顔を直視する。
その男性(ひと)はスケッチブックに向かう時の様に、真剣な表情だった。
この男性へ淡い想いを抱くだけで満たされる程、私は幼くない。
だから・・・。
「・・・せんせい。」
私の視線に応えるように、再び唇が重ねられる。
歯列を割り潜りこんで来た舌に応えると、首に巻いていたスカーフがするりと抜き取られた。
暫く忘れていた高揚感が、身体を熱くする。
せんせいの首に腕を回すと、せんせいの腕が私の腰を抱き寄せた。
ぴったりと身体が寄り添うと、身体の芯が発する熱は更に上がる。
それを彼に伝えるように、口内を貪る舌へ執拗に応えた。
せんせいの手がブラウスを潜り、背中を駆け上がる。
それだけで、私の身体はピクリと反応を示した。


うっとりとした気分の中、ツイと唇が離された。
「こっちへ・・・いらっしゃい。」
促されるまま、せんせいの寝室へと歩みを進める。
豪奢なベットに腰を下すと、耳元にせんせいの唇が寄せられた。
そして柔らかな声色で、こう囁いた。
「・・・本当に、いいのネ?」
・・・先の事は解らない。
でも今は、こんなに花椿吾郎というヒトが欲しい。
今、私に必要なのは・・・。

黙って私が頷くと、せんせいは浴室へと向かっていった。
私はその背中を見つめながら、ブラウスのボタンに手をかけた。

さらさらと心地よい絹のシーツに身を包んで、彼を待つ。
欲しいと願う男性に抱かれる。
私は今、どうしようもなく恥ずかしくて、緊張している。
でも・・・それが、堪らなく嬉しい。

浴室のドアが開く音がした。
鼓動が急に跳ね上がる。
彼から注がれる眼差しは、この世界に入ってからずっと憧れていた眼差し。
その先に自分が居る事が、この上なく幸せに思う。
足音が近づいて来るのを耳が捉えると、私の心臓が激しく脈打つ。
緊張に耐え切れず、私は目深にシーツを被った。

「怖いの?」
シーツに潜ったまま首を横に振ると、シーツ越しに右の頬をそっと包まれる。
「そのままじっとしてて。」
上質の生地に触れるように、せんせいの手が私の身体を撫でる。
絹の滑らかな感触が、私の感覚を鋭くさせた。
「・・・んっ・・・・。」
胸元の膨らみを登りその頂上に指が触れると、私は思わず声を上げた。
「・・・ここ?」
反応を確かめるように、せんせいの指が隆起し始めた先端を緩く撫でる。
息が苦しくなりはじめてシーツから抜け出すと、せんせいの意地悪な微笑みに会った。
「せんせ・・・。」
訴えかけると、それを妨げるように軽く摘み上げられた。
「ひゃ・・・。」
せんせいの空いた手が、下肢へと伸びる。
まだ隆起していない胸の先端に、せんせいが軽く口付けた。
身体を震わせる暇も無く、舌が絡み付いてくる。
唾液で布地が張り付く感触に、肌が粟立つ感じがした。
それに加えて内腿をゆるゆると撫で上げられ、更に深い快感が湧き上がってくる。
思わず身体をよじり、それから逃れようとした。
「あら・・・イヤなのね?」
唇が離れて、唾液で湿っていた場所が急速に冷えてゆく。
「イヤじゃ・・・ないです。」
「ふーん、そう・・・。」
問い掛けの答えへのご褒美のように、せんせいの指が布越しに秘裂を撫で上げた。
「は・・・んっ。」
探るように弱い愛撫を施され、じわじわとそこが潤むのを感じた。
胸元の冷えた場所には指先があてがわれ、逆の先端が唾液に濡れる。
「ココを、どうして欲しいのかしら?」
溢れ出す蜜を布地に吸わせながら、せんせいは緩やかに指先を繰る。
絹の貼り付く感触が、私を追い詰める。
「せんせ・・・んっ・・・もっと・・・。」
「もっと?」
「ちゃんと・・・触って下さいっ・・・。」
言葉にする恥ずかしさに、耳まで熱くなるのを感じた。
「エ・ッ・チ。」
せんせいは耳元で意地悪く囁くと、するりとシーツに潜りこんで来た。
肌の温もりを確かめるようにせんせいに抱きつくと、強く抱き返される。
「・・・好きです。せんせ・・・い・・・。」
胸板に顔を埋めて、聞こえないように囁く。
聞こえては、せんせいが困ってしまう。
でも言わずには居られなかった。
「え?」
「・・・独り言です・・・。」
何か言いたげなせんせいの唇を強引に塞ぐと、積極的に舌を絡める。
せんせいの手を掴み蜜の滴る場所へと導くと、指先が蜜を絡め取り花芯へと伸びる。
身体の芯から広がる疼きが脳まで広がり、私のネガティブな思考は綺麗に消し飛んだ。

