おれは五歳の誕生日のことをよく覚えている。 大人たちが誕生日パーティーを開いてくれた。 バカ騒ぎする大人たちとバカみたいに楽しかったことを今でも覚えている。 それが、五歳の誕生日の思い出だ。 何が欲しい? 「肉」 何が欲しい? 「お金」 何が欲しい? 「本」 何が欲しい? 「発明に没頭出来る静かな環境」 何が欲しい? 「素敵な笑顔かしら」 何が欲しい? 「好きな子からのキスかな」 ガキだったおれは誕生日を祝ってくれたことが純粋に嬉しかった。 今から思えば、おれをダシに大人たちがバカ騒ぎをしたかっただけだろう。 ガキの誕生日に何をしているんだと思わないでもないが、あいつらにかかればそんなことは関係ない。 楽しそうな大人たち。 そして、おれも楽しかった。 何が欲しい? 同じ気持ちを返したかったのだろう。 嬉しくて楽しくて、おれも大人たちの誕生日に何かしたかった。 だから、誕生日パーティーを開いてくれた大人たちにこんな質問をした。 しかし、大人たちの欲しいものは五歳のおれにはどうこう出来る代物ではなかった。 肉や金をおれにどうしろと心の中で突っ込みを入れていた。 そして、ガキのオレにはロビンの欲しい素敵な笑顔というのがよく分からなかった。 「何?あんた、くれるの?それなら、10年後にたっぷりとお金をちょーだい」 おれの言葉にナミがゲラゲラと笑いながら、そんなことを言う。 今思えば、酒が入りほろ酔い気分だったのだろう。 ナミは酒に強いが、酒が入ると陽気な性格がさらに陽気になる。 ゲラゲラと大笑いをしていたのをよく覚えている。 こいつらには、おれが大人になったら欲しいものをくれてやろう。 そして、ロビンの欲しいものは大人になったら分かるのだろうか。 当時のオレはそんなことを思い考えていた。 何が欲しい? 「好きな子からのキスかな」 これはサンジの言葉だ。 その時、おれはサンジの欲しいものならやれると思った。 好きなヤツからのキス。 それが欲しいとサンジは言った。 オレはサンジが好きだ。 サンジのことを好きになったのはいつからだろう。 五歳の誕生日にはサンジが好きだった。 少なくとも四歳で既にサンジが好きだったらしい。 おれのことを愛している可愛いレディからのキスが欲しいとサンジの言葉は続いていたが、おれは聞いてはいなかった。 「・・・って、おい。ゾロ、聞いてんのか?」 好きなヤツからのキス。 サンジが好きなオレならば、彼の欲しいものをやれる。 おれはサンジの誕生日にキスをしようと決めた。 サンジの欲しいものをやることが出来る。 それが、堪らなく嬉しかったことを今でも覚えている。 しかし、後から女からのキスが欲しかったのだとサンジに言われてしまった。 今、腕の中には二十七歳のサンジがいる。 今日は彼の誕生日だ。 おれは初めてサンジとキスをした彼が十六歳の誕生日を思い出していた。 五歳のガキだったおれは誕生日プレゼントと称して彼にキスをしたのだ。 ずっとサンジが好きだった。 彼だけをずっと好きでいた。 もう、ガキのころからずっと。 その彼は今、おれの腕の中にいる。 ガキのころからの想いが形になった。 「誕生日おめでとう」 おれはそっとサンジに呟いた。 |
「Drizzling Rain」時雨さんの2004年3月のサン誕でいただいたイラストです。 実はDLFではないのですが、欲しいと我侭を言って貰っちゃいました。 ありがとうございました。 このお話は、本来、年下攻めが大好きな私のツボを見事に突いたイラストに、妄想大爆発で書いちゃったモノです。 ゾロサンは同じ年がツボなんですが、本来の年下攻め好きな私の血が見事に騒いじゃいました。 イメージ崩しも甚だしいですが・・・(汗) 妄想した結果、こんなモノを書いちゃいました。 最後に、時雨さんにファンにはごめんなさいです。 |