野球を辞めて剣の道に進むと決めた山本は、まずイタリアに向かった。
それは自分の師である父親が二代目剣豪と呼ばれる男がいると教えてくれたからだ。
まず、その男と戦ってみたいと思った。今の自分の実力を知りたい。
しかしいくら山本が時雨蒼燕流の後継者だといっても、まだ無名の剣術家という事は変わらない。
二代目剣豪はイタリアに本部を置くマフィアに所属しているらしく、山本には彼と接触する方法が思い浮かばなかった。
どこかのファミリーに所属することも考えたが、イタリア語はまだ片言しか話せず。
こんな異国の地で信頼する人物など見極められない。
単純な山本は手っ取り早く名前を売るため、殺し屋になった。

賭けるものは自分の命。高みを目指して、最強の剣を極めると誓った。
そのためならば何でもやってやる。

 

しかし、山本はボンゴレ最強と謳われる男と対峙した。
それは不思議な感覚であった。
彼の射撃の腕、冷静な態度、余裕すら感じさせる声。何度も死線を越え、自信を持っている証。
直感で山本は経験の差で敵わないと思った。だが、実力の差で負けるつもりはない。
己の剣を信じているからこそ、山本は歓喜でゾクゾクと体が震えた。

そして、目の前にいた男から発せられる殺気が何故か心地よかった。

 
まさか、この後あんな強姦を受けるとも思わずに。

 

 山本は深い闇に飲み込まれてしまったのだった。

 

 

 
スナイパー 3




 

「あぁ・・・やぁ・・・ふっ・・・ぁあ!」

 

もう制御ができなくなった口から零れる嬌声。
自分のものだなんて信じられない。どこか他人事のような気がする。
だが、体を貫く快感が夢でないと告げる。これが現実だと、刻み込まれる。

 

「あっ・・もぅ・・あっ・・やっ・・だ・・っ」


「イイ声で啼くようになったじゃねぇか」
 

すでに唾液でドロドロになった耳に低い声が流し込まれ、それにすら体が震える。
体が熱くてもどかしくて仕方がない。
それでも、まだ一度も達することを許されず、イキかけては塞き止められる。
目は涙を流しすぎて視界がぼやけたままだ。


「ふっ、大分気持ち良さそうだな。もう3本も指を飲み込んでるぞ」

「ぁっ!・・・あっ・・・はっ」


裸でベッドに沈む自分とは違い、目の前の男は脱ぐことなく着衣したままだ。
汗一つかかず、表情は相変わらず仮面のようだが雰囲気はどこか楽しげな気がする。

 

「もうほとんど意識は無いな。もう少し遊びたかったが、仕方ねぇ」

 
そんな声が聞こえ、今まで下半身に感じていた圧迫感がなくなった。
無意識にそのことに安堵し、山本が快感に震える体から力を抜いた、その時。

 

「うあぁぁぁぁ!!っ、やぁぁぁぁっ!!」



先ほどの指とは比較にならないほど硬く、熱い何かが入ってくる。
それが何であるかは男の山本には分かるが、己の身に起こっていることが信じられない。
だが、いくら慣らされたといっても無理にこじ開けられ、奥を貫かれる感覚はいまだ感じたことがない痛み。
止りかけていた涙が無意識にボロボロと溢れだす。



「おい、山本。しばらく動かれたくなかったら、俺の質問に答えろ」

 
硬く張りつめた自身全てを埋め込み、そこで動きを止めた男の低い声が頭上で響く。
無理に意識を上昇させられて、山本は震える体に鞭を打って男に目線を合わせた。
 


「山本は剣術が好きか?」
 
(この状況で、なんでそんなこと・・・)


自分の標的である男に貫かれ、男自身を銜えこまされているというのに。
訳が分からない。でも、なぜか怒りは沸いてこなかった。

 

「あ・・あ、好き、だ・・・」

 
山本がなんとか声を絞って返事をすると、少し嬉しそうに目が細められた。

 

「お前は一匹狼だろう。だが、俺はお前を気に入った。ボンゴレに入れ」

 
先ほどまで何度も質問されていた依頼主の正体。だが、山本は口を割らなかった。
仕事をする上で、依頼主の素性を秘密にするのは暗黙の了解。
ルールを守れない者に仕事は来ない。山本は頑なにそれを守った。

