KILL TIME
つまらない……… つまらないといったらつまらない。 つまらん、つまらん、つまら〜んっ。 週末。 昨夜から泊まりに来ていた火村は、資料に目を通しておかなければならないとかで、現在リビングのソファで読書中だ。 休日に仕事を持ち込むなっ! 互いに仕事が忙しくて約1月ぶりの逢瀬だというのに、これはない。 火村の隣に腰掛けて早小一時間、これ以上黙っていたら我が家のクッションはその役目をなさなくなる──つまり、私の腕の中で潰される一方だということだ。 ここまで我慢したのだから、もういいだろう。 邪魔してやる── 「なあ、火村。UFOの正式名称ってなんだった?」 まずは軽いジャブ。 「Anidentified flying object」 ちっ、軽すぎたか。 本から視線を上げもしない。 「なあ、火村。スリランカの首都って言える?」 これは結構効くだろう。 字面としては知っていても、発音するとなると話は別だ。 「スリ・ジャヤワルダ・ナプラ・コッテ」 くっ、悔しい……。 口ごもることもなくスラスラと。 しかも、まだ視線は本に落ちっぱなしだ。 じゃあ、これはどうだ。 「なら、火村。バンコクの正式名称は言えるか?」 言えないだろう。 君に自慢してたくて、マレーシアから帰ってきて、半日かかって暗記したのだ。 言えてもらっちゃ困る。 「クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラアユッタヤー・マハーディロッカポップ・ノッパラッターナラーチャタニーブリーロム・ウドンラーチャニウェットマハーサターン・アモーンラピーンアワターンサティット・サッカタットティヤウィサヌカムプラシット」 ………なんで言えるんだっ! ちっ、私の考えるようなことはお見通しってことかいっ! じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ〜、これならどうだっ! 「じゃあ、火村。アリス好き好きラビンユ〜〜〜って言えるかっ!」 「……………………解った。遊んでやるよ」 ようやく火村の手は本から放れ、私に向かって伸びてきた。 残念だったな火村。 私の勝ちだ── っていうか、アリス…… |