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「おめェ、脛毛なんて生えてたか?」
ゾロはサンジの脛を見ながらそう問う。
「あっ?」
サンジは自分の脛を見る。
「生えてんじゃん」
サンジはゾロの目の前に毛の生えた脛を見せ、嬉しそうに答える。


「前は生えてなかったよな」
「あっ?そうか?」
「生えてなかった」
「・・・んー」


「何でいきなり生えたんだ?」
目の前にあるサンジの脛毛を触わり引っ張る。
そして、サンジの顔を見る。

サンジは痛ェから引っ張るなと言うわりに、ゾロの目の前から足を退けることはなかった。
ゾロはサンジの顔を見ながら彼の脛毛で遊ぶ。

ゾロの視線にサンジは困った顔になる。
しかし、変わらずゾロはサンジの顔を見続ける。
そんなゾロに対しサンジは重い口を開く。


「・・・養毛剤のお陰だ」
ボソッと小声でサンジが言う。


「・・・・・はっ?」
ゾロが聞き返す。


「だから、養毛剤のお陰なんだよ!」
ゾロに聞き返されサンジは少々切れる。
そして、少しだけほんの少しだけ声を大きくして言い直した。


「・・・毛生え薬?何だそりゃ」
「養毛剤は養毛剤だ。それ以外の何物でもねェ。それとも、てめェは養毛剤を知らんのか?」
「や、毛生え薬は知っている。何で脛毛と毛生え薬がカンケーあんだよ?」
「だから、養毛剤だって・・・」
「どっちでも同じだろ?養毛剤だろうと毛生え薬だろうと」
「毛生え薬だと何かオレが禿げてるみてェじゃん。緑禿げのてめェと一緒にすんな」
サンジはプンプンと口を膨らませる。
「オレは禿げてねェ!!!」
「や、禿げてるだろ」
サンジはニカッと笑い、ゾロの髪に触る。
「・・・おい、話が逸れてねェか」
「ちっ、気付いたか。マリモの分際で・・・」


不毛な会話をする二人であった。


ゾロは溜息を付き、改めてサンジに問い直した。
「その、毛生え薬とてめェの脛毛と一体どういう関係があるんだ?」

「養毛剤だ。養毛剤を使うつったら分かるだろ」
サンジは自分の脛を見つつゾロに言い返す。

「まさか・・・てめェ、脛に毛生え薬使ってんのか?」
「ビンゴ!やっと、分かったか」
「普通、毛生え薬は頭に使うモンだろ」
「養毛剤だ!」
「どっちでも同じだろ」
「だから、オレは禿げじゃねェ」
「・・・また、話が逸れてるぞ」
「・・・あ?」


わははっと誤魔化すようにサンジが笑う。


「・・・で、何でまた毛生え薬なんて使ったんだ?」
「養毛剤!」
「だから、同じだろ!」
「オレは禿げじゃねェ!」
「・・・おい。てめェ、ふざけてんのか?」
「あっ?三回はお約束だろう。ほんと、てめェは面白味のねェ奴だなぁ。クソ禿げ!」
「だから、それはもう良い!質問に答えろ」
「・・・ああっ、分かったよ」
はぁとサンジは仕方がないという顔をし、煙草を銜え火を付け、紫煙を吐く。
そして、渋々と言葉を続ける。

「養毛剤が手に入ったから、使ったまでだ」
「はっ?」
「まぁ、話は最後まで聞け」


「昔々、あるとろこにおじーさんとおばーさんが・・・って、殴るな!」
サンジはゾロに頭を叩かれうずくまる。
「普通に話せ」
「わーたよ。話すよ。たくっ・・・」
サンジはブツブツと文句を垂れる。


「あー、オレさ。体毛、薄いんだよ」
「ああっ、知ってる」
「で、それヤなんだよ」
「・・・そうなのか?」
ゾロは意外だという顔でサンジを見る。

「まぁ、もう流石に諦めたけどな。で、だ。昔はどーしてもそれがヤだったんだよ」
「ふーん、そんなモンか?」
「てめェだって、体毛薄いだろ?男としてヤじゃねェのか?」
「別に・・・」
不思議な生き物を見る目つきでゾロはサンジを見る。
何が嫌なのだろうとゾロは思う。
ゾロにはサンジの心情が全く分からない。

