One day
「なんで座布団なんだよ……」 帰宅すると、俺の部屋にアリスが転がっていた。 もちろん死んでいる訳じゃない、寝ているだけだ。 ただ寝ているだけならいつものことだ。 しかし── 多分、寝ている間に寒くなったのだろう。アリスの腹の上には座布団が乗っている。 「う〜ん」 俺の気配を感じたのだろうか。アリスが寝返りを打ち、ついでに腹の座布団を肩まで引っ張り上げた。 どうでもいいが、そんなことをしたら、今度は腹が冷えるんじゃないか? しかも、辞書を枕に寝ていて痛くねぇのかよ。 それにしても、この構図、面白すぎる。 大学生が座布団をかぶってみたところで、身体の大部分がはみ出すのは当たり前だ。 まあ、実際は頭も隠れちゃいないのだが、何となく、頭隠して尻隠さずの感のある寝姿だ。 後で、うちで風邪をひいたなんて文句を付けられちゃたまったもんではないので、毛布でも掛けてやるかと押入に向かい、ふすまを開けた途端、俺は気が変わった。 押入の中から座布団を3枚取り出し、小脇に抱える。 取りあえず1枚を腹の上に乗せてみる。 所詮座布団。 長さがないので、上に乗せると脇腹部分に隙間ができる。 仕方がないので、1枚目の座布団を右側に乗せ、もう1枚を左側に。残りの一枚を足の上に。 まだ身体ははみ出ているが、座布団はもう品切れだ。 俺は少々思案したあげく、洗濯しっぱなしで、しまっていなかった洗濯物を、アリスの上にどさりと積み上げた。 芸術的とは言い難いオブジェの出来上がり。 目覚めたときのアリスの反応が楽しみだ。 その時のことを考えると、どうしても口が笑ってしまう。 数年後には笑い話となって、蜂蜜につかっているような、そんなねっとりとした思い出となるであろう── とある昼下がりの出来事── 元ネタは実話。友達と集まって宅飲みしていた時のこと。 |