切ない想いを抱えて、 俺はずっとあの人だけを見ていた。 華〜何故〜 最初は、見ているだけで幸せだった。 皆から人気があって、俺にはもったいない人だって。 こうして少しだけ喋れるだけで俺は嬉しかった。 彼女がマネージャーをしてなかったら、 俺は彼女には出会えなかっただろうし、 彼女を知らないまま過ごしてた。 でも何故? 何故彼女はいなくなってしまったんだ? 跡部先輩と付き合ってるっていう事聞いて、 先輩が幸せなら・・・・そう思ってたのに。 宍戸さんからきた電話は、 俺を谷底におくるには充分の言葉だった。 「・・・・ぇ?」 「死んだんだよ・・・。」 「ぇっと、スイマセン。誰が、ですか?」 「だから、がって、さっきから何度も言ってるだろうがよ」 「そんな・・・・・。」 「俺だって、信じらんねぇよ・・・。」 葬式も、俺は涙ひとつ見せなかった。 信じられなかった。 先輩が、もうこの世にいないという事が。 誰か嘘でもついてるんじゃないかって。 でも何日経っても誰も嘘だったって、 悪い冗談だったって、言ってくれない。 先輩も学校に来ない。 あるのは、先輩の机の上に置かれた花。 割りたくなった。 それを止めるのは、いつも宍戸さんだった。 「長太郎、割るんじゃねぇぞ」 ドアの所で歯をくいしばっている俺に、宍戸さんは言った。 「・・・なんで、なんで先輩がっ・・・!」 「・・・・・それがの運命だったんだよ。」 「なんでそんな酷い事言えるんですか!?」 「そうでも思わねぇと!俺だって、こんな事っ・・・。」 「・・・・スイマセン。」 誰だって認めたくない。 昨日自分に笑いかけてた存在が、 急にいなくなっただなんて。 信じたくなくても、これが現実。 嘘でも、冗談でもない。 いつも目の前には、真実しかない。 「・・・それに、俺達よりも跡部とかの方がつれぇだろ・・。」 「あ、とべ先輩・・・・ぇ?」 「なんだよ。」 「って、誰ですか?」 だって、先輩は亡くなったじゃないか。 なのになんで先輩が悲しむんですか? 「お前、しらねぇのか・・・・?」 「ぇ・・・・」 「・・は双子だったんだよ。この学校にいるぜ?」 「・・・・・初めて、聞きました・・。」 「よくあいつ話してただろーが・・・。部活中とかに。」 聞いていなかった。 跡部先輩と付き合い始めた先輩は、 跡部先輩の話しをよくするようになって、つらくて、あまり聞いていなかった。 それでなくても今まで話す時も緊張していて話しは頭に入って こなかったし・・・。 「双子・・・・。」 その人は今、どう思っているんだろうか。 会ってみたい。 俺は頭の片隅にそんな事を考えていた。 だからなのか? 今俺の目の前にいるのは先輩の片割れ。 姉・・・って聞いたけど。 何故俺の目の前の人は俺に謝っているんだ? なんで、俺はこの人と2人っきりでいるんだ? 疑問は、募るばかりだった。 ---------------------------------------------------------- 長太郎君の気持ち。 景吾とかよりも悲しい感情が書きやすいッス! 2004.9.15 片桐茜 |