過去CLAPC






山本武はまず、その身体能力がずば抜けていた。
もちろん堅気の中学生にしてはというレベルだが。
その性格、才能、気質とどれをとっても周囲を圧倒していた。

初めて彼を見たのは並盛中学校のグラウンド。
こっそり綱吉の学校生活を覗き、ファミリーを探していた。
綱吉は帰宅部だ。何をやってもダメツナなので部活には所属しないらしい。
リボーンはいい人材がいないかと、綱吉が帰宅した後もスカウトのため、放課後の校内を歩きまわっていた。

グラウンドにやって来て目に入ったのは白いユニホームの集団。
イタリア人である自分に馴染みは薄いが、野球は日本で人気があるらしい。
野球部員たちは守備と攻撃に分かれて試合形式の練習をしていた。
リボーンの目に留まったのはネクストサークルからバッターボックスに入った少年。

細いながらすらりとした長身とバランスのとれたボディライン。
真っ直ぐに伸びた背中と手元のバットを構えるその姿。

表情こそ見えないが、集中してボールを待つ様子をリボーンは見つめた。
今まで何百人という人間に会い、時には殺し合いをしてきたからこそ、
リボーンは気づいた。

バッターボックスに立つ少年から感じるのは、闘気の中に潜んだ殺気。
無意識か、狙っているのかは判断できない。
確かなのは少年が勝負を楽しみ、絶対に負けないという確固たる意志の強さ。

それはまるで殺し合いをしている時に感じる純粋な殺意に似ていた。
実践を感じさせるような雰囲気を感じ、リボーンは知らず知らず微笑む。


「面白いヤツがいるじゃねーか」

呟いた声は心なしか弾んでいて、確かに己の殺し屋としての血が騒いでいた。
これは、直感だ。


(あいつ、殺し屋の素質アリだな)

服の上からでも分かる鍛えられた肉体。勝負を楽しむ余裕。その集中力。

どれをとっても堅気の中学生に似合わぬほど、優れていることが分かる。
いい素材だ、とリボーンは目をつけた。

「・・・っしゃー!!」

ファールを数度続けていた彼の打球は一気にフェンスを越えていった。

「うわー、すげぇな」
「山本、またホームランかよ。お前本当に一年生か!?」

周囲の部員たちが各々騒ぎ立てる中、当の本人はガッツポーズをして塁を回る。
どうやらまだルーキーのようだ。
山本、という名前が分かったからには素性を調べるのは容易だとほくそ笑む。
一塁、二塁、と回って三塁に来る山本の顔が初めてはっきりと見えた。


(・・・・なん、だ?)

彼はヘルメットの下で、強気な笑みを浮かべていた。
自信がみなぎる瞳。左右に持ち上げられた唇。血色の良い顔には少年らしさがある。

呪われたアルコバレーノであるリボーン。
その小さな体に流れる血が、ふつふつと沸き立った。
心が躍る、という方が正しいだろうか。

リボーンは確かに興奮した。
山本の笑みに目を奪われた。
その衝撃はかつて感じた事がないもので。

リボーンは彼のボンゴレ入りを勝手に決める。
コイツは使える、と己の直感が訴えていた。

最初に目をつけ、その存在を望んだのはリボーンだ。
それはボンゴレ加入の話であったが、時が過ぎ、それは形を変えた。

綱吉のファミリーとして、守護者として、山本は心強い存在だった。
リボーンが目を付けたとおり、力は元よりその性格もファミリーに欠かせない。
困難な場面でも笑顔を絶やさず、優しく周囲と状況を見守った。
リボーンも然りだ。
そんな山本に、どれだけ癒され、救われたか分からない。





「・・・・山本」
「ん?どーした、小僧」

山本の肩に乗ってリボーンは学校から帰途についていた。
自分たちの前を綱吉と獄寺が話をしながら歩いている。
山本はそれを暢気に見ながらもリボーンの声を聞き逃さなかった。

「好きだぞ、山本」

彼にしか聞こえないよう、小さな声で呟く。
山本は少し目を見張って、次には花が咲いたような満面の笑みを浮かべた。

「サンキューな。オレも小僧好きだぜ」

山本の優しい声がリボーンの耳を擽る。
未来から戻って満月の夜に会うようになってから、2人は付き合っている。
リボーンは手に入れた。
欲しいという衝動を止めず、彼を求めた。
世界最強の殺し屋ともあろう者が、初めて会った時から魂を奪われてしまった。

今、小さなこの体を肩に乗せて微笑む山本。
しばらくは離せそうにない、と。

そんな気持ちを込めて、リボーンはその頬にキスを送った。

改 2009/09/11


トップへ
戻る




Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!