「おい、見てみろよ。」 明け方の見張り台で、サンジが隣に寝そべるゾロを振り返り、タバコを1本咥える。 ゆっくりと火をつけ、静かに吐き出される白煙の向こうが、ぼんやりと白んでいた。 顎をしゃくり、指し示された方向に視線を巡らせると、凪いだ海の遥か彼方、水平線の向こうから、 小さな太陽がゆっくりと顔を出している。 暗い夜が薄っすらと色づき、そこから海を少しずつ白く染め上げていた。 「綺麗だな。」 かすかな、ゾロの呟き。驚いて振り返るサンジ。 「そんな似合わねぇセリフが聞けると思わなかったぜ。」 かすかな笑いを含んだ声。 「いいから黙って見てろよ。」 ゾロは身体を起こして、サンジの肩を少しだけ抱き寄せた。 「全く、らしくねぇ」 そう言いつつも、引き寄せられた肩に身体を預ける。 ・・・・・・らしくねぇのは俺もいっしょか・・・・・ まわされた腕の優しさも、素直にそれに身を任せるのも、いつもの自分達には似合わない事なのかもしれない。 「映画見てぇだな」 速度を感じさせないくせに、それでも確実に顔を出してくる太陽。一枚の巨大なスクリーンを見ているような感覚。 「あの先のどこかにあるんだな?」 ゾロにもサンジが何を言っているのか、何が言いたいのかはわかっている。 「あぁ」 短くだけ答えられた言葉。だが、それだけで十分だった。 ただぼんやりと眺めているうちに、太陽がすっかりと顔を覗かせて、海に一筋の白い道を描き出していた。 「オールブルーにも、続いてんのかな・・・・・・」 「そうだろ、きっと・・・・・・。でも、この先はあの男にも・・・・・・」 「この道をまっすぐで、いいんだな。」 ゾロにというよりは自分に言い聞かせるような、サンジの言葉。 「俺は前しか見ねぇ。まっすぐに進む。」 前方を見据える、ゾロの迷いのない視線。 ・・・・・・てめぇはそういう奴だよな・・・・・・ 「まっすぐって、てめぇ、まっすぐ進めるのかよ。いつだって、何時の間にかとんでもなく、迷子じゃねぇか。」 ゲラゲラと笑い出すサンジ。 「うるせぇ、てめぇ!何笑ってやがる?」 いつもの二人。こんなままで、変わらないままで、共に歩けるんだろう。 ・・・・・・この海が続く限り、仕方ねぇ、一緒に行くか・・・・・・ この海の果てにあるもの。互いの求める夢は全く違っている。道も何本もあるのだろう・・・。 それでも、海が続いている限り、追いかける道はひとつであってもいいのかもしれない。 目の前に広がる海。太陽が描き出した1本の白い道。その道の先を目指して、進んでいくのも悪くない。 二人で肩を並べて、時にはゆっくり、時には競い合って駆け足で。 「メシの時間じゃねぇか、ほら、行くぞ。」 すっかり昇った太陽。ひとつ年を重ねた新しい一日が始まる。 |
「サン誕」のイラストから書いていただいた小説です。
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