Each other 〜Girl’s Side〜


Each other 〜Girl’s Side〜


好きになったヒトが、たまたま11歳年上で、担任教師だっただけ。
そう割り切ってしまえれば、どんなに楽だろう。


三年生になってから、ちょくちょく誘われる社会見学。
デートですかと尋ねても、先生は社会見学と言い張るけれど・・・。

ドライブ 映画鑑賞 ビリヤード コンサート

同級生と行けば、間違いなくデートだ。
でも先生はいつも、学校と同じスーツ姿で。
口調も学校に居る時と同じ。
だけど生徒扱いしながらも、社会見学の時の先生は、時々プライベートがちらちら見える。
私の質問に答える時の先生の顔は、どれも学校では見られない『素顔』

その顔は 私だけに 見せてくれるんですか?

何度車を走らせる横顔に、そう尋ねただろう。
言葉に出来ないもどかしさに、私はいつも息が苦しくなる。


「仮に私がある個人の、その……“好きなタイプ”が気にかかるとしてだ。そこには……。」
私が先生の異性の好みを尋ねて暫くしてからの、社会見学の帰り道。
先生は頬を少し染めながら、遠まわしに尋ねてきた。
「氷室先生!!誰か気になる女性がいるんですか!?」
・・・大変だ。
先生に、好きな女のヒトが居るんだ。
驚きと焦りで、私の声は必要以上に大きくなった。
「……何故そうなる?」
あぁ、この人はどうしてこうなんだろう。
余りの鈍さに、私はまくし立てるように言う。
「そうなりますよ。だって、“好きなタイプ”が気になるってことは……。」
「わかった。もうそれ以上考えないでよろしい。この質問は撤回する。」
私の言葉を切るように、先生が口を挟む。
それ以降私の家に着くまで、車内には重い沈黙が続いた。

ドンナヒト ダロウ

先生が、気になる女性はどんなヒトなんだろう。
前に聞いた異性の好みなんて、教師としての答えだ。
近くて、遠い。
その距離が、苦しい。

好きになっては、いけなかった。
憧れるだけで、留めておくべきだった。
想いが膨らむほど、辛くなる。
捨てなくちゃいけない。でも・・・そんな事、出来るのだろうか?


「次週日曜だが、予定は空いているか? 」
いつもと同じトーンで、先生は予定を尋ねてくる。
生徒という枠から、抜け出したい。
社会見学を繰り返すほど、私の立っている位置が解らなくなる。
「・・・用事があるんです。」
嘘だった。先生がどんな反応をするか見たかっただけだ。
「わかった。それではしかたがない。以上だ。」
がっかりする様子も無く、先生は踵を返して立ち去る。
背中がどんどん遠ざかって行くのが、悲しくなった。
角を曲がり、見えなくなる先生の姿を追って廊下を走る。

「・・・氷室先生!」
大きな声で呼び止めると、先生の歩みが止まる。
駆け足で先生に近づき、改めて向かい合う。
「・・・嘘です。」
少し息を切らしながら、アッサリと前言を撤回した。
「何?」
先生の片眉が、綺麗に上がる。
「予定があるなんて、嘘です。何だか私・・・悔しくって。」
「悔しい?」
言葉で、目で、先生は私にその意味を尋ねてくる。
「先生・・・私・・・解らないです。」
私の言葉に先生は軽く首を傾げると、眉間に皺を寄せ目を閉じる。
補習の時初めて気付いた長い睫毛が、目に付いた。
「何が解らない?」
「社会見学の意味とか、他にも社会見学をしている人がいるのか、とか・・・。」
先生の眉間の皺が深くなる。
怒られるかもしれない。でもつい勢いで口にしてしまった言葉は、後悔してももう戻らない。
「君の他に、社会見学を行っているものは居ない。それと・・・」
言葉と共に、固く閉じていた瞳がゆっくりと開く。
その目には、強い意志の光が見えた。
「君にのみ社会見学を行うのは・・・君が予習復習を怠らない、向学心旺盛な女子生徒だからだ。」
先生はもごもごと口籠もりながら、頬を微かに赤に染めている。
「・・・はぁ。」
何となく誤魔化されたような気分だった。
私は、つい溜息混じりの返事をする。
「全く・・・君は。」
先生が呆れている。
でも、何故呆れているのか解らない私は、首を傾げて先生を見つめていた。
「・・・鈍いな。」
「え!?」
先生の腕が私の肩を抱き、優しく抱き寄せられる。
そして耳元でこう囁いた。

「君の“好きなタイプ”が気になって、夜も眠れない。
 ・・・教えてくれないだろうか?」



この後私はすっかり舞い上がって、帰宅途中・・・電信柱に顔面を殴打した。



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