「悪い子には罰を。」
神様はそう言った。



















〜残された者〜




















もう何がなんだかわからなくなって、あたしは教室を飛び出した。
多分その後を忍足が追いかけてくるだろうと思って、あたしは全速力で走った。
その時、あたしはダレかに衝突した。










「ご、ごめんなさいっ」
「いえ、こちらこそ。大丈夫ですか?」
ダレかの背中にぶつかって、尻餅をついたあたしに、
ぶつかってしまったダレかは、親切にもこっちを振り返り手を差し伸べてくれた。
「・・・ありがとう。」
出された手に掴まり、その勢いで起き上がる。













「・・・・・、先輩?」













その人は言った。
だが、その声は震えていて半信半疑気味に聞いた。
掴んだ手を、ぎゅっと握り、あたしの顔をじっと見る。
先輩・・・なんですか・・・?」
「ぇ?はい・・・。」










この学年には1人だけ。
この前までもう1人いたけど、今はあたし1人。










「本当に、本当に!?」
掴む手を、更に強く握る。
まるで、このあたしの存在が嘘のように言うこの人は、一体ダレなのか・・・・。
「ぃ、痛い・・!」
「すいませんっ!」
あまりの痛さに我慢できなかった。
パッと手を放すと、その人の顔は赤く染まった。










見覚えのない顔
でもあたしを知ってるのなら、
どこかで会ったのかもしれない。
考えたいのもやまやまだが、
今のあたしは逃走者。
逃げなければ追手が来る!
「ごめんなさい、あたし急いでるから!」
そういって、立ち去ろうとした。
でも、その人はそんなことさせてくれなかった。
あたしの前に立ちはだかり、
あたしの邪魔をする。
それでなくても結構背の高い子だから、
こんなに近くにいられると威圧感がある。










「ほんと、ごめんなさい!通して!」
「・・・・お願いします。待って下さい・・!」
ここで断わると泣いてしまいそうな顔をされ、
なんだか雰囲気がに似てて断われない。
「・・・わかったから、わかったから他の場所に移らせて!」
必死に訴えた。
「・・・はい。」
授業開始のチャイムが鳴ったにも関わらず、
あたし達はちょうど空いていた教室に入る。













「・・で、何ですか?」
忍足にみつからなかった安心感で、少し余裕ができた。
今の残る問題は目の前のこの子。
あたしの事を『先輩』付けで呼んでたんだから後輩・・なのかな。
「あ・・はい。その、えっと・・・」
「・・・まずわ自己紹介をしてくれますか?」
しどろもどろの彼にあたしは言った。
「あ・・・俺、鳳長太郎って言います。テニス部の・・・・。」














テニス部と聞いて、全てを察した。
あぁ、彼が言っていた『先輩』はあたしじゃない。
消えてしまった片割れの方・・ね。





















「・・・・ごめん、ね・・・。」





















何故かあたしは謝っていた。
多分、を慕っていたであろう彼に。
奪ってしまった命に。



「悪い子には罰を。」



よく母に言われたセリフ。
子供の時は、母が神様のような存在で、
さからえなかった、あの頃。
目の前の彼に、あたしは何を言えばいいのか。
これこそ、あたしに残された罰、なのかもしれない。


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母が「悪い子には罰を。」なんて言い方したかわかりませんが、
「おしおきするぞ。」ぐらいは言ってたはず。
茜にとって、幼い頃の母は神様みたい、だったのかな。
2004.7.23 片桐茜

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