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マフィア、ましてや殺し屋などという稼業だ。
命を狙われるなど日常茶飯事で、そんな相手は問答無用で返り討ちにしてきた。
しかし、今夜の殺し屋はいつもと違い、強く興味を惹かれた。
こんなイタリアの地で刀を武器にした日本人。
戦っている時は精悍な顔で大人びているが、笑った顔は少し幼くて年齢は不詳。
そもそも命がけの勝負でなぜあんな無邪気に笑う?
こちらが拍子抜けするほど気安く、純粋に勝負を楽しんでいた。
(・・・・・おもしれぇ)
リボーンの殺気を受け、怯むことなく向かってきた。
まだ荒さはあるがその実力は予想以上だった。
そんな青年に対して捕食者の笑みを浮かべ、リボーンは愛銃を構えてその引き金を引いた。
スナイパー 2
「リボーンさん!これは一体何事っスか!?」
「よう、獄寺。こんな時間まで仕事か」
リボーンが半壊した執務室から出ると、騒ぎで集まってきた獄寺たちに話しかけられた。
部下たちも銃を構えていつでも引き金を引ける状態になっている。
「・・・・その男は?」
気付けば全員の視線が自分の背中に担がれた男に集まっていた。
「こいつは俺の弟子希望者だ。今夜は最終試験を俺の部屋でしたんだが、思わず本気になっちまった」
迷惑掛けたな、お前ら、とその労をねぎらうように片手を上げる。
「っな、そんな訳ないでしょう!いくらリボーンさんでもそんな無茶苦茶するわけなッッ」
部屋の悲惨さを見ながら、怒鳴り続ける獄寺の口に銃口を差し込んで黙らせた。
「ツナには明日、俺が説明する。お前たちはこれから本部内の警護強化と、俺の部屋の修繕だ。任せたぞ、獄寺」
見守っているだけだった一同を睨みつけ、獄寺に向かってそう言うと彼は諦めたように首を縦に振った。
それを見届け、自宅に戻るために駐車場に向かう。
背後から獄寺のものであろう大きなため息が聞こえてきたが、リボーンはそれを無視して歩き続けた。
「・・・ん?・・・ぁれ?」
リボーンが自宅に戻って食事や入浴を済ませると、山本がようやく目を覚ました。
彼を担いで本部を出てから約3時間が経過していた。
「ようやく起きたか。気分はどうだ?」
相手に合わせて日本語で話しかけた。
様々な言語を使い分けることはリボーンにとって造作もないことだった。
「・・・んで、オレ、生きてんだ?」
リボーンの所有するキングサイズのベッドに寝かせた山本は不思議そうにリボーンを見上げている。
先ほど対峙していた時とは違う、少年のような無防備な瞳だった。
それを見てリボーンの心が躍る。彼を生かして正解だったと、己の直感を褒めた。
「銃口の背でお前の脇腹を殴っただけだからな。しばらくは内出血しているだろうが、許せ」
「・・・・オレ、死ななかったのか」
「なんだ、死にたかったのか?」
「んー?ハハ、そんなことねぇよ。生きててラッキーってとこだな」
会話をして本格的に意識がハッキリしてきたのか、山本はそう言って笑った。
そんな表情さえ逃さぬようにリボーンはじっと顔を見つめる。
「そうか、俺も死にたがる奴には興味ねぇ。それにお前に死んでもらっては困る」
自分の恰好、ちゃんとよく見てみな?と言うと。
山本はゆっくりと自分に視線を落とし、目を見開いた。
「えっ!?な、なんでオレ裸なんだ?っていうか、手錠・・・?」
驚くのは無理もないだろう。ここが牢獄ならまだしも、ただの寝室だ。
リボーンは気にせず意識を失った山本の衣服を脱がし、山本の両手に手錠をかけてベッドサイドに固定した。
猿轡は趣味じゃないので付けなかった。
いまだに状況を掴んでいない男に対し、リボーンは無表情を崩してほくそ笑んだ。
「拷問は初めてか?お前には俺を狙った依頼者の名前を吐いてもらう」
そう言って山本に近づき、顎を掴んで無理やり視線を合わすと、その瞳から一切の感情が読み取れなくなっていた。
あぁ、コイツもプロなのだとリボーンは思う。
「一応プロの自覚はあるみたいだな。面白れぇ」
「オレはどんなに暴行受けても喋らねぇ。アンタの労力の無駄だぜ?今からでも殺せよ」
潔い言葉。きっと本当にそう思っているのだろう。
殺される状況にあるというのに山本は何も変わらない。恐怖にとり乱し、命乞いをすることもない。
自分好みすぎて、リボーンは己の欲望を抑えきれないというようにゴクリと喉を鳴らした。
「アンタじゃねぇ。さっき言っただろう?お前を飼う男の名前だってな」
そう言ってベッドに拘束された山本に覆い被さり、その形の良い唇に己の唇を重ねた。
「・・・!?・・・・ん・・んぅ!!」
ビクリと体が跳ね、目を見開いて驚いている様子が手に取るように分かる。
無理やり歯をこじ開けて隠れた舌を探し、思う存分嬲り楽しんだ。
「・・・っ・・ぁ・・・んっ!」
キスをしながら何も身につけていない山本の首筋に右手を這わせ、唇を耳朶へと移動させる。
