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4月に入ってからポカポカとした陽気が続いている。
日本に来て2年目を迎えるリボーンは日本の春が気に入っていた。
9代目の命を受けて来日し、綱吉を含めた未来の10代目ファミリーを教育するために奔走する毎日。
この並盛に来てから六道骸率いる黒曜中との戦い、ヴァリアーとのリング争奪戦、未来でのミルフィオーレとの戦いなど。
どの戦いでも皆傷つき、ボロボロになりながらも成長して命を落とすことなく勝利することができた。
レベルアップしながらファミリーとしての絆も深めることができ、家庭教師としてリボーンは満足していた。
まだまだヒヨっこで足りないものばかりの綱吉たちもこの春、並盛中学3年生へと進級したのだった。
共に歌おう、愛の歌 1
新学期を迎えた生徒達は気分がまだ浮かれているように感じた。
昼休み、ざわざわと騒がしい校内。
この並盛中学の至るところを開発し、自分専用の基地を作っているリボーンにとって自分の庭のようなものだ。
おそらく弁当は屋上で食べているだろう教え子たちを目指して、軽い足取りで階段を上った。
「あれ、リボーン?お前、学校には来るなって何度も言ってるだろ!」
「うるせぇぞダメツナ。新学期始めの学力テストがあっただろう?どうだったんだ?」
案の定、屋上にある給水塔の傍で弁当を食べる綱吉達を発見。
一番近くにいた綱吉の言葉を無視し、愛銃をその眉間に突きつけた。
「うぅ、お前来て早々嫌なこと思い出させるなよ・・・」
「10代目!今回はたまたま調子が悪かっただけです。次は俺がもっとお教えしますので頑張りましょう!!」
「ははは、オレも頼むぜ。春休みは練習ばっかりで全然勉強しなかったからダメだった」
「はぁ!?自業自得だ、この野球馬鹿!なんで俺がっ」
「まぁまぁ、獄寺君。みんなで勉強したほうが楽しいし、いいじゃない」
「はいっ、10代目がそうおっしゃるなら!!」
「ほんっとに、獄寺はツナが好きだよな−」
卵焼きを頬張りながら山本はそう笑っていた。そんな姿を見るだけで顔が二ヤけてしまう。
「ちゃおッス、山本」
「よっ、小僧!お前はもう昼飯食ったのか?」
「あぁ、ママンお手製のグラタンだったぞ」
「そっか。いいなぁ、ツナのお袋さんの料理うまいよな!」
そんな会話をしながらいつも通り山本の肩に座る。
彼はいつも石鹸のいい匂いがする。
リボーンほど近づかなければ気付かないだろう。
そんなことを思いながら、彼の肩に座って綱吉達に目を移すと。
目の前に座る獄寺が綱吉に自分の武勇伝を聞かせて盛り上がっていた。
綱吉はいつも通り苦笑しながらも、慣れたように大人しくそれを聞き入れている。
「なぁ、山本」
「ん?なんだ、小僧?」
弁当を食べ終えて並盛牛乳を飲んでいる山本に、幾分小さな声で話しかけた。
「次の満月は13日らしい。予定はどうだ?」
秘密を共有する者としての期待か、その声が思ったより低くなり内心苦笑が漏れる。
「んっ・・・っと、うん、別に大丈夫だ」
返ってきた声は少し上擦っており、ふと見上げると山本の頬はうっすらとピンクに染まっていた。
健康優良児で普段から暢気な山本は滅多なことでは動揺しない。
ましてこんなに恥じらう姿を見る機会はなかなか無いので面白い。
「まったく、お前は可愛すぎだぞ」
そう呟いて小さな手で色づいた肌を撫ぜると、山本は赤くなって下を向いた。
そんな初心な様子に満足し、こんな顔を見られるのは自分だけだと優越感で一杯になる。
冷静沈着、世界最強のヒットマンと呼ばれる自分がなんてザマだ。
手に入れたこの存在は大層愛しく、次の満足の夜のことを考えてリボーンは更に楽しそうに微笑んだ。
