過去CLAPE







『・・・山本、』


倦怠感からウトウトしていた意識。
聞こえてきた自分を呼ぶ声に、ゆっくりと瞼を開いた。


「ん?こぞー?」


眠たい、とその声音が告げていた。
甘えたような舌ったらずな喋り方は仕方がない。
久しぶりの行為で激しく抱かれたこの身体。
指先一本、動かすだけでもダルい。
優しく触れてくれる男の手は好きなのに。彼が運んでくる激情はいまだ慣れず。
ただ、普段は冷静な男の顔が快楽に染まるそんな瞬間を見るのが好きだった。



「山本、お前は足の先まで綺麗だな」


声の主はなぜかベッドの後方に居た。
互いに裸。被っていた布団を剥ぎ、リボーンは山本の足の指先を触っている。

さっきまで隣に居たのに。いつの間に移動したのだろう。
猫のように機敏な動きをする男だ。
リボーンの視線は投げ出した己の足先に注がれている。
野球をしていたせいか、爪の手入れをする方なので恥ずかしくはないが。
その場所を無遠慮に見られることには抵抗があった。



「く、すぐってぇよ・・小僧っ・・・」


男にしては白くて長い指。幾人もの命を奪ってきた彼の手。
確かな温もりを持ち、自分に触ってくることに安堵するのは毎度のこと。
器用に動くその指が踵の輪郭を弄り、足の裏へと回った。
むず痒い感覚に背中を震わせる。



「お前が茨の道を歩くというのなら、俺は何度でもこの足を愛でてやろう」



踏みしめて傷つく足裏を。傷を厭わず血を流し続けると決めたなら。
触れて、舐めて、癒してやろう。
いくらでも。

宣言通り、リボーンはその赤い舌を出して足裏をひと舐めした。
まるで怒られるのを待つ子供のように。
リボーンは確かに怯えていた。



(はは、バカだなぁ)


冷血になり切れない彼の、不器用な優しさ。
まるでこれは懺悔だというように。
普段は弱味など見せようとしない彼の無防備な姿が山本の胸を温かくする。



「お前の傍に居られるなら。お前を独りにしないための傷なら、痛くねぇのな」



ニコリと笑う。これは本心だった。
空には満月。ベッドの片隅には血塗れのスーツ。

山本が、初めて人を殺した日の夜の出来事だった。


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