曇る表情が気に食わなかった。
身の内に溜めこみ、言葉にできないのは山本の性質ゆえだろう。
彼は心の闇すら笑顔に隠し、誰にも悟らせようとしない。
自分達がこんな関係になって1年だ。
それでもなかなか自分を曝け出してくれない。
子供っぽい笑みと、大人びた笑みを使い分けて、山本は笑う。
器用なくせに自分のことになると不器用で、甘やかすことが好きなくせに甘え下手。
隠さなくてもいい。どんな感情でも受け止めてやるのに。
リボーンがそう思っていることすら、きっとまだ理解していないだろう。


そんな所も全て、愛してやる。
大切にしてもし足りない、宝物。
だから、話してほしい。
彼を不安にし、悩ませているモノの正体について。


リボーンはそんな気持ちを胸に、やって来る満足の夜を待った。






シーソーゲーム 2








「さあ、山本。観念しろ」


その夜、山本はホテルの部屋に入るなり、ベッドに押し倒された。
そうなるんだろうな、と心の隅で思っていたから動揺は少ない。
あの屋上で話をした日からずっと、ずっと悩んでいた。
言ったら、呆れられるのではないか。
見放されたらと思うだけで、こんなにも息ができなくなるのに。



「・・・小僧、頼むから」


自分でコントロールなんかできない。
どうしていいのか分からないのだ。



頭はグチャグチャ。
女々しくなんてなりたくないけれど。




「嫌いにならないで、くれ」




押し倒されたまま、覆い被さる黒衣の青年を見つめた。
無表情な顔が山本を見下ろしている。



「お前を所有しているのは俺だからな。そうなる前に殺してやるぞ」



リボーンらしい言葉。
言っている事は無茶苦茶なのに、それが彼の真摯な声だと知っている。



「話せ、山本」



視線を逸らすことすら許さない、という声音。
もう誤魔化せないと観念した。


「オ、オレの体、変なんだ。小僧とこの前セックスした時、自分の体じゃないみたいになって・・・っ」



思い出すだけでも恥ずかしくて、恐ろしくなる。






『山本、お前も一緒に動いてみろ』


あの夜、いつもよりどんどん深くなる挿入といつもより聞こえる濡れた音。
それと呼応するように動きを速くしたリボーンの下で。
山本は自分の中の異変に気付いていた。



『こぞっ・・も、変・・・っ』

『ん?いい感じに腰動いてるじゃねぇか』

『し、知らねっ・・んぅ・・・ん・・っ』

『もっと自分が気持ち良くなれる場所、分かるな?』

『いっ、嫌っ・・あっ・・・ヤぁ・・!!』



先程からずっとイイ所ばかり突き上げられているというのに。
組み敷かれて両足を広げられ、骨盤を掴んで無理矢理上下に揺すられた。
奥に飲み込んだ男の肉棒がスムーズに出し入れされる。



『んぁ・・・やっ・・やめっ・・・!!』


リズミカルな挿入に合わせて自分の腰が動く。
飲み込んだモノが最奥を衝く感覚に息が止まりそうになった。
どんどん熱くなる身体。
じわりと下から広がって来る快楽の波。
前ではなく、後ろから湧き上がるそれらに飲み込まれて。




『ヒ・・・っ、ダメ・・っ・・オカシく・・・なっ・・・!』



無意識にどんどん腰が動いた。
奥に飲み込んだ男のモノを締め付け、自分が気持ち良くなる位置にくるよう。
山本はただただ快感を追って、男のリズムに合わせて腰を振る。



『・・・っ、食い千切られそうだ』

『こぞっ・・あ・・ヤメ・・もっ・・やぁぁぁあ!!』



女のように甲高い声。
それが自分のものだと理解できないうちに、山本は気を失った。
痙攣が治まらない身体に対し、リボーンが叩き付けるように欲を吐きだした事にも気付かずに。

初めて後ろの秘部だけで達する感覚は、山本に戸惑いと恐怖を植え付けたのだった。








「ア、あんな自分、嫌だ。小僧にっ呆れられち、まう・・っ!」


知りたくなかった。
女でもないくせに、浅ましく快感を貪る自分。その全てを目の前の男に見られるなんて我慢できない。
どんなにいつも優しく受け入れてくれるリボーンでも呆れ、気持ち悪いと見放されるのではないかと。
恋愛経験もなく、性行為すら知識でしかなかった山本は自分の体の変化が何より理解できなかった。



「・・・山本、ずっとそれで悩んでいたのか?」


リボーンの声は相変わらず平淡だ。
いつもの帽子を外して顔を晒しているが、その表情からは何も読めない。
女々しいと、吐き捨てられるだろうか。
こんな気持ちを知られたくなくてずっと逃げていたのに。


「相変わらずバカだな、山本は」


言われた言葉が思いの外、胸に突き刺さった。


「・・・・・オレ、どうせバカなのな」


ゆっくりとリボーンから視線を外して瞼を閉じた。



「フッ、だがバカな子ほど可愛いってのは本当だな」




そんな声が聞こえ、唇が重なる。
いつも強引なくせに、それはひどく優しかった。



「・・・小僧?」

「お前な、俺を見くびるのもいい加減にしろよ」

「・・・何が?」

「そんな事で嫌いになるわけないだろう」

「・・・・・っ」

「むしろ気持ち良くなるのは当たり前だぞ。お前を抱いてるのは、俺なんだからな」


ゆっくりと紡がれる言葉に、山本は目を見開いた。
すると、いつも冷静であまり感情を表に出さない彼の、幾分不機嫌な顔が見えた。


「オレ、普通なのか?」

「ああ、まだ足りねぇくらいだ。俺といればもっと気持ち良くなれるぞ」


ニヤリと表情を一変させ、自信満々な姿は彼らしい。


「ん、けど、これ以上なんて・・・ちょっと怖いのな」

「焦らなくてもゆっくりでいい。俺に任せておけ」


それは修行の時に言われていたのと、全く同じ言葉。
無条件で山本は落ち着く。
誰よりも目の前の男を信頼しているから。



「・・・はは、りょーかい。小僧なら、いいよ」


何でも受け止めてくれる彼が愛しい。



「納得したところで、そろそろいいか?」

「なっ・・・・ぁっ!?」



グッと腰に押しつけられた熱い塊。
それは確かに熱を発してその存在を主張していた。
慣らされてしまった快感を思い出し、山本は息を詰める。


「な、なんで?」

「そりゃあ、誰かさんのせいで久しぶりだしな。この体勢で我慢できるわけねぇだろ」


真っ直ぐ告げられた声に顔が赤くなった。
彼はいつもストレートな物言いをするから。
山本の心臓はいくつあっても持たない。

どれだけ追いかけても、隣に並べる気がしない。
いつも余裕をなくし、翻弄される。
そんな彼に敵う気はしないけれど、彼は決して遠くに行かず待っていてくれる。
山本が必死に隠している事でも、その変化をリボーンは見逃さない。


逃れられない。

だからこそ。


山本はずっとこの死神の手を離さないと誓う。

服を脱がしながら、器用に愛撫を重ねる男を見つめて。

山本はこれからやってくる激情を思い、小さく笑みを浮かべたのだった。





Fin.

2009/01/12

改 2009/09/12


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