だが、この状況に合わないまさかの勧誘。
傍若無人なそんな姿が目の前の男にはよく似合う。

 

「ははっ、何、言ってんだ・・・ぅ・・・なんでオレが・・・」

 
何か声を出していなければ、飲み込まされた後ろの塊に意識が集中しそうだった。
それが恐ろしくて、気持ち悪くて、言葉を紡ぐ。



「オレはアンタの命を、狙ったんだ、ぞ・・・なのに・・・なんでっ」

 
何をしたいのか、何を考えているのか全く分からない。
そんな気持ちをこめて涙が零れる瞳を向けた。
 


「言っただろう、お前を飼うって。お前が気にいったんだ。俺のモノになれ、山本武」

 
男の自分になぜそんな言葉を向けるのか、その真意は全く分からないけれど。
見てしまった、冷めた瞳の奥に燈った強い炎を。
逃げ切れない、と山本は思った。それと同時になぜか笑みが零れる。

 
こんな面白い男、見た事がない。

 

そう思うと、また身体がゾクゾクと震えた。
快感ではない。山本の魂が、歓喜で震えた。


この男と共にありたい、と山本は初めて自分から他人を求めた。

 


「・・・ほんっと、敵わねぇなー・・・ぁ・・・いいぜ、入れてくれよ、ボンゴレに」

 
完敗だ、という言葉は心の中だけで呟く。

 
「フッ、素直になったじゃねぇか。放さねぇぞ、山本」


可愛いヤツだな、と呟いた唇が山本の唇に落ちてきた。
強引に口をこじ開けられて舌を吸い上げられる。
すべての刺激が快楽に繋がる山本はそれだけで達しそうになった。



「んぁ!!あっ・・・・動・・くなぁぁ!」


「・・・・・くっ、ヤベェな」

 
止まっていた腰が緩やかに動き出し、山本の秘部はぐちゃぐちゃと猥らな音を上げながら弄ばれる。
熱い塊を抜き差しされるたびに内臓が掻き回されるような圧迫感と苦痛が山本を襲った。

 

「山本、お前はもうボンゴレだ。ならば、お前の依頼主の名前を教えろ」

 
教えれば単独で殺し屋の世界には戻れないだろう。
それを恐れて先ほどまで頑なに拷問に耐えたのだから。
だが、もう捕まってしまった。

最強のヒットマンに魂を委ねてしまったから。

 

(・・・・あぁ、そういや、コイツの渾名って)

 
その姿を見た者を皆、死へと誘う『死神』。

 
ぴったりだ、と山本は笑う。
もう体も、魂も、今、明け渡してしまった。

 
引っ切り無しに後ろを衝かれる。
反射で上がる声は抑えられず、呼吸すらままならない。
それでも山本はなんとか依頼主について知っていることを話した。
それを聞いて、ニヤリと唇を上げた男の顔は妙に色気があり、不覚にも少し見惚れてしまった。

 

「・・・ヒッ!ひゃ・・・やぁ・・・!」


ある一点を衝かれた時、体に電気が走ったような快感。
それまで痛みに萎えていた自分自身が元気を取り戻し、ぴくぴくと動いているのが分かる。


「お前のイイ所はもう分かってるからな。素直になれば、もっと気持ち良くなれるぞ」


刷り込まれるように身体が快感に溺れていく。
低い声も、視線も、肌の温度もすべて気持ちいい。
自分を抱く男の腕が気持ちいいなんて信じられない。

求められることが・・・・なぜか、心に沁みていく。

 

それから好き勝手に責められる間、山本は質問に答え続けた。
山本の年齢から、時雨蒼燕流のこと、二代目剣豪と勝負したいことなど。
それは何時間、何十時間かと錯覚するほど長い時間に思えた。

一度も達していない体は限界を越え、意識も朦朧とする。

 
「あぁ・・・すげ・・・いぃ・・気持ち・・・ぃぃ!!」
 

熱がこもって仕方無い。
イキたくて、イキたくて、何も考えられない。

 
山本は後ろも前も擦られて、未だかつて感じた事がない快感が恐ろしい。
だが、腕は手錠に繋がれたままなので手を伸ばして、自分から男に触ることができない。
それが無性に淋しかった。

 

