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・・・3・・・







「こいつだけは譲れねぇ」



そう言ったサンジの後ろ姿から、近寄りがたい気迫が感じられる。

真横に真直ぐ伸ばされた腕・・・。

それは手助け無用の拒絶の印。

だが、腕の先、握られた拳の中で、ピンと親指が立っている。

それは、「俺を信用しろ。」そう言ってるようにゾロには見えた。

立ち昇る一筋の煙り・・・それがある限り、まだ大丈夫。

ゾロの目にはそんな風に映り、黙って刀を収めた。



「何だ仲間か?まぁ、何人来ようが俺には関係ねぇけど。

 それにしてもてめぇ、少ししつけぇぞ、いいかげんにしやがれ!」



ガルスのパンチを頬に受け、サンジの身体が床に叩き付けられる。

多少ふらつきはしつつも、すぐさま立ち上がるサンジ。



「てめぇみてぇなクソ野郎に何発殴られたって効かねぇよ。」



「だまれ、何時までそんな減らず口を叩けるか見物だぜ。」



ガルスは腕を伸ばして、サンジの首を左手で締め上げる。

サンジの身体が宙吊りにされ、

容赦のないパンチがサンジの腹目がけて襲い掛かる。



その瞬間、サンジは両手を首を掴んでいたガルスの左手に掛け、

腹を両足で蹴り飛ばす。その反動で、ガルスの頭上目がけて飛び上がった。



「とりあえず、コイツは返してもらうぜ。」



サンジの手にはガルスが掛けていたウソップのゴーグルが握られていた。



「あずかってろ。」



それをゾロに向かって投げてよこす。

それから、振り向きざまガルスの頭にかかと落としを決めた。



「効かねぇって言ってんだろ!」



戦闘能力は確かにサンジの方が上、実際今までにガルスはサンジの蹴りを

数えきれないだけ受けている。

だが・・・それでも、何のダメージも与えられていないのだ。



ガルスはなおも飛んできたサンジの蹴り足をガシっと掴み、

そのまま逆さにサンジを投げつける。



「サンジ!」



頭から叩き付けられたサンジを、さすがにヤバイと感じたのか、

思わずゾロが声をあげる。黙って見てなどいられない。

思わずサンジに走りより、抱え起こそうと手を伸ばすが、

その手が乱暴に跳ね退けられた。



「来んじゃねぇ・・・てめぇの出番はちゃんととっておいてやるからよ、

 今は・・・もうちょっと黙って見てろ!」



ゾロを払い除け立ち上がるサンジ。

その瞳はとても勝負を諦めたようには見えなかった。



「わかった、骨は拾ってやる。」



そう言い残し、もとの位置まで戻るゾロにガルスが声をかける。



「てめぇはやんねぇのか?まぁ、賢明だな。」



「あぁ、てめぇみてぇな野郎は、俺が出る迄もねぇコイツ一人で十分だ。」



「なんだとぉーーー!!!」



ガルスがゾロに向けてパンチを繰り出す。

ゾロは軽く後ろに飛び退き、それを避ける。その時、



「てめぇの相手はこっちだーーーっ!」



右手が伸びきり前傾姿勢になったガルス、

その顔面、右目に向けてサンジのつま先が蹴り出される。



「ぐわ〜〜っ〜!」



右目を押さえてのたうちまわるガルス。



「やたらゴーグルにこだわるから変だと思ってたぜ。

 さすがのてめぇも、目玉まではダイヤ並みとはいかなかったようだな。」



「くっそ〜〜!」



片目を押さえて立ち上がるガルス。



「許さねぇっ」



左手を伸ばして、サンジを捕まえようとするが、

くらったダメージで今までのような余裕はない。

そんなガルスに捕まるようなサンジではなかった。



あざやかにその手をかいくぐり、ガルスの頭を目がけて蹴りを放つ。



「効かねぇって言ってるだろ!」



今までとは違い、痛みに動転しているのかガルスの動きは鈍い。

2発、3発、4発・・・連続して左右からの蹴りがガルスの頭に叩き込まれる。

だが、それでもガルスにダメージを与えているとは思えなかった。

それでも、サンジの蹴りの嵐はおさまる事なく無限に叩き込まれる。







「ぐっ・・・はっ・・・。」







無数の蹴りの中の一発・・・それが決まった時に、

今まで平然としていたガルスがいきなり苦悶の声を上げ、ひっくり返った。









「ふ〜〜〜、やっとくたばったか、思ったよりしんどかったぜ。」





サンジはその場に座り込み、清々しい顔で新しい煙草に火をつけた。











・・・何が起こったんだ・・・?







ガルスが倒れたのを呆然と眺めるゾロ。

釈然としないままサンジの横に腰掛ける。





「おい、ありゃいったいどういう事だ?」



何故、今まで平然としていたガルスがいきなりぶっ倒れたのか?

どれだけサンジが蹴り飛ばそうが、

いっさいダメージを受けていないようにしか見えなかった。

それが何故いきなり・・・ゾロはどうしても聞いてみたかった。





「あぁ・・・別に、外側がいくら固くたって、中身の脳みそって奴は

 豆腐みてぇにやわやわなんだよ、まぁ、蹴り続けてりゃ、

 いずれは振動で・・・粉々ってことだな。」







・・・そういや、こいつの蹴りは脳みそにガーンと響く・・・





ゾロの背筋に冷たい汗が流れる・・・。





・・・こいつ・・・恐ぇ・・・





そんなゾロの考えがサンジにも伝わったのか、笑いを含んだ声でサンジが答えた。





「安心しろ、てめぇの脳みそは筋肉だからな、

 俺が蹴ったくれぇじゃ、到底ぶっ壊れねぇよ。」



満足そうな、サンジの笑顔。

なにやら腹の立つ事を言われたが、まぁ良しとしてやってもいい。

そんな気分にさせる。







「そういや、てめぇ、結局俺の出番なんてなかったじゃねぇか。」



戦闘中のサンジの言葉。ゾロは気を取り直してそう聞いてみた。



「あぁ」



短く返事をして、サンジが後ろから両手をゾロの首に回し、キュっと抱きついた。



「両足ともイっちまった。また、チョッパーに怒られるな。」



「俺はタンカの変わりか・・・。」



「役に立って良かったじゃねぇか。」



ため息をひとつ。そのままサンジを背中におぶう。







ゾロの背中で寝てしまったサンジをおぶって船に戻る帰り道・・・。







・・・多分これなんだろうな・・・



ゾロのハラマキの中のウソップのゴーグル。それがサンジの強さの秘密。



・・・なんでそこまで・・・



そうも思う。だが、まぎれもなくそれがサンジの強さだった。



・・・絶対、諦めねぇんだな・・・



それが、惹かれてやまないこの男の魅力。







・・・こういうのを・・・カッコいいっつうのか?・・・









ウソップから話を聞いたナミが心配して探しに来るまで、

ゾロはサンジを背負ってそんな事を考えながらさまよっていた。







カンウト1000ゲット。
リクエストは「サンジのことをかっこいい、又は、強いと思うゾロ」です。
ありがとうございました♪

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