優しい言葉と優しい手 それをあたしは望んでた 華〜助けてくれた人〜 「おはようさん」 「おはよう」 「もう大丈夫なんか?」 「うん。もうあれにも慣れたしね。」 「そうか」 早退した次の日、教室に着いたあたしに始めに声をかけてくるのはいつも忍足だった。 というかもともとあたしに声をかけてくる人自体少ない あまり人と接するのが苦手なあたしは、新しいクラスでは誰にも話しかける事もなく、1人外を眺めていた。 そんなの、あたしにとっては当たり前の日常だった。 周りは、暗いとかなんかいうけど、そんなの気にした事は無い ただ、ただ胸に響くこの言葉 「ちゃんはすごい明るい子なのにね。」 内心イライラする。 右手を頬につき、目線は常に外 自分の心を出さないように、これ以上比べられないように・・ そんな行動が、逆に自分をひきたてていたとは知らずに。 「おはようさん」 「・・・・は?」 「おはようさん」 「え、あたし?」 「自分以外おらんやろ?」 「あぁ・・・」 「あぁ、じゃ寂しいやろ。おはようさん」 「おは、よう・・・」 「なんや普通に喋れるやん。」 「あたりまえでしょ」 「皆の噂とは違うんやねぇ?」 「噂でしょ・・・」 「まぁな」 そう言って笑った忍足(まぁその当時は名前知らなかったんだけどね)を見て「こいつは普通と違う」そう思った。 そいつは次の日も、その次の日もあたしに喋りかけた。 最初はうざったいと思ってた存在だったけど、 次第に隣にいないと変な存在になっていた。 「あんた、名前は?」 「お?やっと聞いたか。初めて喋った日から6日やで」 「興味なかったんだもん」 「・・・・忍足侑士や。」 「おしたり・・・・ゆうし・・?」 「あぁ。」 「なんか聞いた事ある・・・・」 「あぁ、あれやろ。ちゃんに聞いた事あるんとちゃう?」 「・・・・何、の事知ってるの?」 「知ってるって、俺テニス部なんよ」 「あぁ、それで・・・」 妹のは男子テニス部のマネージャーをしてて、けっこう色んな反感を買っているらしいが何故かあたしの存在や、 レギュラーの存在がイジメという行為にはいたらせなかったらしい。 それでなくてもあの性格だ。 人懐っこくて、甘え上手。 それで危なっかしくて守ってやりたいタイプの妹。 自分とは正反対。 なんでこんなひねくれた性格になってしまったのか。 「の事もちゃんから色々聞いてるで」 「・・・・なんて?」 「頼りになって、優しくてかっこよくて頭もいい。なんでもできる、自分とは正反対のお姉ちゃんやて。」 「・・・・フーン・・・・」 「あれ?気分悪くしたか?」 「別に」 「・・・・頼りになるやって」 「・・・・・・・・・」 「俺には危なっかしい女の子にしか見えんけどな」 あたしの前の席で頬杖をしながらあたしの顔をまっすぐと見てくる瞳に、 あたしらしくもなくドキッとしてしまった。 「なんやろ、ちゃんも守ってやりたいタイプかもしれんけどなぁ。」 何が言いたいのだろうか、この男は。 ドキッとしてしまった自分を正すように頭をいっぺん軽く叩く。 その行為がなんなのか疑問に思ったのか知らないが、忍足は話しを続ける。 「俺から見れば、の方が守ってやらなあかんって思ったけどなぁ」 「・・・・何?」 「なんやろ、ちゃんとは違ってやなぁ〜ウ〜ン・・・・・ 心の支えになってやりたいんや」 「・・・・・・」 その時はその言葉の本当の意味など知らなかった。 別に自分は支えてもらわなくとも生きていける。 何があっても・・・・・ でもそんな思いはすぐに叩きのめされる。 ズタズタに切り離されて、もう自分が自分ではない。 自分の肉体を失ってしまったような感覚に襲われる。 気持ちだけが右往左往する。 奈落の底まで落ちそうになったあたしを助けてくれたのは、侑士だった。 優しく手を差し伸べてくれて、あたしはその優しい手を掴んだ。 ・・・・・・そして、今現在にあたるわけだ。 忍足と挨拶を交わしてから黙り込むあたし。 あたしの目の前で手を振る忍足 フッと、昔の記憶から現世に戻る。 俗に言う、トリップしてたのだ。さっきまでのあたしは。 「・・・・何?」 「なにってなぁ、いきなり黙り込むからまた気分わるぅなったのかて心配したやん」 でも大丈夫そうやね、そう言ってあたしの髪を撫でる。 こんな昔の事を思い出して気落ちするぐらいなら、自分の記憶を抹消してほしいと何度願った事か でも消えない、あたしの中のあの子。 あの子の後を追おうと何度思った事か。 でもそんなあたしを助けてくれたのは、 悔しくとも、目の前にいるこの男なのだ―――。 ---------------------------------------------------------- 忍足との出会い編。 茜の中での忍足はあくまで優しいプレイボーイ。 景吾がでてこない!?長太郎とかも出さなくちゃ〜★ 出せるかな・・・・・ 片桐茜 |