「・・・・・リ、ボーン!」

 

初めて声に出して名前を呼んだ。
声に出すと少し安心するからまた不思議だ。

 
すると、リボーンと呼ばれた男の動きがピタッと止まった。

 

「・・ふっ??んぁ・・・っ・・何・・・だよ?」

 
疑問に思ってリボーンの顔を見ると、ほぼ無表情だった仮面が剥がれ、目が見開かれていた。
とても驚いている様子に、どうしたのかと首を傾げる。

 

「お前、天然か?」

「は?・・・何が・・・?」


何を驚かれているのか分からなくて、そのまま返すと何故か大きな溜息が降ってきた。




「ハッ、この俺がこんな子供にやられるなんてな」


どうやら自分の事らしい。先ほど24歳だと告げたはずなのだが子供呼ばわりだ。
山本はよく分からないまま、状況を見守るしかない。


「・・・・ぅや!ちょっ、急にっ、動く、なぁぁ!!」

「・・・チッ、そろそろイカせてやる」
 
俺も限界だ、と呟くとリボーンは山本の前立腺だけを抉り、張りつめたモノを扱きだした。




「ぁああ!もっ、出るっ、出っ・・・ィっっっ!!
 
これ以上ない、というほど声が自然に出た。
腰の動きを速くしたリボーンに山本は絶頂を迎え、それに続くようにリボーンも山本の中で達した。

 


「はぁ・・はぁ・・あぁ・・あぁ・・」 


何度も我慢させられたせいか、山本の絶頂は長く、全て出し切った後も呼吸が整わない。
その間、リボーンは覆いかぶさったまま頬にキスの雨を降らせていた。
くすぐったくて山本が少し身を捩ると、リボーンが唇に吸いついてくる。
その感触にすらなぜか慣れてしまった。

それが奇妙しい。こんな自分を知らなかった。



「片づけは俺がする。寝ていいぞ、山本」

 
もうすっかり耳に馴染んだ、いや、馴染まされた声。
このテノールが今の山本には心地いい。
指一本動かせない疲労。あちこち熱を孕んだ身体。

もう、何も考えられない。


意識が沈んでいく。
今まで自分がどんな目に遭っていたかも、これからのことも、今はまだ。
ただ、伝いたい言葉があった。

今言わなければ、と傍にいる男のことを思った。

 

「おやすみ、リボー・・ン」



 小さな頃から挨拶にだけは厳しかった父親。
身についた習慣で寝る寸前に呟いて、山本は返事を聞かずに眠りに落ちてしまった。

 

おやすみの挨拶と、自身の名前を言われたことに不意をつかれ。
顔を赤くさせた最強ヒットマンはベッドの上でしばらく動く事が出来なかった。 

ただ、ひょっこり起きたレオンだけが首を傾げてそれを見ているだけだった。

 

 

身体が重い。
それでも意識だけは完全に眠らず、ふわふわと夢現を彷徨う。
何かあったかいもので体が覆われている。ひどく安心する感覚。
小さな頃、おたふく風邪に罹った自分を抱きしめてくれた父の抱擁のように。
力強くて、優しくて、涙が出そうだ。
それは、すでに失ってしまったモノだから。
もう、ひとりで歩き続けると誓ったはずなのに。
忘れたはずなのに、求めてしまう。

すると、今度は自分の頭を撫ぜる感覚が山本を覆う。
髪の毛を梳くその手はひどく優しい。
今まで決して口にしたことがない思いが、この温かな世界に甘えてしまう。

こんなに弱くなりたくないのに。
でも、こんな夢を見てしまっては。
こんな感覚を知ってしまっては、抱えきれなくなってしまう。

どうか、どうか、どうか。



「・・・・独りは、もう、嫌だ」

 
今までずっと気付かないふりをしてきた。

誰にも届くことがなかった、山本の願い。



ふわり。
 

まるでその言葉に呼応するように、何かが唇に降ってきた。

この感触を、山本は知っている。


きっと、目を覚ませば。
 

黒衣の死神が笑みを浮かべて待っているだろう。

 
出会ってしまった。


もう、逃げられない。
 

それが無性に嬉しくて、楽しみで、山本は穏やかな世界から抜け出すべく、瞼をそっと持ち上げた。

 
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2008/12/07

改 2009/09/12


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