10YEARS AFTER

「──うわっ」
 火村の手紙を一読、否、一見して、私は自分の手紙の内容を思い出した。
 あの時、私は就職を間近に控え、妙に感傷的になっていたのではなかったか?
 お前は作家になれたのか? 的な内容だった筈、とタカをくくって火村に手紙を読ませたのだが、思い出した。ヤバイ! これは全国的にヤバイッ!
「火村、ストップ、スト〜ップ。読むな!」
 慌てて火村の手元から手紙を引ったくる。
「もう遅いよ」
「あっ──」
 顔に血が上ってゆくのが解る。
「随分と熱烈な愛の告白じゃないか。ここまでアリスに思われてたかと思うと、目頭が熱くなるよ」
 ふざけてるような言葉とは裏腹に、火村はそっと私を抱きしめた。
 その腕の中で確信する──
 今の私が又、10年後の自分に手紙を書くとしても……
 きっと最後の一文だけは変わらないのだ──と。
2002.09.06


学生時代の火村がこんな遊びに付き合うかどうか?
書いている自分でも大いに疑問である。
これまた、最後の一行が書きたくて、でっちあげた話。
それぞれに手紙に入っているイラストは、織田ゆうこさんとのリンク記念に頂いたものです。

織田ゆうこさんのサイトへ

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