大切な人を失う
それは、身をひきちぎられるような痛み
















〜恐怖感〜

















「・・・・
「言っとくけど、同情なんてやめてよね。さっきからうんざりなの」
「そやな、お前に同情なんて必要ないやんなぁ」
「・・・・・・そうよ、同情なんてされたらほんとに・・・」
言い出した言葉を飲み込んで、口をぎゅっと噤む。
同情なんてされたら本当にあたしは、
可愛そうな子、じゃない・・・・・
飲み込んだ言葉を忍足はわかってくれたのか、黙って隣にいてくれた。















「忍足・・・」
「なんや」
「ありがと」
「なにがや?」
「別に」
ただ、ありがとう。
そう言いたかったの



















が死んで、お葬式からなにやらと大変な事ばかりで、泣いてる暇なんてなかった。
お母さんは泣き崩れてしまって、お父さんは意気消沈しちゃってるし、家でちゃんとしてられるのって・・・・
あたしだけじゃない。
悲しいのはあんた達だけじゃない!
って両親に言いそうになったけどそこは我慢。
あたしは、お姉ちゃんなんだから
しなきゃいけない手続きが終って学校に行くと、周りのあたしへの態度は今までと一変した。
いつもは話しかけない相手が話しかけて来たり、
しかもその話の内容は無理矢理あたしを笑わせようとするものばかり。
正直言ってうんざりする。
あたしを可愛そうだという感じで見る瞳
なんであの子じゃなくてが・・・って訴えかけてる瞳
やめてよ、そんな瞳であたしを見ないで
ごめんなさい、ごめんなさい
全部、あたしが悪いのよ
妹の好きな人を好きになってしまった罪の結果
消え去らない罪の意識はあたしをむしばむ


















「・・・・ー?」
「え?」
「大丈夫か?」
「あ、うん。なんか用?」
「あぁ、跡部がお前に話しあるって待ってるで」
「跡部が・・・?」
「あぁ、なんや深刻そうな顔しとったわ」
「・・跡部どこ?」
「部室」
「わかった・・・・」
椅子から立ち上がったあたしの腕を忍足が掴む
「なに・・・」
「俺も一緒にいったろか?」
「・・・いいよ。」
「でもなぁ」
「あたし」
少し強めな声で言った
「そんなに弱い女の子じゃないの」
自分に言い聞かせた言葉
何度も溢れ出しそうな涙を抑えつづけて
弱い女の子じゃない
でも、








































強い女の子なわけでもない・・・・・








































不安定な気持ちを抱えながら必死に過ごしたこの数日
地獄のような数日だった。
今、頭の中を走馬灯のように駆け巡る想い
がこの腕の中で命の灯を消した時に流れた同じ物
その中に、跡部は色濃く、鮮明に輝いている。



















部室の前まで来たあたしは、目の前のドアノブになかなか手を
かけることができなかった。
そんな時、向こうからドアが開いた。
「よぉ」
「・・・・用件ってなに」
「・・・・・・」
「早くしてくれない」
「俺、あの時言ったよな」
「なに、を・・・」
思い当たる言葉をわかっていたあたしは、
一瞬心臓が止まってしまうかと思うほどどきっとした。



















「お前が好きだって」



















「・・・だから、なに」
「お前はどうなんだよ」
「知らないわよ」
「本当はわかってんだろ」
その瞳で見ないで
その強い目で、あたしを、あたしだけを見ないで
「俺は、じゃなくてお前が、が好きだったんだ」
こんな時に、そんな事言わないで
を無くして、なのに消えないこの想いは強くなるばかりで
こんなあたし、ずるい
きっとだってそう思ってる
ずるいあたしを、なんで助けたんだろうって思ってる
そう思うと、あたしは何か知らない恐怖感に襲われた
恐怖感と共に押し寄せてきた嗚咽感
あたしはその場から急いで駆け逃げた
そうしたら、やっぱり心配した忍足が近くまで来ていて、その忍足にあたしは看護された。
それからあたしは、跡部に会うと恐怖を覚え、あの感覚に襲われる。
大切な人があたしに送った、罰なのだろうか・・・・・・・

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はーい、甘いのを書きたくなってきた茜です
これからも頑張りまーす
片桐茜

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