白蘭を倒すために行った未来で山本を鍛えた後に自分の正体を明かした。
アルコバレーノの呪いについてなかなか理解できなかったようだが、本能的な直感で真実であることを感じ取ったようだった。
そして満月の日にはアルコバレーノの呪いの力が無効化し、本来の姿に戻れることを話した。
その後、現在に帰ってきてから修行と称して大人の姿で会いに行った。
今まで我慢していた分、歯止めが利かなくなって山本に想いを告げてしまった。
青天の霹靂というように驚いたままの山本に一か月の猶予を与えた。
拒絶されようとも、離す気などなかった。
山本を愛人にできなくても、最高の殺し屋としてその力を愛でてやろうと思っていた。
しかし、山本の思考は全く読めない。
まさか返事を聞く前に、抱いてくれと言われるなんて。
抱いて、啼かせて、愛を囁いて・・・。
誰かを好きになったことも、性行為もした事がない「子ども」を自分のモノにした。
無垢な山本だからこそ寛容に受け入れてくれた。だが、強引だったことは否めない。
だからこそ大切にしたいし、もっともっと愛したいと思う。
「・・・んっ・・っ!」
「ん?気持ち良くねぇのか?」
「違っ・・っ・・!」
「声は我慢するなと言っただろう。唇から血が出てるぞ」
「イっ・・っ・・」
血が滲んだ唇を舐め上げると痛かったのか山本の身体が跳ねた。
身体を繋げるのはまだ数度目。全く慣れることのない山本は行為中に声を出すのを極端に嫌がる。
本人は違和感があって恥ずかしいだけらしいが。
少年の体に無理を強いている身としては少しでも早く快楽に溺れてほしいというもの。
「じゃあこっちも触ってやる」
手を伸ばしてヒクリと震えている山本の性器を握る。
「・・っ!・・・んな・・一緒に・・触んなっっ!」
驚きで山本の後ろの蕾がぎゅっと収縮し、押し込んだままの肉棒が締め付けられた。
「はっ、相変わらずいい締め付けだな」
「・・・ふ・・やっ!」
蕾に飲み込ませたローションが太腿を伝い、それを潤滑剤として勃ち上がったモノを扱く。
「・・っ・・ぁあ!・・・ァア!」
我慢しきれず溢れる山本の声に欲情した。
いつも野球をしている山本の体はユニフォームに阻まれて日焼けしていない。
程よく付いた筋肉は美しく、穢れを知らない山本の身体に煽られる。
何も知らない山本に男を銜えることを覚えさせ、喘ぎ悦ぶ身体にしたのは自分だ。
現在も涙目で蕩けそうな表情で見上げられ、それだけでリボーンは興奮した。
山本を啼かせて追い込んでいるようで、実は自分の方が余裕を奪われているのだ。
もちろん、そんな素振りを見せるほど若くはないのだが。
「ふん、イケばいいじゃねぇか」
「ヤっ・・ひとりじゃ・・・嫌だっ」
可愛いことをいう、と口の中だけで呟いて自分の下で喘ぐ少年の頬にキスをした。
それだけで挿入した肉棒が更に深くなり、山本の奥が己のモノを締め付ける感覚に息をつめる。
まだ一人で達することに恐れ抱く姿がリボーンの劣情を誘った。
目尻から流れた涙を拭うこともできず、息も絶え絶えに喘ぐ姿にゴクリと唾を飲む。
もう我慢も限界とばかりに、濡れて勃ち上がった山本自身にも手を添えて。
共に絶頂を迎えるために腰の動きを速め、山本の上擦った声をBGMに二人で達することになった。
山本とこんな関係になって数ヶ月が経った。
そもそも赤子の姿ではいつでも会えるが、本来の姿では月に一度しか会うことができない。
毎度一か月ぶりとなる行為は未だに慣れないらしく、抱くたびに恥じらう山本の姿がリボーンの興奮を煽ってやまない。
本当なら1日に3回、4回と何度でも抱いてしまいたいのだが、まだ少年の幼い身体と野球の練習に気遣うのは大人として当然だろう。
