過去CLAP@






山本武は走っていた。

3日ぶりに戻ってきたボンゴレ本部。豪奢な造りの屋敷は広い。
最上階はボスである綱吉の執務室を筆頭に、守護者や幹部らも各自部屋を与えられている。
長い廊下を駆けぬけ、目当ての部屋にくるとノックもなしに扉を開けた。



「リボーン!!」

「そんなに慌ててどうかしたのか?」


今日も漆黒のスーツに身を包み、リボーンは豪奢な机で書類と向き合っていた。
いきなりやって来た非礼を咎めるでもなく、山本の様子に首を傾げている。




「へへ、ただいま。これ今回の土産!」


息を乱した様子もなく、山本は得意げな笑みを浮かべた。
早く見せたくて仕方がないというように、うきうきとリボーンの側による。


「おかえり。ん?そ、それは・・・」

「そう、幻の銘酒富士の雪水!!」



山本が手に持っていたのは滅多に市場に出ない日本酒。
普通の店ではお目にかかれない上に、入手困難な代物。
年間数本しか製造されないという一級品。
その味は飲んだ事があるという山本の父・剛が大絶賛していた。
話を聞いてから飲みたいといった山本と二人、何とか手に入れようとしたのだが。
予約や製造数に阻まれて一向に飲める予定がなかった。
残念だと落ち込む山本の姿にリボーンはあらゆるコネと金を駆使しようとした。
それでも手に入らなかった・・・まさに幻の日本酒だ。


「すげぇな。どうやって手に入れたんだ?」

「へへ、ヒバリの知り合いの人が持ってるっていうから譲ってもらったんだ」



満面の笑みでいう山本。
嬉しそうなその笑顔は眩しいが、できれば自分が手に入れて山本を喜ばせたかったと思う。


「雲雀か、あいつの影響力はいまだ健在だな」


山本が気付いているかは分からないが、こんな銘酒を人に譲れるなどすごい大物だ。
日本の財閥や政界に顔が利く雲雀はさすがといえる。
だが、雲雀に感謝しているだろう山本のことを思うと面白くなかった。



「ほんっとヒバリはすげぇよな。今夜はこれで乾杯しようぜ」


仕事の疲れを見せずそう言う山本が可愛くて。
雲雀への嫉妬を顔に出さないよう、リボーンは頷いた。


「なぁ、今日は何の日か覚えてるか?」

「ん?今日?・・・何かあったか?」


山本の言葉に首をかしげ、優秀な脳をフル回転させてもリボーンは思いつかない。
誕生日や記念日といったイベントが好きな二人だ。
仕事がなければ祝いをするが、今日は何もなかったように思うのだが。
自分の記憶に落ち度があったのか、リボーンは素直に謝った。



「悪ぃ、特に思い浮かばねぇが何かあったか?」

「・・・ったくー、本当に自分のことは無頓着だよな」


山本は苦笑する。目の前で憮然とする男を見る瞳は優しかった。
今日は山本にとっても特別な日だ。
中学生の頃から、こんな日がくればと願っていた。


「今日は、小僧の呪いが解けて5年目の記念日なのな」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。
意味を理解したリボーンは目を見開き、「そうか」と呟いた。

アルコバレーノの呪いはリボーンにとって後悔ではなく、ただの結果だった。
しかし、化け物である自分を認識するたびに魂が蝕まれた。

それを癒してくれたのが山本だ。
呪いのことを知っても相変わらずの笑顔と態度でリボーンの心を満たしてくれた。
偶然が重なり、呪いの解き方が判明した時、無理に戻らなくてもいいとさえ思った。
だが、山本は違った。

中学生の頃からリボーンの傍にいた山本にとっても、その呪いは特別だった。
化け物だと自嘲するリボーンを何度見ただろう。
小僧は小僧だろと、何度言っても彼の心には届かない。
そんな姿を見たくなくて、呪いの解き方が分かるとすぐにそれを勧めた。
彼の心に少しでも光が射すように。
長年、山本が祈っていた願いが叶った瞬間だった。


「乾杯しような、小僧」

「久しぶりに言われたな」

「オレには小僧もリボーンも同じなんだって」

「・・・・今なら分かるぞ」


山本が何度も言ってくれた言葉の意味を。
彼の愛の深さをリボーンは実感しているから。


「愛してる、山本」

「はは、オレも」


今夜は銘酒を味わいながら、この身体全てで愛を語ろう。


2人は同じ思いを胸に、3日ぶりの口づけを交わしたのだった。


改 2009/09/11

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