「・・・ヤ!・・・止めろ!!」
身を捩って逃げようとする山本の体を固定し、耳や首筋に唇を落とす。
右手は我慢できないというように胸や臍のあたりを撫で回し、その肌が総毛だっていることに気づいた。
「男に抱かれるなんて考えたこともない、って顔だな。感じるか?」
「・・・っ!・・・この、変態ヤロっ・・!」
視線を顔に戻すと、眉間にしわを寄せて涙をこらえた表情に目を奪われる。
上気した頬、噛み締めようとしながらも吐息を洩らす唇。
聞こえる声は平時よりやや甲高く、それに戸惑った姿すべてに欲情した。
何人も愛人を囲い、こういった行為に不自由しない自分がこんなにも興奮している。
少し身体をずらして無防備な胸の突起に吸いつくと面白いように声が漏れた。
それに気を良くし、脇腹から足の付け根に手を滑らせると山本の下半身はすでに大きく変化していた。
「こんな無理やりされて、感じてるじゃねぇか。こっちの才能もあるみたいだな」
山本の体が跳ねるたびに嵌めた手錠がガチャガチャと鳴り、それがさらに山本の感覚を煽っている。
両乳首を満遍なく舐め回し、反応を示す山本自身を扱きあげると「ひぁッ」という声と共に体が跳ねあがった。
「や・・やめ・・っろ!・・嫌だ・・やッッ」
リボーンの言葉を否定するよう首を横に振っても、体は嘘をつけない。
全身をピンクに染め、リボーンが吸いついた個所は痕となって華を咲かしていた。
確かに感じ、快楽に溺れかけている山本の姿にリボーンはニヤリと笑う。
「簡単にイケると思うなよ?まだ始まったばかりだからな。いつまでもつか楽しみだ」
リボーンの声が届いたのか、山本は少し身体を起こしてリボーンを見てきた。
驚愕によって見開かれた瞳を見つめながら微笑むと。
戸惑いなくリボーンは勃ち上がった山本自身を口に含んだ。
「っ・・んぁ、も、う、嫌だ・・・っ!」
零れる自分の声を抑えようと山本が唇を噛みしめた。
それでも襲う快感に声は止めどなく溢れて、リボーンの耳を楽しませる。
「ん?これは嫌か?・・・・じゃあコッチに集中してもらうか」
リボーンは少し身体を起こし、スーツの内ポケットから予め用意しておいたローションのボトルを取り出した。
急に止んだ愛撫に呼吸を整えるのが精いっぱいという様子の山本。
彼の両膝を曲げ、閉じないように自分の体を滑り込ませるとローションをつけた指で奥の秘部に触った。
「・・・ッ!?な、ぁ、なんだよ・・っ!」
「男同士はどこに入れるかくらい知ってるだろ?お前は素直に感じていればいいんだ」
「ん、やぁ!も、やめて、くれ・・・ぐっ・・」
涙目だった瞳から完全に雫が流れ、今まで感じたことのない違和感に必死で耐えているようだった。
「気持ち、悪ぃ・・・嫌・・・だ・・」
「そのうち良くなる。ヨガって欲しがるほど仕込んでやるから安心しろ」
酷いことを言っている自覚はあるが、すでに意識を手放しかけているような様子に思わず苦笑した。
それでもローションの力を借りて指2本を埋めて動かすと、ある一点のしこりに触った。
「んあぁぁぁ!?ん、何・・・!?」
「ふん、イイ声じゃねぇか。見つけたぞ」
前立腺を責め立てると太腿の内側が小さく痙攣し、放っておかれた山本自身が更に大きくなった。
「あっ・・・や、めろ・・ぉ・・・っ」
一度も達していない体。
前立腺という慣れない性感帯を責められ、吐き出したくても吐き出せない様子が分かる。
だが、ここでイカせてしまっては本来の目的を達成することができない。
山本には快楽の中で暗殺の依頼者の正体をバラしてもらわなければならないのだから。
1晩でも、1日中でも、何度だって抱いてやる。
拷問という名で拘束しているが、リボーンは山本自身に興味を持った。
こうして快感に溺れる姿を見て、さらに手放したくないと思った。
この男が欲しい。
誰にも興味を持たなかったリボーンの、初めての欲求。
山本の体を組み敷いて、無理やり快楽を教え込んで。
もう自分から離れられないようにしたい。
(あぁ、明日からが楽しみだ)
何も変わらないと思っていた。
戦場や殺しの場面でしか生を実感できない。平穏など望まない。
死にたい訳ではないが、いつ死んでも構わない。
だからこそ、明日という未来を楽しみにすることなど一度もなかった。
何かに心を奪われ、執着するなど決してなかったというのに。
山本武のことを何も知らなくとも、ここまで固執し始めた自分自身に笑みが零れる。
リボーンは決して放さないという誓いのように、喘ぎを止めない山本の唇にそっとキスした。
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2008/12/04
改 2009/09/12
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