「オレはヤだったんだ」
「そうなのか?」
「そうなんだ」
「で、毛生え薬使ったのか?」
「ああっ。でも、それだけじゃねェんだけどな」


「あっ?まだ、何かあんのか?」
ゾロは少しだけうんざりした表情になる。


「あー、まぁ、いいや。そんな顔されてまで話したくねェし・・・」
「・・・悪かった。続けろ」
「あー、でも、これは結構ハズイんだ。てめェ、馬鹿にしねェか?」
「・・・しねェしねェ。さっさと話せ」
内心はうんざりしているゾロだか、それでも、気にはなるのでサンジに続きを促す。


「あんな、オレは早く大人になりたかったんだ」
「あ?」
「まぁ、今はそうじゃねェんだけど、当時は本気でそう思ってたんだ」
「・・・おい、話が見えねェんだが・・・」
「たくっ・・・だから、てめェは人の話を最後まで聞け!」
「分かったよ。で?」
「ガキだったオレは、早く大人になりたかったんだ。だから、養毛剤を使ったんだ。腕とか胸とか足とか、兎に角、全身に養毛剤を塗りたくったんだ」
「全身?」
ゾロは顔を顰める。
「オレの知っている海の男は皆、毛深かったんだ。だから、オレは大人って奴は皆、毛深いんだって思ったんだ。ガキだったオレは毛深いくなりゃ早く大人になれるって思ったんだ」
そう言い、サンジは少し拗ねた顔になる。
「それで、毛生え薬か」
「ああっ、そうだ。全身使ったんだか、結局、脛しか生えなかった。それも、ずっと続けてねェと意味がねェ。バラティエの頃はずっと塗り続けてたんだか、船に乗ってからはそうはいかねェ。金は食費だけでいっぱいいっぱいだろ?食い物以外は必要最小限の物しか買えねェ。養毛剤なんて贅沢品は買えなかった。だから、脛毛も無かったんだ」
「あっそ」
「・・・おい、呆れてんだろ・・・」
「・・・いや」
呆れた。
心底、ゾロは呆れた。
しかし、子供の頃の話だ。
仕方がないと思う。
しかし・・・


「じゃあ、何で今また脛毛が生えたんだ?」
本来のゾロの疑問に戻る。
何故、それなら何故、現在また脛毛が生えているのか。
養毛剤はないのではなかったか。


「ああっ、これか?やっぱ、男としてはだ。濃い体毛に憧れるじゃねェか」
や、別に憧れねェしとゾロは声に出さずに心で思う。
「サル軍団の奴らに貰ったんだ。あいつらの船には、すげェいっぱい養毛剤があったんだ。貰って良いかって聞いたら良いつーもんだから、いくつか貰ってきたんだ。これで当分オレ様は脛毛が生えてるぞ!」
嬉々とサンジが言い放つ。
ついでに目もキラキラとしている。


ゾロはそんなサンジを馬鹿だと思った。
どうやら脛毛に心底憧れているらしい。
それは子供の頃からで現在も続いている。
サンジの脛毛は彼の並々ならない努力の結晶らしい。
何故、そんなことに情熱を捧げるのか分からない。
分からないからこそサンジなのだろう。


「てめェも脛毛生やすか?それとも髪に塗ってやろうか?」
「や、いいし。遠慮しとく」
はぁとゾロは溜息を付く。


「やっぱ、馬鹿にしてんのか?」
サンジはチラッとゾロを見る。
「・・・んなことねェよ」
ゾロは馬鹿馬鹿しいと思った。
思ったが、それを正直に答えて更に馬鹿馬鹿しい喧嘩をしたくはない。
なので否定しておいた。


「養毛剤が言えねェんなら、育毛剤でどうだ?何なら、発毛剤でもいいぞ」
「・・・毛生え薬で十分だ」
やっぱり、馬鹿だ。
ゾロは思う。


そんな毛のお話。



END



ゾロサンです。
誰が何と言おうとゾロ×サンジです。
設定としてはえっちぃした後、裸のまま話をしている二人。
情事後のピロトーク?
それにしても、色っぽくないっすね。
場所を甲板に移して普通に話をしている設定でも全然OKだわ(汗)

「ワンピ好きさんへの100のお題」058:毛

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