「「「「「山本、お誕生日おめでとう!」」」」」

 

 

共に歌おう、愛の歌 2

 

 


4月24日、山本武の15回目の誕生日。
何日も前から綱吉達によって企画され、野球部の練習が終わった後で沢田家において誕生日会が催された。
京子やハル、ランボにイーピンといったいつものメンバーだけでなくイタリアからディーノやフウ太も参加して。
それは賑やかで、主役である山本は綱吉や獄寺といつも通り騒ぎ、楽しそうに笑っていた。
リボーンはディーノやビアンキと少し離れたところから、それを静かに眺めていた。
そんな誕生日会も中学生を夜遅くに歩かせるわけにはいかないということで、21時を過ぎる頃にはお開きとなった。

本日は主役ということで皆に囲まれていた山本。
リボーンはゆっくりと話をする機会が持てなかったので、今夜は山本の家に泊まると宣言すると周囲が驚いてそれを渋った。
2人が付き合っていることなど、もちろん知らないのだから当たり前の反応だが。
それだけで自分の機嫌が更に急降下する。
ただ、山本だけは驚きながらも嬉しそうに微笑んでおり、その表情を見ただけでリボーンは嬉しくなった。


「ちょっとリボーン。山本は部活もあって疲れてるのに、少しは遠慮しろよ」

 
綱吉がそんな自分たちの様子に気づくことなく、困ったように叱る。
それに舌打ちをして愛銃を突き付けてやろうとしたのだが、その前に山本が話しかけた。
 

「はは、オレは別に構わねぇぜ。どうせ家帰って寝るだけだし、小僧と一緒なら楽しいのな」

「えっ、そう?・・・ったく、山本はコイツに甘すぎるよ」


そんなことを言う綱吉も、山本に対して反論できないので十分彼に甘いと思うが。


「うるせぇぞ、ダメツナ。山本がいいって言ってんだから黙ってろ」

「痛たたたたっ!折れる、腕、折れるって!」


その態度が気に食わなくて、綱吉の右腕をひと思いに捻り上げた。
獄寺や山本が驚いたように止めるので、ある程度のところで放してやった。
 

「もぅ、お前は本当に乱暴だな。行ってもいいけど、山本に迷惑掛けるなよ」


綱吉は反対しても無駄だと思ったのか、溜め息を零してから見送りに出てきた。
リボーンはそれに満足すると、山本の肩に乗り2人で彼の家に帰ることになった。

 




山本の家に到着すると、寿司屋はまだ営業中だったので軽く挨拶だけを済ませる。
その後、リボーンは山本とふざけ合いながらお風呂に入ると早々に山本の布団の上に落ち着いた。


「ふぅ、いい湯だったぞ」

「よかった!小僧の髪は柔らかくて気持ちいいのな。また、洗わせてくれよ」

「あぁ、よろしく頼む。今度は俺もお前を洗ってやるからな」


そう言うと風呂上がりで肌を火照らせた山本が嬉しそうに笑った。
今のリボーンではどんなに頑張っても山本の髪には手が届かない。
今度大人の姿の時に、一緒に風呂に入ろうと心に決めた。
とりあえず今日は小さな体のせいか欲情することはなかったので、脳裏に山本の裸体を刻み込んだのみだった。
そう考え、リボーンは満足げに山本の隣に座っていた。


「そう言えば、冷蔵庫に入っていたケーキはすごいな」

「あぁ、この日は親父がケーキ屋で一番でかいケーキを買ってくるんだ。今朝も食べたけどまだ半分残ってるから明日一緒に食べようぜ」

 
本当に親バカなのな、と笑う山本は一見とても無邪気に見える。
だが、幼い頃から父親が働いている間、たった1人で誕生日を過ごしていたらしい。
寂しいとも言わず耐えることに慣れてしまった少年は、なぜこんなにも綺麗に笑っていられるのだろうか。
山本が今まで育んだその強さの根底に何があるのか、リボーンは推し量ることしかできない。

 


「今日は、楽しかったか?」

「おう!学校でもツナの家でも皆に祝ってもらえて、小僧にだってプレゼント貰ったり今夜も来てもらったりして・・・嬉しいのな」

 

言葉にすると恥ずかしいな、と顔を赤くする姿にリボーンは山本の右手を持ち上げてその指先にキスを送る。
それだけで山本は体をビクつかせ、恥ずかしそうに微笑んだ。

 
「なぁ、山本。誕生日はまだ数時間残ってるぞ」

「ん?うん、まぁ、そうだな」

「今から俺にできることはないか?2つ目のプレゼントとして何でも叶えてやる」


ひょいっと山本の肩の上に座って、そう言った。


「えっ!?・・・何でもいいのか?」

「おう、何かあるか?何でもいいぞ?」


普段から自分の望みを口にする性質ではない山本。
この機会に何か我が儘の一つでも言ってくれればいい、とリボーンは山本の言葉を待った。

 