「・・・やっ・・ぁ・はんっっ・・・」
潤みきっていた秘裂は、せんせいの指を易々と飲み込んだ。
下半身は快楽に浸されて、他の感覚を失い始めていた。
「・・んっ・・・くぅ・・・。」
差し入れられた指の本数を増やされ、一瞬息が詰まる。
二本の指がゆっくりと別々に蠢いて、肝心な場所を避けてゆく。
「せんせ・・・そこじゃなくって・・・っ・・・。」
せんせいの作為的な焦らしに、思わず腰が揺れる。
「・・・欲張りネ。」
せんせいはゆるゆると内壁を撫でるだけで、肝心な刺激をくれない。
それでも身体は、蓄積されている快感で潤みきっていた。
「せ・・んせ・・・。」
差し入れられた指先の一つが、敏感な場所を軽くつつく。
「・・あっ・・・ああぁっ・・・。」
涙が一筋、流れ落ちる。
私の口から飛び出す喘ぎが断続的になり、指先の奏でる淫らな水音が激しくなった。
心地よい眩暈を感じながら、私はせんせいをねだる。
「セッカチ。」
せんせいの親指が、花芯を押しつぶさんばかりに弄る。
「・・・せん・・せい、や・・・いやあああああっ・・・。」

押し寄せる快感に耐え切れず、私は身体を大きく震わせるとやっと掴んでいた意識を手放した。


肩を大きく動かしながら、貪欲に体内へ酸素を取り込む。
「あ・・・んっ・・・。」
指を引き抜かれて惜しむような声を上げる私に、せんせいはまた耳元で『欲張り』と囁いた。
ぼんやりと宙を眺めたまま、腕だけでせんせいを探す。
ふわふわと彷徨う腕を掴れ、身体を引き寄起こされる。
「く・・・ふんっ・・・・。」
動く事もままならず、呆けたまませんせいの首筋に腕を絡めると、空虚だった部位に熱い肉塊が与えられた。
身体も心も。全ての深淵から込み上げてくるような快感に、私は嬌声を上げる。
自分の声すら、遠くから聞こえてきた。
ただ感じ取れるのは、繋がる場所から広がる快感と、せんせいの心音だけ。

タトエ ヒトヨ カギリデモ・・・。

激しく身体を揺さぶられ、得られる快感に溺れながらふと浮かんだ悲しい言葉。
それを振り切るように、私は埋められた彼自身を貪るように強く締め付ける。
せんせいの腕が、私を今までよりずっときつく抱きしめた。
互いの温度が溶け合って、幸福感が込み上げてくる。
耳で捕らえる彼の心音が、激しい。
翻弄されながらも無我夢中で、せんせいが壊れないようにと願いを込めて、せんせいの逞しい胸元へ唇を寄せる。


やがて目の前が真っ白になり全身の力が抜けおちると、身体の中で彼自身が激しく脈打つのを感じた。





眠るせんせいを起こさないように、ベッドを抜け出る。
今、顔を合わせたらきっと気まずくなってしまう。

せんせいは行き詰った私に、今一番必要なものを与えてくれた。

そのせいで、私は少しだけ欲張りになってしまった。
・・・ずっと、せんせいの傍に居たい。
例え、今までどおりの師弟という間柄のままでも。

その答えに辿り着けただけで、昨夜まで不可能だった事が簡単に思えた。
頭の中でデザインを描きながら手早く身支度を整え、深い眠りにつくせんせいに丁寧に頭を下げる。
「ずっと、お傍に置いて下さいネ。」
せんせいの耳元で微かにそう囁くと、音を立てないようにそっと、せんせいの寝室を後にした。





最愛のパートナーが部屋を出たのを確かめると、狸寝入りを決め込んでいた花椿氏はさっと目を開いた。
「まさかこのアタシまで、天然小悪魔ちゃんに惹かれちゃうなんて・・・ね。」
気だるい体を起こしながら、誰に言うでもなくそう呟く。
これから彼女がスケッチブックに向かって描くデザインは、最高のものになるだろう。ということが彼には容易に想像がついた。
そしてそれを、大喜びで自分の所へ持ってくる姿を想像して、彼は思わずニンマリと笑う。


近い将来、2人で世界の頂点を極められた時。
それまで、アナタの気持ちが変わらずにいてくれたなら。
・・・その時、今胸に閉じ込めた想いを・・・君に伝える・・・ワ♪

それまでは、アタシも辛いケド・・・オ・ア・ズ・ケ♪



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