しかも満月の日が毎回土日と重なるわけもなく、時には平日にも拘らずこうしてホテルに連れ込んでしまうのだから。
抱くときは無理をさせずに大概は1回の行為のみで我慢している現状だ。
明日も昼から野球部の練習があるということで、今夜は後始末をしてベッドの上でゆっくりと過ごす。
「山本、お前の誕生日プレゼントはあれだけでよかったのか?」
腕枕をした状態で髪の毛を梳きながらそう問うと、まだ息を整えている状態の山本が顔を上げて微笑んだ。
「あぁ、もちろん!っていうか靴だって値段高かったのに。ありがとな、小僧」
「さっきも言ったが・・・。俺はいくらでも好きなものを選べと言ったのに、何でそれがスポーツ店の靴だけなんだ」
「だって、オレはブランド物とか分かんねぇし、服とかアクセサリーとか興味ねぇんだもん。靴だけで十分だって!」
「・・・ったく、お前らしいな。まあ今はそれでいい。必要になったら俺が服でも何でも教えてやる」
本当は山本が拒んでも無理やり自分が着せたいブランドの服を買って渡してやろうと思っていたのだ。
ただ、プレゼントするといった時の山本の顔は、今まで見たことがないほど悲愴な面持ちで『やめてくれ』と伝えていた。
そんな顔をさせたかったわけではないので、山本がいつも行くという並盛スポーツ店で好きな靴を選ばせた。
それだって1万にも満たないものだったが、山本は嬉しそうな顔をしながらも少し申し訳なさそうな顔をしていた。
こいつはやはり中学生なのだと、改めて思う。
きっと小遣いが月に3千円だという山本にはそれ以上の金額は高いものなのだろう。
それに引き替え、リボーンは赤ん坊の姿だがこれまで稼いだ資産は働かずに遊んで暮らせるほど残っているし。
今でもボンゴレによって支払われている給与によって、金に不自由することはない。
だからこそ、何人もいる愛人たちに生活面で不自由しないだけの金を支給してやれるというものだ。
そんな話をしても人に遠慮し、甘えることに慣れない山本は豪遊することなどないだろうと思う。
それがまた今までの愛人とは違う。
(比べることすら間違っているな)
今まで出会ったどんな人間よりも、こうして腕の中にいる少年は特別な存在だ。
「はは、十分甘やかしてもらってると思うぜ?」
山本はそう言うと服を着ていないリボーンの胸板に頬を擦り寄せてきた。
子犬のようなその仕草が可愛くて、山本の好きなようにさせる。
「なんかこうやって小僧の腕の中にいると、安心するし気持ちいい」
安心しきった顔で身を任せる姿は無防備だ。
思わずまた熱が下半身に集まりかけたが、そこは理性で何とか抑えた。
「俺は足りねぇ。もっともっと甘えて、俺の傍にいろよ、山本」
「小僧は・・・可愛いのな」
ニコリと笑ってゆっくり眠りに落ちていく姿を見つめる。
山本と付き合う中で、何でも欲深く求めてしまう。
そんな余裕のない姿を山本は本当の子供のようだと言った。
まさにその通りだと自嘲する。
山本のことになると、まるで余裕がない自分。
いつこの関係が終わってしまうのか、小さく恐怖していることを山本は知らないだろう。
やっともうすぐ15歳になろうとしている少年。
未来に溢れた彼と、呪われた身の自分とでは何もかも違いすぎる。
手放さなくてはならない。
手放したくない。
そんな葛藤を繰り返しながら、決断を下さなければならないその日まで。
もう少し、もう少し、このまま。
まるで祈りを捧げるように腕の中で眠る少年の口元に小さくキスを送る。
それに満足し、リボーンもその体を抱きしめてそっと眠りについた。
2へ
2008/11/26
改2009/09/12
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