「んーと、えっと、なぁ、小僧。1つだけ、我が儘言わせてもらってもいいか?」

「おぅ、もちろんだぞ」

「あの、オレは小僧の・・・その、恋人、なんだよな?」

「オメェは今まで自覚していなかったのか?当たり前だ、お前は俺のモノなんだぞ」

 
思いもしなかった言葉にリボーンは滅多に見せないほど呆れた表情を出してしまった。
だが、すっかり山本と恋人でいた自分にはあまりにも衝撃的な言葉だったから仕方ないだろう。



「はは、自覚はあったぜ?でも、えっと、小僧にはビアンキ姉さんみたいな愛人の人達が一杯いるんだろ?」

「あぁ、俺はマフィアだからな。山本はそれを気にしていたのか?」


長い時間を生きてきたリボーンにとって、愛人たちの存在は当たり前すぎて違和感が無い。
しかし、普通の日本人であるこの少年にとっては異質かもしれない。
 

「いや、小僧はカッコいいから納得だぜ?」

 
相変わらず笑みを湛えたままそう言う山本から、その本心はリボーンですら読めない。
山本がいれば愛人とよぶ彼女たちと縁を切ってもいいと言いたかったのだが。
そんなことをすればこの優しく穏やかな少年には重い枷になるのではないか。
もしかしたらありうる、という危惧が生まれてリボーンは口を閉ざした。

 
「女の人たちに小僧がモテるのはいいんだけど、その・・・」

 
恥ずかしそうにしつつも、眉間に皺を寄せている姿に首を傾げた。

 
「えっと、小僧がよければ、男の愛人は俺だけにしてもらえねぇ、かなっ?」

 
意を決したように瞼をギュッと閉じて、発せられた山本の言葉。
リボーンはそれを理解すると同時に、思わず頭を抱え込んだ。

 

「あれ?小僧?」

「お前、ずっとそんな事を考えていたのか?」


唯一の我が儘が、それなのか?と思うと、眩暈がするほど胸が痛くなった。 

 

「お前だけに決まってるだろ。俺はもうお前以外に興味はない。お前しかいらない。お前じゃないとダメだ」

 
何度言ったって言い足りない。何度言っても伝えきれない。
そんな恋情を与えたのは山本武、お前なのだ。
どうすればこの想いが伝わるのだろう?

そんな気持ちを全部込め、お互いの頬と頬が触れ合うように抱きついた。

 

 

「・・・はは、小僧はすげぇ熱烈だなぁ。ありがと、嬉しいぜ」

 
しがみつくしかできないこの赤ん坊の体を、山本が両腕でギュっと抱きしめてくれる。

 
「オレ、これからずっと傍でその言葉が本当か確かめていくから」

 
穏やかで、甘い、山本の声にリボーンは心が震えた。

 
「ずっと、なんて簡単に言っていいのか?」



無理やり山本を手に入れた自分。

呪われた体。未来溢れる、キラキラした少年。自分の宝物。

 

色々な言葉が頭を巡る。


 

「ははは、『俺のモノだ』ってよく小僧が言ってるだろ?傲慢に聞こえるようで、まるで祈るみたいに。オレだって、そう言いたくなるくらい・・・小僧が好きだ」

 
相手の言葉で、こんなにも胸が痛くなったのは初めてだった。
本当に彼はいつも予想外に、自分の欲しい言葉をくれる。
こんな自分を受け止めてくれる。
手放す覚悟に恐怖する心を読んだかのように。
やはり、放せない。山本が欲しい。

 

「あぁ、今すぐ元の体に戻りてぇ。戻って、グチャグチャのドロドロになるまでお前を抱きてぇ」

 

唯一出てきた言葉はこんな言葉で。
それを聞いた山本は茹で上がったタコのように全身を赤く染めた。

 
この幸福を、どうやって伝えようか。

 
Buon Compleanno. (お誕生日おめでとう)

Grazie per incontrarLa. (出会ってくれてありがとう)

Ci lo sara insieme da ora in poi molto. (これからもずっと一緒に)

 


まるで歌を歌うように、真っ赤になって固まったままの山本の耳元で囁いた。
きっとこれからも山本を手放すことに悩み続けるかもしれない。

それでも、今は。


2人でいられることに感謝しよう。

 

「じゃあ寝るか、山本」

「ん、そだな。ありがとな、小僧。今も傍にいてくれて」

「俺がいたいからいるんだぞ」

「うん、オレはすごく幸せなのな」

 
電気を消して布団に入る。
お互いの心音を聞きながら、小さなキスを交わして、2人は眠りについた。

 


Fin

2008/11/26

改 2009/09/12


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