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過去CLAPB
夏休みが終わり、新学期を迎えたある日。
部活を終えた山本は一直線にグラウンド脇にある水道へ。
(・・・・あれ?)
蛇口から思い切り水をかぶり、泥と汗を落とす。
心地よい疲労と共に山本は顔をあげた。
そして、その目が捉えたのは黒くて小さな影。
「あっ、やっぱり。ツナの所の小僧じゃん」
視力には自信がある。
間違いないと思うものの、彼がひとりでいるなんて珍しい。
最近はずっと短縮授業で、授業は午前中で終わっている。
すなわち、綱吉も獄寺もすでに帰宅しているはずだ。
こうして残っているということは何か用事があったのだろうか。
「よう、小僧。こんな時間にひとりで何してんだ?」
「うっかり昼寝しちまってな。帰るところだぞ」
「そっか。もう夕方だし送ってやるよ!一緒に帰ろうぜ」
二コリ、と笑うと目の前の小さな赤ん坊が頷いてくれた。
あまり表情は変わらないが、少し嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
顔見知りになって2か月程。
夏休みも商店街やロードワーク中に遭遇しては色々な話をした。
マフィアごっこが好きな赤ん坊。
本格的な設定や言動が面白くて。
命の恩人である綱吉と共に、赤丸急上昇な人物だ。
「おまたせ!じゃあ行こうぜ」
急いで部室に行って着替え、仲間に別れを告げてリボーンと合流した。
彼は素早く移動すると、いつも肩に乗ってくる。
初めは驚いたのだが、懐いてくれる彼が可愛い。
「あっ、オレ汗臭いかも・・」
「いや、気にならねぇぞ。お前はいつもいい匂いだ」
「ん?そっか?なんかテレるのなー」
彼はいつも褒め上手だ。
少し恥ずかしく思いながら、肩に座る小さな頭をそっと撫ぜる。
「あっ、悪ぃ!帽子の形が・・ちょっと曲がっちまったっっ」
力加減を間違って少し凹んだ帽子。
お気に入りだろうに、申し訳ないことをしてしまった。
「いや、少しくらい構わねぇぞ。お前に撫ぜられるのは嫌いじゃないからな」
慌てる自分とは違い、落ち着いた態度。
赤ん坊らしからぬ悠然とした笑みは貫禄があった。
(小僧ってなんかカッコいいよなー)
面白くて、カッコいい彼が時に甘えてくれること。
それがなぜかとても嬉しい。
他人をこんな近くに感じ、傍にいることがこんなにも落ち着くなんて。
綱吉や獄寺、そしてリボーンと過ごす日々は。
山本にとって大きな意味をもって、彼を戦場の渦へと巻き込んでいった。
ただ、仲間と過ごす毎日はキラキラとした輝きに満ちていた。
マフィアごっこと疑わなかった彼らの。
無茶苦茶な日常に巻き込まれるのは、すぐそこの未来の話。
改 2009/09/11
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